ラウラが夫!俺が嫁!?   作:柘榴

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連日投稿とはなんだったのか。予約投稿していたはずができてなくて私もびっくりしました。


臨海学校1日目!

 

 

 

 

「ふはひっは・ふぁふほほふ(クラリッサ・ハルフォーフ)?」

 

「うむ」

 

 

 今日は臨海学校初日だ、この後バスに乗って旅館へと向かうことになっている。 早めの朝食をラウラと囲う会話の中で出てきた、聞きなれない名前を俺は復唱する。

 

 

「とりあえず、口に入ったものを飲み込んでからだ。ほら、味噌汁」

 

「うむ。……ふはー。それで、そのクラゲッサとやらが? ラウラに?」

 

「クラリッサ・ハルフォーフ。私の隊の副隊長だ。 色々と日本の文化を教えてくれる。」

 

 

 自信満々のドヤ顔で仰ってますがね、それほとんど間違ってますから。

 あなたこの前『副隊長が赤い米を炊いて送ってきてくれたぞ!』とかいって何か持ってきたでしょ? 俺あんな真っ赤な米見たことないんだけど。アレもその人が送ってきたってコトでしょ?

 

 

「だって日本では、めでたい事があったら赤い米を炊くんだろう。」

 

「今度お赤飯食べさせてあげるから。あんな合成着色料の塊とはかけ離れた味わいのやつをね!」

 

 

 まあ、なにやらそういう話をしている内に部隊員と仲良くなれたらしいし。……そのあたりもちょっと心配してたりはしたんだよなー。ラウラ、人間関係って苦手そうだもの。

 

 

「ちなみに、ちなみにだが、今回の私の水着はクラリッサが選んでくれたものだ」

 

「……喜ぶべきなのかしら?それは」

 

 

 いや、日本文化云々は置いておくとして、女性が女性の服を選んだんだぞ。そのセンスは俺よりもはるかに上のはず……はず!はずだっ!

 そう自分を納得させ、さっさと自室に戻って荷物の確認をする事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 実は、むかーしむかしだが。俺はバスに乗るのはあまり得意ではなかった。

 簡単に言えば酔いやすく、すぐ体調が悪くなったのだが……ラウラや一夏たちとでかけるために幾度もバスに乗っていたため、随分と慣れていた。もう寝ることも簡単である。早起きしたのも久々で、もう眠くて眠くて。

 

 

「ぐー……」

 

「起きろー、竜也。もうすぐ着くぞ」

 

「ぐむ。やだ。眠い」

 

「いや、別に俺はいいんだが。女子達がメモリーが無くなるってうるさくてな」

 

「なぬ!?」

 

 一夏の声に目を開くと、バスの奥の方からカメラを向ける女子達がいた。あぁああぁぁぁぁあああ! 俺の寝顔写真で彼女らのカメラのメモリーが埋まってしまう!

 

 

「バッチリ撮らせてもらったよー!」

 

「まずい! ラウラ、そのカメラ取り上げろ!」

 

 

 ちょうどカメラを持った女子の近くにいたラウラに声を掛ける。

 が、ラウラは頬を赤らめて

 

 

「その写真、や、焼き増ししては貰えないだろうか」

 

「いいともさ!」

 

「ラウラーーーー!謀ったなぁああああ」

 

 

 俺の寝顔写真が学園女子内に出回ってしまうこととなってしまった。とほほ。肖像権の侵害で訴えられませんか? ダメなら売り上げの3割をください。

 流石に騒ぎすぎたか、怒気の含まれた千冬さんの声がバス内に響き渡った。

 

 

「五月蝿いぞ、お前達!もうすぐで到着だ、静かにしろ!!」

 

「「「「「はーーい」」」」」

 

 

 千冬さんの言葉で騒ぎは収まったが、そこはお泊り行事。女子達の興奮はそうそう収まらないようだ。 ラウラは遠くで何かを念仏の如く唱えているし、隣の一夏にはいつもの女子軍が集中して来るし。大丈夫かこれ。

 

