ファンタシースターオンライン2 if    作:ラル・ノベル

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続けてリティアです。
読みづらさにご注意ください。


4、リティア 「ライバル」

 

 受付で確認作業を終えた私は、すぐに移動用大型輸送機へと移動することにしたわ。

 試験時間開始までにはまだ余裕はあったけど、早急に解決しなくちゃいけない問題が二つできたからなの。

 

 一つ目の問題は、アメリア達。

 お人好しでお節介な幼馴染のアメリアは、私と、”謎のローブのアークス”こと”クルス”とやらの関係がどうしても気になるらしく、受付を離れた後もしつこく聞きだそうとしてきた。

 ミリアも一緒になって聞き込んでくるから、あまりのしつこさにたまらず逃げだしちゃった。

 

 ローブの奴とそんな深い関係じゃないのに…知ってるやつかと思っただけよ?

 知り合いかもしれないけど、その確証はまだないわ。

 面と向かって話すチャンスは逃しちゃったしね。

 

 まあ、アメリア達のおかげで”謎のローブ”の名前が”クルス”だってわかったことで、その”クルス”と連絡が取れるかもしれないようになったんだけど。

 あ、連絡を取るのは、”クルス”って奴が持っているかもしれない六芒均衡(ろくぼうきんこう)の情報を聞き出すためであって、別に”クルス”って奴のことが気になるからじゃないからね!

 

 あれ、でもアメリア達はそのクルスとかいう奴と友達だって言ってたわよね。

 …どうやって友達になったんだろ?

 アメリア達と会うのは1週間ぶりだし、その間にローブの奴と何かあったかもしれない。

 友達ってことはもう遊びに言ったりしたのかな?

 もしかしてもうあのローブの住所とかも知ってるのかも!?

 い、今からでも戻って聞きに行こうかしら…?

 

 ああ、でも聞きに戻る時間がない。

 それは二つ目の問題が原因。

 

 「憂鬱だわ…」

 

 思わず口から出ちゃうほど私にとっては悩ましい問題。

 それは事前連絡もなく急に決まった《調査隊員資格試験》の受験条件。

 事前に貰っていたのとは違う、受付終了後に貰った試験内容案内データの真ん中辺りに新たに(こめじるし)で記載されていた内容。

 

 〈※試験は二人以上のパーティを組んで臨むこと〉

 

 左手首につけた小型端末から空中に映し出されるそのデータを再度確認するけど、改めて確認してみても見間違えじゃなかった。

 目をこすっても、端末を叩いてみても、左腕を振り回してみても、文字は変わらず記載されている。

 あ~、も~。 

 

 「先に、言いなさいよおおおぉぉぉ!!!!」

 

 人目もはばからず叫びながら、私は目的地である大型輸送機の中へと駆けこんだ。

 

 

 ------

 

 

 私は訓練校(アカデミー)で起こったとある事故以来、周囲と深く関わる事を、特にパーティーを組むことを拒絶している。

 元から人との付き合いが得意というわけじゃないけど、その事故以来私は人を信じることができなくなった。

 もちろん、アメリアとかミリアとか例外はいるわ。

 でも、その友達すらも心の底では信じきれていない。

 アークスは常に危険と隣り合わせ。

 なのに、信用できない相手と探索や戦闘をするなんて自殺行為よ。

 仲間を信用できないから私は一人を選ぶの。

 …アメリアは何か勘違いしているみたいだけどね。

 

 だから、今までと同じように今回の試験もパーティーは組まず、一人で受けて一人で合格するつもりだったの。

 事前にパーティーを組まなきゃいけないことを知っていたら…

 

 「調査隊員じゃなくて戦闘員志望にすればよかったかな…」

 「それじゃ君の言う『目標』とやらを達成するのが難しくなるんじゃないかな?」

 

 輸送機に入るなり一人ごちてしまった私に隣から聞きなれた声がかかった。

 

