戦姫絶唱シンフォギア~歌わない決闘者系ノイズ目録~   作:特撮仮面

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彼とシンクロと古代の力

「どういう…ことだ…」

 

 

 シンクロ、というと彼が変化するアレのことか。一体何を言っているのか。本気で困惑する翼を前に、彼は笑って言う。

 

 

「だからシンクロだ。お前らのその姿見てティンッと来たってわけだ」

「だから、その意味が――」

「さっきから聞いていればぁあ!!」

 

 

 フィーネが吠える。同時に現れる大量のノイズ。ソロモンの杖の力だ。この一連の戦い、ノイズの発生原因。風鳴翼が問う。貴女が一連の事件の犯人なのかと。

 

 フィーネが笑って教える。ノイズの出自、そしてソロモンの杖の意味。

 

 ノイズとは、フィーネが生きていた何千年も昔に、統一言語を失った人類が対話を行うことができず、争いに傾倒し始めた頃に開発された自立機動兵器である。それの製造理由は至って簡単。環境を侵すこと無く、確実に人のみを死に至らせるためだ。

 

 では、そんな大昔に製造された自立兵器が現代でも運用されているのは何故なのか? 彼女の話からして、ソロモンの杖には製造する機能は搭載されてい無い筈。それに、ノイズは一定時間経過すると自壊する仕組みとなっている。そんな疑問に答えるように、フィーネは言った。

 

 ノイズは、バビロニアの宝物庫と呼ばれる場所で製造、格納されているのであると。ソロモンの杖は異次元に存在するその宝物庫からノイズを出現させるための鍵であるということ。また、バビロニアの宝物庫で製造されたノイズは一定周期でこちらの世界に発生するように調整されていること。

 

 つまり、そのバビロニアの宝物庫を破壊しない限りノイズによる災害は終息を向かえないということにある、が、彼女の説明からして、現在多発しているノイズの出現の殆どはフィーネがソロモンの杖を利用して起こしたものがほとんど。ならば、ソロモンの杖を確保しさいすればノイズの出現率の低下が見込める、また、杖を解析していけばバビロニアの宝物庫へ到達することが出来る。そして、その宝物庫なる場所の封鎖などを行える可能性があるということを示唆していた。

 

 

『つまり、ソロモンの杖が、貴女が原因…。ならばッ!』

「念話までも…。だが、限定解除された程度でッ!!」

 

 

 脳内に響く風鳴翼の声。

 

 彼女たちのシンフォギアは現在、彼女たち本来の能力に合わせて、避難民たちの歌。二つの想いが重なり合うことでそのプロテクトを解除、様々な機能を解除している状態だ。つまり、現在の彼女たちの力は普段の数倍、いや、数百倍に跳ね上がっている計算である。

 

 

『今更ノイズが出たところで!』

 

 

 雪音クリスが威勢よく吠える。事実、今の彼女たちなら並大抵のノイズでは相手になら無いだろう。そう思わせる程の力を持っていた――のだが、現場に居る誰よりも早く彼は動いていた。

 

 

「dosseeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeei!!」

 

 

 ノイズたちがフィーネの指示を受けて三人を攻撃しようと身を屈めた瞬間、別方向から現れた人型のノイズによって蹴り飛ばされた。

 

 遊吾・アトラスである。先程まで人間だったはずの彼は、現在ノイズの姿となってフィーネと相対していた。

 

 

「ちょっ!? 何でノイズの姿に!?」

「sirann!! っと、知らん! 気づけばなってたんだよ!!」

 

 

 どうやら、本人も理由が分からないが何かしらの方法でノイズへと変化する術を手に入れたらしい。元々そうであったが、完全にノイズのようなナニカになってしまったらしい彼。

 

 

「さて、そいじゃ一掃しますか!」

 

 

 俺は、レベル1のノイズ二体と、レベル2のノイズ一体に、レベル3のノイズ一体に、レベル1の俺自身をチューニング!! 王者の鼓動、今此処に列を成す! 天地鳴動の叫びよ、響け!! 現れろ俺の魂! レッド・デーモンズ・ドラゴン!!

