戦姫絶唱シンフォギア~歌わない決闘者系ノイズ目録~ 作:特撮仮面
「ノイズさぁあああああああん!?」
「とったぁ!!」
響の悲痛な叫びが木魂する。身体を貫かれたスカー・ウォリアーの身体が霧散していく。
勝った! クリスが確信した瞬間――
「sorehadoukana?」
「なにっ!?」
スカー・ウォリアーを中心に新たな輪が生まれ、それは漆黒の霧となり彼の身体を包み込む。
あっぶねぇ、シンクロキャンセルしてなきゃやられてたぜ…。
シンクロキャンセル、同名の魔法カードと同じくシンクロを解除する行為だ。天ノ逆鱗を受け止めた時点で彼は迷いなくシンクロを解除。スカー・ウォリアーの身体を棄てることで不完全な発剄によるダメージを最小限にしつつ、残った身体をトークンとしてクリスの囮に使ったのだ。
そして、炭化を始めたスカー・ウォリアーの身体と、先程吹き飛ばしてまだ炭化していないノイズを利用したシンクロを行ったのだ。
彼の特異体質と、シンクロに有効距離が存在していないからこそ出来る強引な戦法。
天頂に輝く死の星よ! 地上に降り立ち裁きを下せ! シンクロ!!
レベル7、天刑王ブラック・ハイランダー!!
「なん……だと……」
「な、何なんだよテメェはっ!?」
白い兜には王冠のような装飾と、おどろおどろしい意匠。鎧に刻まれた白は肋骨を思わせ、その手に持つ巨大な鎌は正しく死神を思わせる。
王の名に違わぬ圧倒的風格に、二人は気圧され支配されそうになる。
スカー・ウォリアーやエクスプロード・ウィング・ドラゴンなど、彼女たちが相対してきた彼のシンクロのどの姿よりも感じる、恐怖。
レベル7、攻撃力2800、守備力2300。それがブラック・ハイランダーのステータスだ。
決闘と違い、シンフォギアとの戦闘はステータスで決まる訳ではない。しかし、そのステータスは戦闘能力だけでなく、存在感としてこの世界に作用する。
伝説の、青眼の白竜の攻撃力3000に近い数値と言うのはそれだけで他者を支配しうる力となるのだ。
だが3000や2800など、桁として見るとまるでなんてことは無いように見えるだろう。
それは間違いである。
ここで大雑把だが、デュエルモンスターズにおける攻撃力がどのようなものか説明しよう。
まず、一般人やそれらに武器を持たせたものは攻撃力0。民衆が沢山集まれば話は別なのだが、それはまた別の話だ。
戦う意志を持ち、鍛え抜いた達人でも多くて300。現代兵器でようやく600ほどだ。攻撃力1000を越えるとなれば、それは即ち人間ではない存在となることである――とは言え、中には例外も居るものなのだが…。
つまり、2000を越える攻撃力を持つということは下手をすれば町一つ吹き飛ばしかねない力を得るのと同義であるのだ。
「今さら見た目が変わったところで!!」
クリスが吠える。自らの恐怖を振り払うように、毛を逆立てた獣のように牙をむいて彼に飛び掛かる――が、それを許すほど彼は甘くはない。
ブラック・ハイランダーの効果を発動させてもらうが、構わんな? 彼が飛び掛かるクリスに手を向けた――
「がぁあああ!?」
彼女の身体が爆発する。
いったい何が起こっているのか理解が出来ない。突然の出来事に彼以外の動きが停止する。
名付けて、死兆回帰ってな? 装備カードを破壊し、バーンダメージを受けてもらったぞ。
ブラック・ハイランダーの効果だ。相手モンスター一体に装備された装備カードを全て破壊し、プレイヤーにその数×400ポイントのダメージを与える。これにより、完全聖遺物を身に纏う彼女に効果が適用され、ダメージを受けたのである。
とは言え、完全に破壊した訳ではない。手加減して破壊したことで、戦闘不能にしただけである。
「イヤーッ!」
彼の能力を見て、持久戦は不利と判断した翼が果敢に斬りかかる。
防人、己を刃と言うだけのことはある。素人目にでも分かる鋭く綺麗な太刀筋に思わず感嘆の声を上げる――が、そのままやられるつもりはない。
鎌という実戦で使うには余りにも使いづらい武器を器用に回転させて、彼女の攻撃をいなす。
「ハァアアア!!」
流石はSAKIMORI! ハイランダーじゃなかったらバッサリだ!
