ファンタシースターオンライン2 if    作:ラル・ノベル

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PSO2の世界を小説ど素人がオリジナル要素込で書いた妄想小説もどきです。
Phantasy Starの世界が好きな方はオリジナル展開・要素が多いためお勧めしません。
原作のpso2に興味がある方は参考にはならないと思います。
ゲームのネタバレも多いです。ご注意ください。
そんな自己満足な妄想小説もどきですが読んでいただければ幸いです。



2、クルス 「アークスになりたいです」

~とある惑星、とある施設にて~

 

 

「あれ~? 何見てるの?」

 

「えっと……アークスの戦い方・初心者講座①」

 

「アークス? あなたアークスになるの?」

 

「アークスってなぁに?」

 

「知らないで見てたの?」

 

「博士がここにある本、好きなの読んでいいって」

 

「ふ~ん、アークスになりたいわけじゃないんだ?」

 

「キミはアークスになりたいの?」

 

「うん! アークス調査隊員になって、宇宙を冒険するの!」

 

「調査隊員?」

 

「そうよ、調査隊員! 他にもいっぱいあるけど調査隊が一番冒険できるの!」

 

「ふーん」

 

「あ、何よその反応!」

 

「だって、どうせ施設(ここ)から出れないもん。冒険なんてできっこないよ」

 

「いつか出れるわよ!」

 

「いたっ!」

 

「私はいつかここから出て絶対アークス調査隊員になるんだから!」

 

「わ、わかったよ」

 

「わかってない! あなたも来るのよ!」

 

「えー」

 

「えー、じゃない! くるのぉ!」

 

「うげ、お、重いよ、わかった! わかった行くよ!」

 

「じゃあ約束よ!」

 

「約束するからどいて…」

 

