ファンタシースターオンライン2 if    作:ラル・ノベル

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5、クルス 「"ぱーてぃー"ってなんですか?」

 

~とある惑星、とある砂漠~

 

「なぁクルス~」

 

「なに……ですか?"師匠"?」

 

「お前に修業をつける前にした話を覚えているか~?」

 

「……"約束"の事?……ですか?」

 

「そそ」

 

「たくさんあった……ました。"最後までやり通せ"とか、"むやみに力をふるうな"、とか」

 

「うんうん」

 

「あとから足されたのもあります…です?

""師匠"の言うことは絶対"とか"崇め敬え奉れ"とか」

 

「……私、そんなこと言ったっけ?」

 

「うん。じゃない、はい」

 

「アッハッハ! まぁ今はそれは置いといて。

いつかお前に仲間ができたらそいつらを守る、ってのも追加しといて」

 

「……前から思ってたけど……なんか雑……もう12個目の"約束"……」

 

「いいから! じゃないと修業つけてやらないぞ~?」

 

「ハァ……わからないけどわかった。"仲間を守る"だね」

 

「そうそう! 頼むよ!

あと敬語忘れてるよ! しっかり練習しとけ!」

 

「あ、ごめん……なさい。ところで"師匠"?」

 

「どした?」

 

「"仲間"って何? ですか?」

 

「アッハッハ!……そこから? あ~、なんだと思う?」

 

「……食べ物?」

 

「また腹減ってるのか? 違う」

 

「……飲み物?」

 

「飲食から離れて」

 

「……建物?」

 

「物縛りか」

 

「……機甲種?」

 

「近くにあるもの言ってるだけだろ? そうだろ?」

 

「……わからない、です」

 

「アッハッハ! ん~そうだなぁ……仲間は……面倒くさくて、無遠慮で、嫉妬深くて、暗いけど」

 

「……」

 

「嫌そうな顔するなよ。……明るくて、面白くて、暖かくて、優しい、そんな感じかな」

 

「えっと……よくわからない……です」

 

「アッハッハ! そうだろうな! まあいずれわかる!

とにかく仲間は守れ! 特にか弱い女の子! かっこよく守ればモテるぞ!」

 

「むちゃくちゃ……です。それと、か弱い……女の子?って何ですか?」

 

「マジか!? 男のくせに女もしらんとは……人生の半分は損してるぞ!」

 

「えっと……食べも「ちがう!!」」

 

「いいか、女ってのはな……」

 

「うん……じゃない、はい」

 

「私のことだ!」

 

「?……でも"師匠"強いから守る必要ない、です」

 

「いや、そうじゃなくてだな……」

 

「あと"師匠"は重くて僕じゃ持てな……うッ!?」

 

「だぁれが重いって??」

 

「"師匠"が、痛ッ!? 叩かないで!」

 

「重い言うからだ! 重くない! あとその"持てる"じゃない! "モテる"だ!」

 

「???」

 

「ぐ……重くない……よな? ……ゴホン、いいか? モテるっていうのは好かれるってこと! 女ってのはカワイイとか綺麗とか美人とかってやつだ! 私みたいにな!」

 

「は、はぁ、わかりづらい、です」

 

「くっ……あ! あとおっぱいがデカい! 私みたいになッ!!!」

 

「……なるほど」

 

「アッハッハ納得されちゃったよ」

 

「身体的特徴はわかりやすい……です」

 

「いやみんながみんな同じ特徴じゃないし……あと声が男より高いとか肌が柔らかくモチモチとか……何言ってるんだ私は……」

 

「ふむふむ。まとめるとつまり仲間とは」

 

「うんうん」

 

「人! ですね!」

 

「そこから!? ……あぁ、うん、そうだよ」

 

「?……そして、女の子? も、人で、"師匠"みたいなん、ですね?」

 

「……もうそれでいいや」

 

「わかっ……わかりました。えっと、女の子は"師匠"みたいに強くて」

 

「?」

 

「"師匠"みたいに可愛くて、綺麗で、美人で」

 

「お、おう、照れるなぁ」

 

「"師匠"みたいに胸が大きくて声が高くて」

 

