家に帰るついでにゲーセンにある太鼓の超人でフルコンボを叩き出した後、クレーンゲームで運良くぬいぐるみが取れた
物凄く落ちそうな態勢であった為に、これは取らなくては!と謎の使命感に襲われるがままに300円程投資してしまった。別に特に欲しい物でもなかったんだが………やはりあの状態ならば取りたいと思ってしまうだろ?
「てか、なんなんだこれ………」
ピ○チュウのお面付けてるぞ。これ大丈夫なのか?主に大人の事情的な問題で…………おわっ!お面取れた!
…………まあいい、押入れにしまい込んでおこう
ピカチ○ウのお面の付いたぬいぐるみを持ってきたリュックサックの中に突っ込んで、ポケットから携帯を取り出す。これからグッズを買えたことを千尋に報告………あぁ、今の時間帯は部活かな。中学校最後の一年、是非ともこの一年を楽しんで欲しい
学校に携帯を持って行っているのかは知らないが、荷物として送っとけば良いだろう
千尋喜んでくれるかな………兄ちゃん大好きとか言ってくれたりして。兄ちゃんも大好きだぞ、千尋。絶対に嫁にはやらん………!
ブー………ブー………
「!」
いきなり携帯が振動した。着信だな、一体どこの誰だ………?
気分が良い為か名前を見ることもせずに応答する。耳に当てて向こうの出方を待っていると、今では随分と聞き慣れた声が聞こえてきた
『もしもし、宮野君?』
「NO. My name is アーノルド○シュワルツネッガー」
勿論嘘だ。伏せ字って声に出すの難しい………この、ピー音じゃなくてウゥウン!みたいな感じにするのがね。ん?ウゥウン!じゃないか。言葉に表しずらいな
『えぇ!?え、え!?こ、ことりちゃんどうしよ!外国人出ちゃった!?名前と名前の間になんか変な声混じってたけど!』
『ほ、穂乃果ちゃん落ち着いて!』
高坂さんだった。声が大きいからか南さんの声も聞こえる。相変わらず賑やかな娘達だな
因みに答えた名前は俺の好きな外国人俳優だ。一番好きな出演作品はラスト・アクション・ヒーローです。コマンドーも好きだな。てか、筋肉凄いよなあの人。一体どれだけ鍛えればあんな感じになるんだろう
『………ハ、ハロー?マイネームイズコトーリ』
「日本語でおk」
『穂乃果ちゃん!日本人だよ!?それにやっぱり宮野君だよ!』
『嘘!?もしもし、もしも〜し!』
何をやってるんだか………
「園田さんはいるか?」
『もう、宮野君の意地悪!』
何その言い方可愛い
『海未ちゃんなら今トイレに………あ、戻ってきたよ』
「変わってくれるか?」
『いいけど………なんか納得いかないなぁ』
「気のせいさ」
高坂さんだと話が進まないかもしれないし、園田さんの方がわかりやすく説明してくれるはずだ。人には適材適所と言うのがあるんだよ高坂さん
『はい、変わりました』
「あぁ。…………ところで、電話とは珍しいな?何か用が?」
『そこまで珍しいことではないと思うのですが………まあいいでしょう。用という程のことでもありません。明日、私達と一緒に登校しませんか?少しお話したいこともありますので。集合場所は変わっていませんから』
一緒に登校……?随分と久しぶりな提案だな。入学して数週間はよく待ち合わせて行ったものだ。実を言うと家から普通に直行した方が早いのだが………三人娘に誘われたらもう行くしかないだろう。行かなきゃ男じゃない
話したいことは何かは知らんが、特に断ることもないだろう
「りょ」
『普通に了解と言えないのですか………』
「それでも伝わったのだから良いだろ?」
『はぁ………あなたも大概ですね』
解せぬぞ園田さん。あなた"も"って、一体誰と一緒くたにしたんだ
『では、集合時間は7時30分でお願いします』
「その30分後でお願いします」
『…………やはり25分にしましょう』
何故早めたし
「では、特に遅れそうな高坂さんに10分前行動を心掛けるように言っておいてくれ。10分前行動だ、50分には来とくように………と」
『では、明日遅れないでくださいね?』
ツッコミすらしてくれないとは………最近園田さんへ向けてボケると冷たい反応が返ってきて困る。高坂さんや南さんのような反応をしてくれればもっと面白いのだが
「じゃ」
短く挨拶を済ませて通話を切る。何やら向こうで溜息を吐いていたような気がするが気にしたら負けである。偶にはいいじゃないか、ふざけても。人生お堅いことばかりでは息が詰まるだろうに
「ドーナツ買って帰ろう」
取り敢えず俺は目先にあるドーナツ店に足を運んだ