 「あら成金。久しぶり」

 「ふふ、相変わらずだね」

 

 そう言って目の前の金髪でそこそこのイケメンは全てお見通しとでも言うかの如く含んだ笑みを浮かべている。

 私の嫌味を軽く流し、長くもない髪を整えつつ。

 そんなんだから………いや、今のは私が悪い。

 

 「…ごめん。久しぶりね、ギル」

 「ああ、しばらくぶりだね、リティア」

 

 彼の名前はギルバート・グラムフィア。

 彼もアメリアと同じく幼馴染で、訓練校(アカデミー)のクラスメートよ。

 アークスの大手武器製造会社の一人息子。

 今は試験のためか訓練校の制服だけど、いつも最新の武器やら服やらでコーディネートしていて、知らない人が見ればイケメン金持ち、ちょっと知ってる人がみたら金持ち自慢の嫌味な奴ね。

 まあ、ギルは金持ちであることをひけらかしているわけじゃないけどね。

 

 ギルが常に新しい装備を身につけているのは訳があるの。

 最新試作装備のモニター試験を兼ねているんだって。

 コイツの父親の会社が作った製品を実践や日常で装備し、武器に異常がないか、服装を見る周囲のアークスの反応はどうか、細かくチェックしているらしい。

 

 『新しい装備が使えるといっても武器は暴発することもあるし、服がダサい時もある。

  報告書は書かなきゃならないし結構大変さ』

 

 『まあ、カッコいい服の方が多いし武器や服に興味をもったかわいい娘達とも仲良くなれるし最高だよ!』

 

 とは彼の談。

 そんな軽い感じだから周囲には自慢しているように見えるのよ。 

 

 

 「あんなに調査隊に入るんだって意気込んでいたのに、いったいどうしたんだい?」

 

 なんてとぼけながら聞いてくるギルに思わず舌打ちしそうになる。

 コイツのこういうところが嫌いだ。

 

 「…どうせわかってるんでしょ?」 

 「ふふ。パーティー組まなきゃいけないのが憂鬱なんだろう?」 

 「…チッ、そういうことよ」

 

 今度は舌打ちが出てしまった。

 予想通りとぼけていた。

 昔からそうだ。コイツは私の考えていることを読んでくる。

 それを自慢…しているわけじゃないんだろうけど、ドヤ顔して話してくるからイライラするのよ。

 

 モニター役もかねて周囲のアークスを日々見て観察眼を鍛えているからか、日に日に私の心を読む精度が上がっていき、徐々に私以外の人間の心も読み始めていった。

 

 『心を読むというよりはその人の態度や仕草、話し方とかを見聞きしてるとなんとなくわかる程度だよ』

 

 それでも十分すご…憎たらしい。

 今じゃ人に限らずエネミーの心まで読んでしまう、という噂だ。 

 訓練校でパーティーを組んだ時のコイツの指揮能力は、傭兵として経験豊富なミリアにも負けていなかった。

 ミリアは経験でエネミーの動きを読んで行動するが、エネミーにも想定外の行動をする固体がいる。

 そんなエネミーを早い段階で見つけ排除したり、逆に利用するなどして戦闘を終わらせる。

 本人は個人の能力が足りてないのが不服らしいが、ギル自身が別段弱いわけでもないしこれも自慢…じゃないんだろうけどムカつく。

 

 

 私の返事を聞いたギルは先ほどからわざとらしく腕を組み、思案顔で唸り(うな)続けている。

 なんだかすごいデジャヴ…ってさっき会ったアメリアと似たポーズよね、コレ。

 これから言いだすことが手に取るようにわかる。

 相手の気持ちが読めるのはアンタだけじゃないのよ!