「う、うん?」

 

「"師匠"みたいに肌がモチモチしてて重い。グェッ!?」

 

「……お前はモテないよ……」

 

「し、"師匠"! おもっ、重いです! "師匠"!? "師匠"!!」

 

 

~~~~~~~~~

 

 

 「……ッ! ……ねぇ、ちょっと!

 ねぇってば! 起きなさいよッ!……あっ!?」

 「う!?」

 

 おでこに突然鈍い痛みが走りました。

 …ここはどこでしょう?

 なんか複数人の視線を感じますが…。

 

 僕はおでこをさすりつつ上半身を起こして周囲を窺います。

 新しい住み家のように周囲は銀色の金属壁に囲まれてます。

 でも新しい住み家ではありませんでした。

 まず、出入り口が見当たりません。

 テラスへ向かう自動扉もないです。

 一応部屋の左右には窓があり外の様子を見ることができそうです。

 ちょっと見てみましょう。

 しかし、僕が立ち上がって見に行こうと思ったときには窓の上から金属板が降りてきて、窓を封じてしまいました。

 うーん、もう少し早ければ…。

 

 一見すると閉じ込められたように見えますが、別段慌てることはありません。

 なぜって…なぜでしょう? 閉じ込められるのになれている…ような気がします。

 

 それに、周りには僕のほかにもたくさんアークスがいますから、きっとその人達が出入口を知っているはずです!

たぶん。

 

 新しい住み家よりも少し広いその部屋には何人かのアークスが集まっていました。

 数は18…いえ、19人です。受付の時よりは少ないですが、部屋が狭いのでなんだか息苦しいです。

 彼らはいくつかの小規模なグループに集まって何かを話し合っていました。

 「試験…」とか「編成…」とか聞こえます。何のことでしょうか?

 うーんうーん。

 

 あ! えっと、そうでした、ここは《大型輸送機》の中でした。

 部屋の中じゃないですね!

 これから行われる《調査隊員資格試験》の会場に移動するための乗り物の中です!

 最初に入ってきたときは誰もいなかったのに、いつの間にかたくさんアークスが乗り込んでいたみたいですね。

 それなら出入り口は…あ、ありました!

 部屋の…輸送機の真ん中あたりにアークスのすっごい移動手段、"テレポーター"がありました!

 あれを使えば外に出られるはずです。

 どういう仕組みかはわかりませんが…あ、またアークスが入ってきた!

 えーと、連続して降ってくる光の輪っかの中に入って行きたい場所を言ったり想像したりすれば、今入ってきた紫髪のアークスみたいに別の場所に移動しているんです!

 スゴイですよね! あれがあればご飯のあるところまで一瞬でいけます!

 

 

 それにしても、僕はいつの間にか眠っていたみたいです。

 

 足元には整備途中の《銃剣(ガンスラッシュ)》と《双小剣(ツインダガー)》が置いてあります。

 そういえば武器の点検をしていたんでした。

 なぜって…なんとなくですね。

 何かに挑む前には武器の点検をしっかりやらないといけなかった気がするので。

 何かの本にそう書いてあったような気がします。

 だから点検してたんですけど、僕はまだ起きたばかりだからか集中するとすぐ眠くなっちゃうんですよね。

 "黒メガネのお兄さん"は長期間の仮死化が原因だと言っていましたが…よくわかりません。

 

 えっと、そんなわけですごく眠くなっちゃって寝ちゃったんですね。

 でもあの夢はなんだったんでしょう?

凄く鮮明で、まるで一度体験したことあるような夢だった気がするのですが、内容が上手く思い出せません。

 

 ……懐かしい夢……約束?……何だっけ……

 …思い出せないことはしょうがないですね。

 また夢をみれますように。

 

 さて、途中で寝ちゃったけど点検は一応終わってたみたいですし、試験のためにも武器を装備しちゃいましょう。

 《双小剣》は両脚のももの外側に、《銃剣》は後ろ腰に差してっと。

 よし、準備完了!

 立ち上がった僕は大きく伸びをして、ふと先ほどの痛みを思い出しておでこをさすります。

 何か当たったんでしょうか?

