ロードラー増えるといいな~
side討也
「そういえば、お兄さんはどうしてここにきたの?」
一通り暖まって満足したのか、暖炉の前から放れ、変わりにそこにずぶ濡れになった自分の服を持って行きながら、グリムドアがそんなことを聞いてきた。
俺は、ずっと服を持って乾かすのは大変だろうからと、イスを一つグリムドアの方に押し出しながら、その質問に答えてやる。
「ええっとね、よくわからん奴にこの村の近くに飛ばされたんだよ」
うん、嘘は言ってない。
実際俺はアドレナクの事なんてほとんど何にも知らないし。
「ふぅん?」
なんか興味なさそうに答えながら、グリムドアはそのイスを暖炉から少し離れたところに配置し、そこに座って服を広げて持った。
そのイス、君が座るためじゃあなくて服を掛けておくために渡したんだけど……。
なんて思いながら、まあ疲れたら自分で考えてどうにかするだろう、と考え何も言わないでおくことにした。
と、グリムドアが広げて持っていた服をなんとなしに眺めていた俺は、急に場が沈黙したために、ちらりとグリムドアを見る。
彼女の視線はこちらに向いている。
じーっと視線を向けられて、少し居心地が悪いのだが、何故彼女がこちらをじーっと見てくるかわからなかったため、俺は気まずげに視線をベリタスの方へ逸らした。
と、どうやら俺が視線をそらした先にいたベリタスは、それを「お前、説明しろよ」という意図にとったらしい。
『ああ、討也の言う通り、なんかよくわからん変な奴に、この近くに強制転送されたんだよ、で、ここまではオレが討也を案内してきた』
俺より具体的な説明をありがとう。けどアドレナクの事、変な奴呼ばわりして祟られたりしないでね?あの神の言葉通りならあいつは祟り神じゃないとは思うけども。
ん?そうか、さっきの グリムドアさんの視線は「え?それで終わり?」って意味だったのか!?
コミュ力無くてスイマセン。
「……案内?べりたすってこのあたりに来たことあるの?」
なんか今のグリムちゃんベリタスの発音怪しかった。
『いや、独特の……人間に似た別物の気配を感じたんものでね~チラッ』
アイツ、今最後に「チラッ」とか言ったよね?
あ、もしかして俺がさっき、グリムドアにフェンリスの事を説明した方が良いだろうとか言ったのを汲んでくれたのかな?
良い奴だなベリタス!
よし、それならベリタスが用意してくれた流れに乗ろうじゃないか。
「あー、多分その気配の原因はフェンリスだろうな」
グリムドアの視線が聞き慣れぬ言葉を発した俺に向き、コレで良いのか?とベリタスを見ると。紫色の光体は目立たないように空中を「OK」と見れる文字を書くように移動した。
「何?ふぇんりすって?」
この子初めて聞いた横文字は取りあえず平仮名変換しとく癖でもあるのかね?
「あれ?まだグリムドアは遭遇したことないか?あの赤い人狼に」
この発言で、暗に俺たちは会ったことがあることを伝えておく。
「お兄さん、あれにあったことあるの!?」
んんー?伝わってなかったよぉ?
「ああ、さっき……てほどでもないけど、今日ここに来た直後に戦ったよ?」
「戦った!?お兄さん武器も持ってないのにどうやって?」
あ。そういやさっきダークマター能力で作った武器は消しておいたんだった。
どうするか、能力の事を説明しておいた方がこれからの説明は楽になるかな?
チラリと説明しても大丈夫だろうか?と、ベリタスの方を見ると、ベリタスがゆらりと空中に文字を書くように動いた。
んーと……Z?いや、最後に跳ねてるから………乙!?いやいや乙ってどういう意味ですかベリタスさん!?