 

 炎を纏い、王者が降臨する。シンクロの余波で残ったノイズたちが炭化、吸収される。だが、眼前で王者が降り立ったところでフィーネは余裕の笑みを崩さなかった。

 

 当然だ。フィーネは一度彼に完全勝利しているのだから。今回も簡単だ。身体的接触により彼の波長を乱し、それを自分が使用すれば――だが、それほど彼は甘くは無い。当然だ。自らの弱点を放置するような奴が王者などと自らを呼ぶだろうか? いや、呼ぶはずが無い。

 

 

「なっ!?」

 

 

 瞬時に近づいた彼女が彼の身体に触れる――だが、フォニックゲインの波長がバラバラだ。驚愕に目を見開く彼女。これではシンクロを行うことが出来ない。

 

 無論、そんな彼女の隙を見逃すほど彼も甘くは無い。

 

 

「そぉらよっ!!」

「ぐぁ!?」

 

 

 純粋な拳によるアッパーカット。だが、体格差も相まってそれは最早一tトラックに正面衝突したようなモノだ。堪らず吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる彼女。

 

 一体何が起こっている!? あんな波長では――思考を乱す彼女を、彼は鼻で笑ってみせる。

 

 

「確かに、シンクロは波長を正し、変化する。だが、一日二日でどうにかできるほどシンクロ召喚は甘くねぇ」

「なんだと…?」

「当たり前だろうが。フォニックゲインの波長合わせもそうだけど、シンクロするにはチューナーとシンクロ素材のレベルを常に考えとかなきゃいけねぇ。どのタイミングでシンクロするのか、どのレベルでシンクロするのか。シンクロは流れだ。それを読み切れねえ奴がシンクロを使いこなせると思うんじゃねえ!」

 

 

 ノイズでのシンクロは、フォニックゲインの波長を合わせることで、チューナーとなる彼自身がそのフォニックゲインを利用し、新たな形として融合している、それが彼のシンクロである。

 

 デュエルモンスターズでもそうだが、シンクロに定まったルートは存在しない。定石と呼ばれるルートはあるが、基本的にその時々で調整する必要があるのだ。

 

 例えるのならば、チューナー、彼のようにシンクロをするためにフォニックゲインの波長合わせをするモノは、指揮者のようなモノなのである。つまり、ノイズなどの素材となり、レベル調整が行われるのは楽器及び演奏者、そしてシンクロとは楽曲。

 

 シンクロはアドリブの嵐だ。その時々で曲、彼で言うならばシンクロモンスターへのシンクロと言う結果へと行き着かなければならない。が、逆に言えばそこへ行きつくのならば、幾ら素材を増やしても、幾らシンクロを増やしても問題は無いということだ。ただし、結果に噛み合うのならば、だが。

 

 今回の場合、彼がわざとレベルのバラバラなノイズを使ってシンクロをしたことにより、フォニックゲインの波長が変化。ほんの少しのズレが彼女の介入を許さなかったのである。

 

 

「だが、これならば――!!」

 

 

 フィーネがソロモンの杖を天に掲げる。

 

 ノイズが発生する緑色の光。だが、それは普段の小さなものではない。より大きな光が上空で弾ける。同時にそれは地上に流星群めいて降り注ぎ、そこから次々とノイズが発生する。

 

 次々と増殖するノイズ。瞬く間に町がノイズに覆われ、気付けば彼らの居る学校跡地以外の殆どが蠢くノイズに覆いつくされていた。

 

 その数は想像したくない。普通ならば絶望してもおかしくない数。だが、そんな数を見て尚奏者たちは、彼はニヤリと笑った。

 

 

「あ、ビッキー今のうちにたい焼き食っとけ!」

「ウェ!? 遊吾さんは!?」

「ちょっと試したいことがあるからノイズに突っ込んでくる!!」

 

 

 言うのが早いか、翼を羽ばたかせノイズの元へと突貫していく彼。

 

 エエー。茫然とその背中を見送った三人であったが、巨大な火柱が立ち上がるのを確認して、響がそれもそうですね、と先程から持っていた響一郎印のたい焼きの袋を開ける。中身は見事に三つ。

 

 

「ちょっ!? そんな呑気なことしてていいのかよ!?」

「あ、翼さんは抹茶でもいいですか?」

「ああ、構わん」

「おい!?」

 

 

 憤るクリスに、響が妙に真面目な表情で言った。

 

 

「クリスちゃん? 腹が減っては戦は出来ぬ、だよ? はい。カスタードクリーム」

「え? いや、あ、ありがと…」

 

 

 流石に差し出されてはもう何も言えなかった。渋々とたい焼きを齧るクリス――だったのだが、好きなカスタードクリームのたい焼き、しかも前に公園で食べたそれだと分かったらしく。無言でもぐもぐと食べ始める。だが、流石に戦闘中、さっさと食べ終えると、まとめてぶちのめしてやるぜ! と威勢よく飛び出すクリス。