 

 「言っておくけど気遣い無用よ。パーティーに入れてもらおうとは思ってないわ。

 自分で見つけるから気にしないで」

 

 くだらないことを言いださないようくぎを打っておく。

 アメリアならともかくコイツにこれ以上気遣われるのはたくさんだわ。

 

 「ん? ああ、それなら大丈夫。僕たちのパーティーはもう満員だからね」

 「!? そ、それならそう言いなさいよ!」

 

 私の早とちりだったらしい。

 恥ずかしさで顔まで熱くなる。

 っていうかコイツ私がなんていうかもわかってたんじゃないの!?

 わかった上で黙っているなんてズルい!

 

 「っておかしいじゃない! 何でもうパーティー組んでるのよ!?

  今回の試験がパーティー厳守だってことはさっき貰った新しい案内データの注意事項を読まなきゃわからないことじゃない!」

 「もちろん、読んでその場でアメリアとミリアに輸送機の番号を聞いたのさ。

  偶然にもみんな一緒の輸送機でラッキーだったよ。

  輸送機が同じで降ろす場所が違うなんてことはないはずだからパーティーも組んでしまったのさ」

 

 くっ、なんて無駄に手際のいい…。

 っていうかつまりアメリアもミリアももうすぐここにくるんじゃない!?

 また質問責めにされちゃう!

 もー! どれもこれも全部コイツのせいよ!!

 

 「じゃあなんなのよ!? そんなわざとらしく呻ったりして!」

 「いや、キミが戦闘隊員になるのならこちらもプランの修正が必要だからね。どうしたものかと…」

 

 頭に血が上った私にはその言葉の意味を理解するのに時間がかかった。

 戦闘隊員? プラン?

 

 「は!? 戦闘隊員になんかならないわよ!? っていうかプランって何よ!?」

 「そうなんだ、安心したよ。同じ土俵でないとハッキリしないこともあるからね」

 「さっきから何言ってるの?」

 「それならもう話してもいいかな? できれば次の機会の方がいいんだけど…」

 「だから何のこと!? さっさと言いなさいよ」

 「ふふ。気になる?」

 

 うざい。

 一応こちらにもやんなくちゃなんないことがあるんだからさっさと話しなさいよ。

 これ以上ストレスが溜まる前に、コイツぶん殴って移動しようかしら?

 

 「ふふ…では聞いてもらおう」

 

 やはりというか、私が移動しようとしたのを察知したのか話し始めるギル。

 殴ろうとすればどうせ避けられるだろうし、適当に聞き流して移動しちゃおうかな?

 

 「リティア。どちらが優秀なアークス隊員になれるか、勝負しよう」

 「…はぁ?」

 

 意味がわからない。

 何を突然いいだすのかしらね。

 ”優秀なアークス隊員”なんて曖昧すぎるし、勝負ってどうするのよ。

 貰った勲章や称号の数? 討伐したエネミー数? 発見した惑星、文明の数?

 名声や知名度なんてのもあるわね。

 でもそんなものを得るために任務をこなすなんて”優秀なアークス隊員”とはかけ離れているしありえないわ。

 

 それにもう勝負はついてるようなものよ。 

 訓練校では学年毎に成績が順位として張り出されるの。

 近接、射撃、法撃に連携技術や武器、アイテムの扱いとかとか…多すぎて割愛するけど、それら全ての成績を総合的にみた優秀な訓練生は卒業する時に勲章とか少しランクの高い情報へのアクセス権とか色々な特典が貰えるの。

 …特典はどうでもいいわね。

 彼の順位は卒業時で学年9位。

 対して私は12位。

 今後優秀なアークス隊員になるかはわからないけど、実力なら結果が出ているんだから。

 

 「バカげてる。っていうかどっちが優秀かなんてもうわかってるでしょ?」

 「キミのほうかい? でも僕は負けないよ?」

 「なんでそうなるのよ! アカデミーの成績順位表! 私の3つは上にいたわよ!

  それにアンタ、張り紙どころか上位優秀者として壇上に上がってたじゃない!

  私は上がってないわよ? これだけでもうわかるじゃない」

 「キミは手を抜いていた」 

 「…ハアァァ!?」

 

 ハッキリと断言されたあまりにも馬鹿馬鹿しい言葉に、口を開くのが遅れた。

 私が? 手を抜く? ありえないわ!

