Fate/ In Orario   作:若白髪

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HFの映画はよ


借り一つ

“迷宮都市オラリオ”

“迷宮”…すなわち“ダンジョン”と呼ばれるものが唯一存在する都市である。

この“ダンジョン”には、モンスターといった怪物が出てくる。

じゃあ、なぜそんなモンスターが出てくるところにわざわざ足を踏み入れるのだろうか。

それはモンスターを倒すことによって手に入れることができる“魔石”だ。

この“魔石”は金に変えることができ、それを収入源として生きていくのが“冒険者”

先程のシーウィードがそれに当てはまる。

 

しかし、モンスターは凶暴な怪物達。

生身の人間じゃ厳しく、殺される。

ところがこの“冒険者”はただの人というわけではなく、神様から与えられる【神の恩恵(ファルナ)】を与えてもらうことによってモンスターと戦うことができる。

その代わり“冒険者"は【ファミリア】といった眷属になることで、神様のために活動するのだ。

 

 

 

それで俺達はどうなっていたかというと、17階層の大広間の中央に遠坂と俺が重なり合って倒れていたようで、周りには特に何もなく、モンスターもいなかったみたいだ。

遠坂も俺も酷い外傷はなく、遠坂はかすり傷程度で、俺は衝撃を受けたせいか全身が痛み、ダメージは結構残っているが幸い命に別状はない。

そんな俺達をそのままではいけないと仲間と一緒にこの“安全階層(セフティー・ポイント)”と呼ばれるモンスターが発生しない階層に運んでくれたそうだ。

 

 

本当感謝の気持ちでいっぱいだ。

モンスターがどんな強さなのか分からないが、危ないところだったのは間違いない。

 

 

それにしても、まるでゲームの世界に来たみたいだ。

聖杯戦争を勝ち抜いて、ロンドンに渡ってからもなかなかヤバイ事件は数々あったが、本当何が起きるか分からないものだ。

 

 

 

と、頭の中で情報整理。

 

だいたいこんなところだろうか。

正直まだ色々知らないことだらけだが、とりあえずはどんな場所かは多少知れた。

納得はしきれない部分もあるが、受け入れなきゃいけないという思いもある。

 

 

遠坂も終始驚愕したり、頭を抱えたり、と大変なご様子。

 

 

気持ちは十二分に分かる。

 

俺も元いた場所とあまりにも状況が変わりすぎて、驚愕はとうに通り越している…

 

 

 

 

 

 

ちょっと落ち着いたころ、

 

「でも本当に良かったです。私、人が倒れていてびっくりしちゃいました」

 

 

遠坂ではない別の女性が喋る。

 

 

柔和な印象を受ける。整った顔立ちをしていて、柔らかそうな白い肌に、紫がかったストレートな髪の毛。長さは肩甲骨の辺りまでだろうか。

そして髪に結び付けられているリボンも特徴的だ。

 

 

その顔には見覚えもあるも何も、ついこの間も会っている。

慎二の妹で一個下の可愛い高校の後輩でもあり、よく(衛宮邸)に来てくれて家事を手伝ってくれていた桜その人だ。

 

 

…ちなみにどことは言わないが、女性の象徴的部分がとても大きく主張なさっている点も同じである。

 

 

すると…

 

 

「衛宮くん~?」

 

と、ニッコリ笑っている遠坂さん。

 

笑顔のはずなのに凄く恐いのは何故でしょう…

 

「な、何だよ、遠坂。俺は別にだな…」

 

と段々語気が弱くなりながら言うが、

 

 

うーん?と笑顔をキープしたまま首を傾けてこっちを見続ける…

 

 

いや、違う!たしかにちょっと見てしまったがそんな疚しい気持ちはだな…

はい、すいませんでした…

 

結局遠坂のプレッシャーに押された俺の負け。

恐るべし遠坂…

というか別に遠坂も全然気にしなくてい…

 

あ、青筋を立ててらっしゃる…

 

これ以上この話題に触れてはいけないと冷や汗ダラダラの俺。

 

 

そんな俺達の様子を見て、不思議そうにしている桜。

 

 

ではなく…

 

 

 

 

 