 しかし旅館に到着してからは流石だった。千冬さんたちの指示に従い、4台のバスから降りてきた生徒達は素早く列を作る。

 

 旅館の名は花月荘。中々ステキな外観である。

 千冬さんから一通りのお話を聞いていると、これまた綺麗な女将さんがこちらにお辞儀した。

 

 

「あらあら、また元気な1年生さんたちですね。……それで、こちらのお二人が?」

 

 

 女子列からはずれに立っていた、俺達男子二人を見ながら、女将さんが千冬さんに聞く。

 

 

「ええ、色々と面倒になるでしょうが、お願いします。ほらお前達、ちゃんと御挨拶しろ」

 

「お、織斑一夏です。よろしくおねがいします」

 

 

 ぐいぐい頭を押されながら、一夏が苦しそうに固い声を出す。千冬さんの前ではイケメンも唯の弟だねえ。

 俺も頭を下げて、少々の社交辞令を含めて挨拶する。

 

 

「金沢竜也です。いやぁ、こちらの女将さんがこんなにお美しい方だとは思いませんでしたよ」

 

「あら、お上手な一年生さんだこと。 清洲景子です。こちらのお世話もいっそう気を入れなくては」

 

「まったく……何を言ってるんだお前は。 お気になさらず、女将さん。こいつらはいつもこうだ」

 

 

 こっそり殴られた拳が随分とふかぶか突き刺さりました。痛いです。訴えたら勝てますよ、先生。

 説明によれば、なにやらすぐに海に出られるんだそうです。初日は確か終日自由時間になってたはずだ。今日はなんだか『はず』が多いな。皆ぞろぞろと案内された部屋のほうへ進んでいった。

 が、俺の服の袖がクイクイ引かれた。振り返れば珍しい方がいらっしゃる。

 

 

「ねーねー、かなや~ん、おりむ~、二人はどこのお部屋なの~? 遊びに行くからおーしえてー」

 

 

 あらあら布仏本音、通称のほほんさんじゃありませんか。あなたの言葉に深い意味はないんでしょうけど、一瞬で周りの女子の目がギラギラし始めたから。部屋、部屋。そういえば一覧に載ってなかった。

 

 

「一夏、話聴いてる?」

 

「いや、俺は何も。廊下にでも寝るんじゃないか?」

 

「それか野宿、だな。」

 

「い~な~、海見ながらすやーってできるんだー」

 

 

 ちょっと可愛かったので、のほほんさんのほっぺたをぐにぐにしていると、千冬さんからお声がかかった。待たせると怖い、ぱっと手を離して『またあとでねー』と伝えておいた。

 

 

「ふあぁ……」

 

 

 しまった、眠気が戻ってきた。のほほんさんの毒気にあてられたらしい。目をこすりながら一夏の後を追いかけた。

 着いたのは、『教員用』と書かれたお部屋。一瞬間違いだろうと思ったが、千冬さんがそんなことをするはずないか。

 

 

「あぁ、『教員用』と書いてはあるが気にするな。他の先生方には伝えてある。最初は個室にしようという話もあったんだが……私と同室ということになってしまったわけだ」

 

 

 要はさっきの目をギラつかせてた方々への対策ですね。さすが千冬さん。危険を冒してまで、千冬さんの部屋に入り込む勇気のある方はいないでしょう。

 

 

「千冬さん、自分の事よく分かってますねー。」

 

「なんだ、馬鹿にしてるのか?」

 

「まさか(笑) そんなわけあるはずが……ごっふぉ」

 

 

 出席簿アタックが脳天に突き刺さる。いつも思うんですけど、どこから出したんですか、それ。

 それよりなにより、俺としては気になる、というか気まずい点が1つ。

 

 

「千冬さんは一夏と、姉弟水入らずってほうがよかったんじゃないですか?むしろ一夏が。」

 

「な、何言ってんだ竜也! 俺はそんなっ」

 

 

 慌てるな慌てるな、何でお前はそんなに本心を隠すのが苦手なんだ。

 千冬さんは溜め息をつきながら、自分の額に手を置いた。

 