 私は私の目的のために全力だった。

 そりゃあ途中で事故起こしたり、パーティー組まなくなったかもしれないけど、それでも誰にも負けないように必死に努力した。

 結果はダメだったけど、それを手抜き呼ばわりされるいわれはないわよ!

 

 「手なんか抜いてないわ!」

 「ふふ。まあそれでもいいけど、僕は納得してないよ。

  だから今後調査隊員としての活動で競い合うんだ」

 

 もうやだコイツ、めんどくさい。

 

 「それに、キミが今現在周囲に劣っている、と思っているなら間違いなく追い抜こうとするだろう?

 じゃなきゃキミの『目標』が嘘になる」

 

 …うざ。勝手に決めつけないでよ。

 そりゃ劣ってるとは思うけど…。

 それに目標じゃない。目的よ。

 

 コイツを相手にするのは疲れる。

 聞き流すつもりだったのに熱くなっちゃったし、もういいや。

 

 「…勝手にすれば?」

 「うん、勝手にしよう。一応、宣言しておこうと思っただけだからね。

  僕が毎回キミに、僕の成功した任務内容とか報告しに行くから覚悟しておいてね」

 

 もっとめんどくさくなりそうなんだけど。

 

 「本当は今日も競い合いたかったんだけどね…そういうわけにはいかないんだ」

 

 そう言って手元に銃剣(ガンスラッシュ)を換装し、そのまま素振りを始めた。

 武器の調子を確認してるってとこかしら。

 輸送機内部では武器やフォトンアーツ、テクニックの調子を確認するために内部にも障壁が展開されてるの。

 移動中や戦闘中に武器が壊れましたって言うんじゃ困るから、船で動作確認できるようにされたの。

 武器も輸送機もちょっとやそっとじゃ壊れない作りだから素振り程度じゃどうということはないし、テクニックも障壁に吸収されるからみんな平気で暴れているわ。

 

 にしてもただ振ったり構えたりしてるだけなのに様になっているというかなんというか。

 ギルがこういうカッコつけたことすると取り巻きの女子が騒がしいんだけど、生憎ここには取り巻かない私ぐらいしかいないし。

 でも取り巻かない私でも気づくいたことがある。

 ギルの得意武器は銃剣ではなく大剣(ソード)だったはず。

 にもかかわらず何でギルは銃剣を振り回してるのかしら?

 

 「何アンタ、大剣忘れたの?」

 「いやいや、装備できないのさ」

 

 は? いやいや、そんなはずないわよ。

 《ハンター》なら間違いなく装備できるわ。

 可能性としてはクラスが《ハンター》から変更しているってことだろうけど、ギルの得意クラスは《ハンター》。試験前に得意クラスを変更するバカはいないわね。

 

 と、なると…負傷でもしたのかしら?

 片腕が使えないというのなら両手持ちが安定する大剣ではなく、片手持ちで小回りの効く銃剣をメインに使うのもわかるわ。

 ケガしたまま試験に臨むのはいいこととは思えないけど、私ならケガを隠してでも参加するわね。

 アメリアに治してもらう手もあるけど…あの子に相談したらお説教もついてくるし、心配もかけたくない。

 

 「なに? 腕痛めたの?」

 「いや、いたって健康体だよ」

 

 しかし、ギルはケガでもないという。

 

 「…じゃあ装備できない理由って一体なんなのよ?」

 「ん? クラスを変えたんだよ??」

 「はぁ!?」

 

 バカがいた。

 そのバカは、それ以外どんな理由があるの? とでも言うかのようにキョトンとした顔でこっちを見てる。

 殴ってやろうかしら。避けられないように組み敷いて。

 って殴っている場合じゃないわ。

 

 「何考えているのよ!? アメリアの護衛もしなきゃいけないんでしょ!?」

 

 私が気にしているのは何も試験のことだけじゃない。

 ギルのもとに届いた”脅迫状”らしきもの。

 それに書かれた内容には私達の親友、アメリアに”災い”が降りかかるという内容だった。

 

 その”災い”が何かはわからないけど、家庭の事情から人攫いだと予想したわた…彼ら。

 けど、人攫いの強襲だと仮定して対策するにしても相手の規模は分からないわ。

 相手は1人? 3人? 10人? それ以上?

