敵襲の報が民衆に至るまで伝えられた櫻野城一帯には、先程までの静けさが嘘のように、あちらこちらからの騒音で満たされていた。本丸には多数の
「めうめう、矢はどのくらい用意できた?」
「ざっと五千本といったところめう。」
兎月は貴族への金貸し、酒屋の他櫻月氏の金庫役を担っている。有事の際は兵糧や武器などの消耗品、これらには多額の金が必要となるため、その調達及び武器の製造開発を一任されていた。町人であるおめうが姫達と親しいのはそのためである。
「あと三千本お願い。寿々ちゃん、春ちゃん、兵士さんの中で足が速い人、把握してる?」
「ええ、顔までしっかり覚えているわ。」
「大丈夫です。」
そこへ、一人の男が五人の前に踊り
「報告します!敵軍兵力、およそ三千!」
「さんぜ……!」
和姫は思わず絶句する。いや、武術の腕に覚えのある寿々姫も、春姫も、そしておめうもまでが言葉を失った。戦力差は圧倒的。加えて、彼女らは初陣である。今の自分達には覆し難い、あまりにも大きすぎる差。皮肉にもこの絶望的な状況が、一瞬にして櫻野城の、先程までの静けさを取り戻した。それはさながら時間が止まったようであった。
パァァン!
「みんな揃って葬儀の時みたいな顔しちゃって。いい?諦めたらそこで戦終了よ?」
両手を打ち合わせ、皆の時を再び進めたのは、領主の娘、和姫であった。
(いやそれスラムd……)
おめうちゃん、今大事なとこだから静かにしてて。あとその時を超越した知識はどこからくるのかな?
和姫は本丸の兵士達から、花姫へと視線を移す。
「花、あんたなんか考えがあるんでしょ?」
「えへへっ、やっぱし姫様にはわかっちゃいますか〜。」
「あったり前田のクラッカーよ。あんたいつもすぐ顔に出すし。」
ああああお前まで何言ってんだ
「これはわざとですよ〜。」
花姫はそういい放つと、ゆらりと立ち上がり、袖から扇を取り出す。彼女は中国古来からの兵法書で有名な「孫子の兵法」そして「
「おまかせください。櫻月氏軍師の力、お見せいたしましょう。」
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