ファンタシースターオンライン2 if    作:ラル・ノベル

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例によって駄文です。
お気を付けください。


6、マヤ+α「種族」

 

  "死神"とかいう奴に召還(?)されてから

 いったいどれくらいたっただろう。

 現世…俺がいた世界では俺は死んだらしい。

 死因はよく覚えていない。

 

 真っ暗な部屋でいい加減な説明と、

 "救ってほしい少年"の映画を見せられて、

 それが終わったと思ったら"死神"は消え、

 目の前には Now loading って白い文字が空中に輝いていた。

 いい加減な説明と今見た映画の内容から、

 俺がこれから行く世界は俺の世界にあったゲーム、"PSO2"じゃないかと推測して色々考えてたわけだが…

 

 おいおいおいおい…いつまで待たせるんだよ。

 ローディングが99%になったまま動かないぞ?

 フリーズか? フリーズなのか?

 せっかく『イオちゃんとお近づきになる』って目標たてたのに。

 NPCがいるかわからないが。

 

 メンテナンス延長とかロード時間延長って、

 新作ゲームが発売日数日前に発売延期になるくらい萎えるよなぁ。

 どうすっかな?

 時計ないからわからないけど30分ぐらいたってんじゃないか?

 アンインストールとか再起動が必要なのか?

 

「いらないよ。っていうかできないよ」

「お、死神…ってどこだ?」

 

 上からあの野郎…いや、あいつ女か?

 どっちともとれるような声だったからな…

 ま、野郎でいっか。

 ともかく、"死神"の声が上から響いてくる。

 エコーもかかってるし、まるで天の声だな。

 

「いやー、なんだかんだ引き受けてくれたし、

 ちゃんと最後まで調整しとこうと思ってね。

 そしたら思ったより時間かかっちゃってさ~」

 

 なんてのんびりした声が聞こえてくる。

 なんつーか、余裕できたみたいだな。

 さっきは感情が高ぶったのか意味わからないこと騒ぎ立ててたからな。

 思わずこっちがビビっちまった。

 って野郎の心配したってしょうがねえか。

 

「調整ってのはどーいうことだ?」

「あー、こっちの話。気にしないで」

 

 チッ、話す気ねぇなこいつ。

 だったら俺のことはいいから調整とやらを終わらせてくれよ。

 

「だって君、このまま待たされるの嫌だろ?」

 

 心を読むんじゃねえ…ん? 待てよ?

 

「あー、あーあーあー」

「お、気づいた?」

 

 声出るじゃん! 顔ができてるのか!?

 そう思って顔を触ろうとするが手はなかった。

 んじゃ身体もできて…ないな。どういうことだ?

 

「まだ声だけだよ~。

 "PSO2"だっけ? キミが想像していたゲーム」

「そうだけど…やっぱ"PSO2"の中なのか?」

「んー、なんとも説明しづらいかな。ほら、僕国語下手だし?」

 

 声が若干ふてくされているように聞こえる。

 さっきのこと根に持ってるのか?

 

「いやね? キミが使う身体はもう決まっているから変えられないんだけど、

 せっかくだから声とか髪の色とか装飾とか、

 変えさせてあげようと思ってね。

 キミのゲームの言葉を借りるなら、

 キャラクリっていうのかな?」

 

 キャラクリ…キャラクタークリエイトか。

 え、マジ!? それってつまり…

 俺の好きな声で喋れるってことか!?

 イケボもお姉さんホイホイのショタボイスも自由ってことか!? 

 

「…キミ、気持ち悪いよ」

 

 うっせえ! そうと決まれば声優カタログを…

 ってあああここにはパソコンも資料集もないんだった!

 いや、有名どころなら覚えてるしいけるか!

 つかどうやって変えるんだ!?