蒼が煌めき、黒を追う。速い。縦横無尽に刃を振るうその姿は、蒼き流星を思わせる。
しかし、いかなシンフォギア奏者と言えどその中身は女性。元々ある筋力の差をハイランダーの高い攻撃力で補い、彼女の速度に圧倒的なパワーで対抗する。
体格差とパワー差で無理矢理彼女の連続攻撃を弾き続ける。
針穴に糸を通すような戦いに、彼が内心で冷や汗を流す。一歩でも違えれば彼の体でも耐えきれない連撃が飛んでくるはずだ。ならば、意地でも耐えて隙を作らせる。
そして、ついにその時が訪れた!
「っ、しまった!?」
もらったァ!!
鎌の先端を引っ掻けるようにして、彼女の腕からアームドギアを引き離す。
甲高い金属音と共に刀が弾かれ地面に突き刺さる。引き込んだ鎌を撃ち放つ。腕を打ち上げられて胴体ががら空きとなった相手の脇から抉り込むような軌跡を描き迫る刃、シンフォギア奏者である以上致命傷には至らないだろうが、大ダメージは免れられないはずだ! そのまま彼女の脇腹に鎌の先端が突き刺さるかと思われた次の瞬間、彼女が弾かれた勢いをそのままにバク転――だが、それだけでは終わらない。
歌は更なる盛り上がりをみせ、同時に彼女の動きが鋭さを増す。
逆 羅 刹 !!
っそだろ!? そこから攻撃に転じてくるかよ!?
バク転により天地を逆転させた彼女は、日本で一番といっても差支えの無い歌姫らしく、その誰のがうらやむようなモデル体型、カモシカのようにしなやかで力強い脚を限界まで開き、脚部のスラスターを噴射。腕を軸に独楽のように高速回転しながら彼に迫る。
蹴り、しかもスラスターの外装は展開された刃、実際のところ高速回転する打撃力と切れ味の合わさったギロチンのようなそれを、彼は防ぐことが出来ない。
幾らシンクロモンスターとて、攻撃が終了しまだ重心の安定していない状態で防ぐことは叶わない。真正面から受け止めることは避けるべく彼は鎌に釣られるようにして横に跳ぶ――が、彼が跳びだした瞬間に彼の横腹に足先が突き刺さる。
ぐぉおお!?
逆羅刹はブラフ。高速回転により威力の増したドロップキックが突き刺さる。鎧を纏っているとはいえその威力は馬鹿にはならない。吹き飛びこそしなかったが、思わずよろけ体勢を崩してしまう彼。
それだけの隙があれば十分であった。
「防人の生き様、覚悟を見せてあげるッ! 貴女の胸に焼き付けなさいッ!」
響にそう宣言する翼。彼は瞬時に彼女が何をするのかを察し逃げるべきと――判断したが、彼女の瞳を見つめ直し、彼はゆっくりと立ち上がる。
ここで足掻くということは必要な行動である。だが、彼女のその真剣な瞳を見て誰が逃げられようか? 最後まで足掻くのは必要なことだ。自分が生き残るためにもここは彼女を妨害し、確実に勝ちに行くのが正道。それは分かっている。分かっているがあえて彼は重心を落とす。
時として、決闘者は全力を受け止める必要がある。それは、死力を振り絞り共に戦ったからこそ行うこと。では、それを行うのはいつなのか、今だ。彼女が覚悟し、そして立花響が新たなステージへと進むために必要なターニングポイント。そこで逃げては俺は二度と彼女に何かを言うことは出来ないし、何よりも、男として、これだけの覚悟を決めた格好良い女性の熱い想いを受け止めずに居られようか?
いや、ない!! さあ、掛かって来い風鳴翼!!