『コイツは自分の影を武器にできるんだよ』
と、おおざっぱな説明をしてくれた。
「んぇ?」
が、流石におおざっぱすぎてグリムドアはわからなかったようである。
仕方なく、俺はフェンリスと遭遇した時のことも含め、詳しく説明してやることにした。
「……ふぅーん……あの人狼フェンリスって言うんだ……」
なんか知らないけどグリムちゃん怖い。ま、そのフェンリスに自分の一族皆殺しにされてんだから当然か。
「ところで、なんで二人とも、あれの名前なんて知ってるの?」
言われてみれば、普通はコレ疑問に思うところだよなぁ……。
うーん、ヤバい。正直、それについての理由は特に考えてなかった。
何か案はあるか?と視線をベリタスに向けてみる。
『フェンリスってのがアイツ自身の名前かは知らねぇけどな……皆そう言ってるから俺たちもそう呼ぶことにしたんだ』
あの~ベリタスさん?その説明は流石に無理があるよね?だってそんな言い方したらさ…。
「皆?皆ってだれ?」
ほら、こうなるでしょ?
さて、どう言い訳するのやら……。
『この付近一帯の動物だよ』
……。はいダウト!
「ベリタスは動物と会話できるの?」
いやいや、グリムちゃん?なんか真面目に聞き返してるけどさ、よく考えて?そんなわけねぇじゃん?
『まぁ、そんなところだ』
嘘乙。俺知らねぇからな、そんな嘘あとでバレたりしても。
「まあ、そうは言っても事前情報もあったんだけどな…」
主に、というかほぼ全てロードラのキャラストーリーによるものだ。
俺たちがフェンリスもグリムドアも両方知ってるのはそのストーリーがあるおかげである。
と、俺は先程の言葉を呟く程度に言ったつもりだったのだが、グリムドアにもバッチリ聞かれていたようで、見ると彼女は俺をじーっと見つめたままキョトンと首を傾げていた。
「あ、さっき言った俺たちをこの近くに飛ばした奴が教えてくれたんだよ」
まあ、コレは嘘だけど。
どうせバレやしないだろう。
「ふぅん、それで二人はあの人狼の名前を知ってたんだ」
『や、俺らをここに飛ばした奴が教えてくれたのは、別に名前じゃねぇよ。それは俺の力で知ったんだしな』
ベリタス。お前まだ動物と話せますアピールすんのかよ。
「え?そいつは何を教えてくれたの?」
…………ベリタスって案外話術が巧みなのだろうか?
この流れならもう、フェンリスが《神月》の日には別人格と入れ替わる事を話してしまっても違和感は無いだろう。
ベリタスがだんまりなので、グリムドアは俺に視線を向けてきた。
「話しちゃう?」という意味を込めて魂だけの相棒を一瞥すると、ソイツは空中を「○」を書くように移動していた。
まあ、流れからして今しかないだろう。次にチャンスがあるか分からないし。
何よりあんまりテキトーなこと言ってると、バレたときが怖いし←コレが本音。
「簡単に言うとフェンリスってのは、肉体と魂の結びつきがうまく行かなかった……《人間としては失敗作》に、なるらしい。もちろん、フェンリスだけってわけじゃないらしい、他にも居るそうだ」
『俺もある意味そんなような物だしなここじゃあ……まあ、この失敗作に当たる奴らには、ある《弊害》が存在するのさ』
引き継いだベリタスの方が、俺が言おうとしていた事よりもわかりやすい言葉で話してくれた。
「弊害?それはあのフェンリスや……ベリタスにもあるの?」
ここに物がいるのためか、グリムは興味あり気にベリタスを観察する。
ところで俺の心の中でのグリムドアの呼び方が安定しない件について。
『ああ、オレの場合は魂が肉体と結び付かないで……魂だけになってしまったって感じか。弊害は……まあまず物に触れない事だな。言ってみれば生まれながらの幽霊さ』
ああ、それで壁ぬけが出来たのか、というか、そういうふうにアドレナクに作り出されたということだろう。
「フェンリスは……肉体の持ち主が安定しないって感じなのかねぇ」
『詳しくは分からないけど、多分それで当たらずとも遠からずだろうな。なんせ《神月》には人格が別の奴に入れ替わるんだからな』
「入れ替わる……」
グリムドアが、ベリタスの言葉を聞いて小さく呟いた。
それから、「そういえばあの日は《神月》…」なんて呟いている。
あえて、俺はそれを聞こえていないふりをしながら、グリムドアに言った。
「ま、あんなのがうろついてるんじゃあ夜は外に出ない方が良いだろうな」
『いや、お前そもそも外雨降ってるんだから、どーせ出ないつもりだったろ?』
「うん、濡れたくないし」
俺の言葉を聞いて盛大に溜め息をつくベリタスはひとまず置いておき、横で未だに何かを考えているグリムドアが気になって声をかけてみる。
「どうかしたのかい?グリムちゃん?」
あ、思わずグリムちゃんって呼んじゃった!?