 

「セリフ言えばいいのか!?」

「いや、えっと…」

「汝に救いあらずッ!」

「待って。それじゃ無理だって…」

「シェイハッ!」

「ていうかそのチョイスでいいの?」

「ドュル…」

「一回落ち着きなよ」

「これが落ち着いて…あん?」

 

 嬉しさはまだ残っているが、うちから湧き上がる衝動が消え失せていく。

 なんだ? こんな機会滅多にないってのにたった一言で落ち着いちまったぞ?

 

「なんだ? なんか変だぞ?」

「んー? …まあ、キミが馴染みやすいように調整してるからね。今は少し違和感がでちゃうんだろう」

「そういうもんなのか?」

「今だけ、ね。それにキミは元々変だろう?]

 

 別に変じゃねえ。

 

「さて、落ち着いたところで声の変更はこっちでやるから、どんな声がいいかイメージして」

 

 変じゃねえからな?

 さてどうすっか。やっぱイケメンボイスで可愛い子へのナンパ成功率をあげたい。

 確かモテやすい声があるって記事を前世で見た気がする。

 どんな声かは忘れたけど。

 

 ふと元の世界の頃を想像する。

 イメージするなら前世で聞いたことのある声がいい。

 やっぱ俳優とか声優とかの…。

 

 そこまで考えて、元の世界とは身体が変わっている可能性に気づいた。

 

「なあ、髪と声って言ったけど俺の身体ってどうなってるんだ?」

「どうなってるって?」

「種族とか身長とかだよ」

 

 身体がどの年齢になるかもわからないのに声を決めちまったら後々残念な人になるかもしれない。

 おっさんなのにショタ声とか、ギャップ萌えって言える範囲を超えている。

 どうせなら身体に合うイケメンボイスにしたい。

 

「………秘密~」

「あん?」

「秘密だよん」

 

 ちょっと待てコラ。

 それじゃ声も髪も変えようがねえじゃねえか!

 そんなランダムで決めて悲惨な姿だったらどうするんだ。

 

 「あっは~、そうだったそうだった。

 だからごめん、この話は無しね!」

 

 なんだコイツ。散々待たせて期待させておいてやっぱ無理だと?

 今までの件は何だったんだよ。俺のストレス溜める以外何の意味もねえぞ。

 

「まぁまぁ落ち着きなよ! こっちでうまいことやっておくから!

 そうだ、アンケートだったんだよ! できるだけイケボね! 了解了解♪」

 

 おいおい、勝手に終わらすなよ!

 まだまともに文句すら言ってねえぞ!

 と、心で思ってたのにもう気持ちは落ち着いてやがる。

 いつもだったら納得いくまで怒鳴り散らすくらいのこと…は、しないな。

 ったくどうなってんだ、情緒不安定すぎるぞ俺。

 

「さっきもいったけど調整の影響さ。

 新しい世界に降りればじきに治るよ。

 それでー、髪の色はどうする? 金髪とか?」

「…黒でいいよ」

「え~? さっきはイケボとかショタボとかで騒いでたのに?」

 

 自分の容姿がどうなってるのかわからないのに、奇抜な色でミスマッチしたくないだけだ。

 別に色のセンスがないとかじゃないぞ?

 

「そんな確認しなくても。黒ね、了解。

 それじゃアクセサリーは?

 今ならフォトンウィングとか60口径フォトン砲とかつけられるよ」

「んなもんつけてどうすんだよ。

 ってかそんなのあんのかよ。

 アクセサリーならいつでも変えられるんだろうし、

 勝手にやっとくからそのままでいい」

 

 できるだけ平静であるように努めて喋る。

 じゃないとまた気分が乱れるだろうしな。

 乱れてもここなら何も問題ないだろうが、

 なんか、疲れる。

 

 「ふーん。おもしろくなーい」

 

 …コイツの相手も疲れる。

 終わりならさっさと行こうぜ。

 

 「僕はいけないよ? もうすぐ死んじゃうし」

 

 …死んだ俺を召還()ぶのに力を使い果たしたんだっけか?

