ラウラが夫!俺が嫁!?   作:柘榴

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海に臨むための準備とは

『もう夏だね。』

 

 

 そんなセリフが似合う天気。晴れ渡る空、雲は筋ひとつ無い。見上げれば日がジリジリと照りつけていた。

 

 

「きょーもいー天気ー」

 

 

 某栄螺アニメのフレーズを呟きながら、爽やかな風を浴びる。汗ばんだ肌に心地いい風だ。

 現在位置は学園の屋上。初夏の風が吹き抜けていた。

 

 

「いー天気ー。まじでいい天気。昼飯なに食べよーかな~。」

 

 

 因みに、ここには俺一人しかいません。要は独り言。

 ここに人がいないのはかなり珍しい事だ。たいていは中央にある芝生やらに人がいるから。

 たまには女子の喧騒の無い、静かな風景というのも……ちょっと嬉しい。

 

 

「一人は楽しいなぁ。今なら何でも出来そうな気がするぜ。ちょっとここから飛んでみようか」

 

「おーい、竜也」

 

 

 一人の時間を楽しんでいたのに、屋上入り口のほうから声をかけられた。

 当然、その主は。

 

 

「よう。やっぱりここだったのか。 教室にいないから探しちまったよ」

 

 

 IS学園唯一の男子、織斑一夏(失礼、俺を入れたら唯二)。

 この初夏に似合うさわやかさを漂わせながらこちらに近づいてきやがる。

 

 

「俺の楽しい一人の時間を邪魔しないでくれや……。」

 

「一人の時間って……つまんない男だな。そんなこと気にすんなよ。」

 

「つまんないとは何だつまんないとは。普通に失礼だぞお前、少しは気にしろよ。」

 

 

 言いながら、俺に向けて缶飲料を投げる一夏。

 それを受け取り、品名を確認して苦い顔を見せた。

 

 

「おぉい、缶コーヒーはブラックにしやがれ。微糖とはなんだ微糖とは」

 

「あぁ。そうか、すまん。」

 

「まぁ買ってきてくれただけでも嬉しいからいいけどさ。」

 

 

 なーんてツンデレ気味につぶやいて缶を開け、仰いだ。甘い。

 どうも缶コーヒーの不自然な甘さが気に食わない。女子が多いせいかもしれないが、ここの自販機にはこの手の糖入コーヒーが多くて溜まらん。

 

 

「で、何か用か? 用もないのに探したとかぶっこいたらぶっ飛ばすでござるよ」

 

「うん? あ、そうそう。」

 

 

 何気ない質問、空いた一拍。一夏はぐっと一気に缶コーヒーを飲み干した。

 その次の言葉に俺は戦慄し、コーヒーを吹きだすこととなる。

 

 

「付き合ってくれ。」

 

 

 

 

「………ごめん、むり。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巡回バスの窓から外の景色を眺めながら、大きく溜め息をつく俺。

 窓に映る顔は朝と違って、かなり疲れていた。あと眉間によった、しわの深いこと深いこと。

 

 

「言い方ってもんがあるだろうよ。」

 

「そうか? でも最終的に伝わったんだからいいじゃないか」

 

「……ダメだぁ。シャルル、こいつはダメだ」

 

「はは……そうだね……」

 

 

 『付き合ってくれ』は、買い物に付き合ってくれという意味だったらしい。もしも言葉通りの意味だったら、この小説にもタグを1つ追加しなけりゃならないところだった。

 

 

「何かまずかったか?」

 

「だーいもーんだーい☆」

 

 

 いきなりそんなことを言われて、ホイホイ着いて行く奴はそういないよ。難しいなぁ。こいつ日本語喋ってるはずなのに、会話がどうにも難しい。

 最悪の場合、告白とかもこんな感じになるんじゃないのか? シャルル…いや、シャルロットも苦労するはずだ。

 

 

「で、もうすぐ行われる臨海学校の準備の買い物をシャルロットに誘われた一夏君は、水着を買うのに『一人だと』寂しいと思った、ゆえに俺も呼んだわけ?」

 

「あぁ。一人で水着を買うのは気が引けてよ。お前が来てくれれば楽かな、と」

 

「ふーん。」

 

 