 ある程度実力があるのは間違いない。

 対してアメリアにはギルとミリアの2人だけよね。

 あ、パーティーは埋まっているっていうし誰かしら護衛でもつけているのかしら?

 でも、試験中に護衛するのは無理なはずよね。

 ってことは同じ受験者ってとこね。

 ギルもアメリアもミリアも上位成績者だし、もう一人のメンバーも強いのかもしれないけど、まだ不安が残るわね。

 …どうしよう。私も手伝いたいけど…。

 今度は私が(うな)る番だった

 

 「ああ、脅迫の件は知っているんだね? それなら話しは早い」

 

 まさか、やっぱりパーティーに入れって…?

 それとも試験を捨てて護衛してくれとか言うんじゃ…?

 

 「この銃剣の調子見てくれないか?」

 

 …なんか私がパーティーに入りたがってるみたいじゃない。

 コイツといると身構えちゃうのは癖だから仕方ないけど。 

 

 「まあいいわ」

 

 私はアメリアのことも気にかかるけど、試験になんとしても合格しなくちゃならない。

 そもそも”災い”が本当に起こるかわからないのに振り回されるのはごめんだわ。

 でもやっぱり心配だからせめて私にできることはやろうと思う。

 見るだけだから対して貢献できないけどね。

 

 私が承諾したのを驚いているのか今度はギルが固まっていた。

 とりあえずギルから銃剣をひったくり、武器の調子を観察する。

 

 外観は問題ないわね。使い終えた後もしっかりメンテしてるみたい。

 刃こぼれどころか全体見渡しても傷一つないし、持ち手(グリップ)も掃除してあるし、染みつきやすい手汗の匂いもないわね。

 …別に匂いフェチじゃないわ。職ぎょ…クセよ。

 メンテしてるといつも嫌なこと思い出すのよね。

 

 気分を変えるつもりで、作業を続けつつ、ギルに話しかける。

 

 「…まだ時間あるし《ハンター》に戻して来たら?」

 「いや、パーティーのバランスを考えると僕が《レンジャー》をやる方がいいと判断したのさ。

  もちろん、パーティーのみんなと相談してね。」

 「あっそ」

 

 それなら私がとやかくいうことじゃないわね。

 パーティーで話し合っているのなら今から変える方が迷惑だわ。

 まあ優秀なパーティーは5分足らずでブリーフィングも終えるし、コイツのパーティーは少なくとも3人は優秀だ。

 変更できないこともないんだろうけど。

 言うだけ野暮ね。

 

 …フォトンの通りは…少し過剰すぎるわね。

 刃が不安定になりそうだわ…ここを、こうして…うん、これなら大丈夫。

 

 「バカみたいにフォトン注ぎ込みすぎなのよ」

 「なるほど。気を付けるよ」

 

 射撃は…こっちは問題なし。

 フォトン吸収率も一定だし、弾速にも異変はないわね。

 たまに武器が過剰にフォトンを吸収してオーバーヒートすることあるのよね。

 でもこの感じなら長時間戦闘しても壊れることはないわ。

 

 そうして5分ほどでメンテを終え、銃剣をギルに返す。

 ついでに釘を打っておくのも忘れない。

 

 「ちゃんとアメリアを護るのよ」

 「もちろんさ」

 「ミリアとアンタ自身もよ」

 「僕はともかく、ミリアを護るなら衛士特務隊や六芒均衡くらいじゃないと務まらないんじゃないかい?」

 

 変わらず軽口を言ってくるコイツには気が抜けるけど…安心する。

 そして私は余計な一言をいってしまう。

 

 「私も負けないんだから」

 

 そう宣言し返す。

 私は誰にも負ける気はない。

 するとギルは少しの間私を見つめて…唐突に吹きだした。

 

 「な、何がおかしいのよ!」

 「いや…何でもないよ」

 

 何でもなくないわよ、笑いこらえてるじゃない!