 

「下らんことを……そもそも、私は教員だ。先ほどから気になっていたが、金沢。呼び方を改めろ」

 

「はっ、織斑先生っ」

 

 

 この人は本当にぶれないなあ。一夏にはちょっと申し訳ないが、これなら仕方が無いか。

 ま、少しくらいはそういうのを演出してあげるとしますか。

 

 

「それじゃあ俺は荷物も置いたしさっさか着替えて泳ぎにでも行きますかな! ではお先に失礼します!」

 

 

 千冬さんに変なごまかしは効かないんだ、それなら思いっきりおどけて出て行くこととしよう。部屋を飛び出して、別館のほうへと向かった。

 

 

「あ、金沢君。こっちは教員用の棟ですが……」

 

「ん? ああ、山田先生。いやいや、俺は一夏と千冬さんと一緒の部屋でしょう?しっかりしてください」

 

「ああ、そうでした! うっかりしてました……」

 

 

 この人もこの人でどこかしら危なっかしいよなぁ。どうやら千冬さんに用があるらしいので、雑談も短く別れることとなった。

 

 

 

で、だ。

 

 

 

 俺はこの目の前にあるウサ耳をどうしたらいいか悩んでいる。

 皆さんは篠之乃束さんを御存知だろうか。うん、知っているという前提で話を進めていくぞ。

 そもそも俺は、一時期束さんに世話になってた。束さんが姿をくらましている辺りのことだ。

 そのとき、俺は彼女に突如拉致られて身の回りの世話係にされた。なんてこった。両親がいないから全く心配される人はいないんだが。

 恐らく、俺の家事スキルに眼を付けられたんだと思う。まったく、はた迷惑な話です。

 

 で。このウサ耳を俺はどう処理すべきか。これは大事なことですよ。

 

 選択肢は3つというとこか。

 

1、無視する。

2、無視する。

3、むしる。

 

 これは一択だな。

 

 

「いやはや、晴れてよかった! いやー本当に海水浴日和だな!」

 

 

 別館の着替え場へとレッツゴー!触らぬ神にたたり神。ちがった、たたりなし、だ。

 

 

「りっくん?」

 

「あ、はーい」

 

 

 後ろから聞こえた声は、どうしようもないあの方のものである。どこから出てきたんだ。

 

 

「おはよーりっくん。今日も相変わらずのイケメンだねぇ」

 

「いえいえそちらこそお綺麗でございますよ。今日は不思議な国にお住まいのアリスちゃんですか」

 

「ふっふーん! にあうだろーそうだろー!」

 

「満足ですか。それでは」

 

「はいすとーーっぷ」

 

 

 立ち去ろうとした俺の首をがっしり掴んでくる。中々のアイアンクローでございますね。

 

 

「箒ちゃんは?」

 

「も、もうすぐ来ると思いますけどもぉおお」

 

「そっかー。じゃあもう少し待ってようっと!じゃ、ありがとねー」

 

「は、はいぃいい」

 

 

 アイアンクローから解放され、再び振り向くと……そこに彼女の姿は無い。ウサ耳は突き刺さっているんだけど。

 

 

 

 

 さて、着替えは終わった。一夏はまだ来てないし、先に海にでも行きますか。

 

 

「あっつ!あっつぅ!!」

 

 

 砂が熱い!いい日差しゆえに!あつい! つい転がってしまったが体全体が熱くなってしまった!

 

 

「あっ、金沢君がおちてる! ひろってっていいのかな!?」

 

「うわ、体すごいね~!」

 

「ちょ、べたべたさわらんといて! とりあえずおこして!」

 

 

 あと落ちてるものを勝手に拾うのは止めてくれ!

