千冬ドライブのひとっ走り   作:無限の槍製

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終わるドライブ 始まる未来 続くひとっ走り

10月も中頃。だんだんと肌寒くなってきた今日この頃。もうあの戦いから二ヶ月もたったのか。

俺は再びアメリカの大学に通うために準備を進めていた。今度は愛歌もつれて。

 

「まあこんなものかな?あとは・・・・」

 

シグナルチェイサー。チェイスが俺に託したダチの証。もう変身できない俺には必要ないかもしれないが、こいつは俺のお守りでもあった。

しかしいつまでもこいつに頼ってばかりも何か違うと思っていた。

 

「どうすっかな~・・・・後で決めるか」

 

まずは日本にいるうちに、皆に『行ってきます』ぐらい伝えとかないとな。俺は部屋を出た。

 

 

「入るよ姉ちゃん、ってなにしてんの?」

 

「あ、剛くん。今ね金庫にドライブドライバーを閉まってるの」

 

姉ちゃんの部屋で金庫にドライブドライバーが入れられている。姐さんが使わなかったやつだ。姉ちゃんは金庫にドライブドライバーをしまうと鍵をかけ、

 

「そりゃ!」

 

「ちょ!なにしてんの!?そんなことしたら開かなくなるじゃん!」

 

鍵をトンカチで粉砕した。呆気なく粉々になった鍵をさっさとゴミ箱に捨てる。

 

「いいんだよ。こんなものは開かない方がいいんだから。もし必要になってもちーちゃんなら壊せるよ」

 

「姐さんをなんだと思ってるんだよ。でもまあ確かにそうだけど」

 

確かにドライブドライバーなど仮面ライダーのアイテムは強大すぎる『兵器』とも言える。その技術を駆使して戦争が起きるかもしれない。そうなったらそれこそ世界の終わりだ。

 

「それじゃあ剛くん。これをちーちゃんに渡してきてね」

 

「金庫を?って軽!!素材なんだよ」

 

「はいはい。詮索しないでさっさと行く」

 

姉ちゃんに部屋を追い出され金庫を姐さんに渡しに行かなくてはいけなくなった。まったくなんで俺が行かなきゃなんないんだよ。

 

 

特状課のドアを開ける。中には加賀美さんと本願寺課長、一条さんがいた。姐さんと凛はいない。

 

「よお剛。どうしたそれ?」

 

「いや姐さんに届け物。姐さんは?」

 

「千冬ちゃんなら凛ちゃんのお見送りに行きましたよ?」

 

「凛の?どっか行くんですか?」

 

「聞いてなかったのかい?凛君は今日からロンドンに行くんだよ」

 

初耳だ。凛がロンドンに行くなんて。金庫を加賀美さんに預け、空港へバイクを走らせた。

 

 

「凛!」

 

「ん?ああ剛。どうしたの?アメリカ今日からだっけ?」

 

なんとか出発前に凛を呼び止められた。近くに姐さんがいない。もしかしたら入れ違いになったか?

 

「ロンドンに行くなんて聞いてないぞ」

 

「うん、誰にも言ってないから」

 

「はあ?てかなんでロンドンに行くんだよ?」

 

「勉強よ。魔術のね。やっぱり本場で学んだ方がいいのかなって。ちゃんと出来るまで皆には内緒に使用と思ったけど、千冬にはバレちゃったわ」

 

エミヤ博士からは少しだけ聞いたことがあった。所謂『アッチ』の人間はロンドンの時計塔で魔術について学ぶらしい。

 

「それくらい伝えてもよかったんじゃ」

 

「向こうには長いこといるからね、こっちの人と最後までいたら、未練を残しちゃうから。湿っぽいのは嫌なのよ」

 

凛はたまにこう言うことを言いやがる。完璧に出来るまで徹底する。それが遠坂凛。もう止められねぇか。

 

「そうか。でもさ凛。多分皆はお前がロンドンに行くって知ってたぞ?」

 

「え!嘘!?千冬がバラしたのかしら?」

 

「ハハッ。まあ頑張れよ。体に気を付けてな。凛が魔法少女になって帰ってくるの楽しみにしてるぜ!」

 

「もう・・・バカ・・・それじゃあ行ってきます!」

 

「おう。行ってらっしゃい凛」

 

 

遠坂凛

 

