在りし日々の記憶   作:アリアンキング

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今回は西木野真姫 誕生日記念です。

時間軸は第2期終了後となっております。

それではどうぞ


西木野真姫誕生日記念 夢への扉を開こうよ

ある日の火曜日 今日の授業は全て終わり、放課後 日課となっているμ'sの練習の準備を真姫がしていると教室のドアを慌ただしく開けて花陽が入って来た。そして真姫の姿を確認するや否や、一目散に駆け寄ると息を切らしながら真姫へ話しかける。

 

「はぁ…真姫ちゃん 此処にいたんだ。良かったぁ~ 行き違いにならなくて…」

「いいから少し落ち着きなさい。話はそれからでもいいわよ」

 

走ってきた為だろう。呼吸を荒くしている花陽に真姫はそう返す。花陽も真姫の言葉に頷くと静かに息を整える事にした。

 

それから1分後。息を整えると花陽は真姫へ伝言を伝えるべく、口を開いた。

 

「ふぅ。そうだ さっき、穂乃果ちゃんから伝言を預かっていてね。今週は練習無しだって…」

「え?随分と急な話ね。何か用事でもあったの?」

「うーん 私も聞いたんだけど、秘密だと言って教えてくれなかったんだ」

「そう。まあ、穂乃果にも事情があるものね。それじゃあ、一緒に帰る?今週という事は今日の練習も無いんでしょう。それと凛はどうしたの?」

「凛ちゃんならもう帰ったよ。今日は何かやる事があると言ってたよ」

「何よ。凜もなの?まあいいわ 此処で話していても仕方が無いし、二人で帰りましょ」

 

 

花陽の言葉に真姫は溜息を一つ吐き、帰ろうと告げた。花陽も真姫の言葉に頷き、二人は帰り支度をして教室をあとにした。

 

 

 

音ノ木坂を出て、家路に付こうとした時だった。花陽はある提案を真姫へ持ちかける。

 

 

「ねえ、真姫ちゃん。折角だから少し寄り道しない?最近、美味しいクレープ屋さんが近くの公園に来てるみたいなの。一緒に食べようよ」

「そうね。偶にはそれもいいかも… それじゃあ、行きましょうか」

「うん」

 

花陽の誘いに真姫は柔らかく微笑んで受け入れた。それを見た花陽も明るい笑顔で言葉を返すと二人は並んで歩き出す。

 

それから暫くの間、二人は学校で起きた事や自分達がラブライブで優勝した事を談笑しながら歩いていた。

 

「去年のラブライブ…とても凄かったね。今まで大勢の前でライブしてきたけど、あそこまで大勢の人の前でライブをするとは思って無かったよ」

「そうね。それに大会で優勝出来るとも思ってなかった。実を言うと私は予選でA-RISEとぶつかると分かった時に諦めていたのよ。だから、曲を作る時にスランプに陥ったのはそれも理由だったの」

「そうだったんだ。あの時は真姫ちゃんに相当、負担かけちゃってたもんね。それに海未ちゃんやことりちゃんにも… いたっ。いきなりデコピンなんてひどいよ~」

 

真姫の言葉に花陽は申し訳なさそうな顔で言葉を洩らす。そんな花陽に真姫は容赦なくデコピンをお見舞いした。いきなりの事で驚いた花陽はおでこを抑えて真姫に抗議するが、真姫は何処吹く風で花陽に言葉を返した。

 

「貴女が後ろ向きな事を言うからよ。確かに私はスランプになってた。だけど、そこから抜け出せたのは花陽。貴女の言葉のおかげでもあるの」

「私?助けになるような事を言ったかな?」

 

その話を聞いて、首を傾げる花陽を見つめながら真姫はその時の事を思い返していた。

 

新曲以外は使えない。このルールもあり、μ'sの皆は気分転換も兼ねて練習や作曲等をする為に合宿へ来ていた。だが、予選を突破出来るような曲を作らなくてはいけない。この事実が海未や真姫のプレッシャーとなり、スランプへ追いやる結果となってしまった。

 

このままではいけない。μ'sの曲は皆の曲なのだから協力して作ろう。絵里の提案で各自のグループに別れて行動する事になった。

 

だが、場所を変えても真姫の作曲は捗らない。それに苛立ちを感じた真姫は気分転換も兼ねて、付近を散歩する事にした。

 

「はあ。新しい曲と言っても…そう簡単に浮ぶ訳ないじゃない。それにA-RISEに負けない曲となんてどうすればいいのよ」

 

真姫は溜息を吐き、ぽつりと呟いた。結局、散歩をしても気分転換にならず真姫はにこと絵里が待つテントに戻る事にした。

 