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翌日、いつもよりも早い時間に家を出た俺は待ち合わせ場所まで来ていた。ここは三人娘の家からほぼ等距離にあるちょっとした橋の上である。今日も青く晴れた空を見上げ、ゆったりとした足取りで既に集合していた、高坂さんを除く二人の元へ歩いた
「おはよう」
「おはよう、宮野君」
「おはようございます」
ふむ………朝から女の子と待ち合わせ、意外に俺ってリア充?やべ、爆発しちゃう
てか、高坂さんはどうした。10分前行動を心掛けるよう言ってもらったはずだが?いやまあ、俺も正しく言えば出来ているわけでもないのだが
高坂さんを待たなければいかず、三人で暫し会話に花を咲かせる。ここに来る途中、猫が目の前を過ぎったとか、それに対し黒猫か?と聞くとミケ猫だったらしい。うん、非常にどうでもいい
「おはよー!待った?」
「穂乃果ちゃん!おはよ〜」
程なくして高坂さんが元気に手を振りながら現れた。そして高坂さんの放ったセリフは正にデートの待ち合わせをしていたかのよう。こういう時にはこう答えねばならん。皆の者、よく聞いておけ
「2分32秒の遅れだ。よってギルティなので学校まで全力マラソンの刑に処す。意義も反論も認めよう」
「えぇ!?そんな、朝から全力疾走なんて疲れるよ〜!」
疲れさせたいんだよ。とは敢えて言わないし、そんな気もないしな。冗談だ、と一言言って先に歩き始めると後ろから宮野君の意地悪!と言った声が聞こえてきたが無視を決め込んだ。全くからかいがいがありすぎて困っちゃうな、高坂さんには
「早速だが、態々俺の出勤時間を早めた理由を聞いておこうか」
暫らく歩いた後、園田さんへ質問を投げかける
昨日言っていた『少し話したいこと』が昨日二分くらい考えても思い浮かばなかった。そりゃそうだ、たった二分だもの。でもこんな早い時間帯に集合はないと思うんだ。普段ならこの時間帯は家でパズドラとかしてます
「実はね、宮野君にお願いしたいことがあるの」
南さんが俺の質問に、少しだけ身を屈めて答えた。真横にいたからな、そんな上目遣いで見ないでもらいたい照れる
「お願いね。大抵のことは聞こう」
「ホントに!?やったね海未ちゃん、ことりちゃん!」
「待ちなさい穂乃果、まずは話をしてからです」
うむ、大抵のことじゃなかったら断るからね
取り敢えず説明求む、という視線を投げかけると園田さんは説明の為に口を開いた
「実は昨日………」
「成る程、音ノ木坂をアピールする為にスクールアイドルをやるのか」
「うん!人気が出ればうちに受験したいって子も増えるよね!」
「まあ、人気が出ればな。しかし……………ふむ」
まあ纏めるとだな
一、現在音ノ木坂学院は廃校の危機に瀕している。理由は入学者数が年々減少していることにあり、このまま行くと来年には入学希望者数が規定よりも下回ると予想されているという。その場合、来年からは新入生を迎え入れず、ただ廃校を待つばかり
恐らくはこの理由の一端は共学化したことにもあるんじゃないかと思う。やはり裏目に出たようだ。学院側も一種の賭けだったんだろうな………
二、三人娘は音ノ木坂学院を廃校にしたくない。そこで高坂さんが思い付いたのはスクールアイドル。自分達がスクールアイドルとなり、学院をアピールすることで来年度の入学希望者数を増やすことが目的である
突拍子のないように感じられるが、まあ三人とも見た目は悪くないよりも寧ろ良い方なので、諸々の問題さえクリアすれば可能性は大いにあると言えるだろう
三、昨日それに関係さて部活を作る為に生徒会へ申請に行ったところ、人数が足りないと言われたらしい。しかも何故か、生徒会長直々にスクールアイドルを却下されたそうだ。これは手厳しい
まあ取り敢えず、部活設立の為の人数には届かなくても確実に確保出来る部員を確保しておこうと俺に話を持ち掛けた
ついでに言うとスクールアイドルの活動の方も手助けしてもらいたいのだと言う。今日明日辺りから練習を始めていこうと考えているのでそのサポート云々、俺が元野球部員だと言うことを知っているからか、野球とアイドルどちらも共通するような練習方法などがあったら思い出して、その指導をして欲しいとか
四、新入生歓迎会の放課後に講堂を借りるから、その申請に付き合え
俺がいる必要はあるのか、それは。そして何をするつもりだ………え、ファーストライブ?一ヶ月しかないぞ?