 もう! やっぱりコイツは嫌い!

 

 「ふん! それよりアンタ、武器会社の息子ならいい加減武器のメンテぐらいできるようになりなさいよ!!」

 「ふふ…あ、いや、やろうとはしてるんだけどね。僕はリティアほど確かな目はもってないからね」

 

 う…褒めたって許さないわよ!

 

 「あの子に言われなきゃメンテは完璧だと思ったままだったし…」

 「? あの子って誰よ?」

 「ああ、僕より先に来ていたアークスさ」

 

 先にって…私達以外にアークスなんて見当たらないじゃない。

 

 「すみっこに座って武器の整備をしてたんだ。キミと同じで整備士の経験でもあるのかな?

  僕は最近使ってない銃剣のおさらいでもしておこうと思って素振りしてたんだけど、

  気づいたら真横にいたその子が”音がおかしい”って言ってくれてね」

 「音?」

 「ああ。言われた時は何のことかわからなかったけど、このことだったんだね」

 

 …音で武器の不調を確認するなんて聞いたことないわね。

 それに、ギルの銃剣は不調と言ってもほんの少しだけフォトン循環値が不安定になっていただけ。

 あのまま使っても少し切れ味が落ちるだけでそれ以外なら問題なく使えたはずよ。

 それを、素振りの音だけで?

 …武器ショップの変態達でも難しいんじゃないかしら。

 

 「どこよそいつ?」

 「え? ああ、ほら、ドリンクバーの影だよ。

  武器のこと指摘したあと”眠い”って言ってあそこに移動して、すぐ寝ちゃったよ」

 

 ギルはドリンクバーの方を指差す。

 大型輸送機は乗ろうと思えば50人近く乗ることができるからか、ドリンクバーやショップなども大きく作ってあるのよね…いつもの小型輸送機なら死角ができたりしないんだけど。

 って…アイツは…。

 

 「クルス…」

 「おや? 知っているのかい?」

 

 知らないわよ。でもよかった、同じ輸送機で。

 

 私が急いで解決しなきゃいけない問題その2はパーティーを組むこと。

 私はパーティーを組むのが嫌い。

 なのに組まなきゃ不合格になる。

 

 そこで最初に思いついたのは形だけパーティーを組むこと。

 形だけでも嫌だけど、これしかないと思ったわ。

 組んだ相手といちいち一緒に行動するなんてごめんだし、他の受験者達もソロで挑む人はいたはずよ。

 それならソロで受験しようと思ってたアークスと交渉して、パーティーは組んでいるけど別々に行動するようにしたらいいんだわ。

 こんな変な提案を飲む奴がいるかはわからないけど、合格条件にパーティーが必須な以上、何人かは乗ってくるだろう。

 私の実力が不安で落ちるかもしれない、とか言うならぶっ飛ばしてでもわからせてあげる。

 まあ私も学年で12位だし、どっかのバカが流した”二つ名”のおかげで少しは有名なはず。

 私のはムカつく”二つ名”だけど。

 まぁ相手が見つからないなら…弱そうなやつを脅せばいいのよ。

 ………本当に最終手段だけど。

 

 だから、この案を考え付いてからメンバーの選定やら交渉時間も鑑みて急いでいたの。

 

 

 でもそんなことを考える傍らで、アイツなら、と思った。

 

 

 無条件でいい。一瞬そう思った気がする。

 すぐ思い返したけどね。

 でもアイツほど丁度いい奴もいなかった。

 学年成績6位のミリアが一目置く実力者で。

 パーティーを組んでいる様子もなく。

 私がほしくて仕方ない情報を持ってるかも知れない。

 そんなアイツならパーティーを組みやすい。

 むしろ早いうちに交流しておけば六芒均衡の情報を聞き出しやすくなるわ!