 

~~~~~~~~~

 

 

 「お、重い~! ……あれ? ここどこですか?」

 

 僕は眠っていたようです。

 ここはどこでしょうか?

 太陽の光が顔に直接当たっているので、眩しくて周りがよくみえません。

 床は冷たくて気持ちいいですが、ちょっと固すぎますね。

 何かが背中にのしかかっていてなんだか息苦しいです。

 とにかく起きないと、このままだと眩しくて目が焦げちゃう!

 

 「よいしょっと。わわっ!? いてっ!!」

 

 気合いを入れて立ち上がろうとしたら重いものに引っ張られて尻もちをついちゃいました。

 後ろを見やると、見慣れない機械が紐にくくられて荷台にいくつか乗っかってます。

 背中に乗ってると思っていたものは、背負っていた荷物だったみたいです。

 

 「いてて………あれ~?」

 

 肩にかかった紐を外して立ち上がり、お尻をさすりながら周囲を見渡します。

 目に入ったのは見慣れない部屋でした。

 左右にあるのは一面灰色の壁。

 後ろには先ほどの荷物と、その奥に変な色した台座と真ん中の部分だけ赤くなった灰色の扉。

 天井にはちっちゃくて丸い何かがいくつかくっついていました。

 正面からは太陽の光が………あれ? 

 

 「いつもの太陽と違うような………?」

 

 窓から太陽の光が差し込んできていますが、

 いつものように目を焼き焦がすような光ではありませんでした。

 

 「ん? いつもの?」

 

 いつもってなんでしょう?

 僕はどの太陽のことを言って………

 

 「ん~~~? あ!」

 

 そうだ、思い出しました。

 ここは砂漠じゃなくて大きな宇宙船の中で、

 

 「ここは5番目のあーくすしっぷ!」

 

 そして…

 

 「ここは僕の新しい住み家!」

 

 今日から僕は………

 

 「僕は、アークス調査隊員になります!」

 

 

 ------

 

 

 叫ぶのもほどほどにして、僕は住み家の整理整頓を始めました。

 と、言っても来たばかりで何も整理するところなんてないのですが……。

 

 新しい住み家は広く、高さもそこそこあるので少しぐらい暴れても大丈夫そうです。

 これだけ広ければどこでも装備の整備ができるし、寝る所にも困りません。

 周囲に危険はなさそうです。

 でも窓横の扉の先、テラスのような場所は外部から侵入されそうなので、一応罠が必要かもしれません。

 

 そんなことを考えながら、銃の先輩にもらったいろんな機械を眺めていました。

 

 『生活に必要なものだから持っていきなさい!』

 

 って言われてたくさんもらったのはいいんですけど、僕にはどう使うかさっぱりです。

 とりあえず山積みにしたままじゃなんだか悪いし、適当に置きますか。

 

 「これは罠だね。外に置かなきゃ」

 「これは………訓練に使うのかな? あっちにおいとこ」

 「うーん、あ、これは知ってる! 冷蔵庫ですね! なんでも冷やせる最強の機械!」

 

 そんなこんなで最後の機械である冷蔵庫を置き終えた僕は、大変なことに気づきました。

 

 「ごはん食べてないッ!」

 

 いえ、そっちではありませんでした。

 

 「ごはんがないッ!!」

 

 これは一大事です。

 なにせ新しい住み家にはごはんが全然ありません。

 お腹が空きすぎると僕は死んでしまいます。

 

 大慌てでテラスへ移動します。

 勝手に開く扉に慣れず、少し驚きながらも急いで扉をくぐり空を見上げますが、獲物になりそうなものは見当たりません。

 見えるのは不自然なほど青い空に、砂漠より元気のない太陽と、空を駆ける金属の塊だけでした。

 

 「砂漠より植物が多いのに……」

 

 下に目を向けると、砂漠とは比べ物にならないくらい大量の水や植物が目に入ります。

 植物や水があるということは食べられそうな獲物がいる可能性が高いです。

 植物にはごはんがいっぱいついてるし、獲物は水辺の近くに集まりますからね。

 

 しかし、僕よりはるか下にある緑は飛び降りて取りに行ける高さではありません。