 後味悪いぜ。勝手に引き込んで、

 勝手にくたばるっつったって、

 いわば俺の身代わりに死ぬようなものだからな。

 

 悪いが俺は自分勝手に生きるぞ?

 嫌なことからは逃げるし、辛くて痛いのはもう前世でこりごりだ。

 できるだけ楽して自分が辛くなったら…

 お前が救ってほしい"少年"すら見捨てるだろう。

 お前が希望を託した相手は、そんな奴だぞ?

 

「そんな無理に悪ぶって言わなくてもわかってるよ。

 上手くいかなかった時、申し訳ないんだろ?

 キミが気にすることないんだよ~?」

 

「キミの言う通り僕が勝手にやったことだからね。

『僕と契約して…』とか言って騙す気もないし、呪いで縛ってるわけじゃない。

 キミの自由に生きるといいよ」

 

「最低限でもやってくれるみたいだしね。

 もし失敗したり投げ出しても憎んだり、

 化けて出たりなんてしないさ! 約束する!」

 

「それともやっぱりやめとくかい?」

 

 "死神"はそう問いかけてくる。

 死神が化けるってのも変な話だな。

 つーか声が震えてるし。

 お前こそ俺を巻き込んだこと気にしてるんじゃねえか。

 今更やめてもいいなんて言うなよ。

 半端者なりに覚悟は決めてんだからさ。

 

 肝心な降りる世界の説明が半端だったり言いたいことはあるけど。

 

「やるさ。最善を尽くすよ」

 

 やれることをやる。

 そう決めたんだ。

 

「ん、それが聞きたかった! これで僕も安心していけるよ!」

「ああ、"あの世"で見ててくれ」

 

 こんな奴でも誰かが死ぬときは悲しくなるな。調整のせいか?

 いや、これは違う。俺の心は確かに"死神"との別れを悲しんでいる。

 ほんの数時間しか言葉を交わさなかったけど、

 "死神"のことを気にいってたらしい。

 あ、涙がでてきた。

 待ってろ。俺はあんたができなかったことは叶えてやるからな。

 

 感傷に浸ってる俺の心をのんびりした声が打ち破る。

 

「ん? 何言ってるんだい? 僕も一緒に行くのさ。

 キミがこれから行く世界に!」

 

 は? なんて言った今?

 

「よし! 決意も新たにしたことだし、そろそろいこっか!」

 

 おい。

 

「あ、行くといっても僕は身体がないから、

 キミのことを遠くで見てるぐらいしかできないからね!

 助けてもらおうなんて思わないでよ~?」

 

 まてまて。

 

「口があるんだから喋らないとわからないよ~!」

「嘘つけ心読めるだろ!!

 …お前、さっき死ぬって」

「いったっけ?」

 

 こ、この野郎。

 

「さあさあ、チュートリアルは終わりだ!

 新しい世界でも頑張ってね! 

 あ、身体に意識が繋がったら動作確認しておくこと!

 スキルは…まあそのうち気づくでしょ!」

 

 これチュートリアルだったの?

 ってか動作確認って何? スキル?

 おい、やっぱちゃんと説明して…

 

 そんなツッコミをいれようとしたとき、ロードは100%に達した。

 白い文字が光りだし、空間に亀裂が入る。

 そして光が部屋全体を侵食して…俺も飲み込まれた。

 

 

-----

 《惑星ナベリウス森林地帯上空》

 

なんでなんでなんで。

 

この惑星は安全だっていってたのに。

 

"獣の王"が守ってくれるっていってたのに。

 

全然守ってなんてくれない。

 

それになんで仲間同士で戦わなきゃいけないの。

 

「お前は仲間などでは、ない!!」

 

「ッ!」

 

悔しい。

 

"ヴェル"と"シロ"は外から来たかもしれないけど、同じ龍なのに。

 

「貴様を同族とは認めない! そんな紛い物の力、断じて認めない! ここで死ねェ!!」

 