『初めまして。兄さん達のサポーターをやっています、キルシェ・マトゥです。よろしくお願いしますね』

 

と笑顔で先程、自己紹介してくれたのだ。

 

 

慎二…じゃなかった、シーウィードさん(?)が最初話してくれていたんだが、めんどくさくなったのか、ちょうどシーウィードさんを呼びにきたこの桜にそっくりさんの方が代わって教えてくれていたのだ。

シーウィードさんは何やら仲間のところに行って話をしているそうだ。

 

 

「それにしても、お二人ともどうしてあんなところで倒れていらっしゃったんですか?ダンジョンも知らなかったようですし…」

 

 

うっ

そりゃその疑問が出てくるのも当然だよな…

全く知識もないやつがいるなんておかしい。

しかも倒れていた階層は並の冒険者じゃ無理らしいし、どうする遠坂と横をチラッと見る。

 

 

遠坂はこちらを一瞬ジト目で見てくると、桜…じゃなく、キルシェさんに向き直った。

 

 

「はい、実は、私達は極東の出身で色々な世界をこの目で見て回りたいと思い、諸国漫遊していたんです。ところが何者かに急に襲撃され、視界も塞がれて何もできないまま気付いたらここに。後、急なことで如何せん記憶もまだ曖昧でして…」

 

 

という風に説明した。

 

宝石剣だの第二魔法だの言うわけにはいかないしな。

 

というか俺達もまだ把握していないからなかなか難しいものだ。

 

 

正直かなり胡散臭い事情で疑問点も残るとこだが、キルシェさんもこれ以上聞いても仕方ないと空気を読んでくれたのか、そ、そうなんですか。それは大変でしたね、と一応納得した体をしてくれた。

 

 

「でも、ということは冒険者じゃないってことですよね?ダンジョンは危険過ぎますし、良かったら一緒に行動しませんか?私達もそろそろ地上に戻るところなんで」

 

 

「いいの?私達にとってはまさに渡りに船だけど、正直邪魔でしかないじゃない?」

 

 

キルシェさんの提案は物凄く魅力的である。

ダンジョンの道も分からないし、やはりモンスターがどのようなやつらがいるのか全く知らないのはかなり危険だ。

それに武器もない。

…いや、あるにはあるが、“魔術”は秘匿すべきものである。それにこの世界で“魔術”というものはどんな見方をされるのかという懸念もある。

そもそも使えるのかどうかも定かだ。最悪戦わなければならないときは勿論行使するが、今はあまりおおっぴらにはしたくはない。

 

 

「はい!これも何かの縁ですし、ここでさようならというのも落ち着かないので。あっ、兄さん達は結構強いんですよ?だからそこは心配しないでください」

 

「私達に断る理由が全くないわね。見ての通り、何も持っていないので。じゃあお言葉に甘えて…」

 

 

とそんなやり取りをしているとちょうど良いところに

 

 

「おい、キルシェ!そいつらも目覚めたことだしそろそろ戻るぞ」

 

 

シーウィードさんと後ろに女性も三人いる。

 

 

「兄さん、あの、この人達も一緒に…」

 

「はあ?何言ってんの?そこまでする必要がどこにあるんだよ」

 

 

シーウィードさんがリーダーなのか、俺達のために頼んでくれているキルシェさん。

 

 

「私がそうしたいんです。このまま放っとくなんてことはできません。どうかお願いします兄さん!」

 

 

「ほう?珍しいじゃないかそんなに自己主張するなんて。まあ、それでもこんな馬鹿なド素人共なんか連れていく気はないけどな!」

 

 

ハッと薄ら笑いを浮かべるシーウィードさん。

相手の立場から考えたら当然だ。

見ず知らずのやつらをわざわざ連れていく理由がない。

ましてや危険が伴うであろうところで“冒険者”ではない俺達だから尚更である。

流石に無理は言えない。

倒れている俺達を助けてくれただけでも凄く助かったのだから。

遠坂もそう思っているのか黙っている。

何か対策をたてないといけないな、と考えていると、

 

 

「……。兄さん、ご相談があります」

 

 

「あ?まだあんの?さっさとしろよな」

 

少し離れてからキルシェさんがシーウィードさんの耳元で何やらゴニョゴニョ。

 

