ポケットモンスターNecessitudiness   作:ハンバート二世

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 時系列的にはポケスぺ三章が終わった後のパラレルワールドです。


裏切りの鐘が鳴る
vs? ~絆を求めて~


 他人の事などどうでもいい。

 それが幼い頃から俺の心に巣くい続けた感情だった。

 まずそもそも、人間に他人の心の中など分かるはずもない。人に限らずポケモンでさえもだ。ポケモンにいたっては言葉すら分からない。いや、まだ言葉で装わないポケモンの方が、付き合うのにはマシかもしれないが。

 とにかく、俺には理解と納得ができなかった。

 

 トレーナーとポケモンが仲良く暮らしていた。まるで言葉を話しているように。幼い頃の俺は、それが無性に羨ましく、妬ましかった。俺はいつの間にかそいつのポケモンを奪っていた。今となって分かるが、俺にはもうその時から兆候があったのかもしれない。他人の事など考えられず、ただ自分が満たされる為だけに行動する。タイムスリップでもできるのなら当時の俺を殺してやりたいくらいだ。

 

「ねえ、お父さん。どうしてポケモンはトレーナーの言う事をきいてくれるの?」

「簡単な事だよ。言う事をきくように育てればいいんだ」

 

 俺のクソ親父は決まってそう言った。

 至極まっとうな返答だが、そこには一切の容赦などはなく、ソイツの言った『育てる』という言葉の中には、手段を選ぶなどという甘い考えはなく、あらゆる手段を以ってして、ソイツはポケモンを手名付けていた。あろうことか、何の指示も命令もなく、ポケモンがトレーナーの望む事を自ら行っていたのだ。

 俺はそれを、幼い頃は憧れの眼差しで見ていたのだろう。

 『ポケモンと心を通わせたトレーナー』だとして。

 

 だが次第に気付いていった。

 俺のいる環境がどれだけクソなのかを。

 最近になってようやく俺は、このロケット団というものが、とてつもなく俺にとって不愉快なものである事に気が付いた。

 正義感が強いのか、束縛が嫌なのか。どちらにせよ、俺はロケット団が気に入らない。

 略奪、暴力、詐欺、恐喝、あらゆる反社会的手段を使って、ロケット団はその悪事の限りを尽くしていた。それはもう暴れまわった。今までにないくらいに暴れまわった。その中で、何人の人間が命を落としたのか、俺にはもう分からなかった。

 

 

「見逃してください……!! お願いです!! やめっ、やめてください!! 私の……たった一人の家族なのに……」

 

 かくいう俺もその略奪を行う者。何の目的かは知らないが、カントー中からポケモンをありったけ集めようとしていた。それも何故か、人間と過ごすポケモンのみを。

 今俺の目の前にもその対象がいる。二十代半ばの女性。非力で、抵抗する力もないただの人。

 奪ったボールの中には『プリン』がいた。まだ小さい、産まれたばかりなのだろうか。

 

「目を付けられた事に運が悪かったのだと呪え」

 

 悲しんでいるのは目に見て分かる。

 『家族』――か。

 今からその家族とやらが奪われるのだ。あまりにも非道に、何の情けもなく。

 

「やめて、やめてぇ!!」

 

 分からない。

 悲しい事は分かる。そして、それをする自分に嫌悪している自分も分かる。

 だが、分からない。

 家族とはなんだ。

 何故、何をされるかも分からない、もしかすれば乱暴な事をされるかもしれないと分かっていて、コイツはこんなにも俺に掴みかかってくるんだ?

 

「分からない」

 

 俺はその女を適当に振りほどき、その場を去った。

 

 

「おう、戻ったかリウス」

「はい、今日のノルマです」

 

 アジトに戻り暫くすると、上司のロケット団幹部が出迎えにきていた。

 俺は特に何を話す訳でもなく、今日、トレーナー達から奪ったポケモンをソイツに渡した。満足そうな顔をしたソイツはモンスターボールを受け取り椅子に深くもたれかかる。

 

「やはりお前は優秀だな。流石はボスの息子だ」

「はぁ、まあ、そうですね。あの、俺もう今日は何もないんで、休んでていいっすか?」

「ん、ああ、分かった。明日は大きく動くらしいからな。今日はもうゆっくりと休んどけ。ニビシティへの侵攻だ。会議は一時間後、他の支部と合同で行う。」

「一時間後っすか……分かりました。じゃあ、お疲れ様です」

 

 次はニビシティか。

 あそこにはジムリーダーがいたが、どうなのだろうか。今まではハナダ、タマムシと立て続けに襲撃していたから、恐らくジムリーダー達も何かしらの対策は立てているはずだ。はてさてどう出るのか。

 まあ、俺には関係のない話だ。俺も駆り出されれば話は別だが。

 とりあえず、今日の疲れを癒す為に仮眠室へ向かおう。それほど寝心地のいいベッドではなかったが、昼寝するくらいには丁度いい。制服を脱ぎ捨て、俺はベッドに寝転んだ。

 さて寝るかと、目を瞑ろうとしたその時だった。

 

 轟音が鳴り響いた。

 

 最初は何かの泣き声だった。

 すぐにそれが大型のポケモンのものだと悟り、そのすぐ後に怒声が聞こえる。

 サイレンを聞きつけて現場に向かう他の団員達の声はこう言っていた。

 

『例のトレーナーが現れたらしいぞ!』

『ジムリーダーか!? クソッ、やっぱりここは割れてたんじゃねぇか!!』

『クソッ、俺達は囮かよ……!』

 

 それに似た会話が矢継ぎ早に通り過ぎてはまたやってきてを繰り返した。

 そんな阿鼻叫喚の中、どうしてか俺は落ち着いていた。

 そう、これはチャンスなのだ。

 『例のトレーナー』とは、名や姿は知らないが、どうやらジムリーダーの一人らしく、さっきの上司曰くかつてのロケット団を二度も壊滅に追い込んだトレーナーの内の一人らしい。その天性の才能は、そのトレーナーを一度はポケモンリーグのチャンピオンにまで押し上げたという。

 そんな奴に襲われてはこのアジトも終わりだろう。抵抗する者や、逃げる者、色々だろうが、俺に限ってはそれは当てはまらなかった。

 逃げるっちゃあ逃げるのだが。

 

「確かこの辺にこの前奪った服が何着か……」

 

 外からはすさまじい破壊音が幾つも聞こえてきたが、全く気にせず俺は服を探す。

 俺が逃げるのは、そのトレーナーからではなく、このロケット団からだ。

 この騒ぎに乗じて、『一般人』として俺は生きていく。そう、ようやくこのクソッたれな職場から解放されるのだ。少なくとも、鬱陶しいモノには縛られずに。

 どうせなら、俺が今まで分からなかった『絆』とやらを探してみるのも悪くないかもしれない。

 

「チッ、俺が着れるのこれだけかよ……」

 

 赤を基調とした動きやすいジャケットと、ジーパンがセットでタンスの中に置いてあった。年季が入っているが、それでいて綺麗に整頓されている。それはともかく、何というか、色が俺の性に合わなかったがこの際気にしている場合ではない。

 素早く着替え、後は野生に襲われてもいいようにポケモンを二匹ほど持ちだした。

 『ケーシィ』と『デルビル』の二匹、後は全員他の団員達に持っていかれたようで、残っていたのはこの二匹だけだった。

 ボールを腰のホルダーにしまい、裏口の経路を確認して立ち上がった、

 その刹那、

 

「は――――――?」

 

 その深緑の巨体が、圧倒的な破滅を()って俺を襲った。

 その時の記憶は、そこまでで途切れている。

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