が、幸いにもグリムドアはグリムちゃん呼びは気にもとめず、取り繕うように曖昧な笑みを浮かべた。
「ううん、何でもないよお兄さん」
「そうかい?……さて、それじゃあ飯でも食って寝ますかなぁ……ベリタス、雨が止んだら教えてくれ」
『わかった』
フワリと、ベリタスが一言だけ返してから壁ぬけをして外に出て行く。まあ、アイツは多分雨降ってるとか関係ないだろうしね。
と、そこで俺は少し気になった事をグリムドアに聞いてみた。
「そういえば、君はなんか食べるものあるのかい?」
というかこんな山奥にいて普段は何食って生きてんだろう?
「ええっと、今日は……無い。あ、僕のことは気にしないでッ」
本当にどうやって生活してるんだろうか?
内心で首を傾げつつも、バハムートンの肉が大量にあったので、グリムドアの分も一緒に焼くことにした俺だった。
「……随分小雨になったみたいだな」
『何だよ、人に止んだら知らせろって言ったくせに自分から様子見に来るとはな』
「様子見じゃあ無いさ」
そう良いながら、俺はすっかり乾いた黒いコートを羽織る。まあ、どうせまた濡れるんだろうけどさ。今度ダークマター能力で耐水のコート作ってみようかな。なんて真面目に思案しながら、ダークマター能力で、シンプルな片手両刃の剣を作る。
『ふぅん?まあ、狼さんの所までなら案内してやるぜ?』
なんだよ、コイツやっぱり良い奴じゃないか。
チラリと、いましがた出てきたばかりの家を見る。
バハムートンの肉を焼いて、グリムドアと二人で食べてから三時間。グリムドアが寝たのは確認したし、出てくるときもそっと物音を立てないようにしてきた。
「そういや、案内してくれるのはありがたいけど、なんでお前フェンリスの居場所がわかるんだよ?」
『ん?ああ、とりあえず話しながら行こうぜ』
そう促してフワフワと移動し出すベリタスについて行きながら、俺はもう一度だけ雨宿りに使った家を振り返る。
『一つは、オレがアドレナクから受け取ってる特典の力だ』
まあ、そうだろうとは思ってたけど……一つはって事は他にも理由があるのだろうか?
『ほら、お前生きてた世界で感じたことないか?「そこに誰かいる気がする」ってやつ。それが気配察知能力なわけなんだけどもな』
ああ、言われてみればそんなような感覚は確かにあるかもしれない。
『オレの場合の気配察知はそうじゃあない。はっきり言ってみれば、そこに何かが居るっていうのは明確に分かってるんだ。なんせオレは相手の《魂がそこにある》というのを感じ取ってるからな』
………あ、よくわかんなくなってきた。
『つまりまあ、レーダーの種類が違うんだよ。熱源で探知するのもあれば、識別で探知するのもあるだろう?オレは一人一人違う魂を探知してるから、その気配が誰の物なのかもわかるんだよ。ま、一度姿を見た奴限定だけどな』
ふぅん、つまりフェンリスの気配とグリムドアの気配はまた違うって事なのだろうか。
「それでさっきあの家に近づいてくるのがフェンリスじゃないって分かったのか」
『そういうこと、あの時はその近づいてくるのがグリムドアだって知らなかったけど、今ならちゃんと識別できるぜ』
ちょっと誇らしげに言うベリタスに俺は苦笑しながら、後をついて森の中へと入っていく。暗くて周りがよく見えにくい。
「明かりがあると向こうにバレるか?」
『まだ、大丈夫だと思うけど、目を慣らすためにも明かりは無い方が良いと思うぞ、特にコレからの事を考えるとな』
それもそうだ、とベリタスの的確な意見に納得する。
『なあ討也。お前フェンリスを倒すつもりか?』
フワフワと移動していたベリタスがピタリと静止し、真面目な口調でそう告げた。ベリタスには目なんて、そもそも体なんて無いはずなのに、しっかりとこちらを見据えている気がする。
それに対して、俺はひょいと肩を竦めていった。
「いやいや、時間稼ぎさ、今年の《神月》が終わるまでのね」
俺の目的は、単に入れ替わり前のフェンリスをグリムドアに合わせたいだけなのだ。
そこに交わす言葉が無くたっていい。ただ知っていて貰いたいという、単なる自己満足なのだ。
それから、自分で考えて、ふと気になった。
今年の《神月》が終わったら、フェンリスは元の人格に戻るのだろうか?ストーリー通りなら、グリムドアの純血を飲んだフェンリスの元の人格は消失したはずで……。
もしそうだとすると、俺がこれからやろうとしている事なんて、時間稼ぎにすらならないのではないだろうか?
