在りし日々の記憶   作:アリアンキング

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今回は園田海未の誕生日記念回です。

今の自分がある。そんな海未の過去の思い出をご覧下さい。


園田海未誕生日記念 貴女がいたから今の私がいる!

日曜日の朝 この日はμ'sの練習も無く、海未は自室で本を読みながら寛いでいた。久しぶりにゆっくり出来る事を喜んでいた海未だったが、日課となっていた練習が無い事に退屈を覚え始めていた。

 

「はあ、久々の休みなのに落ち着きませんね。本来なら今頃は皆と練習してる頃でしょうか。練習以外にやりたい事をやってるのにちっとも楽しくない」

 

海未が時計に目をやると、自分が本を読んでから30分も経っていない。普段なら集中して読む事が出来るのに今日はそれが出来ないでいた。どうしたものかと考えてながら部屋を見渡すと本棚にしまってある一冊のアルバムが目に止まる。海未は引き寄せられる様にそのアルバムを手に取った。

 

そしてベッドに腰かけ、アルバムを開く。中には自身の幼少記に撮られた写真や穂乃果達と撮った写真等が収められていた。

 

 

「どの写真も懐かしいですね。あ、この写真は・・・」

 

アルバムを眺めていると海未は一枚の写真に気付いた。その写真には自分が幼馴染である穂乃果とことりと一緒に写っている。写真の二人は笑顔で写っているが自分だけは真顔で写っている。

 

「そういえば、この写真を撮ったのは穂乃果達と出会って間もない頃でしたね。あの頃の自分は人見知りが激しかった。あの日、公園で出会っていなかったら今の私は無かったでしょうね」

 

そう呟いて、海未は当時の事に想いを馳せる。10年前の事でも海未はその時の事をしっかりと覚えていた。

 

 

 

夕方、暇を持て余していた海未は近くの道を散歩していた。特に当ても無く、道を歩いていたら楽しそうな声が聞こえてくる。楽しげな声が気になって、海未が辺りを見回すとその声は公園から聞こえている事に気付いた。

 

海未が物陰から公園を覗くと、そこには笑顔を浮かべた茶色のサイドポニーが特徴的な女の子と銀色のロングヘアーの女の子の姿があった。仲良く遊んでいる様子から二人は友達である事が解る。

 

「いいなぁ… 二人共、楽しそう」

 

物陰から覗いていた海未は楽しく遊ぶ二人を見て、羨ましいと感じていた。それ故か、海未の口から自然と本音が零れる。人見知りする性格の為、海未には同年代の友達はいなかった。それは自分の家の事情も含まれる。舞踊を習いに来るのは年上が多く、海未自身も同年代との付き合いが少ない事も人見知りとなった原因であったのだ。

 

暫くの間 二人が遊ぶ様子を見ていた海未だったが、次第に自分の行動が虚しさを覚えてその場を立ち去ろうとした。その時、サイドポニーの女の子とふいに目があった。思わぬ事に海未は驚き固まるが、サイドポニーの女の子はにっこりと微笑むとこちらに近寄って来た。

 

 

「ねえ 此処で何をしてるの?ずっと、私達の事を見てたようだけど」

「え?あ、あの… 私は何もしてないです。ただ、気になったから。あっ…」

「そうだったんだ。それなら一緒に遊ぼうよ」

 

急に話しかけて来た女の子に海未はか細い声で答える。そんな海未の手を掴み、女の子は一緒に遊ぼうと誘った。自分に遊ぼうと言う女の子の笑顔を見て、海未も笑顔を浮かべると首を縦に振った。

 

「うん。決まりだね。あっ、私は高坂穂乃果と言うの。あそこにいるのが私の友達のことりちゃん。貴女の名前は?」

「わ、私の名前…ですか?園田海未と言います」

「海未ちゃんだね。それじゃあ、何して遊ぶ?」

「あれ?穂乃果ちゃん、その子は誰なの?」

 

一向に戻って来ない穂乃果を気にしてか、ことりが二人の方へやってきた。そして海未を見ると首を傾げて穂乃果に尋ねる。

 

「あ、ことりちゃん。この子は園田海未ちゃんと言ってね。さっき、そこで会って一緒に遊ぼうと声をかけたんだよ」

「そうだったんだ。私は南ことり。よろしくね海未ちゃん」

「はい よろしくです」

 