色々と言いたいこともあるがまずは置いておこう。三人娘がやる気になっているんだ。俺も手伝えることがあるなら手伝うと昨日言ったばかりだし、断るような真似なんてしない
「本気なんだな」
「勿論だよ!」
うむ、気概もよし
「よし、なら手伝おう。俺の名でよければ幾らでも貸す」
「ありがとう!」
「マネージャーゲットだね!」
マネージャー………?ほう、マネージャー。俺がマネージャー
あれか、練習の後にタオル渡したりスポーツドリンク渡したりすればいいのか。何気なくカロリーメイトとか渡してみようかな。練習後にカロリーメイト食ったら口の中がパサパサでカオスになったことがある。高坂さんあたりにしたら面白い反応が返ってきそうだな
うむ、是非ともやろう。真剣の中にもやはりおふざけって大事だと思うんだ
「よし、なら早速講堂の許可を取りに行こう!学校まで競走だ!!」
思い浮かぶ数々のネタを纏めていたら高坂さんがいきなり走り出した。え、なに?なんであの人急に走り出してんの?
「待ってよ穂乃果ちゃ〜ん!」
「急ぐと転びますよ!」
あ、二人も走り出した
何これ、俺も走らなきゃ駄目なの?夕日に向かってマラソンだ、ってか。時間的に無理だろ、どちらかというと朝日だよ。朝からダッシュとか怠いんですが
…………まあいいや、俺はゆっくり行こう
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「遅いよ〜宮野君」
「勝手に走り出したのはそっちだろうに」
不貞腐れたような顔で文句を言う高坂さんを尻目に、三人娘に連れ添って生徒会室へと向かう。やはり俺がいる必要はあるのだろうか、甚だ疑問である
「穂乃果ちゃんとはまた違ったマイペースだよね」
「と言うよりも、捻くれ者の方が正しいかもしれませんね」
「失礼極まりないな。俺程真っ直ぐな人間はそういないはずだ」
「気の所為でしょう」
非常にどうでもいい話をしながら生徒会室の前までやってきた。園田さんが扉をノックすると中からどうぞ、と声が聞こえる。高坂さん筆頭に生徒会室へ三人娘が入って行くのをここで見届けようかと思ってたら南さんが俺の背中へ回り、俺も生徒会室へ押し込まれた
生徒会室には二人の役員がいた。方や金髪の明らかにどちらかの親が外国人なのではないだろうかという髪色の美少女さん、しかし顔立ちは日本人に非常に近いのでクォーターなんじゃないだろうか、と友達が言っていた気がする。確かこっちが生徒会長
もう片方が副会長、こちらは普通に美少女だ。一部分を除けばの話だが。確か………うちのクラスにたった五人しかいない男子のうちの一人、高山 蓮が一年の頃告白し玉砕した相手だったな
あの時は一年にしか男子がいなかったし、数も十人しかいなかったからな………皆で励ます為にカラオケやボウリングに行ったことは良い思い出だ。思えばあれから俺達十人の絆は深k(以下略)
「こんな朝から何の用?」
「講堂の使用許可を貰いに来ました!」
「生徒は部活動に関係なく、講堂の使用許可が貰えると生徒手帳にあったので」
明らかに敵意を向けて来ている生徒会長に臆さず答える高坂さん。堂々としてるなぁ
「新入生歓迎会の日の放課後やね」
「…………何をするつもり?」
「ファーストライブをします!」
おぉ、言い切った。残り一ヶ月しかないのによく言い切ったな
「まだ出来ると決まったわけじゃ………」
「そうです。まだ決まってないんですよ?」
「えぇ〜、やるよぉ!ね、宮野君!」
本人は確実にやる気らしい。それは良いのだが、俺に振るな
「やればいいんじゃないか?」
「なっ………」
しかし、俺も反対ではない。…………園田さん、その顔面白いな
一ヶ月でライブをやるのと、これから活動していく上で解消しなければならない問題はまだあるが、その幾つかは後回しにできないこともない。歌もダンスも既存のものを使えばライブをやること自体は可能だからな。学校内だけでの発表ということで、著作権に引っかかったりもしないだろう。………いや、元々気にしなくてもいいのか?そこら辺よくわからん
まあ取り敢えず、ライブやることだけはできるわけだ
「貴方は?」
「新しいメンバーです。歌いも踊りもしませんがね」
「君……毎週土日の朝に神社の前を走って通る子やね」
ん?確かに土日、走り込む時は神社の前は通るが、何故知ってるんだ?