 シャルルの誘いにわざわざ俺まで呼んでくれるとはね。嬉しい限りじゃないの。一人で水着選びは寂しいねー、そうだねー。何でシャルロットと別行動前提なんだろうねー。

 ……なんて言うか、

 

 

「……やっぱりダメだよ、シャルル。」

 

「だよね……。」

 

「?」

 

 

 俺たちが顔を合わせてうなずいている間、阿呆は疑問符を浮かべている。

 今度はシャルルが聞いて来た。

 

 

「そう言えば。竜也は?」

 

「何がよ。俺はここにいるぞ。目の前にいるのに無視するとか、流石にそれは八つ当たりじゃないですか」

 

「そうじゃなくて! ラウラは誘わなかったの?」

 

「……あ」

 

 

 最近、部屋にも潜り込んで来なかったから忘れていた。

 殺されるな、これは。一夏のことを悪く言えなくなってしまったぞ。

 

 

「……ふぅ、竜也も人のこと言えないね」

 

 

 返す言葉もございません。

 埋め合わせの日にちと、土下座の用意と、火葬場の確認をしているとき。待てよ、シャルル? ふと思い出した。

 

 

「シャルル、そういえばと言えばそういえば。」

 

「なに?」

 

「お前、確かラウラと相部屋だったよな」

 

「えっ。あ、ああ、うん。」

 

 

 だったら、シャルルからラウラに言えばよかったはず(責任転嫁には違いないが)。

 シャルルは申し訳なさそうに。

 

 

「えと……今日のことでいっぱいいっぱいで…。」

 

「あー、はいはい。悪かったよ、俺が悪うござんした。」

 

 

 恋は盲目だなぁ。

 それでも隣で、シャルルに向かって『何もじもじしてんだ?トイレか?』って聞く一夏は放置。シャルルの代わりに俺がぶん殴ってやろうか。あ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目的地、毎度おなじみのレゾナンスに着いたところで、バスから降りた。バス一本でそう時間もかからずに来られるんだ、本当に便利なところだよなぁ。

 

 

「さて、どこから回るか?」

 

「そうさなぁ。」

 

「………」

 

 

 シャルルさんがこちらを見て来るよ。若干怖いよ。

 でも、ここで空気を読んでも、俺ひとりぼっちになっちゃうしなぁ。

 ……お。

 

 

「ちょっとトイレ行って来るから、お二人は先に行っててくれ」

 

「ん、そっか。じゃあ行くか、シャル」

 

「う、うん!」

 

 

 ~アイコンタクト&テレパシー~

 

『ありがとー、竜也!』

『感謝しやがれよ?頑張ってな』

 

終了。

 

 嘘だよ、唯のヒソヒソ話。

 

 二人の姿が人混みに飲まれるのを見て、歩を逆方向に向けた。

 

 

「さーて、と」

 

 

 柱に寄りかかり、軽く呟く。

 

 

「どうかしましたかね、Frulein(お嬢さん)。尾行とは実に趣味が悪いなぁ」

 

「!」

 

 

 柱の影から、ラウラが登場する。仏頂面にさらにドス黒い雰囲気が重なり、不機嫌さが滲み出ている。これはやばい。一夏がいたからいいものの、もしもシャルルと二人きりとかだったら後ろから殺されていたかも知れん。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。実は柱に寄りかかってドヤ顔で声をかけたはいいものの、正直もう足の震えが止まらないですはい。

 このドヤ顔のまま何か切り出せないだろうか。えーと、えーと。うーんと。

 

 

「あー、えーっとだね。その……うん。実はだね、ラウラへのプレゼントを密かに買おうと思ってたんですよ」

 

「ほ、本当か!?」

 

「ひっスイマセン、マジすいませ……えっ」

 

「そ、そうだったのか……それは……」

 

 

 適当についた嘘だったのに、ラウラさん本当に信じてなんかブツブツ自分の世界に入っちゃいましたよ。

 えっ、ラウラさんってそんなにちょろい人でしたっけ。一夏ぶん殴って殺そうとしてた頃のアナタは何処へ?

