前作を読んでくださっていた方々長らくお待たせしました。
ロード・トゥ・ドラゴンで、過去のイベントクエストがリメイクされ再配信されたために、こちらの作品も、こうしてリメイクさせていただきました。
前回よりも読みやすくなるよう努力したいと思います。
プロローグ
ゆっくりと目を開けると、そこは白い……ただ白いだけの景色が広がる場所だった。
少年は、辺りをゆっくりと見回して、ここが少なくとも、自分が知らない場所であることを、たっぷりと時間をかけて理解してから、目を開けたときから目の前にいる、姿形の曖昧な「ソレ」に問う。
「ここはどこだ?」
と。
すると、その曖昧なソレは苦笑するかのようにクスリと笑う。
いや、正確には笑ったように感じただけである。
なぜなら、ソレは輪郭もはっきりしなければ、色も形もよくわからない。当然顔だって見えはしない。
人間なのか、そもそも人型なのかすら怪しいところだ。
『こういう時って、普通はまず、「お前は誰だ?」と聞くものだと僕は思っていたんだけどなぁ……まあ良いか』
どうやら人語を理解することは出来るらしい。
「仕方ないなぁ……じゃあアンタが誰かも重ねて聞いておくよ」
『そんなついでにって感じで聞かれるとは思ってなかったぜ』
ソレは呆れたような口調でそう言った後に急に真面目な雰囲気でこう続けた。
『ここは、この僕アドレナクが管理する世界だ。そうだね、君にとっては……取りあえず、死後の世界と認識しておいてくれると説明が楽になるのでありがたい』
死後?
少年はアドレナクの言葉に内心で首を傾げる。
記憶を辿ってみると、最新の物は夜になったので眠ったという記憶である。
まさかそのまま永眠(ねむって)ってしまったのだろうか?
『その通りだ』
「いや、その通りだ。じゃないからネ?」
堂々と頷くアドレナクに少年は思わずツッコミを入れた。
というよりも、いきなりお前は死んだとか言われて納得などできるはずもない。
それからふと思う。寝ただけで死ぬなど有り得ない。死んだ理由は別にあるのだろうと。
そう考えたタイミングを見計らったかのように、アドレナクが詫びを入れた。
『正確には死んだのではなく、僕の手違いで殺してしまった。本当に申し訳ないと思っている』
うん、コレで別に反省はしてないとか言われたらガチで切れてる自信がある。むしろ斬っちゃうレベル。
それにしても、手違いとはどういうことなのだろうか?
それに俺を殺したのは自分だとアドレナクは言ったが、それについてもどういうことなのかさっぱりわからない。と少年は考える。
『まず、色々と疑問が有るだろうから順を追って説明していく。この僕、アドレナク……ああ、一応これは愛称なのだけれどね?とにかく僕は、これでも一応神をやっている』
「フーン……神様ねぇ…こう言っちゃアレだけどさ、俺の中では神様って完璧なイメージがあるんだけどねぇ?その……なんて言うの?手違い?みたいなミスをするものなのかい?」
その少年の問いにアドレナクは、さもありなんと頷く。
『まあ、確かに、物凄く優秀で完璧に近いけれど、やはり絶対では無いかな。君の世界にも神話という物はあったと思うけれど……ほら、彼らは一人一人では無く神々という括りで初めて完璧にして絶対になると思うんだ』
まあ、言われて見ると多神教の神というのは完璧では無いかもしれない、と少年はアドレナクの言葉に納得した。
「まあ、それについてはわかったよ。それで?手違いでアンタが俺を殺したというのは?」
『神が死んだ人間をどうするか君は知っているかい?』
知るわけがない。
『それもそうだ。死んだ人間の肉体は、放って置いても腐っていく。君の住んでいた日本なら火葬という形で燃やされ骨だけになる。その点、つまり肉体においては僕ら神は干渉する必要はない。ただし《魂》はそうではない』
魂。
そう言われても、少年は魂など見たことが無いからピンとこない。
『魂というのは、確かに目には見えないものだ。だが、それそのものは人間に限らず、僕ら神にもある。ときには命のない、物、にだって宿ることがある。魂を使えば量にもよるけれど何だって引き起こす事が出来る。それこそ、世界を作ることすらね』
なんだかスケールのデカい話になってきたなぁと、少年は呑気に思った。
『人間にだって微量ながら当然魂は有る。死んだ人間の魂は、本来なら肉体を離脱し、意識だけとなって世界を漂う。言い換えれば、魂が有れば肉体など無くとも《存在》そのものを保つことが出来るのさ』