 ……ふう、一通り熱さにも慣れたぞ。綺麗な海ダナー。

 

「さて、それじゃあ何しようか?」

 

「かなやーん、ビーチバレーしよう!」

 

「お、のほほんさん。」

 

 

 会ってそうそうほっぺをぐにぐにしておく。女子の頬は柔らかいな。

 

 

「今は一夏もいないし、あいつ来てからにしよう。それでいいかな?」

 

「ふみ~、いいよ~。ぐにぐにしないで~」

 

 

 あ、申し訳ない、ついついね。それにしても優しい方で助かりました。

 そんなことを考えていると、突如。

 

 

「あ、そこの君!!」

 

「はい?」

 

 

 黒くこんがり焼けた肌、筋肉質な肉体。額に巻いたバンダナ。俗に言う、『海の男』に声を掛けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…自由時間、なんだよね」

 

 

 そう、確か俺は自由時間に海に泳ぎに来たはず。

 なのに、何でヤキソバを焼いているんですか俺は!ねえ!

 

 

「悪いねえ、ムリヤリなのに手伝ってもらっちゃって。助かるよ」

 

「あー、いいっすよ別に。うん。」

 

 

 何でも、海の家の人手が足りないらしく、バイトを募集していたらしい。でも集まらないから、ちょうどいいところにいた俺が標的になったらしい。完全に拉致だったけど。

 

 

「ちゃんと御代は弾むからさ、頑張ってくれよ!」

 

「よーーっしがんばります! 了解です!」

 

 

 給料がでるならやるしかない!俺は頑張るぞ! 料理は問題なくできるし、味の保証もできる! ……ならば、残りの問題は……

 

 

「客足、か」

 

 

 うーん。どうしようか。確かに客の人数はいるけど、もう一押し。欲しいってところだ。

 

 

「んー……あ、そうか。」

 

 

 目の前をうちの生徒が通った。……そうだ、女子を集めてみるというのはどうだろう。うちの生徒だけでも相当な数になるはずだ。

 

 

「そうすると、情報の広め役が必要だな…俺はここを離れられないし……これ以上一人で独り言話し続けるのも辛いし」

 

 

 海の家の店長に任せようか? ……いや、彼が女性に声を掛ければ唯のナンパになってしまう。最悪つかまってしまうぞ。

 

 

「竜也~!」

 

「……ん?」

 

 

 考えながらもヤキソバを炒めていると、遠くのほうから誰かの声が聞こえた。聞きなれた声である。 高くはない視力を行使し、誰なのかを確認する。

 

 

「はぁ、はぁ…。ここに居たんだ。探したよ」

 

「ああ、シャルロットか。 うん、一つ聞いてもいいか」

 

「え?ああ、どうぞ」

 

「そこのミイラはエジプトから輸入したものか?お前にそんな趣味があるとは驚きだな」

 

 

 シャルロットの隣には、そのものミイラのごとくタオルを巻いた何かがいた。

 いやあ、そんな趣味は初めて聞きましたよ。ネクロフィリアって奴ですか?わざわざ臨海学校にまで持ってくるなんてやりますねえ。

 

 

「いや、これは……ほら、出てきなって。大丈夫だから」

 

「だ、大丈夫かどうかは私が決める……」

 

「……へ?ラウラ?」

 

 

 そう、その声はまさにラウラだった。包帯のせいで顔は確認できないが、背丈も丁度そのものだ。。

 うっかり落としそうになった包丁を握りなおし、手元でピーナッツを砕きながら、シャルロットに聞く。

 

 

「何事? 全身火傷でも負ったわけ? そんなことないよね!?」

 

「いや、だから包帯じゃないってば。……ほら、折角着替えたんだから見てもらわないと」

 

「だ、だが……私にも心の準備というものがあってだな……」

 

「?」

 

 

 シャルロットがラウラに説得を試みているようだが、内容は聞こえない。

 唐辛子を輪切りにし始める。シャルロットは溜め息を吐いて、俺の耳を引っ張ってきた。

 

 

「仕方ないな…竜也、耳貸して」

 

「ん? おk。痛いから放して」

 

 

 ひそひそ、と言付けられる。なるほどなるほど。ラウラはそういうのがすきなのね。

 

 

「…って。よろしくね」

 

「お安いご用だ。 ラウラ」

 

「な、なんだ」

 