 たいして痛かったわけじゃないけど何かが当たったのは確かです。

 

 「あ、あの、ご、ごめ……」

 

 横からかかる聞こえるか聞こえないかというほど細々とした小さい声。

 僕が顔を向けると同時に顔を伏せたアークス。

 何か言いたげに口をモゴモゴさせていました。

 先ほどから僕に視線を向けていたうちの一人のようです。

 

 背丈は僕よりちょっと大きく、容姿は顔を伏せているのでよくわかりませんが、ニューマンやデューマンのような特徴も見られませんし、ヒューマンでしょうか?

 明るい茶色の髪を後ろ手に縛っています。尻尾にも見えるし…僕と似た髪型ですね。

 服は何度も見た研修服で…あれ? 丸腰ですね。試験前なのに武器も持たずにどうしたんでしょう?

 あ、よく見たら僕の足元に武器らしき物が落ちてますね。

 これは…なんて名前でしたっけ?

 鋭い刃に長い紐がついてて、遠くの敵にもグニャグニャした軌道で攻撃できる変な武器です。

 敵は凄く避けづらそうですが、扱うのも難しそうです。

 面白そうなので遊んでみたかったのですが…メセタ? という物がたくさん必要らしいです。

 残念。

 

 これはこの人のかな?

 拾って差しだそうと思ったのですが、相手は顔を上げずに何かブツブツ呟いていますね。

 「パーティー…誘い方は…」?

 「まず謝らないと…でも嫌われたら…」??

 「だいたいアメリア達が急かすから…」???

 聞き取ることはできるんですけど…何を言ってるかわかりませんね。

 相手のアークスは視線を下に向けたままですが、どうやら僕に用があるようです。

 

 あれ? 今朝も似たようなことがあったような?

 

 そうだ、今朝会った二人のアークス。"獣のアークス"と"爆弾のアークス"も僕に用がある様子でした。 

 あの時も会話の前に何かしていたような…。

 目立つのも気にせず屋根への大ジャンプを披露したり、相手を威圧したり、二人で話し始めたり、爆弾を胸部に仕込んでみたり…むむむ。

 今考えるとそれらの行動も意味があったのかもしれないです。

 もしかしたらアークスは会話を始める前に何か特殊な行動をする必要があるのかもしれませんね。

 僕には爆弾もなければ話し続けるパートナーもいませんし…うーん。

 あ、相手と同じことをすればいいんじゃないでしょうか?

 獣は相手と同じことをして有効を深めたり強さを比べたりしますしね。

 そうと決まれば…

 

 「えっと、僕に何かご用ですか?」

 「あ、え? …なんで顔伏せてるのよ?」 

 「あなたが顔を伏せてるので」

 「え? あ…ふ、伏せてなんかないわよ」

 

 あれれ? 今さっき伏せてませんでしたっけ?

 僕には茶色の頭部と、黄色の羽がついた綺麗な髪留めしかみえなかったんですが…。

 そう思って顔を上げると確かに相手は僕のことを正面から見据えています。

 見据えていますけど…茶色い瞳が泳いでいるような…。

 

 「えっと、伏せてましたよね?」

 「伏せてない! ち、丁度目にゴミが入ったから取ってただけよ!」

 

 なるほど! それなら伏せていたのも目が泳いで見えるのも納得です!

 確かにこの人の視線はずっと感じていましたし、僕がこの人のことを見た時から伏せていたようですからきっとその時に大きいゴミが入って困ってたんですね。

 

 「そうだったんですか! 失礼しました!」

 「わ、わかればいいのよ」

 「目は大丈夫ですか?」

 「…大丈夫よ、気にしないで」

 

 "茶髪のアークス"はそう言って視線をそらします。

 心なしか居心地が悪そうな、苦い顔をしていますがどうしたんでしょう?

 何か言いづらいことでもあるんでしょうか?

 嘘の匂いが混じっている気もしますし…本当はまだ目が痛いのかもしれません。

 

 「無理しちゃダメですよ? 目が見えないと大変ですし…特に狩りの時は大変です!」

 「か、狩り? 大丈夫だってば!

 そ、それよりその…」

 

 ふたたび顔を伏せて呟き始める"茶髪のアークス"。

 また目に入っちゃったのかな?

 

 「武器をぶつけちゃったことを謝らないと。