「すげぇな魂」
少年がそう素直に感想を言うと、アドレナクはウムウムと頷いてから続ける。
『世界を漂う魂は即ち、操る者がない力の集まりだ。そんな物が世界に満ちて飽和状態になると、内側から世界を破裂させる原因にもなる。ああ、この言い方は比喩だよ?何も世界が本当に風船みたいに破裂するわけでは無い』
話を聞きながら、今自分はとんでもない不思議体験をしているんだよなぁと、少年は考える。
『僕ら神の役割は、そうした世界に漂う魂を砕き、新しい魂を練り上げるための輪廻に戻すこと、ついでに言うと、魂が循環するための世界を作ることも役割だ。君の居た世界以外にも、様々な神が作った様々な世界がある。そういう世界の集まりを《世界群》と呼び、それら世界群をまとめる、中心となる世界を《統括世界》と呼ぶ。それが、今僕と君しか居ないこの白い世界だよ』
なるほど、その世界の神をしているということは、さしずめ、アドレナクは神々の王といったところか。
『うん、一応僕は統括神と呼ばれている。さて、少し逸れた話を戻すとしよう。先程、僕ら神の役割の中に、漂う魂を砕き輪廻に戻すとこをあげたけれどね、手違いというのは他でもない、僕が生きているはずの君の魂を砕いてしまったということなんだ。本当に申し訳ない』
ふぅん。と少年は先程からのアドレナクの話を思い返しゆっくり理解していく。と、そこで一個引っかかることがあった。
「さっき、魂が有れば、肉体が無くても存在そのものは保てるって言ったよな?魂が無い場合どうなるんだ?」
『本来ならば存在そのものを保てなくなり、記憶や人格は完全に消滅する……ハズだ』
本来…ハズだ…。これらの表現から、暗にお前はそうではなかったと言っているのだと少年は理解した。
「成る程、俺が死んだ経緯についてはわかったよ。それでいながらこうして記憶も人格も残っている現状も。で?なんで俺はここにいる?いや、アンタが俺をここに連れてきたんだろう?その理由は?」
そう、魂を砕いてしまって、その対象が死んでしまったから何だというのだ?相手は神で、少年は唯の人間なのである。
そんな天と地、そもそも同じ物差しで測ることすら間違っている程の、遥か上位の存在が、自分に詫びを入れるためだけにここに呼んだとは考えにくい。
ほう、と感心したようにアドレナクは声をあげた。
『君が人間として存在しているは何かの間違いなのでは無いかとつくづく思うね。その通り、本来なら知らんぷりでも良かったのだが、君が生き返る見込みが有るというのと、魂を砕かれてなおしぶとく存在し続けている事を見込んで、少々取引を持ち掛けようと思ったのさ』
「取り引き?」
どういうことだと、少年は首を傾げつつ、目の前の神にその真意を問う。
『ウム、先程生き返る見込みがあると言ったろう?ただ結構時間が掛かるのさ、なんせ君の魂はこなごなのグチャグチャだからね?ハッハッハッ!』
いや、笑ってるけど砕いたのはお前だろう?と、少年はジロリと神をジト目で睨む。
その視線をサラッと流しながらアドレナクは続けた。
『そこで、その間別の世界に行っていろいろやってもらいたいことが有るのさ。もちろん、行く世界に応じて君には特典を付けよう。此方の都合で行ってもらうのだ、万が一にも死なれては……いや、もう死んでんのか』
いや、だからね?殺したのあなたね?
コイツ本当に申し訳ないと思っているのか怪しいものだなと少年は思いながらも、アドレナクの話を聞いて思う。
少なくとも、別の世界に行くとかいうのは面白そうだなぁと。
口振りから何も行く世界は一つだけということでは無いみたいだが。
『どうかな?君にとって悪い話では無いと思うんだ?むしろラッキー!』
死んだのをラッキーとは言えないと思うのだが…。というかコイツ確実に反省なんかしてないなと少年は判断する。
しかし、この提案に魅力を感じるのは確かなのだ。
少年はしばらく顎に手をやり考えた後に。
「わかった、その提案に乗ろう。どっちにしろ、生き返るのに時間がかかるならその間暇になるんだろうしな」
『ウム、その答えが聞けて嬉しいよ。それじゃあ早速、君がコレから行く世界について説明しよう。その世界は……』
世界に名前とかあるのだろうか?と少年は考える。
『ロード・トゥ・ドラゴン。「ロードラ」の世界だ!』
ロード・トゥ・ドラゴン。少年が今現在(死んでしまったから生前)やっていたスマホゲームである。
『君にはその世界に赴いて、その世界の神を倒してきてもらおう』
ん?