「俺、ラウラの水着姿、見たいな。……この前の約束、守ってくれる?」

 

「う……ええいっ、脱げばいいのだろう、脱げば!!」

 

 

 大したことは言っていないはずだが、こうも考え通りに行くとは。

 ラウラはタオルを全て剥ぎ取り、宙へ放る。

 

 

「…笑いたければ、笑え」

 

「………ほぉ」

 

 

 ヤキソバを炒める手が、止まった。

 黒の、レースがあしらわれた水着。…少々無理のある感じも受けるが、それ以上に……よく、似合っている。

 

 

「変なところなんて、一つもないよね?」

 

「ぁあ。寧ろ……可愛いな」

 

「かわ、しゃ、社交辞令ならいらん」

 

「夫に向かってお世辞を言う嫁はいないと思うけどなぁ。少しは嫁の言葉を信じたらどうだ」

 

「う……そうだ、な」

 

「竜也、完全に順応してるね」

 

「そうか?」

 

 

 会話中にも、ラウラはもじもじしてる。何かそのあたりも含めて、可愛いの完成形の片鱗を見た気がするな。

 クラリッサ・ハルフォーフとやら。君とはやはり一度話がしたいな。

 

 

「……やっぱり、海で見てよかったよ。あのときに見てたら、この感動とかわいさは味わえないな」

 

「そ、そんなに褒めるな…反応に困る」

 

「あはは、ラウラも照れちゃって。かわいー」

 

 

 そういえば、この二人は同室になったらしい。これまでの会話から分かるように、かなり仲良くなっている。

 と、店長の声が奥のほうから聞こえてきた。

 

 

「おーい、ヤキソバ焦げるぞ」

 

「わっ!!そうだっ…そうだ!!」

 

「え?どうしたの?」

 

 

 そもそも、俺の考えを元に戻そう。ヤキソバをたくさん売りたかったんだよ。で、そのためにヒトデがいるんだろ? で、うちの生徒ならいいんじゃないかって話になったわけだ。

 

 うちの生徒?女子?かわいい?

 

目の前にいる二人をもう一度見返す。

 

 

 

「これだっ! 手伝ってくれ!お二人さん!」

「え?」

「わ、私たちが……か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤキソバいかがですかーー!!」

 

「ラムネもカキ氷もありますよーー!!」

 

 いやはや、さらに砂浜が盛り上がった。もちろん地形的な意味ではなく。女性の声がいっぱい響いて一気に華やかになりました。

 俺もどんどん忙しくなる。鉄板1枚では足りなくなり、現在3枚をフル稼働。

 

 

「うーん。やっぱり華があると客足も増えるねえ」

 

 

 シャルル、ラウラは勿論、箒、鈴その他IS学園の女子数十名による呼び込み。威力は絶大だった。

 

 

「いやあ、今日はすごい売り上げだな!!ありがとう金沢君!!」

 

「いえ、まあそれほどでもありますよ!へっ!」

 

「竜也、そこのソースとってくれ」

 

「はいよ」

 

 

 隣にはスペシャルゲストの一夏を呼んでます。呼び込みだけでなく調理にも人数がほしかったので、参加してもらった次第。

 料理はまちがいなく上手いから、任せても何一つ問題はないね。

 

 

「すみませーん、塩ヤキソバ一つ」

 

「はいはーい、ちょっと待っててください」

 

 

 会話をしている暇もないほどだ。時のたつのも早く感じる。……ん?時間?

 

 

「なぁ一夏……自由時間っていつまでだったっけ。」

 

「え? ああ、そういえば、時間の確認忘れてたな。いつまでだろう」

 

「教師の指示があるまでだ。忘れるな馬鹿者」

 

「そうだったそうだった。いやーすっかり忘れ……ってあれ!?織斑先生!?」

 

 

 一夏と話をしていると、いつの間にやら目の前に。山田先生も一緒だ。せくすぃーな水着が似合ってますね。一夏が選んだんだっけ。いいセンスしてるよ。

 ……並んでるってことは、客として来てくれたのかな?

