「不破さん!待ってください!」
「佐天⁉︎どうしてここに?」
支部から飛び出して、タクシーを拾うために大きな道路へ出た戒人を呼び止めたのは、息を切らした佐天 涙子だった。
「私も、私も連れて行ってください。」
息を整えながら、佐天は戒人の目を真っ直ぐみて言う。
「なに言ってんだよ。これから行く所がどこかわかってん
のか?スキルアウトがウヨウヨしてる様な所だぞ!危険す
ぎる!」
「だから行くんです!」
佐天が叫ぶ様にして言う。
「初春や白井さんが危ない目にあっているのに、黙ってじ
っとしてるなんて私にはできないんです。わかってます。
私が行ったってなにもできないことくらい。私が一番わか
ってるんです。でも…」
「わかった。一緒に行こう。」
「え?いいんですか?」
戒人は頷きながら、
「初春や白井を守りたいって気持ちは俺も一緒だ。まして
や、付き合いの長い佐天なら尚更だろ。それに現場ではケ
ータイなんかはつかえない。人手は多いに越したことはな
いからな。ついてくるからにはしっかりと働いてもらう
ぜ。」
「は、ハイ!」
佐天は笑顔で大きく返事をした。
「これ!お釣り、いらないから!」
「ちょ、お客さんこれじゃ足りないよ!」
「足りない分は私が払いますから。不破さん!待ってくだ
さいよー!」
タクシーに乗って現場近くまで来た2人は、ケータイの画面を見る。やはり通信妨害をされている様で、繋がる気配はない。
「じゃあ、私はここから1番近い警備員の詰所まで、」
ドォォォォォンッ!!
「‼︎」
耳を切り裂くような爆裂音が響き渡る。見ると、ビル群の方から煙が上がっていた。
「やっぱり何かトラブルが起きてやがったのか⁉︎」
戒人はチッ、と短く舌打ちをして、煙の上がった方へと走る。佐天もその後を追うようにして、全速力で駆け出した。
ビル群は酷い有り様だった。窓ガラスが全て割れてしまっているものもあれば、壁が焼け焦げてしまっているものもある。その中を進んでいくと、プスプスと煙を上げている鉄の塊があり、その周りには、
「ひっ…⁉︎」
血の海が広がっていた。佐天はその光景に息を呑み、しばらく息をするのを忘れていた。美琴たちと共に様々な事件を解決してきた佐天でも、こんな光景は初めてだった。吐き気を催すどころか、気絶しそうになる。
「大丈夫か?佐天!」
戒人が佐天の身体をささえる。
「え、えぇ。なんとか…」
突然佐天がはっ、として、
「まさか初春たちもこれに巻き込まれて…⁉︎」
戒人は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
「そんな…まさか。」
と、その時、
「白井さん!逃げてください!」
半壊しているビルの向こう側から声がした。
「初春の声!」
佐天はよろめきながら体制を立て直し、声のした方へ走り出す。それに続いて戒人も額の汗を拭い、佐天の後を追った。そこには煤だらけでボロボロになってうずくまっている黒子と、その近くに座り込んで黒子に何か言っている茶髪の女がいた。女は話すのを終えると、立ち上がり、左手を振り上げる。その左手は青白い光で包まれていた。もう一度女の口元が動く。その声は聞き取れなかったが、戒人には見えた。その女の口が。
シ ネ
戒人の頭の中で何かがブチ切れるような音が聞こえる。
「ゥラァァァァァァァ!」
頭で何か考えるよりも先に身体が動いた。一歩目を大股で踏み込む。そのまま女との距離を詰めるために二歩目、三歩目と続けていく。女が黒子に向かって左手を振り下ろすのが見えた。間に合え。間に合え、間に合え!届け、届け、届け…
「届きやがれぇぇぇぇぇぇ!」
ゴッパァァァ!
右の拳に痺れるような感覚。それと同時に伝わる柔らかな人間の肉の感触。戒人が突き出した右手は女の左頬にめり込んだ。
(一体何が…?)
サンガは何が起こっているのか理解できなかった。自分の身体は、なんだ。空中を舞っているのか?ツインテールの少女を殺そうとした瞬間、左側から何かがやってきた。そこまではわかっている。しかし、その次からは何が何だかわからない。何故自分の身体が回転しながら浮いているのか、何故自分の身体が地面に叩きつけられたのか。
気絶とは、大脳皮質全体、あるいは脳幹の一部の血流が瞬間的に遮断されることで起きる。つまり、全身の痛覚を消していようと、患部に強い刺激を受ければ、誰でも気絶してしまう。サンガは黒子との戦闘で、右手の甲、両足の太ももとつま先を鉄矢によって負傷していた。大量の失血が、戒人の攻撃への反応を遅らせ、そして戒人の一撃が、サンガを気絶させたのだった。
ビル群の中央付近。高校生くらいの男が頭を抱えて、唸っていた。
「そんな…馬鹿な話があるかよ。」
この男は、レッドサラマンダーと抗争を起こした、もうひとつのスキルアウトのチームである、リヴァイアサンのメンバーの流石木 圭人(さすがき けいと)。レッドサラマンダーとリヴァイアサンは、元々は駒場 利徳が束ねていたスキルアウト達だった。だが、駒場が消え、それぞれに違った価値観から、幾つかのチームに分かれていった。リヴァイアサンは無能力者の能力者との共存を目指し、警備員や、風紀委員の情報屋的な活動をしていた。レッドサラマンダーの目的は無能力者の安全。だが、そのためにレッドサラマンダーのリーダーである矢坂 大輝は、能力者狩りを始めた。そしてあろうことか、殺人にまで手を染めるようになってしまったのだ。これを止めるためにリヴァイアサンは、圭人をはじめとする、百数十人のメンバーをビル群に送り込み、レッドサラマンダーの沈静に動き出した。しかし、相手は能力者と手を組み、リヴァイアサンを迎え撃つ。能力者の反撃をまともに受けたリヴァイアサンのメンバー達は、まともに動けるのが、後十数人といった、壊滅的な状況であった。圭人は金色に染まった頭をかきむしった。
「チッキショウ!あいつらいつの間に能力者なんかと…そ
れにしても俺たちに対する反応が早すぎる。まさか情報が
漏れてやがったのか?」
ビルとビルの間から、この辺りで一番細長いビルの屋上を見上げる。そこには牛乳を入れるようなタンクを背中に背負い、銃器を持った長髪の男。口元には大きなスカーフが巻かれている。
「おらおらぁー!隠れてないで出て来いよー!おらおらぁ
ー!」
その男の持った銃から弾丸。ではない何かが発射される。水だ。銃から放たれた水はビーム光線のように真っ直ぐと伸び、ビルの壁を貫く。そして男が円を描くように銃を振り回すと、壁が円形にくり抜かれた。
(ヤバい。このまま隠れててもいつかやられちまう。どう
すりゃいい…)
圭人は考える。考える、考える。そして思いつく。この状況をひっくり返せる策を。
「無能力者舐めんじゃねぇぞ。このクソ野郎!」
圭人はビルの間から飛び出した。
いかがだったでしょうか?変えたところがわかりにくいかったかもしれませんが、今回は同じ単語を何回か並べて、その人物の行動を伝えようとしてみました。ですが、あまりうまくいっていないかもしれません。変な書き方でわかりにくかったら、申し訳ありません。今後、改善していきたいと思います。次の話からはリヴァイアサンのメンバーの流石木 圭人が活躍します。戒人の多重能力が覚醒するのはもう少し先です。また明日も、読んでくださるとうれしいです。読んでいただき、ありがとうございました。