 

 

「あの、翼さん…」

 

 

 そんなクリスを見送った二人であったが、響の声にそちらを向く翼。彼女の表情は先ほどと比べても暗い。どうした? 翼が問いかけようとしたところで、決心がついたのか彼女がゆっくりと口を開いた。

 

 

「あの時、私――」

 

 

 あの時? 翼が内心で首をかしげるが、すぐにどのことか気が付いた。

 

 彼が復活する前、まだ三人が櫻井了子の裏切りと、遊吾・アトラスの死に動揺。そして雪音クリスの絶唱によって彼女が力を暴走させた際、翼が身を挺して響の暴走を止めた。その時、響の腕は彼女の胸元を傷つけてしまったのだ。

 

 一歩間違えれば殺していたかもしれない。尊敬する先輩であり、命がけで助けてくれた翼に対する感謝と謝罪。しゅんと顔を暗くする彼女を見て、彼女はフッと表情を緩める。

 

 

「どうでも良いことだ…」

 

 

 そう。彼女にとって重要なのはそこではない。傷つく仲間がいて助けない武人がいるだろうか? 何よりも、誰かのために傷ついた女の子を守らない防人が居るだろうか? それに、彼女は自分の声に応えてくれた。それだけで彼女には十分だった。

 

 

「そう、自分の強さに胸を張れ」

「はい!」

 

 

 一気に表情が明るくなる響。彼女は優しく微笑みながら言った。

 

 

「それと、口元からチーズが伸びているぞ?」

「うぇ!? ちょ、先に言ってくださいよ!?」

 

 

 慌てて口元を拭う響。まったく、手のかかる妹のようだ。そんなことを考えながらふと、たい焼き片手にこんな会話をしている自分たちは傍から見たらどのように見えるのだろうか? そう思ってクスリと笑う。

 

 

「さあ、一緒に戦おう、立花!」

「はい!!」

 

 

 二人が飛ぶ。これで三人――と言ったところで、彼がノイズたちを吹き飛ばし彼女たちのもとにやって来る。これで四人。お釣りが来るほどの戦力だ。

 

 

『はっ、ヘマすんじゃねえぞ? 遊吾』

「それはこっちの台詞だぜ? クリス」

 

 

 二人が妙に仲が良い。どうやら二人が居ない間に何かあったらしい。

 

 相変わらず妙なところで人と仲良くなるのが早いなぁ。先の疾走決闘からして、今までの彼と何かが違うと感じていたのだが、根本的なことは昔と変わらないようだ。しかし、と響は笑う。

 

 ずっと彼の背中を見てきた。まさか、そんな自分が彼の隣に立つ日が来るなんて、と。だが、それが良い。

 

 

「翼さん、クリスちゃん、遊吾さん。行きますよ!」

『ああ!』

『おう!』

「さあ、満足させてくれよッ!」

 

 

 歌が始まる。それは今までの彼女たちの歌とは違う、とても穏やかで、祈りに満ちた歌。

 

 しかし、その歌が起こす力は強力だ。拳一つで、剣の一振りで大地を包むノイズが爆発四散。空を覆うノイズは、魔弓のフォニックゲインの誘導弾によって次々と撃ち落とされていく。

 

 気合いを入れた遊吾であったが、次々と撃墜されるノイズを見て、ふと思った。

 

 あれ? 俺要らなくね?

 

 だから、

 

 

「強いッ! 迸るほどに強いッ!! これが、彼女と彼女たちの歌の相乗効果ッ!! 守り、守られ、繋がった人々の想いの結晶ッ!! ここに、シンフォギア奏者の熱い想いの迸りをミタァ!!」

 

 

 実況していた。

 

 

『わおっ、乱れ撃ちィ!』

『ばっ!? 狙ってんだ!!』

『それじゃあ――私は乱れ撃ちだぁ!!』

「あーっと! 響選手ここで拳にフォニックゲインのエネルギーを伝導させ次々と撃ち出した!! 拡散する波動が容赦なくノイズを襲う!! 堪らず炭化するノイズ! 今の彼らでは彼女たちの快進撃を止めることができないのかぁ!? ――ビッキー、あまり飛ばしすぎんなよ? もしかしたら町の修繕費とかで給料持ってかれるかも知れねえぞ?」