真っ直ぐ彼女を見据えて立つその姿は、正しく誇り高き王者のそれ。それを見た彼女は、敵ながら天晴れな奴だと思わず口元を緩めるも、直ぐにその表情を引き締めると大きく息を吸い込み――歌が響き渡る。
同じ歌のはずなのに、戦闘時に奏者が歌うソレとは全く違う。鳥肌が立つ、戦慄するとはこのことか。その歌の力強さに、その歌の暖かさに、一語一句聞き逃さんと彼は眼を見開き、心臓の鼓動を止めてまでその歌を聴く。
絶唱。感情を、想いを、文字通りの己の全てを歌へと変換し、フォニックゲインを限界以上に爆発させる。シンフォギア奏者の正しく最終奥義、最後の切り札である。
彼女の全力に応えよう。ゆっくりと、ゆっくりとこちらへと歩いてくる彼女を真っ直ぐに見据える。
女性にしては高い身長。触れ合える距離にまで近づいてきた彼女を見下ろす。
中々の武人だ。…貴様と戦えて良かった。
そっちこそ、な。今度は味方として闘いたいもんだ。
二人して笑う。そして彼女が俺の身体に触れ――。
※※※※※※※※※※
転倒したバイクと、その側で踞る少年。彼の目の前に、一本のタイヤと、そこから降り立つ脚が現れる。
見上げた先に居たのは、俺が伝説である彼らよりも憧れてやまない、誰よりも身近な王者、越えるべき壁の姿。
「ふん、これで終わりか?」
ばっか、誰がこれしきのことで満足するかっての。俺はあんたを越えるんだよ。その為に時を越えて遊馬や遊星さん、十代さんや遊戯さんに決闘の手解きしてもらったんだぜ?
それに、若い頃のあんたと何度もやったんだぜ? そんであと一歩まで追い詰めてきた。あと一歩なんだ。
「その一歩、それが差と言う奴だ」
はん! 言ってやがれよ? 俺の栄光の戦いのロードの前にゃ、あんただって踏み台なんだからな親父。
「ふん! このキング、ジャック・アトラスを越えられると言うのならやってみろ雑魚め」
てめ、今言ったな!? おい、今すぐ表に出ろ! 今度こそ俺のフィールで、テメェをマッハでボコボコにしてやんよ、ジャッケロォ!!
「…ところで、俺のレッド・デーモンズ・ドラゴンがこの間から無くなっているのだが――」
やべっ、バレた!?
「やはり貴様かぁあああ!? 待て遊吾ォ!!」
逃げるんだよぉ!! 俺は手札からジェット・シンクロンを召喚! イィヤッホォォオオオウ!!
「ゆうごぉおおお!!」
嘘ん!? なんでDホイールに翼生やしてンだよ!?
「貴様も言っていることだろう? これがフィールだ!」
フィールってすごい(小並感)
「さて、悪さをした子供にはお仕置きが定番なのだが…」
ちょっ、何でスカーライトさんスタンバってんですかねぇ!?
「アブソリュート・パワー・フレイム!!」
ぎゃああああ!?
「あんの糞ジャッケロォ!! ふざけんな義理の息子をエースモンスターで殴るやつがあるか!?」
「きゃっ!?」
雄叫びと共に起き上がる彼。近くで高い悲鳴が上がるが全く気づいていない。
それどころか、ん? と違和感を感じて彼はペタペタと顔を触り、身体を触り、そして服装を確認して――
「人間に戻ったァあああ!!」
「安心しな、これ夢だから」
「マジで!? ――って、お前バーロ……奏じゃねえか」
「今何言おうとした?」
「ガングニールは勘弁な!?」
「安心しな? トリシューラで勘弁しといてやるよ」
「おい、除外やめろや」
「冗談冗談。実はブリューナク」
「ジャッジー、こいつレギュレーション違反してまーす」
にこやかに拳を鳴らす女性。
赤髪に、男のようなニヒルな笑顔が良く似合う女性。
天羽奏。音楽ユニット、ツヴァイウイングの片翼にして、彼が文字通り魂を賭けて救いだした少女。
二人して冗談を言って笑いあっているが、そんな二人を見て唖然としている少女が一人。
「どういう……ことだ……?」
風鳴翼、先程まで彼と命懸けの戦いを続けていた彼女は私服姿でそう呟くのであった。
「つまり、貴様があのノイズであり、そして二年前に現れ奏を連れ去った謎の医者である、と」