なんでいつも"ヴェル"と"シロ"ばっかり仲間外れに…。

 

ごめん、心配しないで"シロ"。

 

ちゃんと逃げ切るから。

 

-----

 

 『心身結合。完了』

 『結合完了。異常無し』

 『潜在技能(スキルツリー)。異常無し』

 『記憶保護(メモリープロテクト)。異常なし』

 『容姿設定。…変更なし』

 

 

 

 『設定完了。起動』

 

 女性の声が頭の中で響く。

 と、同時に俺の意識は覚醒した。

 どうやらロードは終わったらしい。

 夢から覚めた気分だ。

 

「んん!!! 長かったあ~!」

 

 ったく"死神"の野郎散々おちょくっておいて放り出すときは一瞬なんだもんな。

 いきなり目の前が真っ白になって、爆発でもするのかと思ったじゃねえか。

 転生? 召喚? されて早々に死にました、じゃ、笑い話にもならないだろうに。

 

 にしてもここはどこだ? 

 ゲームの中でも見たことない場所だが。

 いや、よくみると所々がクエストを始める前に入る"キャンプシップ"に似てるけど…。

 にしては広いなあ。それにアークスもめっちゃいるし。

 

 ちょっと歩いて確認…する前に身体がちゃんと動くか確認だっけ?

 屈伸屈伸っと。うん、ちゃんと動くぞ。痛みもないし。

 違和感も全然ないな。

 むしろ前世より調子がいいんじゃないか?

 

 いやでも胸のあたりがきつい気がする。

 身体は軽いけど太ってるのか?

 デブの身体か…はずれだな。

 いや、文句は言うまい。

 もう一度人生をやり直せるんだ。

 

 (太ってるくらいなら自分の意志次第で痩せられるだろうしな)

 

 にしてもなんかずっとこっち見てる二人がいるんだが…。

 

 一人は明るめの茶髪をポニーテールにしてる…女の子だ!

 結構可愛いじゃん!

 でも気が強そうな子だな。

 目つきは鋭いし、警戒心全開で俺のこと睨んでて超怖い。

 あれ? でもこの子女の子か?

 身長はまあまあ高いけど、身体の凹凸少ないし…

 もしかして=男の娘?

 

 ラノベでは定番だし、ありえるだろう。

 あ、ポニーテールにしてるだけじゃ男の娘とは言えないか。

 スカートはいてるし…女装趣味か?

 …めっちゃこっち睨んでるし、

 失礼なこと考えてるのがバレてそう。

 

 決して睨まれた恐怖によって目を背けたわけじゃない。

 そんな言い訳を心の中でして、屈伸から伸脚(しんきゃく)に変えながら隣の子に視線をずらす。

 

 (ん、脚もちょっと太いな…なんかプニプニだし、これはダイエットも視野に入れる必要があるか?)

 

 足の具合も気にしつつ視線をその子向ける。

 こっちも性別がわかんねえな。

 まず、見た目が意味わからん。

 やたらでかいローブを羽織ってやがる。

 あれじゃ身長がちょっと低いってことぐらいしかわからない。

 ローブにはフードもついてて、それを被ってるもんだから顔も見づらい。

 フードから灰色の髪が垂れてるのが見えるが…

 精々首元ぐらいまでだし、性別の判断材料には足りないな。

 ま、女の子だろうな!

 だって女の子だと思ってた方がやる気が出るし。

 

 ん、目が合ったな。

 な、なんか目が輝いてないか?

 もしかして一目惚れされたか!?

 

 …なわけないか。

 ローブの影で瞳の色まではわからないが、

 その瞳はしっかり俺のことを捉えて興味深げに俺の行動を見続けている。

 あ、屈伸とか伸脚がこの世界にはないのか?

 屈伸くらいありそうなものだけどなぁ。

 ゲームに習ってダンスの方がよかったか?