神を倒す?
それって当然武力で?しかしながら自分は人間、ロードラの世界に登場する神は結構居るが、それらに自分が挑んで勝てるとは思えない。と少年は初っ端から無茶な注文をされたものだと渋い顔をした。
『心配は要らないよ、そのために特典を与えるのだ。取りあえず3つくらいで行ってみようか?どんな物がほしい?』
「え?それって俺が決めて良いのかよ?」
てっきり適当に選ばれると思っていた。
『問題ないよ、もっとも全部というわけではない。3つ目の特典は行く先の世界に関係のある物にしたいと思っている』
成る程、つまり事実上二つは自分で決めて良いのかと少年は考え始める。
さて、どんな特典がいいだろうか?特典と言うからには、何も道具などで無くても良い。とんでもない超能力を要求しても良いのでは無いだろうかと少年は考える。
ロードラの世界は、登場するキャラのほとんどが固有の能力を持っている。
主にアクティブスキルと言われる、ソウルを使うものや、パネルスキルなんて言う物もあった。
3つ目の特典が、行く先の世界に関係ある物だとすると、3つ目の特典というのが自分専用のスキルである可能性は高いと少年は判断する。
スキルについては心配する必要が無いのならば、あとは何が必要か?ロードラというゲームにおいて必要なのが、ステータス、つまり身体能力だろう。
そう考え、少年は一つ目の特典を決定した。
「じゃあ一つ目は、神と戦える程度の身体能力が欲しい。いや、鍛えたら神と戦える肉体の方がいいかな?」
万が一この特典の能力が使えなくなっりしたら、困りものである。
ならば特典そのものを強力な肉体にしておいた方がいいだろう。
『ふむ、元々君の肉体は君が元居た世界に置きっぱなしだ、故にその肉体は僕が形状を再現し作った』
「アレ?置きっぱなしなの!?」
今動かしてるこの体は少年が16年間お世話になったものでは無いらしい。
『うん、置きっぱだね回収とかメンドイし。まあ、そういうわけだから君の肉体はある程度のスペックがあるよ。だから身体能力を強化する特典を与えておこう』
元々の身体能力が分からないが……まあ、少なくともこの神がある程度というのと、自分が考えるある程度は次元が違うだろうと勝手に判断した。
さて、そうするとスペックは問題ないみたいだ。
後は何が必要か……そう考えて、すぐに思い当たる物があった。ロードラのキャラが一部を除いて全員所持しているもの……武器である。
剣、槍、弓、杖。ロードラにおいてはこの4つの武器種が存在する。
もっとも、中には弓キャラでも銃を持っていたり、剣キャラでも斧を持っていたり、槍キャラなのに拳だったりするキャラも居るのだが。
「それじゃあ二つ目はイメージした武器を製造できる能力がいいかな」
少年の言葉を聞いたアドレナクはふぅむと首を傾げた。
『うーん、確かにそれでも全然強いけど……なにもアレだぜ?ロードラの世界基準で考える必要は無いんだぜ?むしろもっとチートな能力とかでも全然構わないんだよ?』
少年の求める特典は、なんというかちょっと現実的なのである。いや、イメージした武器を作る能力が弱いとは言わないのだが、ロードラの世界にはそれよりも強いスキルなんていくらでもある。
というか、この子は確かオンラインRPGなどでも魔法職よりも物理職を選ぶタイプだったなと、アドレナクは目の前でウームと考える少年を見ながら思った。
考えても思いつかないようである。
仕方がないのでアドレナクはこちらで提示したものでいいか確認を取ることにした。
『じゃあこんなのはどうだい?自分の影や、光の当たらない闇から、性質や形状を意のままに操れるダークマターを作製する特典。とか』
コレなら、ダークマターを炎に変えたりして魔法のように使うことも可能だろう。しかも武器限定とは違ってなかなか、汎用性に富んだ使い道がある。
なにも神と戦いに行ってもらうからといって、それが戦闘にしか使えない特典である必要は無いだろう?とアドレナクが説明すると、少年はそれに同意した。
『最後に僕が与える特典は、ロードラの世界で取得できる、PS(パーティースキル)・AS(アクティブスキル)・PnS(パネルスキル)LS(リミットスキル)を全て習得できるようになる特典だ。ただし最初から使えるわけではなく、修得するのにはスキルごとに条件が有るから注意するように。条件については修得したいスキルを思い浮かべれば修得方法が分かるはずだ』
「なんかとんでもないなその特典」
『まあ、神と戦って来てもらうんだから特別サービスだよ』
面白そうだと、少年は楽しげな笑みを浮かべた。
どこまでも純粋に、それはコレから行くロードラの世界への期待が込められているようにアドレナクには見て取れた。
おそらく、この少年ならロードラの世界でもしぶとく生き残って、精一杯ロードラという世界を楽しむだろう。
少年としても、せっかくゲームの世界に自分が行けるのだから端っからそうするつもりである。
既に死んでいるのだから、思い切り楽しまなければ損というものだ。しかも自分がこれから行くのは、先は予想出来れど、少し異なる世界。本来の物語に、自分という《異物》が混ざる事で、どういう方向に変わっていくのかにも、かなり興味がある。
『ああ、目的はちゃんと果たしてもらうけど、それさえ出来れば向こうでどんな生き方をしても構わないからね?まあ、楽しんでくるといいよ』
「そうするよ」
『おっと、そういえば君に仲間を付けておくよ、仲良くするといい。向こうについたらソイツも居るはずだから』
「わかった」
そう言いつつも、少年は首を傾げる。ロードラのキャラの誰かなのだろうか?