 どうやら僕の住み家はアークスシップの中でもかなり高所に造られているようです。

 獲物を奇襲するなら高いとこも納得できますが、ここまで高いと結構不便かもしれません。

 

 「うーん、なんとか下に降りる方法も考えなくちゃ。

 部屋にも何かないかな」

 

 外に獲物を取りに行くのは保留して、部屋の中に何かないか探すことにしました。

 でもやっぱりというか、部屋には今朝方見た変な色の台座や機械以外には何もありません。 

 どうしたものかと考えてると本格的にお腹が空いてきてしまいました。

 

 いっそ飛び降りようかと考えていると、突然灰色の扉の横の板が鳴り出しました。

 奇怪な音が鳴り続ける板にびっくりしつつも興味津々で近づいていくと、頭から顔を半分近く黒くした生首が空中に現れました。

 

 「わうっ!?」

 

 『わうって何よ? ルルよ、ここ開けて』

 

 僕の奇声も気にせず黒生首は話し続けます。生首でも喋れるんだ…アークスは凄い。

 でもルルってなんだろ? 最近聞いたような?

 

 「………えっと?」

 

 『なんで昨日の今日で忘れてるのかしら? って、ちゃんと自己紹介してなかったわね。まぁ時間なかったし、今もないから適当でいっかな』

 『あなたをここまで連れてきて、あなたに家具をあげた人よ、追加の荷物をもってきてあげたわ』

 

 どうやらここまで僕を案内してくれた、銃の先輩のようです。

 『検査のため』と言われて預けていた僕の荷物を持ってきてくれたようです。

 すぐにでも扉を開けたいところですが、開けて、と言われてもどうすればいいのか僕にはわかりません。

 そのことを伝えると銃の先輩の生首は一つため息をつくと、慣れているかのように僕に指示してきました。

 

 『扉の横についているデバイスをタッチして…そう、その板よ。それから………』

 

 言われたとおりに操作していると扉の赤く発光していた部分が青くなりました。

 すぐに扉が開き、黒い被り物をかぶった小さなアークスが現れました。

 

 「お邪魔します。ってあなた、部屋でもそんな汚いローブを着てるの?」

 

 そう言いながら入ってきた銃の先輩は、今度は首から下もちゃんとあり腰にはふたつの銃がささっています。

 僕と話すとやたらとため息が多い背が小さい銃の先輩ですが、銃の扱いが凄く上手で印象的なので銃の先輩と呼んでいます。

 顔の半分が黒くなっていた理由は、大きな黒い帽子だったようです。

 先輩の頭が目元まで隠れてしまうほど大きな帽子だったので、生首が先輩だとはすぐに気づかけなかったようです。

 名前はともかく顔と匂いは覚えていられる自信ありますからね。

 

 「このローブでいると落ち着くんですよ。それにしてもおっきいですね」

 

 僕が黒猫帽子を見つつそう言うと、銃の先輩は機嫌をよくしたようで嬉しそうに笑いながら話しかけてきます。

 

 「え!? ホント!? 遂に毎日牛乳5リットル長身法の成果が出た!? やった!!」

 「えっと、牛乳飲むと帽子がおっきくなるんですか?」

 「………帽子の話ね………」

 

 急に元気がなくなってうつむく銃の先輩。

 さっきまで元気だったのにどうしたんでしょうか?

 そのままおっきな帽子は頭からずり落ちてしまいました。

 綺麗な赤い髪がぱらぱらと垂れ下がります。

 

 「銃の先輩、もう僕の武器の検査は終わったのですか?」

 「銃の先輩って…もー、ロビーに出たら二丁銃を携帯してる奴なんてたくさんいるんだからいい加減名前で憶えてよね。あなたにクルスって名前があるように、私にもルルって名前があるのよ」

 

 そう言って銃…ルル先輩は顔を上げ髪を整えつつ、口を尖らせながら僕の住み家を見渡します。

 その顔は驚きの表情を見せた後、徐々に険しくなっていきました。

 

 「………置く場所むちゃくちゃね。なんで外にベッドがあるのよ」

 「ベッド? ああ! あれ寝床なんですね。てっきり獲物を捕らえる罠かと」

 「これをどう見たら罠になるのよ。………なんで洗濯機が逆さまに置いてあるのよ」

 「逆さまなんですか? こっちの方が乗るときしっくりきたので」