 難しいのは無理だけど、ドジョウ掬いのダンスならできるし。

 

 つか、ゲームにあんな服あったか?

 肩から半身を隠す程度のマントはあったが、

 性別不詳の子がきてるのは全身を覆う薄汚れたローブだ。

 地面に近い裾の方は所々擦り切れているのがわかる。

 

 ちなみにポニーテールの子は"アークス研修生女制服"だ。

 こっちは間違いなくゲームの中にあった。

 あ、男は着れない服だし、あの子は女の子だな。

 

 全身ローブはゲームの中にはなかったはずだ。

 …バグ…じゃないだろう。

 

 

 そもそもこの世界の(ルール)が現世に近いのかゲームのシステムの流用なのかまだわからない。

 

 ルールってのは…

 例えばダイエットだ。

 現世のルールなら太っているのなら痩せるためにそれ相応の努力をしなきゃならない。

 適度な運動、カロリーを抑えた食事、生活リズムの改善。

 膨大な時間が…少なくとも1,2ヶ月はかかるだろう。

 

 だがゲームのシステムならそんな努力はいらないだろう。

 "PSO2"の世界なら《エステ》という施設を利用すれば好きなように体型や容姿を変えられるからだ。

 その時間は人にもよるが痩せるためだけなら2分とかからないだろう。

 

 他にもゲームの中ならアイテムさえあればダンスが踊れるとかあるけど…。

 とにかくどちらのルールであるかは知っておきたいな。

 もう少し判断材料がほしい。

 

 そうだ、ゲームだろうが現実だろうが、情報収集は大事だ。 

 まずは話しかけることにしよう。

 俺自身の現状もよくわかってないしな。なんでこんなとこにいるのかもそれとなく聞こう。

 それとなくだ。

 

 

 「んで、あんたらは誰で、ここはどこだ?」

 

 

 …ちょっとぶっきらぼうな感じになっちまった。

 だってこれがこの世界初めての会話だし。

 相手は女の子かもしれないし?

 き、緊張してるなんてことはないぞ?

 

 にしてもリアクションないな。

 顔を見合わせてないでせめて返事をくれ。

 なんだか悲しくなってくる。

 もしかして言葉が通じてないのか?

 いや、今のは言葉が失礼だったんだろう。たぶん。

 敬語に変えて話してみるか。

 

 そう思って改めて喋りだそうとした時、ローブの子が一歩進みでて答えようとしてくれる。

 

「えっと、僕は…」

 

 しかし、その子の口をポニーテールの子が後ろから塞いでしまった。

 なんだよ、邪魔しないでくれよ。

 

「人に名乗らせる前に、まずあんたから名乗りなさいよ!」

 

 おお、アニメとかでよく聞くセリフだな。

 まさか自分に言われると思ってなかったぜ。

 もしかしたらもっとカッコいいセリフを聞くことに?

 

 おっと、今はどうでもいいか。

 ポニーテールの子は警戒心が強いなぁ。

 あ、でもいきなり太った男に話しかけられれば、女の子だし警戒もするか。

 

 それに俺は今までどこにいたんだ?

 パッとみ、周囲には隠れられるほどのスペースもない。

 "死神"の性格だと…俺をここにいきなり転移させたのかもなぁ。

 

 となると、目の前にいきなりデブが現れたことになる…。 

 そう考えると…なるほど確かに俺は怪しいな!

 ちゃんと名乗って少しでも警戒心を和らげたほうがよさそうだ。

 

「俺の名前は………ちょっとタイム!」

 

 名前を言いかけて、ストップをかけた。

 問題発生だ。

 

 俺が唐突に静止したためかポニーテールの子が更に眦を釣り上げている。

 あぁ、今にも舌打ちが聞こえてきそうだ。

 フードの子も首を傾げている。

 

 さらに怪しまれたか?