テントに戻る道すがら、真姫は花陽とばったりと遭遇した。恐らく、料理に使うのだろう。花陽は両腕に沢山の枝を抱えている。特に話す事もなく、花陽の邪魔をしてはいけないと真姫が立ち去ろうとした時。花陽がおずおずと声をかけてきた。

 

「ねえ 真姫ちゃん。あの…作曲の進み具合はどうかな?やっぱり、上手く行って無いの?」

「ええ。いつもなら何かしら浮かんでくるんだけどね。今回はさっぱりよ。そっちはどう?ことりも衣装制作に手間取っているんでしょ?」

 

 

花陽の問いに答えると今度は真姫が花陽に尋ねる。スランプになっているのは自分と海未だけでなく、ライブで着る衣装を作ることりもまたスランプに陥っていた。

 

「うん ことりちゃんも苦戦しているみたい。スケッチに描いては消して、描いては消しての繰り返しだよ。穂乃果ちゃんはテントでぐっすり寝てたけど、私はその空気に耐えれなくて外に出てきたんだ」

花陽は困った顔で現状を真姫に話した。話を聞く限り、他のグループも手古摺っている様で状況は芳しくない。

「...もしかしたら、今回のラブライブは予選で落ちてしまうかもね」

 

それを知った真姫は思わず本音を洩らしてしまう。普段、弱音を吐かない真姫だったが…何も出来ない自分がショックだったのだろう。珍しく彼女は弱音を洩らしていた。

 

「私は別にそれでもいいと思うよ」

「え?だけど、予選で負けるなんて嫌じゃない。皆で出来る最後のライブになるかもしれないのよ」

 

花陽の言葉に真姫は驚いていた。まさか、ラブライブに出場する事を楽しみにしていた花陽から、そのような言葉が出てくるとは思っていなかったからだ。だが、そんな真姫を余所に花陽は言葉を続ける。

 

「それは解ってる。私も最初はそうだったから。でも、皆でラブライブにまた参加出来る事もアイドルが好きな自分には夢の様な時間なんだよ。今はそう思っているんだ」

 

花陽の話を聞き、真姫は小声で呟いた。

 

「夢...ね。そう、確かにそういう考えもいいのかもね。私はこれで戻るけど、貴女も早くテントに戻りなさいよ。冷えてきたし、風邪をひいたら大変だもの」

 

夢 その単語を聞いた時、真姫の中に何かが浮んで来たのを確かに感じていた。

 

その何かが消えていく前に作業に入ろう。真姫は花陽との話を切り上げてテントに戻る事にした。

 

「うん 真姫ちゃんもあまり無理はしないでね」

「ありがとう。それじゃあ、またあとでね」

 

花陽にそう言って、真姫はその場を去っていった。花陽との話や夜のにこの助言もあって、真姫達は曲を完成させる事が出来た。

 

「あの曲が出来たのは貴女の会話で出てきた”夢” この言葉が一番のヒントになったのよ」

「そうだったんだ。まさか、あの会話が真姫ちゃんの助けになってなんて知らなかったよ」

「ふふ。助けになったのはあの時だけじゃないけどね」 

「ん?今、何か言った?」

「ううん 何でもないわ。あっ 公園が見えたわよ。クレープ屋は何処にいるの?」

 

小声で言った言葉が聞こえなかったのか、花陽は真姫に尋ねるが真姫は何でもないと誤魔化した。

 

「あれ?いつもは公園に来て、クレープを売ってるにな~」

「もしかして、今日は休みなんじゃない?見当たらないという事はさ」

「うーん そうかもしれない。ごめんね。真姫ちゃん 折角、付き合って貰ったのに」

「別にいいわよ。そうだ。どうせなら穂むらに行かない?和菓子も偶にはいいんじゃない」

「そうだね。それじゃあ、私はお母さんにも買って行こうかな。ちょっと、何が欲しいのか電話して聞いてくる」

「分かったわ。私は喉乾いたから飲み物を買ってくるわ」

「うん すぐ済ませるから待ってて」

 

花陽は真姫に返事を返すと電話を掛け始める。それを見た真姫は公園内に置いてある自販機へ歩いていった。

 

自販機へやってきて、飲み物を買おうと鞄から財布を出した時。突如、真姫の携帯が音を立てて震える。初めは無視をしようと思ったが、大事な連絡かもしれない。そう考えて真姫は携帯を取り出すと画面を見た。すると穂乃果からメールが一件届いており、内容は練習場所である神社に来て欲しいとの事だった。

 

「全く、いきなり神社に来いだなんて。穂乃果は相変わらずね」

「真姫ちゃん 待たせてごめんね。それとさっき、穂乃果ちゃんからメールがあったよ」

「知ってるわ。私の所にも来たから」

「そうなんだ。神社に来て欲しいと書いてあったけど、何だろうね?」

「さあね。ま、行けば分かると思うわ。どうせ穂むらに寄るつもりだし、あとで和菓子を奢ってもらいましょ」

「それもいいかもね。穂乃果ちゃんなら喜んでやりそうだし…」

「確かにね。じゃあ、行きましょうか」

「うん」

 