穂乃果と負けず劣らず、優しく接してくることりに海未は明るく言葉を返した。普段の彼女を知ってる者が見たら、驚いた事だろう。何せ人見知りする海未が初対面の子と遊んでいるのだから。

 

「そうだ。二人共、木登りしようよ。この前、登った時に綺麗な夕日が見えたんだ。一緒に見よう」

 

穂乃果は唐突にそう言い出すと、二人の返事を聞く前に木が生えてる場所へ駆けていく。そんな穂乃果の後を海未とことりも追いかけていった。

 

 

 

「この木に登ろう。大きいし、高いから遠くまで見えるに違いないよ」

 

一本の木の前で待っていた穂乃果は後からやって来た。二人に振り向き、穂乃果は楽しそうにこの木へ登ろうと提案した。穂乃果に追い付くと二人は目の前にある高い木を見上げた。

その木に圧倒され、二人は不安な表情で穂乃果に言葉を返す。

 

「ねえ、穂乃果ちゃん。この木、本当に登るの?相当高いようだけど…」

「私は…怖いです。落ちたら大怪我するかもしれません」

 

木の高さは3メートル程で枝も太く、子供の体重にも耐える事は出来るだろう。楽しそうな穂乃果と違い、海未とことりには不安と恐怖を感じていた。もし、この木から落ちたら大怪我は免れない。二人は子供心にそう感じていたのだ。

 

「大丈夫だよ。すぐ傍は砂場だし、いざとなったらそこに飛べば怪我なんてしないよ」

 

だけど、不安そうな二人へ穂乃果はあっけらかんとした様子で言葉をかけた。確かに木の傍には砂場が広がっている。また自信満々で言う穂乃果に後押しされたのか、ことりは木に登る事に決めた。

 

そして隣にいる海未にことりは尋ねる。

 

「海未ちゃんはどうする?怖いなら、此処で待っていてもいいよ」

「え?私は…登ります。私も夕日を見てみたいです」

 

急に話しを振られて海未は迷っていた。それでも初めてやる木登りに対して、海未も興味を抱いたのか。勇気を振り絞り、自分も登ると海未は自身の気持ちを言葉にする。

 

「そう来なくっちゃ。それじゃあ、早速登ろう」

 

二人も木登りに賛成した事に気分を良くしたのだろう。穂乃果は一番に木を登り始めた。

一度、登った事があるからなのか。太い木を器用に掴み、すいすいと登っていく。そして枝に腰を掛けると下にいる二人へ声をかけた。

 

「次はことりちゃんと海未ちゃんの番だよ。早く登っておいでよ」

「はえ~ 穂乃果ちゃんはすごいね。よーし、私も負けないよ。そうだ。海未ちゃんも一緒に登ろう」

「え?う、うん」

 

穂乃果に触発されたことりが木を登ろうとした時、不安そうにしてる海未に気付く。そんな海未にことりは柔らかい笑みを浮かべ、海未に一緒に登ろうと言い、手を差し伸べた。海未も差し出された手を掴むと木の傍へ歩いていく。

 

「登る時はね。木の隙間に手で掴んで行けば、登れるよ」

 

ことりが説明しながら実際に木を登って見せる。それを見て、海未もことりに言われた通りに木を登っていく。初めての割にすんなりと登ってくる海未にことりは驚いていた。

 

「海未ちゃん、木登り上手だね。初めてなのにすごいよ」

「ううん。ことりちゃんが教えてくれたおかげです」

「そう?だけど、此処まで来れたのなら上まで平気そうだね」

「はい 夕日を見るのが楽しみです」

 

会話をしながら二人は穂乃果がいる場所を目指して登っていく。高くなるに連れて、海未の登るペースも遅くなるがことりのフォローもあり、二人も穂乃果が待っている枝に辿り着いた。

 

「あ、二人も来たね。こっちにおいでよ」

登って来た二人に穂乃果は隅に寄って、座るよう促した。先に海未を座らせ、次にことりが枝に腰かける。その時、海未は下を見てしまった。その高さに怯えて海未は目を固く閉じる。

 

「ほら あそこ。夕日がよく見えるよ」

 

穂乃果は正面を指さして言った。穂乃果の言葉で海未は静かに目を開いた。すると、空を橙色に染めながら沈む夕日が目に映る。その光景に目を奪われて言葉も無く、じっと見つめていた。