(なっ…どこでそれを)

 

(~~。)

 

(くっ…)

 

 

すると、

 

「チッ。分かったよ!言っとくけどこれっきりだからな!」

 

「はい♪」

 

シーウィードさんは苦虫を噛み潰したような顔でこちらへズカズカ近付いてくる。

 

「おい!今回だけ特別サービスだ。この僕自らが地上まで連れていってやるよ!いいか、くれぐれも邪魔だけはするなよな!」

 

驚いた。先程までは反対していたのに一転して今度は認めてくれるみたいだ。

 

遠坂も意外そうな顔をして、やるわね桜。一体何て脅したのかしら、とブツブツ言っている。

 

脅すって物騒な…

それと桜じゃないぞ。ドッペルゲンガーと言っても嘘ではないくらい似ているが。

まあ、たしかにどうやって説得したのか気になるところではあるけれど、

 

「本当にいいのか?」

 

と、つい確認してしまう。

 

「ハッ。いざというときはお前らは囮に…「兄さん?」

 

割り込んで入ってくる声があった。

ニコニコ笑っているキルシェさん。

 

「じょ、冗談さ。ハァ、分かっているよ。言ったからにはちゃんとやるさ」

 

…謎の圧力(プレッシャー)があったようだ。

女性の三人も苦笑している。

割とよくある光景なのかもしれない。

どうやら仲は良さそうで、何だかこちらも温かい気持ちが湧いてくる。

 

とにかくこれで、

 

「ありがとうございます。シーウィードさん、キルシェさん、後、そちらの女性の方々も迷惑は重々承知ですが、どうかよろしくお願いします」

 

遠坂も、

 

「私からも改めてお礼を。この度は倒れていたところを助けていただき、さらには危険であるダンジョンでも私達のために共にしてくれるということで感謝しています。この借りはすぐにとはいきませんが必ず返します」

 

と、共に頭を下げる。

 

今はこのように言葉で感謝を伝えるしかない。

しかし、いつかこの人達が困っていることに直面している時、助けが欲しい時、その時は俺の信念に基づいて全力で事にあたる。

 

 

三人の女性は皆、別にいいわよ~と手をひらひらさせながら笑ってくれている。

 

キルシェさんも、

 

「いえいえ。当然です。後、私の名前に“さん”付けしなくて大丈夫ですよ?“キルシェ”と呼び捨てにしてください」

 

ふんわりとした微笑を浮かべながらそう言ってくれる。

 

最後にシーウィードさんが

 

「フンッ。別に庶民なんかのお返しなんか期待してないよ。ああ。それは僕も同感だ。何かお前に“さん”付けされると寒気がするわ。“シーウィード”でいい」

 

憎まれ口を叩きながら言う。

 

 

ああ。とんでもないところに来てしまったのかもしれない。

それでも変わらない人の温かさを感じることができる。

それはとても嬉しく、心が穏やかになる。

 

だから何とかやっていけるんではないかと思っていると、

 

「ところでさぁ、僕、まだ名前を聞いてないんだけど?」

 

わ、忘れてた…

とにかく疑問だらけで少しでも今の状況を知ろうと質問してばかりで、自分たちのことは全然教えていなかった。

まず、自分が名乗るのなんて当たり前なことなのに失念していた。

 

 

「これは失礼しました。遠坂凛…リン・トオサカよ。名前は好きに呼んで。よろしく頼むわ。こっちは…」

 

「す、すまん。衛宮士郎…シロウ・エミヤだ。俺も好きに呼んでくれ。“シーウィード”これからよろしく」

 

俺はシーウィードに半歩踏み出し右手を差し出す。

 

「“トオサカ”に“エミヤ”ね。さっきも言ったが、二度とこんな真似はしないからな!というかもう会う気もないがな!」

 

その呼び方も同じで口元が自然に緩む。

 

何だよという言葉に何でもないと首を振る。

 

そしてしっかり握手を交わす。

 

 

一時的なもので、これから先のことは分からない。

それでもこの一瞬は嘘ではないだろうと思いを巡らしながら右手をゆっくり離した。

 

 

 




慎二()と桜()はhollow ataraxiaのイメージです。
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