『まあ、それなら良いんだ。はっきり言って今のお前じゃあフェンリスとはほぼ互角。それもお前の特典の事を加味してもだ。勝てる保証は無い』
それについては問題ない。ここに来た直後の戦いで、フェンリスが速いのは理解している。あの時はたまたま防御出来たが、今回は足場も悪ければ視界も悪い。
まともに攻撃を防ぎきることは出来ないだろう。
だから、被弾前提でこの三時間の間に《セイント・キュア》という回復スキルと、《アルティメット・ステップ》という、歩いたときにソウルを回収できるスキルを習得しておいた。《セイント・キュア》の方は使う度にソウルを消費するので、その分のソウルを回収するためだ。
これでちまちま回復しながら、朝まで時間を稼ぐしかない。うわーっ気が遠くなりそう☆
「ま、勝っちゃダメだしな。時間稼ぎが出来ればそれで良いのさ」
『お前、さっきグリムドアにフェンリスの事話したとき、あいつが思った反応とは違ったからとっさに今回の時間稼ぎ考えたろ?』
……そこまでバレてるとは。
その通りだ。俺としては、グリムドアなら「それが何だ?」程度に考えると思っていたのである。だって、そのフェンリスがどちらの人格であろうと、一族を殺されたグリムドアからしたら関係が無いはずだからだ。
けど、返ってきた反応はそうでは無かった。彼女があのとき、何を考えていたかなんて、俺には分からない。けれど、俺が彼女にフェンリスのことを話したせいで、彼女が引き金を引くことを迷い、その結果勝敗が変わる……彼女が負けることになったとしたら。それはなんというか寝覚めが悪いし、気分も悪い。
二人のストーリーをみる限り、最後にフェンリスを撃ち殺し勝利するのはグリムドアである。それは本来、俺がここに居なければ絶対に変わらないはずの出来事だ。それが俺が来てしまったせいで、その行動のせいで結末が変えられてしまうのは、なんというか嫌だったのだ。
まあ、そもそもあの話を聞いたってグリムドアが、躊躇うことなくフェンリスを倒す可能性もあるわけなのだけれども。
『良いことを教えてやるよ討也。二回目だそうだ』
……何が?
『グリムドアがフェンリスに会った回数だよ』
「は?いつ聞いたんだよ?そんな事」
少なくとも、俺が覚えてる範囲で、コイツがグリムドアにそんな質問をしたことは無かったはずである。
『アイツが着替える時お前外に出てたろ?その時さ「この近くに居る赤い人狼のことを知ってるか?」ってな』
お前着替えてるのに普通にその場に居たのかよ。
「それで?」
『一応、オレは人から聞いたってごまかしてグリムドアに聞いたら、ソイツとは因縁があって、今日ソイツを見つけたので2回目だそうだ。俺たちの所にフェンリスが走ってきたのは、突然発砲されたフェンリスがとりあえず撤退したからみたいだぜ』
なるほど、なぜ今まで黙っていやがったコイツ。
『グリムドアにフェンリスのことを話す前にこのことを教えてたら…お前はどうした?』
どうした?どうしたって言われても…。
「さあ、どうしたんだろうねぇ」
『ほうって置いたんじゃあないのか?』
Sideother
そのベリタスの言葉に、討也はその場で立ち止まった。
『グリムドアの反応が思ったのと違った……たったそれだけで、もしかしたらいざという時にグリムドアが躊躇う事無く撃てなくなるかもしれないから、そんな理由で時間稼ぎなんて思いつくくらいだ。それこそ、話す前の時点で二人の遭遇がまだ二回だったって知っていたら…』
お前グリムドアにフェンリスの事を教えたりしなかっただろ?