 

「夕日…とても綺麗だね」

「うん こんな景色が見れるなんて思ってなかったよ」

「私もそう思います。凄い綺麗」

 

三人は目の前に広がる光景に魅入られていた。見る場所を変えるだけでこうも違う景色が見る事が出来る。三人はこうして新たな発見をしたのだ。

 

暫くの間、夕日を見ていた三人だったが、やがて家に帰る時間が近づいて来た。

 

「暗くなってきたね。そろそろ家に帰らないとね。それじゃあ、木から降りよう」

そう一言呟いて、穂乃果は隣にある砂場目掛けて飛び降りた。その事にことりと海未は目を丸くしていた。

 

「ええ~ 穂乃果ちゃん。いきなり何をしてるの?」

「何って、木から降りたんだよ。二人も早く降りておいでよ」

 

飛び降りた穂乃果を心配してことりが声をかける。だが、飛び降りた穂乃果は平然とした様子でことり達に降りてくるように言葉を投げ掛けた。

 

「ふぅ 穂乃果ちゃんってば、相変わらず無茶するんだから。それじゃあ、私達も降りよう」

「本当に飛び降りて大丈夫でしょうか?私は少し怖いです」

「そうだね… よし、それなら一緒に降りよう。それなら怖くないよ。一二の三で飛ぼう」

 

木に登る時と同じく、不安な表情の海未にことりは優しく手を繋いで呟いた。それが海未の不安を和らげたのだろう。こくりと頷いた海未はことりの合図で同時に砂場へ飛び降りる。

 

飛び降りた衝撃で砂が舞い、二人の顔や髪に砂で汚れていた。そんな姿を見た穂乃果は楽しそうに笑って二人の言葉をかける。

 

「あはははははっ!二人共、顔が砂だらけだよ」

「ぷっ そういう穂乃果ちゃんも顔に砂が付いてるよ」

「うん 私達と同じですね。ふふ…」

 

笑う穂乃果にことりも笑いながら返事を返す。それに続いて海未も笑って、言葉を洩らす。

すると、二人はキョトンとして海未を見ていた。そんな二人の様子に笑った事で怒らせてしまったのかと海未は焦る。

 

しかし、二人の口から出た言葉は意外な物だった。

 

「ねえ もう一度、笑ってみてよ」

「うん 海未ちゃんの笑顔、すごく可愛いよ」

「え?あ、ありがとう。でも、二人はどうして私に優しくしてくれるのですか?」

 

二人の言葉に海未は頬を染める。照れながらも海未は二人に何故、自分に優しく接してくれるのかを問う。そう問われたことりと穂乃果は顔を見合わせた後、海未の問いに答えた。

 

「そんなの決まってるよ。私達、もう友達だもん」

「うん 穂乃果ちゃんの言う通りだね。私達は友達だよ」

「ありがとう。私も穂乃果ちゃんとことりちゃんは友達です」

 

この日以来、三人は友達となった。幸いな事に通っている幼稚園も同じであり、一緒に遊ぶ機会も増えて人見知りだった海未も少しずつ変わっていった。

 

 

「あの時、穂乃果達と見た夕日はとても綺麗でした」

 

幼い三人が写った写真を海未は優しく穏やかな目で見つめる。そして、ある事を思い付いた海未は傍にある携帯を手に取ると穂乃果へ電話を掛ける。

 

「もしもし。海未ちゃんから電話してくるなんて珍しいね。それでどうしたの?」

「いきなりすみません。今日ですが、皆と一緒にいつも練習してる神社で夕日を見ませんか?」

 

海未は穂乃果にそう伝えた。勿論、返って来た返事は決まっていた。あの日、私は穂乃果のおかげで新しい発見をして、素晴らしい景色を見る事が出来た。だけど、今度は自分が新しい発見や素晴らしい景色を見せたい。そう思っての事だった。

 

その日の夕方 海未は頼れる仲間であり友達でもあるμ'sの皆と綺麗な夕日を見た。

この出来事も写真という形でアルバムに収められる事となる。




今回のお話はいかがだったでしょうか?

海未が変わる切欠となる穂乃果達の出会い。

きっと、こんな出来事があったんだろうなぁと想像して書いてみました。

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