 ポニーテールの子には怪しまれただろう。

 より剣呑な気配がにじみ出ている。

 しかし、フードの子の反応は予想と違っていた。

 

「"チョット・タイム"さんって名前の方なんですかね?」

 

 どうやらフードの子はチョット・オバカさんって名前のようだ。

 

「バカね! そんなわけないでしょ!」

「え? 違うんですか!?

 じゃあ"チョ・トタイム"さん?」

「そうじゃないわよ!

 ちょっと待ってくれ、ってことよ!」

「なるほどー! 名前じゃないんですね!

 あなたは本当に物知りなんですね」

「物知りって…こんなの常識よ!」

 

 まぁ、常識だろう。

 フードの子は箱入り娘か何かなのか?

 タイムって単語くらい知ってるだろう?

 

 そのまま話をずらして時間を稼ごうとしたが、

 彼女らの話はそこで終わらなかった。

 怒ってばかりのポニーテールの子だが、

 腰に手を当てフードの子に視線を合わせて訴える。

 

「っていうかさっきからあなたあなたって、名前で呼びなさいよ!」

「あ! ごめんなさい!

 あれ? 僕、あなたの名前教えてもらいましたっけ?」

「…あ…」

 

 ん? この子達も自己紹介が済んでなかったのか?

 姉妹じゃなかったのか。

 

 …どうせ今は名乗れないし、

 少し様子を見るか。 

 

「あ、名前が知りたいときは自分から名乗るんでしたっけ?

 僕の名前は…えっと、なんでしたっけ?」

 

 自分の名前を忘れるってどういうことだよ。

 カナリ・オバカさんか?

 いや、人のことは言えないか…俺の場合はちょっと違うが。

 

「はあ!? あんた"クルス"じゃないの!?」

 

 こらこら人を指差すんじゃありません。

 この子リアクション激しいな。

 

「あ、そうでした!

 僕の名前は"クルス"です!」

 

 名前もポニーテールの子がフォローしていた。

 本当にこの子達は知り合いじゃないのか?

 

 ふとポニーテールの子と目が合ったが、

 下唇を噛みしめ、悔しげに視線をそらされた。

 少しの間そうして口を開閉している。

 まるで何か言おうとしているような。

 っていうかブツブツ言ってるな。

 何言ってるか聞こえないが。

 

 あぁ、あんなセリフを言いながら自分から名乗ることになったのが悔しいのか。

 プライド高い子なのかな?

 

「…"リティア・アルラディーノ"よ」

 

 数秒のち彼女はぶっきらぼうにそう言った。

 

 あん? 苗字があるのか?

 "PSO2"に苗字があるNPCなんていたか…?

 それともそれで一つの名前なのか…

 

「私達も名乗ったんだからあんたも早く名乗りなさいよ」

 

 リティア・アルラディーノが急かしてくる。

 そう、今は苗字なんて気にしている暇はない。

 いい時間稼ぎになると思ったんだが、

 先ほどからの問題は解決していない。

 

 さっき俺は前世の名前を名乗ろうとしたんだが、

 名前がすぐにはでてこなかった。

 ガキの頃から言いなれているであろう名前がすぐに出ない。

 

 ラノベの主人公特有の記憶喪失か?

 そんな設定いらねえぞ?

 思い出せ、俺の前世は…

 

『この記憶(メモリー)(ロック)がかかっています』

 

 必死に思い出そうとしていると突然、

 頭の中に事務的な女の声が響いてきた。

 俺が起きる前にも聞こえた声だ。

 さっきからこれの繰り返し。

 なんだか聞いたことあるような声だが…いやそれよりも。

 

 …ロック?

 なんでそんなもんが?

 いや、記憶に鍵ってどういうことだよ!

 どこぞの愛玩用天使型ロボじゃあるまいし…

 …ロボ?

 

 そこまで考えて気づく。

 俺はどの"種族"はなんだ?