 ぶつけちゃってごめんなさい?

 事故だった…って言ったらただの言い訳よね」 

 

 どうやらおでこの痛みの原因はこの人のようでした。

 たいして痛かったわけじゃないですし、悪気もなかったようなので気に病むことないんですが…。

 それにしても中々顔あげてくれませんね。

 ひょっとしたらゴミが大きすぎて目を怪我しちゃったのかも。

 ちょっと見てあげましょう。

 

 「起こしちゃってごめんなさい。

 お詫びにパーティー組みましょう。

 よし、これで行くわ!」

 「気にしていませんよ。それよりも目のほうは…」

 「!? キャアア!!」

 「あ痛っ!?」

 

 目の様子を確認しようとして真下にしゃがんで顔を覗いたのですが、すごい勢いで張り飛ばされてしまいました。

 なんで張り倒されたんでしょう?

 仰向けになったまま考えていると相手の声が降ってきます。 

 

 「な、な、ななな何急に近づいてるのよ!?」

 

 どうやら"茶髪のアークス"は急に近づいてきたのが嫌だったようです。

 確かに敵が目の前に現れたらビックリしますよね!

 僕は敵じゃないですけど。

 

 「失礼しました…あれ?」

 

 目覚めた時と同じように上半身を起こして相手に謝ったのですが、その相手の様子がおかしいです。

 目は大事ないようでよかったのですが、呼吸が荒く、顔が赤くなっています。

 体調も悪いのでしょうか?

 

 「えっと、本当に大丈夫ですか? 顔も赤いですし、熱でもあるのではないでしょうか?」

 「な、あ、赤くなんてないわよ!」

 「いえ、赤いですよ? メディ、メディ…治療所に行ったほうがいいのでは?」

 「メディカルセンターよ!

 顔が赤いのは気のせいよ! わかった!?」

 

 決して気のせいではないと思いますが…凄く睨んできますし、これだけ元気なら大丈夫なんでしょう。

 そしたら、この人の用事のほうに話を変えましょうか。

 えーと、確か蹴ったことを謝るのと…お詫びに"ぱーてぃー"を組むことでしたね。

 お詫びなんて気にしなくてもいいのですが…あれ?

 

 「ところで"ぱーてぃー"ってなんですか?」

 「…"パーティー"は"パーティー"よ」

 「えっと、ごめんなさい、知らないです」

 「はぁ!? 知らない!?

 あんた、アークスよね!?」

 「はい。昨日アークスになりました」

 「昨日!?」

 

 そんなに驚くことなんでしょうか?

 

 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!

 昨日アークスになったってことはあんた、《オラクル》の生まれじゃないってこと?

 …あんたどこから来たのよ」

 「えっと、"砂漠の星"です」

 「砂漠の星って…"惑星リリーパ"!?」

 「あ、はい、その星です。

 気づいたら"黒メガネのお兄さん"に組み伏せられ………」

 

 あ、いけない。

 

 「これ、内緒でした」

 「は?」

 「"黒メガネのお兄さん"が面倒事になるかもしれないから黙っておきなさいって言われていたんでした。

 どうしましょう?」

 「はぁ!? どうしましょうって私に言われてもわかんないわよ! もう聞いちゃったし!」

 「むむむ…じゃあ内緒にしてください! お願いします!」

 「…」

 

 茶髪のアークスは口を開けたまま茫然としています。

 内緒にできないことなんでしょうか?

 僕自身、何がどう面倒なことになるかわからないのですが、"受付のお姉さん"にも口を滑らせたときに"試験"を受けられなくなるところだったので、今回もそのようなことになると困ります。

 なんとか"茶髪のアークス"を説得しないと!

 

 「だ、ダメですか?」

 「近いわよ! わ、わかったわよ、誰にも言わなければいいのね」

 

 おお、案外あっさり承諾してくれました。

 凄く助かります。

 

 「はい! ありがとうございます!」

 「だから近いってば! はぁ…もぅ…」

 

 そんなに近づかれるのが嫌なんでしょうか?

 僕は気になりませんが…。