 まあ断られるかもしれないけど…その時はぶっとば…交渉すればいいのよ!

 

 だから輸送機に入った時、ギル以外に人の姿がなくて落胆したんだけどね。

 私はまだついているみたい。

 

 「アイツはクルスって名前で…」

 

 まだ悩んでいるけど、またチャンスを潰すわけにはいかない。

 迷う気持ちを振り払うように、宣言するかのように、言った。

 

 「私のパーティーメンバーよ」 

 




「はやいね、ギルバート君」
「あ、先生。ご無沙汰してます」
「もう先生はよしてくれ。いまや君たちと同じ調査隊員になるための受験者さ」
「そうはいきませんよ。2年もアカデミーでお世話になりましたし、すっかり呼び慣れちゃったのもありますしね」
「まあそれもそうだな。
 しかし、誰にも言ってないはずなのに、よく私が試験を受けると知っていたな?
 おまけにパーティーを組んでくれとは…驚いたぞ?」
「そうですね…先生が試験を受けるのは父のツテで聞いてまして。
 パーティーの件は先ほど説明した通りです」
「そうか、まあ仕方がない。
 もう立場は同じとはいえ、愛する生徒の頼みだ。喜んで参加させてもらうよ」
「ありがとうございます!」
「しかし、私よりもリティア君を誘うべきではないのかな?
 あの事故以来、パーティーを組んでいないんだろう?
 アカデミーも卒業したし、良い機会じゃないか?」
「そうなんですけどね…アメリアがすでに断られたそうで」
「…そうか…まだ傷は言えていないのだな」
「心の傷を治すにはまだまだ時間がかかりそうです、が、いずれ彼女は帰ってきますよ。
 僕の道を…可能性を示してくれた彼女なら、ね」
「そうか…そうだな! ん? 噂をすれば、あれはリティア君じゃないかね?」
「ええ、そうですね」
「彼女はドリンクカウンターの前で何をモジモジとしているのかね?
 ドリンクの飲み過ぎでトイレでも我慢しているのか?」
「デリカシーにかけますよ、先生。
 彼女は今、意中の相手に告白しようかどうか悩んでいるのです」
「ほう?」
「しかもしかも~! その相手がミリアちゃんも一目惚れしちゃった相手なのです!」
「!? ち、ちがうもん!」
「おお、アメリア君にミリア君。相変わらず仲がよろしいようでなによりだな」
「先生! お久しぶりです!」
「どうも」
「アメリア、どういうことだい?」
「あ、聞いてよギル! 実はかくかくしかじかで」
「なるほど…それでミリアはクルス君とやらに敵…一目惚れしてしまったというわけか」
「なんで言い直す! 敵意で合ってる!」
「そしてリティアは今まさに告白しようとしている!
 ああ、これを見てミリアちゃんはどうするんでしょう?」
「どうするんだい?」
「どうするんだ?」
「どうもしない!!」
「そういうミリアちゃん。しかし、忘れてはいけません!
 彼女の二つ名は”狩人”!
 一度狙った獲物を逃がすはずもない!
 こうして謎のローブことクルス君とリティアとミリアちゃんの熱く燃える恋の三角関係が始まるのでした!」
「始まらないもん!
 リティアが誰に告白しようと知らないもん!」
「うーん、困ったね。リティアもミリアも友達だし、どっちを応援すればいいのか…」
「ウチは関係ないってば!」
「そうだな、映画化はいつかね?」
「先生まで何言ってる!!
 リティアがあのローブとイチャイチャしようとウチには関係ないもん!」


「アンタ達…」
「「「「あ」」」」
「うるっっっっさああああああああい!!!!!!!!」
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