爆発、風圧。
俺の安眠をみごとなまでに妨害してくれたのは、それらに加えて脳天への小さな瓦礫の激突だった。
「待ってくれリン、話せばわかる!!」
「一夏ぁ、覚悟しなさいよっ!!」
「頼む、頼むから教室で衝撃砲は止めてくれぇっ!!!」
寝ボケ眼が捉えた景色。壁には穴が開き、ISを展開して飛び出してきたのはリン。狙われるのは一夏。
シャルルが実は男だった……その話をどこから聞いたのか、わざわざ隣のクラスからお出ましのようだ。
いつも、唐変木で不憫な親友・織斑一夏を眺めてニヤニヤするのが趣味の、俺――金沢竜也は、今日もいつも通りに目の前の惨状を楽しもうとしていた。
楽しもうとしていたのだったが。
俺の真横で衝撃砲を食らったはずの一夏は……、また別のISを展開した少女によって守られていた。
「……あれ? 生きてる……?」
「大丈夫か?」
ラウラ・ボーデヴィッヒ。軍人のような態度と言動が特徴的な、俺らと同じクラスの一員。
その実、彼女は軍人なのだが……その話は面倒くさいので止めておこう。
使用ISは『黒い雨』。リンの衝撃砲を止めたのはおそらく、その最大の特徴である『AIC』という防御機構だろう。
「あぁ、ありがとう」
「…………」
一夏から礼の言葉を受け取り、ラウラはその鋭い眼差しをこちらに向ける。
なんだろう、めっちゃ見てくる。可愛い女子に見つめられるのには慣れてないんですが、俺はどうしたらいいんでしょう。
衝撃砲の余波の爆風を浴びて崩れた髪も直し終わったことだし、とりあえず声をかけてみることにしよう。
「あのー……何か御用でしょうか?」
「あー……う……」
目の前で真っ赤になってしまうラウラ。
……いや、頼むから何か言ってくれ。このままでは教室に広がる静寂の中で唯一声を出した自分が恥ずかしくなってしまうではないか。
すると願いが叶ったのか、ラウラは頭を横にブンブン振って再度こちらを見、口を開いた。
「ええいっ!」
「ん? っふぐ!?!?!?!?」
柔らかい、何かが俺の唇に重なった。…ゑ?
これって……これは……
「っはぁ、はぁ……いきなり何しやがる!!」
混乱する脳をムリヤリぶん回し、何とか言葉を紡ぐ。
だ、だって俺はこいつに……いきなり『キス』されたんだぜ!?何を言ってるか分からないと思うが、おれも何をされたか……いや、おれはわかってるわけなんだけど!!
息も絶え絶えの俺の問いに、ラウラは胸を張って答えた。
「お、お前は今日から私の嫁だ! 異論は認めん!」
「はぁああああ!?」
ぶん回していた脳みそでも追いつけない思考回路だ! だって、だって……一夏を守ったはずの彼女は、なぜか俺にキスをして! いきなり俺に告白(告白といえる内容かどうかは知わからないが)までしてきやがったんだ!
いや、確かに俺はこの前、学年別トーナメントでお前と一緒に一夏たちと戦ったよ。俺は一夏の親友として、お前はあいつの敵として。かなりいい試合だったし、俺は全力でサポートに回ったから、負けたけど悔いは無かった。
……けどね。それ以降特に関わりもなかったし……どこにお前に告白されるような所があった?
「なななんで俺なんだよ!?」
「い、嫌なのか?」
「いや、別に嫌では無いけど! そうじゃなくて……」
うん、嫌じゃなかったけど。むしろ嬉しかったけど。相手は可愛い女の子ですから。
でも疑問はいくつか残ってるわけで。
「なんで嫁なんだ? 俺男だよ、間違いなく」
「日本では、自分が気に入った奴を『嫁』と呼ぶと聞いたぞ」
「おい、こいつに変な事吹き込んだアホは誰だ。のほほんさんか」
布仏は必死に『違う違う』とアピールしている。うん、ごめんね。のほほんさんはちょっと抜けてるけどアホじゃないもんね。あとで謝っておこう。
でもまあ、よく『~は俺の嫁』って言ってる奴もいる(ただし男に限る)からなぁ。間違ってるとも言い難いか。
丁度呼吸も落ち着いてきたところで、本来の騒ぎの真っ只中な一夏君が近づいて参りました。
「なんか、大変そうだな竜也。」
「うん、まあね。けど、人の心配するよりも、とりあえず自分の身を案じたらどうだろう」
「え?」
一夏に集中する、いや~な女性陣の視線。近くにいる俺にまで刺さってるよ。痛いよ。
「と、とりあえず着替え行くか(汗)」
「あーあー、焦るな、引っ張るな。」
まぁ、その後逃げようとした一夏が幼馴染たちに見事捕獲され、こってり絞られたのは言うまでもなく………。
残っている分は連日6時頃に投稿させていただきます。