 

そんな会話をしながら、二人は呼び出された神社へ向かっていった。

 

 

 

 

歩く事 数十分。二人は神社へ続く階段を登っていた。時間も既に16時を過ぎており、陽も沈み始めて辺りは暗くなっていた。徐々に暗くなっていく空を見つめて真姫がぽつりと愚痴を溢す。

 

「それにしても一体、何の用なのかしら?辺りも暗くなって来てるし、あまり遅くならない内に帰れるといいのだけれど」

「うーん。でも、いきなり呼び出すくらいだから大事な用だと思うよ」

「それは解ってるわよ。ま、ここで言い合っていても仕方ないわね」

「うん 行けば分かるもんね」

 

言い合っていても仕方がないと結論を出して、真姫と花陽は止めていた足を動かして階段を登り始めた。そして境内へに足を踏み入れた。

 

その時 「「「「「「「真姫ちゃん お誕生日おめでとう!!」」」」」」」と隠れていたメンバー達が出てきて、大声でそう言った。

 

「え?い、一体、何よ。何がどうなってるの??」

「そのままだよ。今日は真姫ちゃんの誕生日だから、真姫ちゃんに秘密で準備していたんだ。隠していてごめんね」

 

唐突の事で状況が理解出来てないのか、真姫は困惑した様子であった。それを見て、隣にいた花陽が真姫へ説明をした。

 

「あっ そうか。そういえば、今日が私の誕生日だったわね」

「何よ。忘れていたの?にこ達はちゃんと覚えてて、前から準備していたのに」

「そやね。誕生会の準備をしようと言ったのはにこっちやもんね。それに妙に必死やったし~」

「うるさいわね。あんただって、ケーキ作りに失敗した時は慌てていたじゃない」

「そ、それは…ウチ、あまり洋菓子は作らないから」

「ほら 二人共。そこまでよ。お互い、誕生日を祝う為に必死だったのだから喧嘩はやめましょ」

 

ヒートアップする前に絵里が二人を諌めた。にこと希も絵里の言葉でそれもそうかと言い争いを止めた。

 

「本当だったら、部室でやろうと思ったんだけどね。今週は居残りをダメと言われてるから此処でやる事にしたんだ。いきなり呼び出したのはそれが理由だよ」

「そうだったの。ありがとう 皆…とても嬉しいわ」

 

穂乃果が真姫を見て、呼び出した理由を告げた。全ての事情を知った真姫は顔を赤くしてお礼の言葉を述べた。そんな真姫を花陽は穏やかな笑みを浮かべて、言葉をかける。

 

「ほらほら 今日の主役は真姫ちゃんなんだよ。もっと、堂々してないと」

「花陽… そうね。今日だけは私が主役だものね」

 

花陽の言葉に真姫も笑顔を浮かべて、そう返した。そして真姫は決めた。あの時、花陽が聞こえて無かった言葉を伝える事を。

 

「ねえ 花陽。公園でした話を覚えてる?」

「うん 私の会話が作曲の助けになった話だよね」

「実を言うと、貴女に助けてもらったのはそれ以外にあるの。かなり前だけど、貴女がμ'sに入る時に言った言葉。あの言葉にも私は救われていたのよ。あの時、貴女が大好きなアイドルにやりたいと言った。あれで私も少しだけ、自分に素直になろう。そう、決心出来た。私は貴女の背中を押したつもりだけど、背中を押されていたのは私も同じだったのよ。音楽で誰かを楽しませたい。それが私のもう一つの夢だから」

「真姫ちゃん...」

「だから、今は素直に言えるわ。あの時、私が素直になれたのは貴女のおかげよ。ありがとう」

「ううん いいんだよ」

 

二人は顔を見つめて笑みを溢していた。そうしていると遠くから穂乃果が二人を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「おーい 二人共。早く早く~ 折角の料理が冷めちゃうよぉ~」

「ふふ 全く、穂乃果は空気を読まないんだから・・・」

「アハハ でも、そこが穂乃果ちゃんらしいよね」

「そうね。それじゃあ、行きましょうか」

「うん」

 

そう言うと二人は仲良く手を繋いで皆の所へ駆けていった。

 

真姫にとって、今日は生涯忘れる事のない誕生日になったと日記へ記していた事は別の話

 

 




今回の誕生日記念はいかがだったでしょうか?

身近な者の会話や行動が自分を前に進ませる切欠になる事がありますよね。
故にこの話では花陽の言葉で素直になる真姫を書いてみました。

宜しければ、感想をお待ちしています。
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