 "茶髪のアークス"はため息をつき、また顔を伏せてブツブツ呟き始めました。

 

 「こんなのがなんで推薦…」

 「でもリリーパってことならもしかして…」

 「にしても一人でどうやって…」

 「コイツとパーティー組んで大丈夫なのかしら…」

 

 ひとりごとが多い人です。

 

 そういえば"ぱーてぃー"って結局なんなんでしょう?

 アークスに必要な知識なら覚えないと! 

 

 「あの、"パーティー"のことを教えてください」

 「…"パーティー"は"パーティー"よ」

 

 さっきと同じことを言って"茶髪のアークス"は人差し指を立てて説明を始めてくれました。

 

 「いい? アークスは任務をこなす時は一人でも複数人でもいいの。任務にも色々あるからね、簡単だったり難しかったり。

 で、一人でやるよりは複数人でやった方が楽でしょ?

 その複数人でやるときに組むのが"パーティー"よ」

 

 「"パーティー"のリーダーさえ決まっているなら、希望した者同士が同意すれば誰でも組むことができるの。

 事前申請も必要なし。必要な場合もあるけど。

 移動中の輸送機でも、現地で組むのも可能なの」

 

 「任務では命を落とすことだってある。

 原生生物もそうだけどダーカーがどこから襲ってくるかわからないからよ。

 そんな時一人よりも複数人でいれば生存率があがる。

 だからどこでもすぐ"パーティー"を組めるようになってるのってわけ」

  

 「しかも、近年制度が変わって報酬も任務に挑んだ人全員に同額支払われるようになったから今のところデメリットはほぼないわね。

 …システム上は、ね」

 

 「で、"パーティー"を組むメリットは生存率の向上以外に…。

 アークスが所持している端末(デバイス)のパーティーシステムを利用して簡単にお互いのフォトン情報を記録(インプット)しておくの。

 そうすれば惑星軌道上のレーダーや端末同士の通信システムを介して互いの位置情報から簡易の味方の体調、フォトン残量まで…って大丈夫?」

 

 「えっと、えーっと???」

 「全然わかってないみたいね…」

 

 知らない言葉ばかりです。

 それに覚えることが多すぎて頭が爆発しそうです。

 でも目の前のアークスは当然とばかりに話してますし…アークスの常識なんでしょうか?

 困りました…このままでは僕はアークスになれないのかもしれません。

 悩み困り果てている僕に見かねてか"茶髪のアークス"が説明を続けてくれました。

 

 「かみ砕いて言うと…仲間になるってことよ!」

 「パーティー組みます!!!」

 「…そ、そう? 今度は即答ね。意味がちゃんと伝わったか怪しいけど」

 

 仲間!

 それって一緒に冒険する仲間ってことじゃないですか!

 それだけ聞けば十分です!

 一人で冒険するのも楽しいですが、他の人と一緒に冒険するのも楽しいはずです!

 たしかアークス調査隊は仲間と冒険するはずでしたし!

 

 『"一緒にアークスに『"仲間を守れ"』"』

 

 (あれ、仲間? さっきの夢でも…あれれ?)

 

 一瞬、夢の内容を思い出したような気がしますが…。

 "仲間を守る"…もしかしたらアークスの決まりなのかもしれませんね。

 うん、そうときまれば僕はこの人をしっかり守りましょう!

 

 「ホントに大丈夫かしら…でも六芒均衡(ろくぼうきんこう)の情報のため!

 そ、それじゃ、パーティー組みましょう。

 《es(エス)》出して」

 

 えす? なんのことでしょう?

 

 「って昨日アークスになったのなら知らないわよね。

 さっき言ってたパーティーシステムを使うための最新端末のことよ。

 《es》っていうの」

 

 そう言って相手は左手についた機械を見せつけてきます。 

 少し大きめの腕輪みたいですね。

 腕の3分の1ほどを覆っていますね。こんなに大きくて戦闘の邪魔じゃないのかな?

 

 「…持ってないですよ?」

 「…ま、まぁ昨日アークスになったのなら支給されてるわけないか。

 でも、旧式端末(デバイス)くらい受付で支給されているはずだけど」