 「洗濯機は乗り物じゃないわよ。 なんで冷蔵庫に服が入ってるのかしら」

 「ふっふっふ。砂漠にいた時はずっと暑かったので、ここで服を冷やしておいて出かけるときに着ればひんやりして気持ちいいかと」

 

 僕の素晴らしいアイディアを聞いた先輩は、半眼になりながら長いため息をついています。

 

 「はぁ~………まぁいいわ。今は時間ないし、今度しっかり家具の使い方を教えてあげる」 

 

 そう言うと銃の…じゃなかった、ルル先輩はどこからか大きな箱を取り出してその場に置きました。

 箱の中からどこか懐かしい匂いと食べ物の匂いがしてきました。

 

 「ちゃんと検査終わったわよ。特に問題なし。

 あなたが持ってた装備とかは全部この中にあるわ」

 

 懐かしい匂いは僕の武器やお守りでした。

 剣にも銃にもなる片手武器と、小ぶりな二本の剣。

 どちらも僕の手に馴染んでいます。

 あまり触った記憶はありませんけどね。

 

 食べ物の匂いは砂漠で取ってきたものですね。

 オアシスの木々に生っていた木の実と、機甲塔にあったアークスの携行食が数個。

 食べ物に気づくと、空腹がまたよみがえってきました。

 

 「それじゃホント時間ないからもう失礼するけど、今度誰か訪ねてきても簡単にロックをはずしちゃだめだからね? そうやって押し入って悪いことする輩も増えてるからね。じゃ、またね!」

 「あ、待っ………」

 

 早口でそういったルル先輩は、僕が食べ物に気を取られてるうちに間に消えていました。

 

 「消えた!? あ………転移かな?」

 

 これも昨日知ったばかりの機能で、アークス・シップ内の主要エリアには自由に転移できるシステムらしいです。

 一瞬で移動できるなんて。アークス、凄い。

 あ、でも転移システムを使わないと大事なエリアに移動ができないそうなので、不便な気もします。

 

 それにしてもまだお礼も言ってないのに銃の先輩はすぐ消えてしまいました。 

 銃の先輩にあってまだ日が浅いですが、砂漠で会ってからこの住み家にくるまでずっとお世話になりっぱなしです。

 何かお礼をしたいのですが…獲物でも獲って、プレゼントしましょう。

 今度会いに来てくれるって言ってるからその時までに準備しなきゃ。

 

 そうと決まったら朝食を済まして用事を済ましてしまいましょう。

 と、箱の中を漁ろうとすると、視界の端に黒くおっきなものが置かれていることに気づきました。

 

 「………帽子忘れてる………」

 

------

 

 箱の中の食糧で朝食をとった後、僕は行動を開始しました。

 本当は新しく住むアークス・シップ(ナワバリ)全体の地形・地理を把握しておきたいところですが、今日はそれ以外に目的があります。

 

 それは『アークス調査隊員』になること。

 

 ずっと前からなりたかったような気がします。

 ずっと昔に誰かと約束したような気もします。

 でも、とりあえず僕はアークス調査隊員に興味があるので志望しました。 

 

 調査隊員になればいろんな星に冒険に行けるそうなんです!

 それを聞いたとき、僕は心が躍りました!

 僕の知らない世界。誰も知らない未知の世界。

 広大な宇宙にはまだまだたくさん冒険する場所がある!

 それだけでわくわくが止まりません!

 

 それに詳しいことはよくわかりませんが、調査隊員になると色々都合がいい、と黒メガネのお兄さんが言っていました。

 なので、僕はアークス調査隊員になるために今日は行動します。

 

 アークス調査隊員になるために必要なのは”試験”を受けて調査隊員の”証”を貰うことらしいです。

 そのためにはずっと前から書類データ?とか、健康診断?とか、色々準備が必要だったらしいです。

 でも細かいことは黒メガネのお兄さんが、なんとかします、と言ってました。

 

 『乗りかかった船ですしね。無理やり乗せられた、とも言えますが…とにかく、あなたを発見、保護した責任として最低限の援助はさせていただきますよ』

 

 そう言いつつ、お兄さんは小さなチップと手紙をくれました。