ドライブのサポート、及び仮面ライダーデッドヒートドライブとして戦った。ロンドンに渡ったあとは魔術について勉強を本格的に始めている。

その後ロンドンにてとある日本人と知り合い結婚する。

 

 

凛を見送ったあと再び特状課に向かう。しかし既に姐さんは家に帰っているらしい。無理もない。現在夜の七時。働く人間は殆どが帰路についている頃だから。

姐さんの家に着きインターホンをならす。中から出てきたのは一夏だった。

 

「あれ剛さん。千冬姉に用ですか?」

 

「そうなんだけど・・・姐さんいる?」

 

「いますけど・・・明日早いからって、もう寝てるんですよ。起こしますか?」

 

「いやいい。仕事なら仕方ない。姐さんには行ってくるって言っといてくれ」

 

「明日ですもんねアメリカ。いいな~」

 

「お前はまず彼女を大切にするところからだな」

 

分かってますよと笑う一夏。俺も最初のうちはかなり浮かれてたな。初々しい顔だ。織斑家を後にして家に戻る。俺も明日は早いからな。

 

 

次の日。愛歌と一緒に空港で飛行機を待つ。その間にも愛歌の友達が見送りに来た。もちろん山ちゃんも来た。でも姐さんたちは来なかった。まあこんな平日なら来れる人がいなくても当然だよな。

 

「剛、そろそろ飛行機来るみたいだよ」

 

「うん。分かった」

 

「・・・・・大丈夫?」

 

「え?何がさ?」

 

「だって、なんか辛そうだよ剛。顔を見たら分かるよ」

 

「大丈夫だよ。だいたい想像できてたし。仕事なら仕方ないよ」

 

飛行機に乗り込む。その時の顔は愛歌にはどう写っていたか。変な気分を払うために外へカメラを向ける。そこには、

 

「あ、あれって・・・・・姐さん?」

 

近くの芝生から姐さんがデッカイ旗を振っている。旗には『アメリカでも頑張れ剛!!』と筆で書かれていた。更にその近くにはマドカや元亡国メンバーが横断幕を広げていた。そこには『ドライブマーク』と『ファイト』の一文字。

 

「まったく・・・・・恥ずかしいよ、姐さん」

 

「よかったね剛」

 

「まったくだよ。いい姐を持ったよ、俺は」

 

飛行機は離陸する。当然姐さん達の姿は見えなくなる。それでもまだ旗を振っているような気がする。

 

「ありがとう姐さん。アメリカでもひとっ走り、行ってくるぜ!」

 

 

篠ノ之剛

 

日本で仮面ライダーマッハとして戦った。その後アメリカに再び渡り、トップクラスの成績で卒業する。

更にその後世界中の写真を撮り、その写真で賞を獲得する。

三年後、沙条愛歌と結婚、一人娘の霧子と一緒に暮らしている。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ありがとう皆。剛のために集まってくれて」

 

「お前があんな旗を持ってくるとは思わなかったけどな」

 

「凛の時もありがとうなマドカ」

 

「お姉ちゃんの頼みだからね」

 

昨日は凛を、今日は剛を見送るために皆に集まってもらった。昨日は三人の仮面ライダーと、今日は元亡国メンバーと見送った。

 

「そんじゃ学校に戻るぜ。お前のとこの弟が彼女とイチャイチャして山田先生困ってるぞ?先生として言っておくからな」

 

「はあ、やっぱりな。すまん。私からも言っておく」

 

礼子はスコールとフォルテ、ダリルを連れて車で帰っていった。残ったのは私とマドカ。

 

「さて、私も行くよ」

 

「何処にだ?まさかお前も旅に?」

 

「よく分かったね。今日から暫く旅に出るよ。この機械の体で、機械の体だからこそ出来ることを探しに」

 

マドカはデカイ鞄を担ぎ、シフトブレスにISを装填する。見にまとったのは白騎士の後継機、白式。そのままマドカは空へ旅立っていった。もう一度会えるのはいったい何時になるのか。

 

「まったく、どいつもこいつも。おーーい!!年末は帰ってこいよぉ!!」

 

マドカの姿は既に見えない。何処に行ったのかも分からない。それでも大丈夫だ。私はずっと待っているから。

 

 

織斑マドカ

 

