ポケットモンスターNecessitudiness   作:ハンバート二世

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メガもいいけど私は鉢巻き派です


vsハッサム

 すっかり辺りは暗くなり、夜があるべき姿で空を映し出す。

 都会とは言え、隣接する街もなく、回りは森ばかりで光も少ない。崩壊したニビからも光はなく、星がよく見えた。

 

「どうした、こんな所で」

 

 さっきまで怪我人や傷付いたポケモンの治療に俺も駆り出されていたポケモンセンター前のベンチに座って黄昏ていると、グリーンがやってきた。紙コップを手渡される。

 

「なんすかコレ……」

「オレンの実の果汁を加工したものだ。疲れた体によく効く」

 

 絶対渋いだろこのジュース。しかし飲まないのも申し訳ない。だが飲まない。

 

「後で頂ます……」

 

 後でエルルにでも飲ませよう。

 

「覚えているか。君と話をしたいと言っていたのを」

「ああ……言ってましたね……」

 

 死にたい逃げたい帰りたい。この鋭い目つきはどう考えても俺の正体に勘付いている事間違いなしだ。だとすれば俺に手伝わせた事への疑問が浮かび上がる。ただ単に人手が欲しかっただけなのか……いやそもそも、スパイかもしれない人間を隔壁の中に入れていることがおかしい。

 なら一体……

 

「昨日、俺達ジムリーダーとトレーナーで結成された臨時の対テロ用部隊の一つがロケット団アジトに攻め入った。その場にいた団員は全員捕まえた。丁度任務終わりだったんだな、アジトにあった名簿を見ると一人を除いて全員確認できた」

 

 思考の着地点が上手く定まらない。体中から冷や汗が噴き出るし、正直脚が震えている。

 

「その一人の名前はリウスと言うらしい。君もリウスと名乗ったが、何か関係があるのか?」

「だとしたら……どうします?」

 

 いざとなれば……いざとなってもどうにもできないだろう。ケーシィとデルビルだけでジムリーダーに勝てる訳がない。

 だが、俺もこんな性格だ、最後までできるだけ余裕の態度は崩さない。

 まずそもそも、勝つ必要も、戦う必要もどこにもない……!

 

「ケーシィ!!」

 

 ボールからケーシィが出る。

 俺が『テレポート』を命令しようとした刹那――

 

「ハッサム、『こうそくいどう』」

 

 いつの間に現れたのか、既にハッサムの鋏が俺の首を捉えていた。

 グリーンの鋭利な眼光は間違いなく、俺への敵意。

 

「動くな」

「………………動く必要はない」

 

 ――月明りを反射する鋏に、ケーシィの姿が移った。

 

「『ばくれつパンチ』!!」

 

 ケーシィの攻撃程度では吹っ飛ぶもはずもないが、ほんの少し動きを止めてくれればいい。ハッサムが怯んだ隙にケーシィと共に間合いを取る。たとえその体が鋼でできていようと無敵ではない。無駄な被弾は避けたいはずだ。

 グリーンとハッサムも伺うように追ってはこない。

 

「トレーナーの命令無しでも動く、か……」

「優秀な子なんでね。自分で考えて動いてくれるんすよ」

 

 だが、ここからどうするか。

 『テレポート』で逃げれば済む話だが、エスパータイプの技を使う際、技によってまちまちだがほんの少しだけ時間を要してしまう。何せ超能力だ、ただ殴るだけの技とは違って『念じる行為』に時間がかかる。

 故に、安易に『テレポート』を使えばその隙でハッサムにやられてしまう。

 つまりやるべき事は、『テレポート』を使えるだけの隙を作る事。

 

 隙――俺の手持ちは残り二匹。一匹は『ケーシィ』、もう一匹は『デルビル』。デルビルは未知数だ。それに、ケーシィと違って俺に全く懐いていない。しかし、考えている暇はない。時間稼ぎをするだけならここでデルビルを切り捨ててケーシィと共に逃げる事もできる。

 

 ボールに手を伸ばす。

 一瞬の油断が命取りだ。デルビルを出したら『スモッグ』で目を眩ませてその隙にドロンだ。この際相性は関係ない。視界さえ悪くできればそれでいい。

 

「よし、デルビ……え?」

 

 なんと、掴んだボールは燃えていた。

 

「あっつ!? 何で!?」

「どうやらデルビルは驚くほどに懐いていないようだな」

 

 グリーンの冷静なツッコミありがとうございます。

 なんて言ってる場合じゃねえ! いつから燃えていたんだ!? そもそも、デルビルは俺のやろうとした事が分かっていたのか……?

 

「何をしている!! ボールごとポケモンが燃え死ぬぞ!!」

 

 ボール……

 

「ッ!! ケーシィ!! 『れいとうパンチ』だ!!」

 

 我に返り咄嗟にそう叫ぶ。

 凍った拳がボタンごとボールを砕き、火傷をしたデルビルが外に出る。

 グリーンはボールからハピナスを出し、火傷の治療をさせていた。

 

「貴様、分かっていながら何故呆けていた!」

 

 胸ぐらを掴んだグリーンが、静かに怒気を露わにそう言った。

 何故と言われても、

 

「知りませんよそんなの。デルビルが俺の思惑に気が付いた事に驚いたからなんじゃないですか?」

「自身で動かず、命令するだけのトレーナーにポケモンを持つ資格はない」

「アンタにそんな事言われる筋合いは――

「まあいい、目的が変わった。これから君にはこの街にいてもらう。エルルの監視下でだ」

「警察に突き出さないのか……?」

「言ったはずだ、目的が変わったと。ハッサム、やれ」

 

 そう聞こえたと思ったやいなや、首の後ろに衝撃を感じ、意識が途切れた。

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