 

 

「何をしているんだ、お前らは」

 

「実はかくかくしかじかというわけで」

 

「ふむ、なるほど」

 

「何で通じたし」

 

 

 それにしても、二人ともすごく綺麗だ。海が似合うっていうか、映えるって言うか。

 

 

「なら、一つ貰おうか。山田先生もいかがです?」

 

「ええ、いいですね。種類は…」

 

「ああ、十種類くらいありますよ。好みで具の調整もしてます」

 

「ほう、手が込んでるな。…このタイ風というのは」

 

「パッタイみたいな奴です。スイートチリソースと唐辛子の微塵切りが入って、上に砕きピーナッツとパクチーが乗ってます」

 

 

 なに、パッタイが分からない?ググレ。

 千冬さんはきょとんとした顔で言葉を漏らした。

 

 

「…つくづくお前の料理センスには感服させられる」

 

「近くにスーパーがあって助かったな」

 

「なー」

 

 

 じつは、先ほど一夏と一緒にスーパーに買いだしに行っていたのである。まさかパクチーがあるとは思わなんだが。うちの近くのスーパーには無いぞ。

 

 

「…では、普通のを貰おうか」

 

「私は塩ヤキソバで」

 

「はいはい、少々お待ちくださーい」

 

 

 教師二人が客としてきた事で、更に客足は増えた。綺麗な女性に釣られすぎだろ、客諸君。

 

 それは、自由時間ぎりぎりまで続き…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あー、疲れた。一夏、おつかれさまー」

 

「ああ、お疲れ。結局、お前はずっと鉄板前にいたからな、大丈夫か?」

 

「大丈夫だいじょうぶ。」

 

 

 一夏たちには休憩を入れてもらったが、俺はぶっ通しで料理していた。

腕が吊りそう。大丈夫なもんですか。

 うでをぶんぶん振っていると、店長さんが飲み物を持ってこちらに歩いてくるのが見えた。

 

 

「やあ二人とも、今日は本当にありがとう。いつにも増しての盛況だった!これはお礼だよ」

 

「ああ、ありがとうございます。」

 

 

 冷たい飲み物ウマーーー。じんわりと体全体に染み渡る。すると、つづけて店長さんから封筒を渡された。

 

 

「は、今日の給料。」

 

「うわーい、ありがとうございま……うわ、こんなに貰っていいんですか?」

 

「いいのいいの。今日はすごく頑張ってもらったからね。」

 

「さすが海の男! 太っ腹ぁ!」

 

 

 お札が1まーい、2まーい、3まーい…。束になっていた。たまりませんな!

 

 

「帰ったら、みんなで飯食いに行くか。」

 

「おっ、いいなそれ。俺も行っていいか?」

 

「もちろんだ。むしろお前は来なきゃダメ。今回のMVPなんだから。」

 

 

 それからは、一夏と他愛の無い会話をしながら、日の暮れた海岸を過ぎて旅館へ戻った。

 

 

 ……それにしても、なんだろう。 なにか忘れてる気がする。

 

 

 

「……あ!!」

 

「どうした?」

 

「結局、あんまり泳げなかった。」

 

「ああ、それは、なんというか……ご愁傷様」

 

 

 俺の海とは……まあ、楽しかったからいいか。みんな嬉しそうに食べてたんだもん。作る側の喜びって奴だね。

 ああ、もう旅館も見えてきた。強がってはいたけど流石に疲れた、今日はゆっくり休もう―――。

 

 

 

「竜也」

 

 

 

 旅館に入ったところで、ラウラに呼び止められた。

 ……あぁ。

 

 

「ごめんな、一緒に遊べなくて」

 

「……いい。お前の助けになれたなら、な」

 

「そうか。……そうだ、ちょっと空いてる?」

 

「時間か? ああ、まだ自由時間だからな。」

 

「話しよう。世間話。」

 

「ふ、二人でか?」

 

「そう、二人っきりで。」

 

 

また、ラウラの顔は赤くなる。

 

 

「海、見に行こう。」

 

 