 

 ま、まぁいいか。とりあえず早く二人と合流したいし。

 

 

「と、いうわけで一緒に行こう。一夏たちと合流しないと」

 

「ふ、ふんっ。仕方ないな、付き合ってやる……。」

 

「ありがとう。」

 

 

 手を繋いで、歩き出す。

 が、ふと一つ気づいた。今日はそんなことが多いな。

 

 

「ラウラ、この前の服は?」

 

「ん、汚してはいけないからな、部屋にしまってある」

 

 

 そう、雰囲気に押し流されて気付いてなかったけど、ラウラはいつも通りの制服姿だった。

 

 

「悪くは無いんだけどさ、やっぱり、着てくれると嬉しいんだけどな」

 

「か、考えておこう…」

 

 

 多分、もう二人は水着売り場に真っ直ぐ向かっただろう。その旨もラウラに教えつつ、売り場へと向かった。

 

 

「よし、ここだな」

 

 

 レゾナンス2階、水着売り場。

 二人を探すために店内に足を踏み入れた時、ラウラがモジモジと声をかけて来た。

 

 

「……ゃは……」

 

「んー?」

 

「り、竜也は、わ、私の水着姿は……見たい、のか?」

 

 

 なんか、あれだね。 行動が、一々可愛い。ヤバイ。何がやばいかは明言しないけど。

 

 

「当然。楽しみだよ」

 

「そ、そうか――。そうか、そうか」

 

 

 何度も、自分に言い聞かせるように頷くラウラ。今日は何度も自分の世界に入りますね。

 そうこうしている間に、シャルル&一夏ペアを発見。

 

 

「お、竜也。遅かったな……あれ」

 

「よ。さっき、途中でラウラと "偶然" 出会っちゃってね。」

 

「そうなのか。めずらしいこともあるんだな」

 

「へー、"偶然" ねえ。」

 

「う……。」

 

 

 ラウラはシャルルとこそこそ話を始めた。シャルルはもう色々と勘付いてるらしいな。

 その後、シャルルがこっちにやって来る。

 

 

「少し、別行動にしようか。」

 

 

 提案系だったが、目は『別行動にするからね』と言っている。なんかシャル怖い。

 

 そんな感じで、現在一夏と二人。

 

 

「何にする?」

 

「かぶらない方がいいだろ?柄も色も。」

 

 

 それはそれで、女子人気が増えそうだが。いや、俺はそういう人気はいらないけど。

 

 

「んじゃ、俺はこれー」

 

 

 適当に、トランクスタイプの水着をとる。

 色は黒、ところどころに白いラインが入っているが。

 

 

「それじゃ、俺はこれにするか。」

 

 

 一夏も決まったようだ。ちょうど女子二人が帰って来る。

 

 

「おー、決まった?」

 

「うん、大体は。それで、二人にも見てもらおうと思ってさ」

 

「俺らに?」

 

 

 まぁ、見たいけども、なんかなぁ。

 何か言おうか迷っていると、一夏は連れて行かれた。 ラウラと俺だけ、取り残される。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「えーっと」

 

「……私の水着は、決まっているのだ」

 

「あ、そうなんだ」

 

「だが、シャルロットに言われてな」

 

「…………ラウラ」

 

 

 わしゃわしゃと、ラウラの頭を撫でる。言いたい事は分かるさ。でもな、俺としては、な。

 

 

「ひゃっ!?な、なにを」

 

「嬉しいんだけど、やっぱり……海で見たいな」

 

「……」

 

 

 そう言うと、ラウラは表情を少しだけ曇らせたが、

 

 

「…分かった」

 

 

 と言って微笑った。俺の頬も少し緩んだ。うん。なによりなにより。

 

 

「じゃ、レジ行くか。ちゃっちゃか会計済ましちゃいましょー」

 

「ああ」

 

 

 レジまでゆっくり、話しながら歩いていると、不意に客と思わしき女に声をかけられた。

 

 

「ちょっと、そこのあなた」

 

「?」

 

 

 周りを見回す。女の視線の先には、竜也一人。

 

 

「俺?」

 

「そう、あなた。そこの水着、片付けておいて」

 

 

 ……またか。

 なんか、説明するのも面倒だが…ISが生まれてから、女尊男卑がガンガンに進んでいる。

 おかげで、ISをもっていない、こういうのまで調子に乗って…。

 適当に、おどけて誤魔化すか。

 

 

「ごめーん、俺バカだからやり方わかんなーい☆」

 

「……バカにしてるの?」

 

「バカになってるの(笑)」

 

 

 へっと笑ってやると、ぷち、と、女の青筋が切れる音がした。

 

 

「……ふん、まぁ仕方ないわね。男なんてそんなものよ」

 

 

 すげえ、俺全世界の男代表だよ。そんな大それた人間じゃないんだぜ?