 「???」

 「まさか端末も持ってないとか言わないわよね?」

 「あ、ちょっと待ってください」

 

 僕には"でばいす"という物がどういったものかはわかりません。

 しかし、朝方"銃の先輩"に預かった荷物の中にいくつか僕の荷物じゃないものがあった気がします。

 いくつか持ってきたので、僕の荷物を茶髪のアークスに見てもらうことにしました。

 

 「この中にありますか?」

 

 ローブの裾から取り出した小さめのバックパックをひっくり返すと、緑の容器や手に収まる大きさの球状のカプセルが複数落ちました。これが"銃の先輩"に貰った道具ですね。

 あとは僕が持っていたグラインダーや武器の調整のための工具ぐらいです。

 非常食はローブの内側にありますが、さすがに"ではいす"とは間違えませんよ?

 

 「なにもこの場にばらまかなくても…えーっと…ないわね」

 「う…"でばいす"がないってことは僕は"ぱーてぃー"を組めないんでしょうか?」

 「そういうことになるけど…」

 「そんな!」

 

 せっかく仲間になれると思ったのに!

 冒険の楽しみが増えると思ったのに!

 簡単には諦めきれず、また詰め寄ってしまいます。

 

 「なんとかできないんですか!?」

 「ちょっと、だから、ち、近いってば! …でもおかしいわね」

 

 今度は頬に手を当て考え込む"茶髪のアークス"。

 さっきからいろんなポーズをとって、なんだか可愛らしい人です。

 目つきはちょっと怖いですけど。

 

 「端末(デバイス)無しで受付を通れるはずないわ。

 あなたを担当したのはコフィーさんのはずだから見逃してるとは思えないんだけど…。

 そもそも端末無しでアークスになれるはずもないし…。

 どっか腕とか…あ」

 

 何かに気づいた様子の"茶髪のアークス"は僕のほうにどんどん近づいてきます。

 最初は近づかないでって言ってたのに平気なんでしょうか?

 もう顔の前まできてますね。

 先ほどのしどろもどろとした様子とは打って変わって真剣な目で僕の首元を見ています。

 

 「その首についてるの…古いけど端末っぽいわね」

 「え、そうなんですか?」

 

 僕の首には白と黒で彩られた首輪のようなお守りがついています。

 起きた時からついていたらしいのですが、これもサッパリ覚えがありません。

 

 ただ、これがなかったら"斬撃のアークス"に首を落とされてたかもしれません。

 

 とても丈夫で付け心地もよく、何度も僕の首を守ってくれたのでお守りとして装備しています。

 なるほど、時々心地よい綺麗な音を出すと思ったら機械だったんですね。

 機械はよく音出しますからね。ギギギ、とか、ピピピ、とか。

 

 「フード被ってて見えづらいけど、それがあったからコフィーさんはあんたを通したのね。

  ほら、確かめるからそれ出して…って…」

 

 ふと"茶髪のアークス"と目が合います。

 相手の顔がどんどん赤くなっていき、呼吸も荒く、口からあわあわと言葉がこぼれています。

 もしかして息ができないんでしょうか?

 

 「あの、大丈…」

 「いやああああああああ!!!」

 「ぶっ!?」

 

 更に顔を近づけた僕に対して、"茶髪のアークス"は拳を突いてきました!

 あぁ、この人は急に近づかれるのが嫌いな人でした。

 さっき反省したつもりだったのに…後悔しても遅いですね。

 これは…避けれません。

 

 完全に不意をつかれた僕の顔に、咄嗟に出したとは思えない速く重いその一撃が突き刺さります。

 踏ん張って堪える暇もなかったので後ろに飛びますが拳の勢いは殺しきれず、僕は飲み物の置いてあるカウンターに向かって吹き飛ばされていきます。

 まもなくぶつかるであろう衝撃を予想し、身体を強張らせる僕。

 

 でも予想とは違いました。

 身体はカウンター手前の空中で何かにぶつかり止まりました。

 予想よりも早くきた衝撃に一瞬息が止まりそうになりますが、ぶつかったものが柔らかかったのでそこまで痛みはありません。

 殴られた顔は凄く痛いけど。

 