「そゆこと」
「人間がノイズにだと…? にわかには信じられん」
「まあまあ良いじゃん、とりあえず私だって生きてるんだしさ?」
「だよなー。俺の魂とデュエルエナジー、フォニックゲインをありったけぶち込んだからなー。これで死なれたら俺、ノイズになり損過ぎだろ」
あっはっはと笑う二人を見て、翼は頭が痛いと言わんばかりに額に手を当てて大きなため息を吐く。
最愛のパートナーである奏と笑い合う、ツンツンした黒髪と、風も無いのにたなびいているコートと腕に巻いてある銀色の鎖が特徴的な高身長の男性――成人男性のような雰囲気を放っている癖に、実年齢は数えて十六歳。デュエルアカデミア高等部に入学する前、つまり中学三年生。
「って、中学三年生!? 貴様のような中学三年生が居るか!?」
「ちなみに、自慢じゃねえけど学校の成績はあまり良くないぜ!」
「本当に自慢じゃないな!?」
遊吾・アトラス。そう名乗る彼に思わずツッコミを入れてしまう翼。
「あっはっは! あの翼がツッコミを入れるとか、天才だな遊吾!」
「お、ようやく分かったか。そう、俺がキングだ」
「ボケのキング名乗っていいと思うぞ?」
「…それ、呼ばれて嬉しいか?」
「さあ?」
「今状況を整理しているからそこの二人は話すんじゃない!! とりあえず数刻で良いから口を閉じていろ!!」
「防人せんせー、数刻ってどれくらいですかー」
「……」
「はーい、翼抑えて抑えてー。こら、遊吾、やりすぎだよ」
「奏…」
「翼を弄っていいのは私だけなんだから」
「奏!?」
裏切られた!? 涙目になる彼女を見て、奏が清涼感溢れる笑顔で言った。
「当然だろ? ツヴァイウイングなら」
「何が!? やっぱり奏は意地悪だ!」
頬を膨らませて、ふんっ! とそっぽを向く翼。戦場で鋭さしか感じられなかった彼女の、そんな年相応の反応を見て、思わず微笑ましいモノを見るような暖かい眼を彼女に向けてしまう二人――
「え? 何この子? 俺を萌え殺す気なのか?」
「とてもストイックに見えてこの、時々見せるこんな反応とか、部屋の片付けが出来ないとことか、やっぱイイッ!」
「奏ッ!」
「遊吾ッ!」
と言うか、何やらダメなところで友情を深めていた。ギャップって良いよね! なんて二人して笑い、奏にいたっては眩い笑顔で鼻から友情の証を垂れ流しにしている。
「こ、こ、この、変態どもがッ!」
「「ありがとうございます!」」
「もうやだこの二人!」
助けて叔父様ぁ、と本格的に泣きそうになっているので、そろそろイジるのは止めようと彼らは話を変えることにする。
「で、私はいつになったら身体を動かせるようになるのさ」
「そろそろだと思うんだが…。ちょっと俺の魂使ってるせいで不自由があったらスマン」
「良いよ、こうして生きているだけで十分さ」
そう言ってもらえるとありがたい。だが、流石に二年も身体が放置されているようなモノなのだ。これ以上時間をかけてしまったらいくらデュエルエナジーで保護していても限界が来るかもしれない。これは早々に回収してもらう必要があるだろう。
「防人、二年前のコンサート会場あったろ? あそこから数キロ行ったとこにある襤褸屋に奏眠らせてあるから、この夢から目覚めたら風鳴のおっさんに言って回収してもらってくれよ」
「なっ!? なんで叔父様のことを」
「いずれ分かるさ、いずれ、な」
世界が歪みだす。どうやら各々の目覚めの時間が近づいてきているらしい。
「奏、話したいことがあるんじゃないか?」
「あんたが起きる前に大体話したしね。あとはあっちで再会したときにでも話すとするよ」
だから、今はこれでさよならだ。いくら努力したとはいえ、目覚める保障は無い筈なのにそれでも笑う彼女を見て、男らしいなぁと苦笑する遊吾。
茜色の世界が少しずつ明るく輝き始める。この世界は風鳴翼の夢の中の世界。これは彼女の目覚めの兆しなのだろう。と、そこで彼はこのことを口止めしなければと思いいたる。