仮面ライダーダークドライブとして千冬たちと対立、その後協力する。戦いが終わったあと『世界中から戦争をなくす』という目標のもと日々空を駆ける。

 

次の日。私は大天空寺に来ていた。目的は両親の墓参り。両親は偶然にも同じ日が命日だった。父さんを早くになくした母さんにとって同じ命日になったのは、せめてもの救いか。

 

「・・・・・・・・・・」

 

二人に今までのことを報告する。仮面ライダーとしての戦いの日々。大切な仲間との出会い、別れ。その他にも楽しかったこと、辛かったこと、悔しかったこと、嬉しかったこと。

 

「・・・これからも見ててね父さん、母さん」

 

墓参りを終え大天空寺を出るとき、一人の青年が階段をかけ下りる。そのあとをお坊さんと女性がついていく。

 

「ちょっと待ってよタケル!」「待ってくだされタケル殿ぉ~~!」

 

「ほら二人とも早く!!」

 

タケルと呼ばれた青年。そいつのことは何も分からない。ただ分かるのは私と同じ気配を感じたこと。そしてやっと理解できる。

 

「おい!そこの!」

 

「え?俺ですか?」

 

「ああそうだ・・・・これから大変かもしれんが、頑張れよ後輩!」

 

そういってとあるものを見せる。するとタケルは理解できたのか、

 

「はい!頑張ります先輩!!」

 

元気な返事をして更に階段をかけ下りる。それを見届け、私も階段をおりる。

 

「元気な後輩がいるんだ。大丈夫だよな、ベルトさん」

 

タケルに見せたとあるもの=シフトスピードをみる。赤い塗装がほぼ剥がれており、黒いボディが見えている。これは戦った証、仮面ライダーとして戦った日々の証だ。そして私が『ヒーロー』だった証でもある。

 

車に乗り込む。中古車のために中々ドアが閉まらないが、何となくそれも彼を思い出す。あいつも頑固だったな。中古車のくせにエンジンはすぐにつく。そこもそっくりだ。

 

「さあいこうかベルトさん。ひとっ走り、付き合ってもらうぞ」

 

中古車の車種名は『クリム・スタインベルト』。あの戦いを日々共に駆け抜けた戦友の名前と同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

あれからいったいいくつもの時が流れたか。いやそんなに流れていないかもしれない。クリスマスの日。私達特状課ライダーズは一人の男の目覚めを待っていた。

 

そして男は目覚める。クールな表情。しかしそこには昔のような冷酷さはなく、仮面ライダーとして共に戦った時と同じ、何物にも興味津々でどこかぬけている顔。

 

そして私達は皆で伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり、チェイス」

 

そしてチェイスは、

 

「ただいま、皆」

 

静かに、笑みを浮かべながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェイス

 

魔進チェイサーとして敵対し、仮面ライダーチェイサーとして悪と戦った。戦いの最中命を散らしたが、剛に託した『シグナルチェイサー』のデータから篠ノ之束が再び作製。千冬たちの友人ととして日々を暮らすことに。

 

 

 

 

織斑千冬

 

仮面ライダードライブとして戦った。ベルトさんとの絆は切っても切れないほど強固なものとなった。

戦いの終わったあとは特状課のエースとして活躍、中古車の『クリム・スタインベルト』を愛車として、黒いキャリーバック(金庫)を引きずりながら、今日も事件を捜査している。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

こうして千冬たちの戦いは終わりを向かえた。しかし彼女たちの未来はまだ始まったばかりである。そして、そのひとっ走りは・・・・・新たな後輩へ受け継がれ、ずっと続いていく。

 

 

 

 

 

おわり




どうも 無限の槍製 です!

遂に『千冬ドライブのひとっ走り』完結でございます。ちょうど約一年ですかね。ここまで頑張れたのも読者である皆様のおかげです!

次回作はまだ未定ですが、その時はまたよろしくお願いします。

千冬「この物語をお気に入りに設定してくれた人、感想をくれた人もわざわざありがとう」

凛「千冬ドライブのひとっ走りは一旦終了です」

チェイス「だがもしかしたら何らかの機会に短編なんかをあげるかもしれん」

剛「そんときはまたよろしくね」

マドカ「それではこのへんで!」


今までひとっ走り付き合っていただき、ありがとうございます!!!それではまたどこかで!!
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