在りし日々の記憶   作:アリアンキング

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今回はりんばな回です。

前回より、短めですが楽しんでください。


素直になれたね!と風は優しく背中を押す

穏やかな風が吹く休日のある日 

 

μ'sの朝練もなく、暇を持て余していた星空凛は幼馴染の小泉花陽の家に向かって歩いていた。

 

いつもと変わらぬ道を歩く凛の姿は長袖のシャツと長ズボンではなく、猫がプリントされたシャツを着て、花のフリルが付いたスカートを穿いていた。

いつもの道をしばらく歩き、花陽の家に到着した凜が門の外にあるチャイムを鳴らす。 

 

数秒後、パタパタという足音が聞こえたあとに玄関のドアが開いて、花柄のワンピースを着た花陽が姿を見せる。

 

凛は笑顔を浮かべ元気な声で花陽に声をかける。

 

「かよちーん かーよちん 今日は遊びに来たにゃ」

 

「いらっしゃい 凛ちゃん さあ、中に入って」

 

訪問者が凛だと知った花陽も笑顔を浮かべて、元気な声で返事を返した。

凛は手招きをする花陽の言葉を頷いて、門を開けると家の中へ入っていった。

 

「おじゃまします。」

 

遊びに来ると、花陽と出迎えてくれる見知った姿が無い事に気づいた凜が訪ねる。

 

「そういえば、おばさんは?」

 

「ああ お母さんならお父さんと出かけてるよ。だから、今は私一人で退屈してたんだ。それと、凛ちゃんは今日は可愛いスカートを穿いてるね。」

 

いつもと違って、女の子らしい凜の姿に花陽は新鮮さを感じながら話しかけた。

 

「気分を変えて穿いてみたんだけど、似合ってなかったかな?」

 

不安な表情を見せて、凜は言葉を吐き出す。

 

「ううん そんなことないよ。似合ってるし、凛ちゃん とっても可愛いよ。」

 

花陽は優しい目で凜を見つめて、そう言った。 

凜もそんな花陽の言葉に安心した顔を見せると、少し照れながらお礼の言葉を言う。

 

「ありがとう かよちんの洋服も似合ってるし、可愛いにゃ」

 

「ふふ 凛ちゃんもありがとう。そうだ 折角だし、私達も出かけようよ。もっと、可愛い服とか探しにいくのも楽しいかもしれないよ。」

 

花陽は名案だと言わんばかりの様子で凜をショッピングに誘った。

 

「え?も、もしかして この服装で街にいくの?」

 

凜の脳裏では、小学生時代に起きた辛い過去を鮮明に思い出していた。

 

ある朝、母親は「花陽ちゃんみたいに女の子らしい服を着てみたら?」いつも男の子っぽい服装を着ていた凛に提案をした事があった。

以前から女の子らしい服に興味があり、花陽とお揃いの格好が出来ると凜は喜んでスカートを穿き、楽しそうに家を飛び出すと学校へ向かっていった。

 

だが、その朝は凛にとって忘れられない出来事が起きる事となる。

いつもと同じ場所で花陽が凛を待っていると、遠くから珍しくスカートを穿いている凜が走って来るのが見えた。

 

「おはよう かよちん」

 

凜は待っていた花陽に元気よく挨拶をした。

 

「おはよう 凛ちゃん。それと今日は珍しい格好をしてるね。」

 

「うん お母さんに言われて女の子らしくしてみたんだ。やっぱり、似合ってなかった?」

 

不安な表情を見せて、凜はか細い声で呟く。

 

「ううん そんなことないよ。凛ちゃん とっても可愛いよ。」

 

最初は驚いた花陽だったが、凜が自分と同じスカートを穿いて一緒に登校が出来ると花陽も内心は喜んでいた。

 

「えへへ ありがとう。そろそろ 学校にいこ 遅刻したら先生に怒られちゃうよ」

「そうだね。それじゃあ、行こうか」

 

そして二人が並んで歩き出した時に、後ろから駆けてきた三人の男の子が凜の姿を見るや、こう言い放った。

 

「あ~ 星空がスカート穿いてるぞ」

 

「本当だ 似合わね~の」

 

「あはははは やーい 男がスカートを穿いてるぞ~」

 

それぞれ、心無い言葉を吐くと、三人の男の子は元気よく走っていった。

 

それを聞いていた凛は辛そうな顔で立ちすくんでいたが、空元気で笑顔を見せると

 

「やっぱり、凜にスカートは似合わないよね。帰って着替えてくるね」

 

その一言を告げて、来た道を戻って行ってしまった。

 

走り去っていく凜の背中を花陽は黙って見送る事しか出来なかった。

 

花陽にとっても辛い過去を思い返しながらも花陽は少し厳しい顔をして凛に言葉をかけた。

 

 

「あの時の事を・・・まだ、気にしてるの?この間のファッションショーでの凛ちゃんは何処行ったの?」

 

「かよちん」

 

いつも温厚な花陽が怒る姿を見て、凛は返す言葉が出てこなかった。

 

呆けて自分を見ている凛に花陽は続けて言葉をかける

 

「私は凛ちゃんにもっと、可愛い服を着てほしいよ。一緒の服を着て、遊んだりもしたい。本当にそう思ってるんだよ。」

 

自分の気持ちを伝えてるうちに感情が抑えきれなくなったのか 花陽の目には涙が浮かんでいた。

 

凜には花陽がすごく眩しく映っていた。

昔と違って、自分の気持ちを言う花陽に距離を感じながら、凜は口を開いた。

 

「かよちんは・・・変わったね。昔よりずっと強くなったにゃ」

 

寂しげな表情で言う凛に花陽はいつもと同じ優しい表情を見せて、凜に言葉をかける。

 

「違うよ。凛ちゃん・・・私は変わってないし、強くもなってない。ただ、素直になっただけだよ。」

 

花陽は真姫と凛に自分の気持ちを伝えるように屋上へ連れて行かれたあの日の事を思い出していた。

 

あの日 周りの目を気にしたり、自分の気持ちに嘘をつくことをやめた。だからこそ、今の自分がある。

 

花陽は凛にも自分の気持ちに素直になってほしかった。

 

「だから、凛ちゃん‥これからは周りの目を気にしたり、自分の気持ちに嘘をつくのは今日で最後にしよう。」

 

花陽の言葉を聞いていた凜は目に涙を溜めながら、頷いた。

 

「凛ちゃんが落ち着いたら、ショッピング行こうね。凛ちゃんに似合う服を沢山見つかるといいなぁ。」

 

「凛もかよちんに似合う服を沢山見つけるにゃ」

涙を拭きながら、凜が言う。

 

湿っぽい空気を入れ替える為に花陽は窓を開けた。そして凜に振り返って、一つの提案をする。

 

「それじゃあ、どっちが多く可愛い服を見つけるか勝負だね。」

 

「受けて立つにゃ 凜は負けないからね。」

 

満面の笑顔で凜は花陽に言葉を返した。

 

その時、開けた窓から風が入ってきて、二人の間を過ぎていく。それは殻を破り、素直になった二人を応援しているかのようだった。

 

これは穏やかな風が吹く在りし日の休日に起きた出来事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




素直になるのは難しい。だけど、素直になれた人の背中を風は押してくれる。

これを読んだ人が素直になれたら嬉しいなぁ。

書くまでもないですが、この話はアニメ5話の後です。

内容を一部修正しました。
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