ベリタスにそう言われ、討也は考えてみる。
もし、その事を知っていたら…。
「……確かにそうかもな」
自分の一族を滅ぼした人狼が、実は何らかの欠陥がある奴で、その事が原因で自分の一族が滅ぼされたんだと知ったなら…生き残ったグリムドアは何を考えるだろうか?そういうことを考えたら、グリムドアにフェンリスの事を話すべきでは無いのだ。
いや。
無かったのだ。と言うべきだろう。
何故なら、グリムドアは既にフェンリスの事を知っている。
『時間稼ぎがうまくいって……フェンリスが元の人格に戻ったら、その状態のフェンリスをグリムドアにあわせてやろうぜ?』
「……確かに、それが良いかもな」
けど、それで良いのだろうか?と討也は考える。入れ替わり前のフェンリスとグリムドアを会わせたとして、その結果がどうなったとしても、それは本来ならあり得ないはずの展開なのではないか?
『そんな事気にする必要はねぇだろ?』
気にする必要はあるんじゃあ無いだろうか?
『お前…一応オレもだけどよ、オレ達は外…異世界から来た《転生者》だろ?つまり、本来ならこの世界には居ないはずの存在だ。いないはずなんだから、いるだけで、どんなに些細な物だったとしても、必ず本来のこの世界とは異なる歪みが生じる。それをいちいち気にしてたら何にも出来ねぇだろうが』
「そういうもんかねぇ…」
『そういうもんだよ、いわばこの世界は、物語で言えば読者参加型の、その上原作介入まで許されてる状態ってわけだ。ちょっとくらいお前が望む展開にねじ曲げたって良いんだ』
「……それすげぇ暴論だぜ?」
『そうでもないだろ?まあお前が原作通りの世界をギャラリーとして眺めてたいって言うなら、話は別だけどな?』
せっかくロードラの世界に来てるのに、それはなんか勿体ないと討也は思う。
『だったらバンバン関わっていけばいい。今回だってそう。グリムドアにフェンリスの事を知っておいて欲しいって、そう思ったんならそれで良いのさ』
なるほど……まあそれでも暴論だと思うが、と討也はベリタスの物言いに苦笑しながら、それも一つの考え方かもしれないと納得する。
それにしても、自分があまりこの世界で起きることに介入しようとしないことを、コイツはどうして分かったんだろう?と内心で首を傾げつつも、討也はベリタスに問う。
「《神月》が終わるまで後どのくらいだ?」
『さぁ……そもそも神月が一日なのか、それとも数日なのかもはっきりしねぇからなぁ、とりあえず、今出てる七つの月が沈むまでは後三時間だ』
確か《神月》というのは、七つの月が全て浮かんでいる時のことを言うはずだ。
ならば、七つの月が沈めば、《神月》が終わる可能性は高いのだ。
「それじゃあ、後三時間。頑張って時間を稼ぐとしますかね」
討也はそう言いながら、先程作り出していたダークマター製の片手両刃剣を肩に担いだ。
『気持ちが固まったところで早速良いお知らせだ。フェンリスがこっちに向かってきてるZE!気をつけろ』
それのどこが良いお知らせだよ。と思いつつ、ジト目でベリタスをタップリ数秒は睨んでから、討也は諦めたようにため息をついて、辺りを探るように意識を向けた。
sideグリムドア
お兄さん、確か《討也》が何故か持っていたバハムートンのお肉を焼いて食べ、それからしばらくして、僕もお兄さんも眠ることにした。
あ、一緒に寝るわけじゃないよ?
雨宿りに使ったこの家は、都合の良いことに二階があった。
お兄さんが自分は一階で寝ると言ったので、僕は二階に上がり、結構古びているけどベットが有るのを見つけてそれにくるまって眠りについたのだ。
それから、しばらくたって押し殺したような気配を感じて僕は目を覚ました。
ここで慌てて起き上がったりはしない。
感覚を研ぎ澄まして、薄目を開けて周囲の様子を確認する。
部屋の入り口から、お兄さんがそうっとこちらを伺っていた。
「うん、寝てるみたいだな」
小声で、確認するようにお兄さんが呟いたのを僕は聞いた。
僕が寝てるとなんなのかな?何をするつもりなのかな?寝込みを襲うとか?させないよ?
