聖ジャスミン学園物語―女子と共に甲子園へ― 作:パワプロ大好き男
高城先輩方は涙を流すばかりで、一言も俺達に話すことはなかった。
涼しい秋を迎え、新体制が始まろうとしているなか、新キャプテンを決めることになった。
果たして誰が新キャプテンになるのだろうか?
夏の大会が終わり、俺達はバスに乗り込んだ。
俺も含め、選手全員泣いた。
先輩達にとってみれば最後の大会だから尚更悔しかっただろう。
俺に至っては途中からマウンドに上がり、9回で逆転を許してしまったわけだから、凄く悔しかった。
去年は頭部にデッドボールをしてしまい、イップスに悩んでいたが、高城先輩のお陰で克服し、この試合も含めてインコースに投げることが出来たのだ。
それなのに負けたから、なまら悔しかった。
「土屋君………」
高城先輩が泣きながら言った。
「私は土屋君と野球が出来て本当に嬉しかった…ありがとね…この先、私たちは土屋君達と野球出来なくなるのは凄く寂しいけど…皆と野球が出来たことに感謝してるよ…本当に…ありがとね…」
所々で泣きじゃくっているから、若干、聞きづらかったが、雰囲気で分かった。
「先輩………」
俺は謝りたかったが、涙が止まらず、話せなかった。
「私の胸においで…」
高城先輩が抱いてくれた。
暖かった。
しかし、それと同時に涙がさらに出た。
高城先輩達と別れるなんて、俺にとっては切なかった。
練習でも私生活でも、俺達を楽しませてくれた、時には衝突もあったけど、高城先輩達と過ごした日はとても楽しかった……。
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寮についた俺達は、部屋に戻った。
「高城先輩、9回は本当に申し訳ありませんでした…」
俺が謝ると、
「そんなことないよ、土屋君は本当に最後まで攻めてくれた。私はそれだけでも幸せよ。」
と高城先輩が言ってくれた。
「先輩、食堂に集合です。」
と八尺が言った。
食堂では、お疲れ様の会があった。
応援してくれた後輩が、先輩のために用意してくれたのであった。
しかし、先輩が食堂に来たのはいいが、泣いていたから、それどころではなかった。
皆、泣いてばかりで、用意してくれた、ちらし寿司など食べてはいなかった。
俺達1、2年生は泣かずに先輩方をただ見つめるだけであった。
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8月1日、この日から1週間のオフの期間であった。
先輩方が実家に帰る。
その身支度(みじたく)をしていた。
「皆、本当に楽しかった。ありがとう。」
そういって高城先輩はドアノブに手を掛けた。
「土屋君…」
後ろを向いて俺に言った。
「今まで楽しかったよ、頑張ってね。」
そして、部屋を出た。
部屋には鈴本と八尺と俺だけ。
高城先輩のいない部屋は寂しかった。
また帰ってくるって分かっていても、とても寂しかった。
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俺は食堂で試合のVTRを見ていた。
高城先輩から借りてもらい、じっくり見ていた。
オフってこともあって、食堂には俺しかいなかった。
そこに矢部君が来た。
「土屋君、決勝戦の見てたんでやんすか。」
「あぁ、よかったら矢部君も見る?」
矢部君も同席した。
「あまり振り返りたくないけど、土屋君が見るならオイラも見るでやんす。」
「矢部君、このシーン見てどう思う?」
「へっ?」
矢部君は9回表に逆転を許した場面を見た。
「土屋君、少し自信無さそうに投げているように見えるでやんす。」
「そうか、矢部君もか。」
「?」
「この場面はアウトコースに投げるべきハズであったが、高城先輩はインコースを構えた。しかし俺は去年のデッドボールってこともあり、投げることに躊躇(ちゅうちょ)してしまって、最終的に真ん中になってしまった。もう少し落ち着いてやれば出来たはずなんだけど、焦っていたからダメだった。」
俺がテレビを見ながら話を続けていると、矢部君は驚いた顔をしていた。
(どうして土屋君はこんなに冷静でいられるんだろう?オイラには考えられないでやんす。)
矢部君は心の中で思った。
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練習が再開した日、鈴本が矢部君に声を掛けた。
「矢部先輩、監督がお呼びです。」
「あぁ、分かったでやんす。」
矢部君は監督室に入った。
「失礼します。」
そこには、小鷹がいた。
「矢部っち」
「小鷹ちゃん」
2人とも驚いた。
すると監督が言った。
「2人を呼んだのは他でもない、新体制が始まるにつれて、キャプテンを決めなければいけない。」
やはりと矢部君は思った。
「3年生の意見をまとめると、土屋が今のところ有力だ。」
これもやはりと矢部君は思った。
「そこで2人の意見を聞きたいが、彼にキャプテンを任せていいか?」
小鷹が言った。
「私は賛成です、彼はとても仲間を大切にする素晴らしい選手ですので、是非ともキャプテンをやってもらいたいと思います。」
「そうか、矢部は?」
矢部君が言った。
「私も賛成です、彼は控えのメンバーのことを気にかけていましたし、野球に対するひた向きさや野球の知識は私達より優れていると思います。是非とも彼には、そういった役割は適していると思います。」
「そうか、分かった。」
監督が綺麗にまとめた。
「では、キャプテンを土屋に託すが、彼1人では大勢の野球部員をまとめるのは大変だろうから、小鷹と矢部でサポートしてやってくれ。」
「はい」
2人は息を揃えて言った。
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8月中旬、新体制が始まった。
「それでは、新キャプテンを発表する。土屋、前に出て抱負を述べよ。」
えっ、と思った。
俺かい、と。
「え~、新キャプテンになりましたが、これだけの人数をまとめるのは大変ですが、皆さんの力を借りて、聖ジャスミン学園高校野球部を甲子園に連れていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。」
パチパチ
こうして俺達の新体制が幕を開けたのであった。
長くなってしまい、大変申し訳ありません。
ご愛読ありがとうございました。
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