 

 

「アホで、礼儀知らずなのが男のあり方よね」

 

「あははー」

 

「……おい」

 

「ん?」

 

 

 あ、やばい。これはまずい展開だ。となりにラウラがいたのをすっかり忘れてた。

 がっつり女を睨みつけているラウラ。女は怯んで少しその場から引いた。

 

 

「私の嫁の悪口を言うのはやめてもらおうか。」

 

「よ、嫁?」

 

「ラウラ、外でそれ言うのやめよう。みんな見てるし。俺も恥ずかしいから」

 

「む……しかし、お前はバカではないし、礼儀だって知っている。料理だって上手い」

 

「おいおい」

 

 

 あんまり褒めないでくださいよ。いきなりのことに顔が赤くなっちまいますから。

 女は俺たちの姿を眺めて、鼻で嗤った。

 

 

「なんだ、あなたの連れ?全く、男が男なら飼い主も…」

 

「…何だよ」

 

「っ!?」

 

 

 女のそこから先の言葉は読めていた。ちょーーっとキレたよ?俺を馬鹿にするならまだいいさ、ただラウラを馬鹿にするのは許せないな。

 

 

「調子に乗ってていいのか?」

 

「な、何よ!?文句あるの!?」

 

「んー?俺はバカだから別にないが……ま、夫の悪口言われそうになったら…ねえ?出ないワケには行かないでしょう」

 

 

 睨み、言いながら頭を掻く。 女はたじろいで、

 

 

「な、なにかするつもり!?警備員を呼ぶわよ!!」

 

「…あのさぁ、お嬢さん」

 

「何よ!」

 

「あんまりバカと話してると…」

 

 

 目への力を抜き、微笑む。

 

 

「バカになるよ」

 

「なに言って………うっ!?」

 

 

 女は急にふらつき、口から泡を吹いて気絶した。

 

 

「ほーら、バカになった。ざまあみやがれ。」

 

「竜也」

 

「あ、ごめんラウラ。待たせたね。……あんなに褒められるとは思わなかったけど」

 

「あ」

 

 

 今頃赤くなっても遅いよなぁ。忘れてくれ!なんて頼まれるけど、もちろん忘れません。

 

 

「そ、そんなことはいい!」

 

「えー、もっと褒められたーい。」

 

「うるさい! こ、これはどうするんだ?」

 

「む、うん。警備員さーん」

 

 

 近くにいた警備員を呼び、女を運ばせる。

 その運ばれて行く様を眺めて、少し心の中で微笑った。

 

 

「さて、一夏達と合流しようか」

 

「あぁ、そうだな」

 

「私が案内してやろう」

 

「あ、お願いしま………はっ!?」

 

 

 声に反応して振り向いたが、ちがう。これは聞いたことがある声だ。

 が、それに気付いた時にはすでに遅し。顔面で、出席簿を食らう羽目になった。

 

 

「ぐぼわあぁああいうえおーーーー」

 

「こんな所で何をしている、馬鹿どもが」

 

「きょ、教官!どうしてここに!」

 

 

 そう、織斑千冬。彼女だけで無く、副担任の山田先生まで一緒にいた。

 

 

「…もしかして…」

 

「あぁ、最初から最後まで見ていた」

 

「ナ、ナンダッテーーー!」

 

「全く…一般人にあれをやるとは」

 

 

 ガシ、と音がする。…ガシ?

 

 

「お前もこっちに来い。ラウラはその辺りでも見ていろ」

 

「ぎにゃーー!助けてラウラーー!!」

 

「……すまないっ……」

 

 

 

 

千冬に連れて行かれた先には、シャルロットと一夏が正座をして待機していた。

 

 

 

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