 推薦状と言うらしく、これを受付に出せば試験を受けられるらしいです。

 

 そんなこんなで僕は今、アークス・シップ《ゲートエリア》というところに向かっています。

 昨日、ルル先輩に案内してもらい転送装置を利用して降り立った《ゲートエリア》はとても広いホールでした。

 どれくらい広いかと言うと………すっごく広いです。横にもたてにも。

 船というのでもっと錆びついて歩きにくい所かと思っていましたが、砂漠の地下坑道のように丈夫な金属で覆われていたり、上階に移動するための転移エレベーター?というものを支柱にしていたり、ガラス張りで宇宙の様子が見えるようになっている窓などがたくさんあり、開いた口が塞がりませんでした。

 

 その場所はアークス達を各惑星に輸送する輸送機が出る所らしく、そのためか周囲には受付がたくさんあり、任務(クエスト)依頼(オーダー)をこなす際は必ずここを利用する必要が………あったような、なかったような。

 うむむ、いろんなことがあって細かいことを忘れてしまいました。

 また今度、銃の先輩に聞いておきましょう。

 

 『なんで昨日の今日なのに忘れるの?』

 

 と、言う先輩の姿が頭をよぎりました。 

 

 ------

 

 慣れない転移システムを利用して広い広いゲート・エリアにつきましたが、今日は先日とは様子が違っていました。

 

 「おお~!!!」

 

 到着した《ゲートエリア》思わず声をあげてしまいました。

 なぜって、とても広いホールにたっくさんのアークス達がいたからです。

 どうやら僕と同じで試験の受付確認のために集まってきたらようですが…

 

 (こ、こんなにいるの!?)

 

 その数、ざっと100人くらい………ここにいる人達ほぼ全員が僕と同じ試験を受けるようです。

 一緒に受ける人がいるとは聞いていましたが、ここまで多いとは思いませんでした。

 こんなにいるのにこんな所で試験なんてできるのでしょうか?

 地下坑道と同じ造りなら、足場や受付が壊れることはないと思いますが。 

 

 確か試験というものは調査隊員の証を与えるに相応しいかどうか、篩いにかけるものだと聞きました。

 だとすると調査隊員として実力を示すのが試験の内容になるでしょう。

 調査隊員に何が必要かはわかりませんが、この宇宙を生き残るためには戦闘力が必要なのではないでしょうか?

 つまりここにいる人みんなで組手をして、勝ち残った人が調査隊員を貰える、ということなんでしょうか?

 わからないことだらけですが、だとしたらここにいる人達がみんなライバルということになります。

 腕が鳴りますね…なんだか楽しくなりそうです!

 

 人数に圧倒されつつ、ワクワクしながら試験の受付を探してアークスの間を割って歩き続けると、そこに集まっていたアークス達は大体の人たちが同じ服装をしていることに気づきました。 

 アークス研修生服と言うらしいです。 

 なんか腰から足元まで足のラインに沿って布でしっかりと被った服と、足を露出し、腰回りから太ももくらいまでヒラヒラした布で隠したような服と二種類ありますが、なにか意味があるんでしょうか?

 

 ちなみに僕の恰好は砂漠で使っていたローブを纏い、フードで頭まですっぽり覆っています。

 全身を布で覆えて砂嵐を防ぐ時や、敵が多くどうしようもないときに砂に紛れて隠れるのに便利だったので砂漠で愛用していました。

 目覚めた時に僕の近くに会った数少ない装備です。

 

 砂漠でもないのにこの恰好をしているのには理由があります。

 まず、僕自身の普段の恰好がローブであること。

 愛用の装備ですからね。ひんやりしていて気持ちいいですし。

 そして、先日銃の先輩と共に僕のお世話をしてくれた黒メガネのお兄さんの指示によるものです。

 黒メガネのお兄さんがあんまり目立たないほうがいい、と言っていので目立たないようにローブのフードを目深まで被って、気配もできる限り消しているのですが…。

 最初に大声あげたのがまずかったのか、恰好が違いすぎるからか、砂漠じゃないからなのか、僕に視線が集中している気がします。

 