…………まあいい、非常にどうでもいい
「昨日この三人にも言ったのだけど、貴方も二年生よね。残りの二年、どうするかをきちんと考えた方が賢明だと思うけど?」
「そうですか、頭の片隅に置いておきます」
あぁ、頭がお堅いタイプか。こういうのには適当に相槌打っときゃいいだろ
「そう………それよりも、出来るの?新入生歓迎会はお遊びじゃないのよ」
「出来ます!」
「穂乃果……!」
「…………不安ね」
目の前の三人のやり取り見て俺は頭を掻く
やるって言ってるんだから別に良いだろうに、生徒会に生徒の行動を制限するような権限はなかったと思うんだが。昨日スクールアイドルの活動を否定されたという話を聞いたが、もしや私的事情じゃないだろうな?だとしたら非常に面倒だ。生徒会はいわば学院側、スクールアイドルなのに内側からの支援が貰えないとは如何なものか
「まあえぇんやない?講堂の許可を貰いに来てるだけなんやし」
「希……」
………おぉ、副会長。話がわかるじゃないですか。どれ、俺も押してみるか
「で、許可は貰えるんですか?貰えるのであれば早くしてもらわないと、始業のチャイムが鳴ってしまうんですが」
「……………わかりました、許可します」
よっしゃ俺達の勝ち!なんなら生徒会長の向かってドヤ顔の一つでもしてやりたいとこだが、残念ながらあいも変わらずの無表情なんだろうな。だからせめて心の中でドヤ顔をしてやろう。ドヤァ
そして俺達は生徒会室を出る。最後出る時に生徒会の二人を一瞥したのだが、片方からは微笑みを、片方からは一睨みをもらった。どっちがどっちだったかは言うまでもあらず
「何故ライブをことを言ったのですか、取り敢えず秘密にしておいて、申請だけしようと話したではありませんか!あと一ヶ月しかないのですよ!?」
「えぇ〜、良いじゃん別に。なんとかなるよ!」
「宮野君も宮野君です!何故あそこで肯定したんですか!?」
「何か問題でも?」
「大・有り・です!」
そう怒ることないだろう。血圧上がるし皺が増えるぞ?
「別にやること自体はできるはずだ。君ら三人がきちんと練習すればの話だが………一ヶ月でも大分違うものだぞ?」
「でも、失敗しちゃったら………」
南さんもか。何がそんなに心配なのか………これはあれか、少しキツイことを言っても良いのだろうか
遅かれ早かれ乗り越えなければならない問題もあるのだし、少しくらいはいいよな?何よりこれくらいで辞めるくらいならやらなくてもよろしい
「失敗するかもしれないからやらない、って理由でやらないのなら何も出来ないぞ?…………ま、本当にスクールアイドルやりたいって言うんなら少し無茶通してでも今回のライブはやっておくべきだ。あまり酷いものは見せられないが、形にすれば何の問題もないだろう」
新入生歓迎会でライブをやれば何人か見にくる可能性が上がる。新入生歓迎会、って言う所謂ブランドみたいなもの、と言えばわかりやいのかな。何かのイベントですることによって、ついでだから見てみようとか、そういうことを思う人がいるものだ
逆に言えば、普通の平日にライブします、なんて言っても何の知名度のないアイドルのライブを、態々見にくる人がいるだろうか?どちらにしろやるとしたら放課後だが、放課後と言えば部活で汗を流したり、部活をしていなければファストフード店にでも行って駄弁ってた方が有意義に思うだろう
だからどうしても、ファーストライブは新入生歓迎会の日が良いと俺は思う
「なに、要はしっかりと練習し、失敗しなければいい話だ。ファーストライブだろうがセカンドライブだろうが、失敗したら終わりなのはどんな時でも同じだろ」
だからつまり………大丈夫だと言うことだ
「うんうん……!」
「………それは、そうですが」
「…………」
役一名しきりに頷いていて本当に理解しているのかどうか怪しいが、納得してもらえたようだ
「そろそろチャイムが鳴るな、早く教室に戻ろう」
なんか気不味くなりそうだったので一足先に教室へ向かう
さぁて、男子共からスクールアイドルの情報でも集めるところから始めてみようかな
この前自宅近くのローソンに行ったらおでんが出ていてびっくりした。何も考えずに大根と卵を二つ買いましたよ。うまかった、流石おでん