 「あっ! ご、ごめ、って…え?」

 

 謝ろうとして近づいてくる"茶髪のアークス"は僕の後ろを見て驚き足を止めました。

 頬をさすりながら後ろを確認しますが、飲み物のカウンター以外何もありません。

 おかしいです。確かに何かにぶつかったはずのに。

 

 ってあれ? 何もないその場所からフォトンと機械の匂いがしてくる。

 それに少しずつですが、目の前に何かの気配がにじみ出てきます。

 しばらくそこを見ていると空中が砂漠の陽炎のように揺らぎ、揺らいだ空間に沿って電撃が走ったと思ったらうっすらと何かが姿を現し始めました。

 

 黒く長い髪に生気を感じない肌。

 人か現れました! ヒューマン…ではなさそうです。

 あれは機械の…耳? 羽も生えて…あれ、消えた!?

 それ以外も足元に車輪のような物がついたり、肩に大きな銃がついたり消えたりを繰り返しています。

 一体何が起こっているのでしょう?

 

 不思議な現象が数秒間続き、僕はそれに見入っていました。

 ふと隣を見ると"茶髪のアークス"もこの現象に見入っているようで口を開けて呆然としています。

 この人でもわからない現象なんですね。

 そのまま周囲を見回してみると、他のアークスは異変に気付いた様子もなく話し合いを続けています。

 僕を見続けている人もいますが、空間の揺らぎには気づいてないですね。

 この現象に気付いているのは僕と"茶髪のアークス"だけのようです。

 

 

 

 姿を現した"何か"はどうやらアークスのようですが…隠れていたようですが姿も見えず気配も匂いもしないなんて凄い人です。

 どうやったんでしょう?

 

 「…この人、どこから…?」

 「わかりません。急に現れました。

 えっと…どうしましょう?」

 「え? どうするって…どうしよう?」

 

 "茶髪のアークス"は首を傾けて悩んでいます。

 

 「えっと、話しかけてみませんか?」

 「不用意に近づくのは危険だわ。目の前の現象を見なかったの?

 あんな完璧なステルススキルを持ったアークス見たことないわ。

 最新の人型機甲種かもしれないわ」

 「あんなアークスそっくりの機甲種がいるんですか!?」

 「…いないけど」

 「え? いないんですか?

 どっちにしても敵なら倒さなきゃいけませんし、アークスならお話しなくちゃいけませんよ?」

 「…そうだけど」

 

 渋る"茶髪のアークス"。

 すごく慎重な人のようです。

 話しかけること事態を嫌がってるようにも見えますが…。

 

 でもじっとしていても何も変わりません。

 もう声をかけちゃいましょう。

 改めて"何か"に目を向けると同時に"何か"から声が聞こえてきました。

 受付にいたアークスより事務的な…機械から聞こえる声です。

 確かに目の前のアークスから聞こえてくる声なのに…口も開かずにどうやって喋っているのでしょうか?

 

 『設定完了。起動』

 

 「んん!! 長かったあ~!」

 

 急に口を開いて伸びを始める"何か"に驚いて"茶髪のアークス"は後ろに上がってしまいました。

 僕の後ろに隠れる形です。そんなに怖がらなくてもいいのに。

 

 目の前の"何か"からは敵意が一切感じられませんし、どこにも武器らしきものがなく丸腰のようです。

 現象の中で見た機械の羽や銃もみあたりませんし。

 更に"何か"は僕の知ってる機甲種とは思えないほど精密な動きで不思議な踊りを始めました。

 

 えっと、どう見てもアークスですね。

 あ、でも僕も慎重にならなきゃ。

 朝会った"獣のアークス"のようにいきなり戦おうとする相手かもしれません。

 背後の"茶髪のアークス"もいつの間にか僕の横に移動し、武器を構えています。

 

 身構える僕と"茶髪のアークス"に不思議な踊りを終えた"謎のアークス"は。

 

 

 

 「んで、あんたらは誰で、ここはどこだ?」

 

 

 そう問いかけてきました。 





※ゲームでのパーティー設定はやや違います
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