 旅館から海へは遠くない。ざざぁ、ざざぁと、静かに波がなる音と、俺達が砂を踏む音だけが響いていた。

 

 

「夜の海って言うのも、綺麗だよね」

「ああ」

 

 昼まではあんなに賑やかだった砂浜も、夜になると誰も居らず、若干寂しい印象を受けた。

 一人であれば、心細くなる雰囲気だが…、今は一人ではない。

 

 

「でも、良かったな」

 

「何がだ?」

 

「よっと」

 

 

 弱い波に向かって、砂を蹴飛ばす。

 

 

「こうやって、ラウラと海を見に来れる…ってことがさ。」

 

「そ、そうか?」

 

「だって、初めてお前を見たときとか。印象は好くなかったから。」

 

 

 転向して来た直後、いきなり一夏の頬を引っ叩こうとしたあの時を、ふと思い出す。いや、俺が代わりに喰らったことでそれは未遂に終わったんだけど。

 ラウラもそれを思い出したらしく、右手をきゅっと握ってうつむいた。

 

 

「あ、あまり昔のことは言うな…あの時は、私も若かったのだ」

 

「はは、今も十分若いだろ。まだまだ子どもさ」

 

 

 そう言って、頭を撫でてやる。

 

 

「ば、ばかもの!子ども扱いするな!」

 

「ははっ、かーわいい」

 

 

 くしゃくしゃと、髪の毛を撫でていると、見事に髪型が乱れてしまった。

 

 

「な、なんてことをするんだ!また髪が」

 

「あ、ごめんごめん、つい可愛くって、また。」

 

「うぅ……!」

 

 

 ぷい、と顔をそらされた。

 回り込んで見るが、目は合わせてもらえない。

 

 

「なー、悪かったからこっち向いてくれよ」

 

「……夫を子ども扱いするような奴の顔なんて見たくもないっ」

 

 

 うーん、つまり、子ども扱いしなけりゃいいのか?

 

 

「後悔するなよ、ラウラ」

 

「なにがーーーんっ!?」

 

 

 素早くラウラの肩に手を乗せて押さえつけ、無理やり…

 

 唇を、重ねた。

 

 

「んー!んー、ん……」

 

 

 最初は暴れていたラウラも、急におとなしくなって、竜也に身を預けてくる。

 

 

「……ふはぁ。ごちそうさま」

 

「な…な…な…」

 

「『子ども扱いが嫌だ』って言うからだぜ?後悔すんなとも言った」

 

「り…竜也」

 

「どした?」

 

 

 座り込んだまま、動かないラウラ。ちょっとやりすぎたかな、心配気味に顔を覗く。

 

 

「こ、腰が…抜けた」

 

「…はは、まだラウラには早かったか?」

 

「う、うるさいっ!」

 

 

 さらにサービスでもしてやるか、と考えつき、姫抱っこをしてやる。

 

 

「おお、軽い軽い。俺の腕力でも持ち上げられるぞ」

 

「竜也! これは……流石に!」

 

「おんぶでもいいけどさ。ラウラの顔、見れないから。」

 

「あっ、う……うう」

 

 

 その言葉に、ラウラは静かに頬を染めるだけだったが…

 

 

『こんなに、一緒にいられるだけで嬉しいものなんだな……。』

 

 

俺は、そうしみじみと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、千冬さんに説教されたのは別の話。




 感想のほうに頂いた質問についてはこちらで回答しようかと思います。


Q.シャルの本名がシャルロットだってことは知られてないんですか?竜也の呼び方がずっと『シャルル』なんですけど。


A.もちろん既に知られています。が、竜也君は男装時からずっと『シャルル』と呼んでたので、呼び慣れた『シャルル』呼びになっていました。
 今回は女子から『シャルロットは女の子なんだから女の子の名前で呼んであげて!』と苦情が来たようで『シャルロット』呼びになってるはずです。たまにシャルルになってても『あ、クセが出てるんだな』程度で見逃してやってください。


多数のお気に入り登録ありがとうございます、それではまた次回。
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