聖ジャスミン学園物語―女子と共に甲子園へ― 作:パワプロ大好き男
冬休みが始まり、地獄のような練習が続いた。
そんなある日、食堂でなぜかザワついていたのであった。
「今日も疲れたでやんす~」
矢部君が辛そうな顔して俺に言った。
それもそのはず、今日は千本ノックを中心に守備練習をやった。
冬の間は雪でグラウンド使えないため、室内練習場でひたすら練習することになっている。
室内練習場といっても、ドーム球場みたいな感じの構造になっているので、練習試合には持って来いの広さであった。
まるで札幌ドームのような広さであった。
「疲れたな~飯食おうぜ」
「ガッテンでやんす~晩飯でやんす~」
ところが、食堂では何やらザワついていたのであった。
「どうしたんだろう?」
中に入ると、高城キャプテンと百田副キャプテンがケンカしていた。
「お前そんなこと言ったのかー!!」
百田先輩があんな怒った姿は初めてだ。
「やめてよ夏菜子。」と玉井詩織先輩が言った。
「ダメよ、ケンカしちゃ。」と佐々木彩夏先輩が言った。
「お願い、やめて。」と有安杏果先輩が言った。
かなり怖かった。
でも俺は仲裁(ちゅうさい)に入った。
「どうしたんですか先輩?」
「あっ土屋君、助けて~」
玉井先輩が今にも泣きそうな顔をしていた。
「土屋君、聞いてよ。この娘サイテーよ。キャプテンとして最悪なことをしたんだよ。」
百田先輩が鬼の形相(ぎょうそう)のような顔でコッチを見た。
「どうかしたのですか?」
「2年生に小島瑠璃子(こじまるりこ)っていう娘がいるんだけど、突然その娘が部活を辞めたいって言い出したの。それをキャプテンに相談したの。」
「フムフム、なるほど、それでキャプテンは何と?」
「そしたらこの娘、『辞めたければ辞めればいい』と言ったんだよ!酷くない!!」
「なるほど…」
思わず俺は絶句した。
高城先輩があんなことを言う人ではないと信じていただけにショックだった。
すると高城先輩が言った。
「確かに言ったよ私は。じゃあ瑠璃子に何て声を掛けたらいいの?」
「高城先輩……」
「私達はただ単になれあいで集まっているわけじゃないのよ、本気で甲子園に行くために集まっているのよ。」
それを聞いて確かにその通りだと思った。
「私達は仲良し集団でお手手をつないで野球を遊んでるんじゃないのよ。先輩方がどれだけ悲しい思いをしていたか夏菜子だって分かってるハズでしょ。それに先輩だっていつまでも一緒にいるわけじゃないでしょ。次の道を歩むために仲間と別れることだってあるのよ。私たちだって野球が終われば仲間と別れる。カワイイ後輩と別れる。だからこそ私達は限られた年数の中で一生懸命、練習して互いに切磋琢磨(せっさたくま)しあってポジション争いしてレギュラーを勝ち取って試合に臨んで勝って甲子園に行く。そのために私達は集まっているわけでしょ。」
あまりにも正当化し過ぎて何も言えなかった。
高城先輩がこんなに野球のことを考えているとは思ってもいなかったから正直驚いた。
そのとき、目の前にノートが置いてあった。
「これ、何ですか?」
「瑠璃子の野球部ノートなんだ。」と佐々木彩夏先輩が言った。
「見てもよろしいですか?」
「えぇ」
佐々木先輩が言うと早速、見てみた。
とても分かりやすいゆえにビッシリと書いていた。
夏の大会や秋季大会の出来事や普段の練習のこと、練習試合や他校の偵察(ていさつ)などいろんなものを書いていた。
スゲェと思った。
俺もよく小島先輩に声を掛けられた優しい先輩だった。
プレーも上手いしチームのこと気にかけてくれる方であった。
まるで自分のことよりも皆のために練習に取り組んでいるような感じを見受けられた。
「凄いですね小島先輩………」
俺は言った。
「こんなすごい先輩いるのに辞めてしまうのはもったいないな~」
すると皆が驚いた表情をしていた。
「確かに人間は何かにつまずくとすぐに落ち込んでしまいます。それが積み重なっていくと辞めたくなってしまう気持ちになりますよね。小島先輩はきっとそのような状態になってしまっているかもしれませんね。」
さらに俺は続けた。
「確かに高城先輩の言うことは分かります。野球は競争社会ですから、強い人は学年問わずスタメンになることもあり、弱い人はレギュラーになれないこともあります。そういうスポーツに所属している限りそのようなルールがありますから仕方ないことではあります。しかし、だからと言って簡単に辞めさせてしまうのはさすがにやりすぎだと思います。小島先輩の本当の気持ちをしっかり聞いて暖かい言葉を掛けてあげて励ましてあげるだけでも彼女は安心できると思います。」
この時、皆は神妙(しんみょう)な顔して俺の話を聞いていた。
この話を聞いて、どう感じたかは俺には分からないが、俺なりに解釈してみたつもりではあった。
「私は、れにの言ったこと許さないからね。キャプテンとして認めないからね。」
そう言って百田先輩は食堂を出た。
高城先輩も無言で食堂を出た。
「百田先輩、高城先輩……………」
2人の姿が悲しく映った。
「土屋君、ありがとう。」と玉井先輩が泣きながら言った。
「ごめんね心配掛けてしまって。」と佐々木先輩が言った。
「2人とも甲子園目指している仲だから気にしないで。」と有安先輩が言った。
無茶を言うなと思った。
こんな状態で甲子園行けるかよと。
絶対、チームに悪影響を及ぼすだろうと思った。
そのとき、矢部君が言った。
「土屋君どうするでやんすか?」
「矢部君…聞いてたんだ…」
「あまりにも怖かったから声を掛けづらかったでやんす。」
「ウ~ン…」
すると玉井先輩が言った。
「先輩…が…いた…ら…」
泣きじゃっくりの状態で言った。
ハッキリいって何を言ってるか分からなかった。
「そうだ!先輩に相談しようよ!!卒業までまだいるから手助けしてもらおうよ!!!」
佐々木先輩が言った。
「いいねぇ~、あーりん、それやろうよ~」
有安先輩が言った。
ちなみにあーりんは佐々木彩夏先輩のこと。
「いいですね~土屋君、3年生の先輩方に相談するでやんす!!」
「いいねぇ~そうしよう!!」
果たして2人は仲直り出来るかどうか……………。
長くなって申し訳ありません。
不定期に更新しますが、よろしくお願いします。