 (うう、いきなり目立ってる、早く受付に行って………あれ?)

 

 人混みを分け、どうにか受付とおぼしきところに目を向けた僕は、そこに並んでるアークスの列の長さに驚きました。

 ざっと見ても各列に30人近くのアークス達が並んでます。

 よく考えれば当然のことでした。

 ここにいる人たちはみんな僕と同じ試験を受けるんだから、同じように列に並んで確認というやつをするはずです。

 

 (これじゃいつになるか………どんどん視線が集まってるし)

 

 なぜか、周囲の視線はどんどん僕へと集まってきている気がします。

 

 (…なんか………気持ち悪い…)

 

 ただそこに立っているだけなのに、耳鳴りと眩暈がしてきました。

 砂漠でも数時間なら太陽の下に照らされ続けても大丈夫な僕ですが、ここではなぜか体調が悪くなっていきます。

 いままで感じたことのない体調の悪化具合に、僕はたまらずその場を撤退することに決めました。

 ロビーを見渡してアークスがいなさそうなところを探します。

 

 (列を見張れて、かつ、目立たない所………あそこだ!)

 

 目標地点を定めたら速やかに移動すること。

 僕はゲート・エリアの左にある窓際にいたサングラスをかけた浅黒い肌のアークスの脇を通りぬけ、変な端末手前の坂を駆けあがり、支柱と同化した転送装置の屋根の部分を渡って高所へ移動しました。

 ちょうど受付の屋根に登り、看板の裏側へと移動し終え一息つきつつ下の様子を窺います。

 

 (ふぅ…ここなら目立たないし、全体を把握できる。人が減るまでここで待機かな)

 

 もちろん、受付の上に登る僕のことを見ている人はいましたが、さすがに追ってきたりはしません。

 列から抜け出してまで追ってくることはないだろう、と思っていたのですがあたりだったようです。

 もし誰か追ってきてたのなら、その人が謎の体調不良の原因かもしれませんし、迎撃すればいいだけですけどね。

 

 (さて人数の方は…そんなすぐには変わらないよね。

 あ、でも確認は割と早く終わって列自体は進んでるんだ、これならすぐ受付に並べるかも。

 それにしても研修服の人が多いなぁ…他の人もなんかゴツゴツして重そうな服ばかり…ローブを着てるのは僕だけだ。だから目立つのかな?)

 

 そんなことを考えつつ様子を窺っているうちに体調が落ち着いてきました。

 

 しかし、先ほどの眩暈は一体なんだったのでしょう?

 移動するときはスムーズに動けましたし、今も落ち着いているので大したことはないようですが…。

 耳鳴りは、機甲種の超音波を食らったときに収まらなくなったことは何度かありますが、眩暈なんてお腹が空きすぎてどうしようもないときぐらいしかならなかったはずなのに。

 ここには機甲種もいませんし、そんな音波も聞こえませんでした。

 朝ごはんも…量はちょっと少なかったですがちゃんと食べてきました。

 

 だとしたらあの体調不良は何が原因だったのでしょう?

 むむむ、自分の身体なのにわからないのことが多くて嫌になりますね。

 今後の活動に影響が出るかもしれませんし、少し確かめておいた方がいいかもしれません。

 試験は毎日やるわけじゃないとのことですし、試すなら同じ条件の今しかないですね。

 体調崩したまま内容のわからない試験に臨むのはよくないですが、人目を離れれば治まるようですし…とにかく降りてみますか。

 

 先ほど登ってきた所から降りようと振り向いたところで、一人のアークスが屋根に飛び上がってきました。

 

 獣の耳に鋭い眼光。

 僕より小柄な身体に研修服。

 その小柄なアークスの背には身の丈より長い(パルチザン)

 髪の間からちょっぴり出ている角をみるに僕と同じデューマンでしょうか。

  

 アークスの身体能力は高く、更にフォトンを使えば高い跳躍も可能ですが、そのアークスはフォトンを使った様子もなく屋根に飛び上がってきました。

 獣の耳のせいもあるのでしょうが、本物の獣のような印象のアークスでした。

 

 ふと、獣のアークスと目があいました。

 本当に獣に睨まれている気分です。見たことありませんが。

 

 「うげ、ばれた」

 