どのくらいでこちらに戻ることになるか分からないが、まあアドレナクの言う通り楽しむとしよう。
『それじゃあ、行ってらっしゃい』
そう言ったアドレナクが、少年に向かって手を翳すと、少年の体を白い炎のような何かが包み、少年の視界を暗転させた。
あの白い世界でそうしたように、少年がゆっくりと目をあけると、そこはどこかの山の上のようであった。
木が鬱蒼と生え、見渡す限りの山々がな薄暗い緑で覆われている光景は、しかし、少年が日本で見たことのある景色とは違うように感じられる。
「マジでロードラの世界に来たのかよ……」
いきなりお前は死んだと告げられ、それから異世界に行ってもらうと言われ、事があまりにもテンポよく進んで実感が沸かないのだが、今少年がある見る景色は紛れもない本物だ。
さっそく、2番目の特典を使い、自身の影から手鏡を出して、自分の格好を見てみると、黒いコートに黒いズボン。まさしく黒ずくめといった服装である。ちょうどダーカーザン○ラックの、黒みたいな感じである。自分はこんな服持っていないのだが、それ以外、生前から不思議だった赤みがかった黒目や、目に掛かるか、掛からないか程度に延ばしている髪はそのままだった。
「うん、確かに元々の肉体じゃ無いけど完全に俺の姿だな。いや、目が赤く明るすぎだけど、まあこれぐらいなら良いか」
姿を確認してから、少年は周りを見回した。
アドレナクが言っていた仲間を探しているのである。
『こっちだ……上……あーもうちょっと右だ』
急に声が掛かったのでビビりながらも回りを見る。
居た。
声の主は紫色の光球に淡い紫の炎が灯ったような外見をしている。
ロードラにこんなキャラは居なかったはずだ。
そう思っているとそいつが再び、声を出す。
『オレの名前はベリタス。確かどこかの国の言葉で真理って意味らしい。よろしくな相棒』
随分変わった外見の相棒だと苦笑しながらも少年はよろしくと返す。
『ちなみにオレは魂だけの存在だ。戦闘ではあまりサポート出来ないが……まあ一応役にはたってみせるぜ』
「ハハッ。戦闘は俺がやるから心配するな。お誂え向きの特典を貰ってるからな」
ベリタスの軽口に、少年も楽しげに笑みを浮かべ返す。
「そういえば、まだ俺の名前を教えてなかったな」
少年がそう言うと、ベリタスは、ああ、教えてくれ、と言った。
さて、なんて名乗ろうかと少年は考える。ゲームなどに、自分の本名を入れる人も居るが、少年はそうではない。
ロードラでもそうである。
少年はしばらく考えて、自分がロードラのユーザー名として使っていた名前(ほかのゲームでも使っている)を名乗ることにした。
「俺は神無討也(かみなしとうや)だ。よろしく相棒」
火の時代の始まり、こうして、少年、神無討也の物語の幕が上がったのだった。
今回は結構文量多くなってしました(^-^;
最後に火の時代なんて書いてありますが、次の話はいきなりグルトイベまで飛ばそうと思います。
各時代の話についてはまた書き溜めてから更新していきますm(._.)m
感想、意見、誤字などありましたらご指摘下さい。
作者のやる気が少し上がります。ナンチャッテ(・∀・)