ひなビタ櫻月戦国記〜姫達の本当の戦国〜   作:おさかべ姫

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はい、1話の時点で公式と食い違っています。だってあとから出すんですもん、ひどいです(´・ω・`) なので少し時間をあけ、情報を待ちました。(決してモチベうんぬんの話ではない)そういうことでよろしくです。


第二記 大永の5月崩れのその日

「ん……。」

 

重い瞼をこすり、春姫は体を起こす。時刻は分からないが、まだ日は昇っていない。感覚的には丑の刻(午前2時頃)といったところか。

 

何か変わった夢を見ていたような気がする。自分の全く知らない世界のようで、どこか近しいような夢だった。

 

少し気分が晴れないのはやはり父上のことであろう。春姫は行灯(あんどん)の光を頼りに上着を手に取り、御殿の外へと向かった。

 

 

 

襖を開けると、冷たい風が頬を撫でる。夏といえどやはり夜の空気はしんとしており、少しばかり寒く感じる。だがそれが気持ちよく、良い気晴らしになる。ふと、視線を横へ流すと、そこには見知った少女が縁側に佇んでいた。

 

「イ……」

 

「あれ、春じゃん。どうしたの?」

 

自分を春と呼び振り返った少女は、この地の領主の娘、和姫だった。

 

「……いえ、少し父上のことが心配で。」

 

「……私も。」

 

春姫はそっと、和姫の隣に腰を下ろす。

 

和姫たちの父親は今朝方、伯耆国守護の山名澄之の要請で山名氏の居城である八幡城へと発った。なんでも、内密な相談事だという。

 

近頃、伯耆国の情勢は平穏とほど遠く、不穏な空気が漂っている。尼子氏の力を借りて後継者争いを制した澄之だが、それが尼子氏の、伯耆国での台頭を招いた。事実澄之の守護職は名ばかりで、彼がそのことに不満を持っていることは既に周知の事となっている。「内密な相談事」と称しても、それがなにであるのかは皆分かりきっているはずだ。

 

「…変わった夢を見ました。」

 

夜の冷えた静寂の中、春姫が口を開く。

 

「ふーん。どんな?」

 

「よくは覚えていないのですが……。私達5人が一緒に音楽を奏でているんです。」

 

「…それっていつもと変わんなくない?」

 

春姫の拍子抜けした答えに思わず苦笑する。

 

「そうですね、でもなんかこう……えっと…」

 

「なになに?」

 

和姫は、ずいと体を寄せ、顔を近づける。夢の話に興味津々のようだ。春姫は人差し指を顎にあて、遠くの上の方を眺める。

 

「……忘れちゃいました。」

 

先程のそれと同じように苦笑し、視線を合わせる。澄んだ赤い瞳に整った顔立ち。この和姫という少女は、もしかしたら世界一美しい女の子なのかもしれない。そういえば、彼女の父親もまた、容姿には定評があった。

 

「あはは、残念。じゃあ思い出したら教えてよ。」

 

はい、と応じると、2人はまた闇夜へと視線を戻す。穏やかな光を放つ月と星々、そして目も慣れてきたせいか遠くの山が見える。父上たちはあの山の先で、今もこの地を守らんがために奮闘しているであろう。

 

「姫様、もし私達が…」

 

――普通の町娘として出会っていたら――

 

しかし、その言葉は和姫の手のひらによって遮られる。

 

そして和姫は視線を前に向けたままゆっくりと立ち上がる。その横顔は恐怖とも驚愕ともとれない。春姫でさえこんな表情は見たことがなかった。

 

いったい何が――その視線の先をたどると、先程眺めていた山の頂上から、闇の中かすかに一筋の黒煙が立ち上っているのが見える。

 

春姫は自らの目を疑った。

 

山火事などではない。間違いなくあれは――――

 

「狼煙……!」

 

程なくして、櫻野城は緊急事態を告げる鐘の音につつまれた。

 

 




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