 獣のアークスはそう呟いたとたん臨戦態勢をとりました。

 背中の槍こそ構えていませんが、明らかに僕に敵意を向けているのが伝わってきます。

 

 (小柄なのに…まるでバルパリリーパを相手してる気分だ…)

 

 こんなに強そうな相手なのに武器は愚か構えすら取れてないのは失態です。

 体調は戻っているのに油断していました。

 いえ、反省は後です。

 どうやら他にも一名こちらに上がってくるようです。

 これ以上敵が増えたら厄介です。

 幸いにも敵はこちらの様子を窺っているようですし、相手が武器を抜かないうちに減らしておきましょう。

 

 そう思い武器をとりだそうとした瞬間、獣のアークスの後ろから声が聞こえてきました。

 

 「ミリアちゃん、話し合いは終わりましたか?」

 

 その柔らかい声を聴いたとたん、獣のアークスは先ほどまでの威圧感が嘘のように消えて両手を頭の後ろで組んで楽にしています。

 あれ、()らないんですかね? 拍子抜けです。

 そして、獣のアークスの後ろの屋根の縁から新たなアークスが渡ってきました。

 

 「げげ、もう来た。あー…まだだよ、丁度始めるとこだった」

 「始める?」

 「あ。は、話し合いだよ、話し合い~」

 

 そのままよそを向いて口笛を吹きだす獣のアークスを見て新たに来たアークスは腰に手をやり頬を膨らませています。

 

 「もー、また悪い癖が出たのね! 強そうな人を見るたびにケンカ売っちゃダメだっていつもいってるでしょ?」

 「はいはーい」

 「はいは一回!」

 

 そのまま話し続けるアークス達をしり目に僕は警戒を緩めます。

 どうやら戦う雰囲気ではなさそうですしね。油断はできませんが。

 一応すぐに武器に手を伸ばせるようにして…どうしましょう。

 なにやら僕に用がありそうですが、説教中のようですし。

 脇を通り抜けていけばいいかな?

 飛び降りて移動しちゃう手もありますね。

 

 なんて思いながら降りるかどうか下の様子を見ていると、新たに来たアークスが話しかけてきました。

 

 「あの! 友達がご迷惑をおかけしたようでごめんなさい!」

 

 そう言って一度頭を下げたアークスはすぐ顔を上げ、喋り続けます。

 

 「私はアメリア・メリルリートって言います!

 隣のこの子は友達のミリアちゃんです!」

 「…ふん」

 

 獣の人はそっぽを向いたまま不満げに息をもらしました。

 そんな獣の人を困ったように見つめる新しく来たアークスは背中に(ロッド)を装備し、研修服に身を包んでいます。

 綺麗な金髪に優しい眼をした、優しそうな人です。

 背丈は僕より少し大きいですね。

 控えめの尖った耳を見るに、たぶんニューマンのアークスです。

 

 ただ僕が注目したのは綺麗な金髪でも、尖った耳でも、背中のロッドでもなく、大きく盛り上がった胸部でした。

 そのアークスはなぜか服を押し上げるほど巨大な何かを胸部に入れているようです。

 (しかも二つも。

 非常食ならリュックとか、アークスに支給されているらしいアイテムパックとかにいれればいいはず。

 装備も同じく。でもどっちもすぐに取れだせないから胸に入れているのかな?

 あとは身を守るための防具(ユニット)かも…でもあんなに大きいと動くとき邪魔じゃないかな?

 何か護身用の特別な装備かも。

 それにあれだけ目立てば嫌でも目に入って相手の威嚇にもなりますし…むむむ)

 

 色々考えた末にでた答えは…

 

 「…爆弾?」

 「へ?」

 

 思わず口から洩れた言葉に爆弾のアークスは首を傾げています。

 しかし、獣のアークスは今の発言が気に入らなかったのか先ほどの威圧感を出しています。

 

 「おい、お前どこ見てる?」

 「もう、ケンカしかけちゃダメ!」

 「い、いや、今のは違うから!」

 

 またも言い合いが始まってしまいました。

 うかつに話しかけると獣の人に怒られそうですし、どうしましょう。

 そろそろ本気で飛び降りようかと考えていると、気になることをアークス達が言い出しました。

 