なんて考えながら、そっと機械銃に手を掛けていたら、お兄さんは普通に階段を降りて行ってしまう。
何しに来たんだろう?お兄さんって結局正体が分からないんだよね。こんな人の来ない山奥に来る旅人なんて普通居ないだろうし。
かと言って、こんな人の来ない場所には盗賊とかだって来るとは思えない。
ベットに横になったまま、お兄さんの人物像について考えていると、この家の扉が開けられる音が聞こえてきた。
もしお兄さんが盗賊なら、一人ということは無いはずだ。確実に仲間がいる。その仲間を呼んだのか、或いは…。
ベットからそっと這い出して、窓から外を覗いてみると、お兄さんが外に出て、真っ黒なコートを羽織るところだった。
散歩?
なわけないか。
ベリタスという魂だけの変な奴が何かを話すようにユラユラ揺れている。
一言二言、言葉を交わした二人は、片方はフワリと人の頭の高さまで浮かび上がり、もう片方は自分の足元の地面に手をついた。
何してんの、アレ?部屋の中には、月明かりが入って来ていて、もしかすると外からこちらの様子が見えるかもしれない。
おまけに、ベリタスはどこを見ているか全くわからない。
だから、僕はそっと窓の端に移動して、そこから二人の様子をじーっと見守った。
お兄さんが、少ししてからゆっくりと手を地面から離す。
が、離す間に、その手は何かを握るかのように力が込められた。
「あ!」
思い出した。確かお兄さんは影を材料にいろいろな物を作れるのだ。つまり、今まさにお兄さんは何かを作り出したところなのだ。
にしても、一体何を作ったんだろう。
僕の視線はお兄さんの手元に釘付けになる。
そして、月明かりがお兄さんが握る物を照らし出した時、僕はその場に立ち尽くした。
剣?
なんでそんな物を?
考えてる間に、二人はその場から動き出した。
途中、一度だけお兄さんがこちらを振り返ったが、すぐに先をいくベリタスの後に続く。
二人が向かうその先にあるのは、鬱蒼と茂る暗い森だけ……。
……?
森?剣?
「……まさか…」
フェンリスと戦うつもりだあの人。
でもいったい何で?あの人達はフェンリスとどんな関係があるの?
わからない。僕はお兄さんのことを何も知らない。
もしかすると、僕と同じように、フェンリスに家族を殺されたのかもしれない。
わからない。
わからないけど……。
お兄さんから、フェンリスの話を聞いたとき、僕はこれからどうすればいいかわからなくなった。
一族を殺された恨みが、怨みが、消えたわけでは決してない。けど、少なくとも心無い化け物では無いことはわかったのだ。
いざ実際に戦うとなって躊躇い無く戦えるかはわからない。もしかしたら、撃てないかもしれない。
もし、お兄さんがそんな僕の考えを読み取ったなら。
あの、何か、自分とは違う物を写しているように感じる赤い目が僕のそんな気持ちを見透かしていたなら?
「行かなくちゃ」
機械銃を手に取る。
僕の武器。
ベリタスは多分戦う力は無い。つまりフェンリスと戦うのはお兄さん一人ってことになる。
もしかしたら、お兄さん一人じゃあフェンリスには勝てないかもしれない。
僕がいたら勝てるのかもわからない。
けど。
もし、あのお兄さんがフェンリスに殺されないようにするためになら…。
そのために引く引き金ならば。きっと迷わずにすむ。
二人はどこまで行ったのだろうか?そんなことを考えながら、僕は家から冷たい風の吹く外へと出た。
そして、確かに聞いた。
獣の咆哮。
金属同士が互いを叩き合う音。
人気の無い廃村に、命を削りあう音がするのを。
「あっちだ!」
目の前で、誰かが死んでいくのを何も出来ずに見ているなんて、そんなのは嫌だ。
僕は、恨みではなく、憎しみではなく、あの日守ることの出来なかった《命》の《続き》をするために、真っ黒な夜道を駆け出した。
to be continued・・・
グリムドア視点結構無理矢理だな~(^-^;
リメイク前の方読んだ事のある方は全然違うじゃん。と思うかも知れませんがそこは見逃してくださいm(._.)m
感想などよろしくお願いします!