出逢い
10月13日。4日前に大怪我をし、昨日退院したばかりの初春 飾利(ういはる かざり)は、親友である佐天 涙子(さてん るいこ)とともに、とある高校へ向かっていた。
「すみません、佐天さん。荷物持ってもらっちゃって。」
「いいっていいって。その肩じゃ持ちづらいでしょ?それ
に、風紀委員の試験って興味あったんだよね〜。」
この日は風紀委員(ジャッジメント)の後期試験が、とある高校で行われる。初春はそのデータの処理の仕事があるのだ。
「でも、なんで怪我してる初春が呼ばれるのかなぁ?試験
のデータ処理くらいだったら他の人でもできそうじゃな
い?」
「しかたがないですよ。4日前に起きた事件の後始末で動
ける風紀委員はみんな出払ってますからね。怪我人に出来
ることはこのくらいですから。」
「ならいっそのこと試験延期でいいじゃん。」
「試験担当の先生が、風紀委員の人手が足りないから、早
く人数を増やしたいって、…ん?」
その時、初春の耳に男同士の争いあうような声が聞こえ
た。
「ケンカ…ですかね?」
「本当だ〜。うわ、殴り合い始めそうだ。」
「佐天さん。私のリュックのチャック開けてください。」
初春はリュックからジャッジメントの腕章を取り出すと、包帯を巻いている腕とは逆の方の腕に付けた。
「初春!危ないよ!」
「大丈夫ですよ。ただケンカを止めるだけですから。」
初春は2人の男の所へ歩いていく。
「あぁん?んだこのお花畑は?」
「風紀委員です。ケンカはやめてください。これ以上続け
ると警備員に通報しますよ。」
「ウッゼェなこのクソガキ!」
男の1人が初春を突き飛ばした。
「痛っ…あれ?」
道に倒れ、感じるはずの痛みを感じない。
「あぶねぇー。オイオイ。女の子を、しかも怪我してる子
を突き飛ばすとか、同じ男として恥ずかしいぜ。」
初春は自分よりも背が10センチほど高い少年に抱き抱えられていた。
「なんだ?またガキが増えたぞ?」
「お前ら邪魔すんじゃねぇ。これは俺とこいつの問題なん
だよ。」
男2人は少年を睨みつける。
「別に邪魔する気はねぇよ。ただ、その女の子を突き飛ば
した件について何か言うことがあるんじゃねぇの?」
「ハァ?テメェ舐めてんのか?ごめんなさいとでも言って
欲しいのか?」
「女の前だからって調子こいてんじゃねえぞゴラァ!」
少年よりも頭ひとつ分高い男が、少年に掴みかかろうとする。しかし、次の瞬間、
「ぬぉっ!」
男の身体が空中で一回転し、そのままアスファルトに激突する。
「ガハッ…!」
「て、てめぇ!何しやがる!」
もう1人の男が叫んだ。
「あんたケンカがしたいんだろ?いいぜ。相手になってや
るよ。」
「糞が!」
男が殴りかかる。少年はすべての打撃を避けきり、男の懐に飛び込む。そして膝を鳩尾へ、
「グゥムッ⁉︎」
そのまま男は気を失った。
「大丈夫か?」
少年は初春に手を差し伸べる。
「一応警備員に通報はしといたから。なんかあったらそっ
ちの方に言ってくれ。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
初春は少年の手を取り、立ち上がる。その顔は少し赤い。
「す、すごいですね。」
佐天は少年に近づいて言った。
「能力も使わずにあんな大男倒しちゃうなんて。」
「ん、あぁ。まあ、俺無能力者だし。」
「え?そうなんですか?」
「うん、そうだ…ってアァー⁉︎」
少年は自分の腕時計をみて、叫んだ。
「忘れてた。ヤバイ、これじゃ試験に間に合わない…」
「試験?」
「あぁ。風紀委員の試験。会場に行く途中だったの忘れて
たぁ…」
「受験生の方だったんですか?」
「うん。そうだけど?」
「それなら、これ。」
初春は自分の腕章を少年に見せる。
「あれ?風紀委員の腕章?」
「ずっとつけてたのに気づかなかったんですか?私今回の
試験のデータ処理担当なんです。私と一緒に試験会場まで
行って、担当の先生に事情を説明すれば、まだ試験を
受けられるかもしれませんよ。」
「え?まじぃ?まじで?本当に?おぉ!サンキュー!地獄
に仏とはまさにこのことだぜ!」
「もう。大袈裟ですよ。とりあえず試験会場まで行きまし
ょう。それから先生に事情を話しましょう。」
「おう!わかった。」
「…というわけで、この方に助けていただきまして、その
せいでこの方は試験に遅れてしまったということです。」
初春が車椅子に乗った包帯ぐるぐる巻きの巨乳教師に経緯を説明した。
「そうか。そんなことがあったじゃんか。それは災難だっ
たじゃん。そういうことなら、お前だけ、後日受験という
形で、試験を受けられるよう、手配するじゃんよ。」
「よかったぁ。ありがとうございます。」
「じゃあ今日はもう帰っていいじゃんよ。受験の日程は後
で送るじゃん。」
「はい。よろしくお願いします。」
「よかったですね。試験を受けられて。」
「あぁ。ありがとう。お前のおかげだよ。」
「いえいえ。先に助けていただいたのは私ですし。あっ。
私、初春 飾利って言います。あの、あなたの名前、教えて
くれませんかね?」
「ん?俺の名前?」
「俺の名前は…」
不破 戒人(ふわ かいと)
第1話でした。いかがだったでしょうか。まだまだ至らぬ点があると思います。これから頑張っていきたいと思うので、これからも暇な時でいいので、読んでいただけたら幸いです。ありがとうございました。