 「もう! これから試験で仲間になるかもしれないのに怪我させちゃったら大事なんだよ?」

 「ちょ、ちょっと試すだけだし仲間になるかなんてわからないもん。

 それにその程度の実力で試験を受けるつもりならやめておいた方がいいも~ん」

 「そういうことじゃないし、そんなのダメだよ! ミリアが試験受けれなくなっちゃうかもしれないよ?

 それに、みんな頑張って試験に臨んでるんだから私達の一存で大事な機会を奪っちゃダメ!」

 「そしたら兄ぃみたいに戦闘員になるからいいの。

 あと、(ウチ)の、ね。アメリアの問題じゃないから。すぐ背負い込むのやめてってば」

 「私達の問題だよ! 友達だもん!」

 

 うーん、なかなか話し合いが終わりませんね。

 また威圧されるかもしれませんが…話に割って入ることにしました。

 

 「えっと、あの、仲間になるかもしれないってどういうことですか?」

 

 言い合いをやめてこちらを見る二人。

 獣の人は今回は威圧感が出ませんでしたね。

 凄く睨まれてしまいましたが。

 爆弾の人が少し言いにくそうにしながらも答え始めました。

 

 「最近の調査隊員の試験内容にパーティを組むことが義務付けられてきているんです」

 「パーティ…ですか?」

 

 すると獣の人も答えてくれます。

 

 「そ。まぁ義務じゃなくて推奨だって話だけど…よくしらないけどね」

 「もう、知ってるでしょ! ちゃんと教えてあげなきゃ!」

 「て、敵にわざわざ情報をあたえてどうするの」

 「だから仲間になるかもでしょー!」

 

 また始まりました…これ以上聞けなさそうですし、移動しちゃいましょう。

 

 「えっと、ありがとうございました。失礼しますね」

 

 そう言い残し、脇を抜けようとした僕を獣の人が呼び止めまてきました。

 

 「おい…名前は?」

 

 人に名を聞くときはまず自分からって…誰かに言われたような言われなかったような。

 あ、でも爆弾の人が最初に言ってたのが名前なのかな? …覚えてないけど。

 

 「あ、そうです、聞いてなかったです!」

 

 爆弾の人も同調しだします。

 むむ、よく見たら人も減っちゃってるし、下に降りたいんですけど。

 自分の名前も普段呼ばれないので思い出すのに時間かかっちゃうんですよね。

 

 「えっと…あ、クルスです」

 「…そ」

 

 少し時間をかけて答えると獣の人は僕を一瞥して呟き、僕が先ほどまでいた看板の裏に移動しすわりこんでしまいました。

 

 「あ、もう! クルス…君ですね、試験であったらよろしくお願いします!」

 

 そう言って爆弾の人も看板の裏へいき、獣の人の隣に座りました。

 

 いったい何だったんでしょうか?

 襲い掛かってくるのかと思ったら、二人で話すだけ話して終わってしまいました。

 これがアークスの日常なんですかね?

 うーん、ちゃんとアークスになれるか心配です。

 ん? あれ? あれれ? 気づいたら人が凄く減っています!

 手続きが終わっちゃったんですかね…これじゃ体調不良の原因を調べられません。

 残念です、けど人が減ったってことは受付が空いてるってことです。

 元々試験をうけるために手続きをするのが目的でしたし、これはこれでよかったですね!

 

 そうして僕は一番空いてる列に並ぶことにしました。

 

 




「ミリアちゃんどうしたの? いつもなら相手の名前なんて気にしないのに」
「…あいつ」
「? クルス君のこと?」
「うん。あいつ強い」
「え? そう? 隙だらけだったと思うけど」
「そうなんだけど、たぶん当たらないと思う」
「よけられるってこと? ミリアちゃんのスピードでも?」
「うん」
「そう、ミリアちゃんの野生の勘がそういうなら、そうなのかもね」
「…負けない」
「そうね、でも」
「?」
「やっぱりケンカしようとしてたんでしょ!」
「あ、いや、そんなこと…」
「今更言い訳してもおそーい!」
「わ、わわ、ごめん、抱き着かないで!!」


ありがとうございました。

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