『マジっすかぁ!?』

『お前が言うな!?』

 

 

 またもやどこかからツッコミが飛んでくる。事実、響よりも遊吾の方の被害額の方がデカイ。時には解体するに出来なかった道や建物を文字通り跡形もなく吹き飛ばしてくれるという点で、色々なところに利益を与えていたりするが、それで帳消しになるようなものではない。

 

 

「しっかし、マジで暇だな」

 

 

 ついついぼやく。三人の見事な連携を見たら、流石に素人が割ってはいるものではないと理解できる。三人の戦っている姿を見るのは中々面白いし、ナニかと揺れたりチラチラ見えるのが目の保養になったりするが、何の役にも立ててないのは流石に精神的にキツかった。

 

 

『ところでアトラス。聞きそびれたのだが、私とシンクロとはどういうことだ?』

「ん? ああ、そりゃ――って、こりゃまたすごいことしやが……」

 

 

 彼らの目の前でノイズたちが光の輪に包まれる。

 

 どうやら、何かしらの方法を用いてノイズたちの融合を、一時的なシンクロにしようという算段らしい。

 

 三人が構える。彼とて油断はしない。が、遠隔のシンクロ、フィーネが見せる彼女の操るシンクロがどのようなものか、純粋な興味でシンクロするノイズを見て――思わず度肝を抜かれてしまった。

 

 

『ゆ、遊吾さん!?』

『なんだよこいつぁッ!?』

『化生の類いか!?』

「…冗談キツいぜおい」

 

 

 四人の視線の先で、様々なノイズが合わさり変態する。

 

 それは、巨大な馬に乗った鎧の騎士だった。漆黒の身体と深紅の瞳を持つ竜だった。それは、ウサギのような角を持つ竜だった。

 

 彼女たちは――いや、正確に言うならば、風鳴翼と雪音クリスは知らないが、立花響と遊吾・アトラスはそれらを知っていた。

 

 不意に、フィーネの念話が響く。

 

 

『嗚呼、思い出したよ。決闘、疾走決闘。嗚呼、忌々しいエジプトとナスカの神官共のことを!!』

「なるほど、この世界にも決闘はあった訳か…」

 

 

 彼のシンクロは、元となるシンクロモンスターの姿へと変化させ、その性質に限りなく近づけるというもの。

 

 極端に言えば、シンクロという手法を取っているだけで、やっていることはノイズの融合を変化させただけのようなモノだ。ただ、彼の特異性がその変化をより強力なものにしている。

 

 彼女の天才という頭脳と、幾星霜の時を越えて来た経験。それらが彼女にそのことを思い出させ、彼に迫る力を得るために、シンクロの可能性に気づいたのだろう。

 

 

 デュエルモンスターズの起源はエジプト。超古代のエジプトでは、王の力、意向を示す、邪悪を払うなどの目的で、ディアハと呼ばれる決闘が行われていた。

 

 それは魂の力、バーを消費することで、石板に封じられた、もしくは石板に刻まれることで命を得たモンスター、カーを具現化し戦うという神聖な儀式であった。

 

 デュエルモンスターズは、エジプトで確認された古代遺跡の中から発見された数々の石板などの記述から、とある大企業の社長が考案したカードゲーム。

 

 そのため、古代の石板のモンスターがそのままカード化されている例が何種類も存在する。

 

 彼はそんなモンスターたちを実際に見てきたし、古代エジプトにタイムスリップして酷い目にあったりしてきたのでよく覚えている。

 

 響も、それがどんな存在かよく知っている。

 

 彼女が未来と一緒に決闘を教わったときに使っていたモンスター。

 

 効果を持たない代わりに、フレーバーテキストと呼ばれるそのモンスターの設定のようなものが描かれた、ステータス重視のモンスター。俗に通常モンスターと呼ばれる存在である。

 

 

『あの神官共の操っていたモノを使うのは些か気に食わぬが…やれ!!』

「なるほど…来るぞ!」

 

 

 彼女の号令と共に、古代の巫女、フィーネによって現代に甦った伝説の怪物たちが、歌姫たちに襲いかかった!




おかしい…ただ四人が無双するだけじゃ面白くないかな?って思って、フィーネの超古代の巫女とか、主人公のシンクロはモチーフを再現しているとか言う設定を思い出してたら、なんかすごいことになってた。

こんなことは予定に無かったぞ!? どうなっている!?(終わりのヴィジョンはあるのに、そこに行き着けない謎の状態に混乱中)
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