「あ、防人。ビッキーにはこのこと言わないでくれよ?」
「このこと?」
「俺がノイズだってこと。あいつが戦えなくなるのは嫌だからな」
笑う彼に、顎に手を当ててしばらく悩んでいたが、分かった約束しようとまっすぐ遊吾を見つめる翼。
絶唱の前では見られなかった優しくも鋭い視線に、これが彼女の本当の姿かと感心する。いや、これが彼女が何かを振り切った姿なのかもしれない。
この状態の彼女とは戦いたく無いモノだ。今ならブラック・ハイランダーなら易々と切り裂かれてしまうかもしれないだろう。そう感じられるほどの力に満ち溢れていた。
光が増し始める。あと何十秒かで目が覚める。さて、起きたらどうしようかね――と呑気に考え始めていたが、ふと彼女に言わなければならなかったことを思い出して大慌てで翼に吠える。
「防人!! 一つ言い忘れてた!!」
「な、なんだ!?」
「お前、ビッキーやクリスとはタイプが違うから、ステージ衣装は脚を強調したらどうだろうか!? 二ーソックスとかパンツ、ストッキングもありかもしれないぞ!! 手足を活かせ!!」
「それは――」
最後の最後で訳の分から無いことを言われ、何のことだと本当に意味が分からずに混乱してしまう翼であったが、彼女の防人として鍛え上げられた頭脳が混乱の中でも言葉の意味を思考し、答えを暴き出そうとする。
ビッキーやクリス。ビッキーは恐らく立花響。クリスは恐らくネフシュタンの鎧の装着者を指すのだろう。しかし、タイプが違う? ステージ衣装? 脚? 確かに、彼女は同級生から時々手足がスラリとして綺麗と言われることはあるが…綺麗? 脚、武器。
武器は剣を指す言葉ではない。そしてステージ衣装、ストッキング、これは服装関係。そして勝負となれば見た目をいかに美しく魅せるかということになる。
ビッキーやクリスと違う? 彼女たちも見た目は悪くないように感じた。立花響も元気のある明るい少女らしく可愛らしい。しかし、自分と比べれば身長差は大きく、手足も自分ほど長くは無い。とは言え、響は自分と違って腰つきや胸の肉の付き方は――胸?
彼女の脳裏に稲妻が走る。思えば、ネフシュタンの鎧を纏う少女もまたその胸は自分よりも大きい――彼の言わんとすることが理解できた彼女は、反射的に叫んだ。
「一体何を言っているんだきさまぁあたッ!?」
ゴツンッ! と良い音と共に目の前で火花が散る。何か硬い物に額をぶつけてしまったらしい。そして同時に聞こえてくる「患者が突然――」だの「翼どうした!?」だのと言う騒ぎ声。
うぅ、額を抑えて涙目になりながら彼女、風鳴翼は心の中で言った。
別に、一振りの剣である自分にあんな無駄な肉はいらないんですッ!!
そして同時に思った。あの男、次会ったら迷わず蒼ノ一閃の餌食にしてやろう、と。
「あんなんで良かったのか?」
「ああ。で、そっちこそ本当のところは大丈夫なのかよ」
「やっぱ、絶唱の影響がデカいね…」
「そうか…。悪い、あれ以上出来なかった…」
「いいさ、だって翼と笑い合えるかもしれないし――何より、私の助けたあの子、立花響――だっけ? ガングニール、継いでくれてるんだろ?」
「ああ、あいつなりのガングニールだけどな」
「それでいいんだ。…さて、私はそろそろ行くよ」
「ああ、じゃあまたな?」
「うん、またね…」
さて、俺は一体どこで目が覚めるんですかねぇ…。
「あ! お前――」
「opaaaaaaaaaaaaaai!!」
「またかああああああああああああああああああ!!」
「gyaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?」
目が覚めたら目の前に美少女(怒りを滾らせてオーラが見えてる)が居たことにより、思わず動揺してへんな悲鳴を上げてしまった彼。
彼を待っていたのは、情けも容赦もないシンフォギアによる一斉掃射であった。