 ちょっと白い肌に前世と変わらない身体の動きと転生or召還という単語から、

 俺は前世に似た《ヒューマン》なのだと思っていたが…

 

「おい! 俺はどうなって…どの種族に見える!?」

 

 焦った俺は自分の名前のことなど忘れて、

 目の前の2人に声を荒げて聞く。

 

 あぁ、変な質問だろう。

 リティア・アルラディーノは腕を組み、

 "自分の種族もわからないのか?"

 口で語らず、そう言う顔で訝し気に俺をいている。

 いや、この子は無視しとこう。

 先ほどからちゃんと答えてくれてるクルスの言葉を待つ。

 その子はまたも首を傾げながらもはっきりと言った。

 

「えっと…《キャスト》に見えます」

 

 

 

 …フードの子の言葉を理解するのにかなり時間がかかったと思う。

 

「…俺が…キャスト?」

 

 そんなバカな。

 そう思う傍ら、納得している自分もいる。

 "死神"に連れてこられた空間ではその可能性も予想していたことだ。

 確かに機械の身体を持つ《キャスト》なら、

 俺の想像していた身体の問題はクリアできる。

 

 これが《転生》か《召還》か。

 《転生》なら赤ん坊から育っていかなきゃいけない。

 《召還》なら肉体が死んでいる俺は魂だけで行動しなければならない。

 

 だけど、機械である《キャスト》なら。

 

 赤ん坊から始める必要がなく、

 最初から強い身体を持つことができる。

 映画のシーンに間に合わせるように、

 身体を鍛えたりする必要がないってことだ。

 

(つまり俺は新たな肉体に《転生》させられたんじゃなくて、

 魂だけ《召還》されて機械に憑りついたのか)

 

 それが分かったところで何かが変わるわけじゃないが、

 この世界で初めて分かったことでもある。

 わからないことだらけなんだ!

 小さなことでも一歩進んだってことにしないとやっていけないわ!

 

 でもそうか、《キャスト》なのか。

 なんだかテンション上がるな~!

 そりゃ、大型ロボットに搭乗して暴れまわるわけじゃないけど、

 機械の身体ってだけで夢が広がる。

 ブースターで地を滑るように移動したり、

 ゲームでは乗物に変形(トランスフォーム)できたな。

 移動はできなかったけど。

 でもこの世界なら案外移動したりできるんじゃないか?

 色々試したいことが増えたな。

 

 科学(きかい)魔術(たましい)が交差し、

 俺の物語が始まるのだ。

 

 …いやまぁ機械にどう憑りつくのかとか、

 色々と無理があるが、

 《召還》って意味では納得できる。

 

 

 だが、やっぱおかしいぞ?

 何がって…

 

「でも、ほら、肉体があるぜ?」

 

 そう言って両手を広げて自分の身体を見てもらう。

 

 広げた色白の腕、太った体に、プニプニの脚。

 これのどこが機械の身体だっていうんだ?

 ちゃんと皮膚があるじゃないか。

 

 "PSO2"なら男の《キャスト》は全身が機械でできている。

 皮膚や脂肪なんてない。

 みんなカッコいいボディパーツでできているのだ。

 この皮膚を見たから俺は自分が《キャスト》以外の種族で、フードの子の言葉が予想外だったわけだが…

 

「そりゃあるでしょ」

 

 しかし、リティア・アルラディーノが俺の思考を遮って発した言葉は完全に予想外だった。

 

「あなた《ガイノイド》じゃない」

 

 が、がい…ノイド? ってなんだっけ?

 

「がいのいど? ってなんですか?」

 

 クルスが変わりに質問してくれた。

 リティア・アルラディーノがため息交じりに答える。

 

「女性のキャストよ」

 

 女性…じょ…女!?

 俺、お、俺が…

 

 

 俺が、男の娘!?

 

 

 




うひひ駄文ですごめんなさい。

5/7 最後に少し文章足しました。
本当はこちらに元々乗せようとしてたのが、誤って次上げる予定の話の方にメモしちゃってたので。




ありがとうございました。
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