就活終わったらバイト再開して艦これアーケードやろうな、な!
ついに海に出そうと思ったのですが、想定より長かったので分割します。
呉鎮守府 庁舎前
吹雪たちが庁舎まで来ると数多くの艦娘が集まっていた。
何が発表されるのか期待と不安に駈られて皆落ち着きがない。
「整列して下さい!」
秘書艦の扶桑が号令すると流石に軍隊だけあってざわついていた艦娘達が静かになり、走って整列を始めた。
主力艦から並んで行き、駆逐艦も隊番号ごとに整列する。予備艦の吹雪は18駆旗艦の"梨"の左に並ぶ。磯波もその後ろに立った。
さらに左には潜水艦娘が並んでいく。
戦艦から潜水艦までが一堂に集まる事はほとんどない。何か大規模な事が始まると吹雪は予感した。
「司令長官がお見えです」
全員が挙手敬礼を行う。
初老の提督が庁舎から現れた。
「御苦労。司令長官の谷口だ」
谷口は言葉を切って皆を見渡す。
「今朝、観艦式についての詳細が発表された。師走の初めに横濱沖で陛下の即位を祝う特別大演習観艦式を行う」
艦娘達に動揺が走る。
「静かに。これより、参加する艦艇を発表する」
途端に静かになった。
「まず、戦艦は扶桑、伊勢」
「はい!」
「二等巡洋艦。天龍、球磨、大井、由良、鬼怒、阿武隈」
「はい」
近代化改修中の霧島を除いた全ての大型艦が選ばれていた。是が非でも参加したい駆逐艦達で盛り上がる。
「駆逐艦。第12、13、15、16、17、18駆逐隊だ」
ほとんどの駆逐隊が参加すると分かり、駆逐艦達の歓声が上がる。
「それと、吹雪と磯波だ。磯波は12駆へ入れ」
「はい」
「吹雪は単独で横須賀へ進出。横鎮の神風型4人を任せる」
「え…」
谷口は吹雪を見て言った。吹雪は予想外の命令に反応出来なかったが、谷口はそれを気にすること無く名前を読み上げる。
「潜水艦。海大型伊号第51、52、53、54、55号潜水艦。機雷潜伊号第21、22、23号潜水艦。以上だ。陛下の前で恥をかかないようにな。解散!」
全員が挙手敬礼をした後、それぞれに散っていった。
駆逐艦はグループで固まって部屋に戻る。興奮気味に騒々しく話していた。特型も例外ではない。
「全員呼ばれたね」
「てっきり私は呼ばれないかと思った」
磯波はホッとしたように言った。
「私も」
「吹雪ちゃんは旗艦に大抜擢だね」
「でもまだ一度も海に出た事ないよ」
「那珂さんが大丈夫って言ってたしなんとかなるでしょ」
騒がしい駆逐艦達の後ろでは軽巡の鬼怒と阿武隈が話をしている。
「駆逐艦すっごくうるさいんだけど」
「しょうがないよ。平時は訓練だけだもん」
「旅順に行くのも大型艦ばかりだったからね」
「あれ、あの子泣いてない?」
皆が喜ぶ中、よく見ると二人が泣いている。
「樅型だね。14駆?」
「艦娘と普通の船が一緒になってる所か。そう言えば呼ばれなかったわね」
「それは17駆の海風型じゃなかった?」
「最初の一等駆逐艦の?」
「そうそう」
「17駆は呼ばれたよね?」
「うん」
「特型が全員呼ばれてたり新型が集められてるなと思ったんだけど、そうでもないのね」
「あたし的にはあの子たちを後でフォローしといた方がいいと思うわ。後、特型と言えば航海指導を姉さんがするって聞いたけどそうなの?」
「きたきたぁー!ついに鬼怒の時代到来か。どんな子か楽しみ!」
「姉さんは楽観的ね」
「そう?」
「あたし的にはそう思う」
阿武隈は前髪をいじりながらそっけなく答える。
鬼怒はやる気を見せるが阿武隈はあまり興味が無さそうな様子だった。
庁舎の二階からそれらの様子を眺める士官がいた。
「鬼怒はやる気ありそうだな」
「みたいだな。俺は気が進まないが」
二人は小野弥一大佐と有地十五郎大佐で鬼怒の艦長、12駆の司令である。
海軍兵学校33期の同期なので親しげに話している。海兵では17位と74位で小野の方が優秀だが、有地はその後海軍大学校を出る努力家である。駆逐隊を任されているのはそこを買われているのかも知れない。
先程長官から訓練を命じられ、鬼怒の艦長と特型の責任者(一つしか駆逐隊になっていないので)の二人が顔を合わせたのだった。
「頼むよー。観艦式までに一人前にしなきゃいけないんだ」
「それは長官から言われたが…」
「しかも旗艦候補が三人だ。俺だけじゃ手に負えん」
「先輩駆逐艦に習えばいいだろうに」
「水雷戦隊として活動するんだから慣れておいた方がいい。それにあの子達に荒海訓練させるのは不安だ」
「うーん、そうだな…。まあ鬼怒も乗り気だしまあいいか」
「恩に着るよ」
「間宮奢りだな」
「はあ?長官からの命令だぞ」
「鬼怒とは言っていなかっただろう?阿武隈でも構わないはずだ」
「むむむ」
「一度引き受けたからには徹底的に指導する。それは約束できる」
「ああ、お前はいつもそうだったな。分かったよ奢るよ。さて、そうと決まったら申請書を出してくる」
「おう」
有地が走り去る。小野は外に出ると煙草に火を点けた。煙を深く吸って吐き出す。
鬼怒は最近まで第三戦隊だった。しかし、川内型の完成で阿武隈、神通、那珂と新しい艦娘に役目を譲り予備艦となっている。
軍縮ムードによって新型艦の建造は量より質となってきている。川内型は3隻。その前の長良型最終艦の6番艦阿武隈は完成が遅れ、川内型と同時期に完成した。
そして帝国にある鎮守府は4つ。それぞれ10の駆逐隊枠がある。八八艦隊の時のように川内型と神風型が大量に作られない今、水雷戦隊は4つまでの可能性が高い。
小野はそこまで考えると一つの結論を導き出す。4個水雷戦隊と新型軽巡4隻。鬼怒はそこに入れないかも知れない。
「駆逐艦の訓練ねえ。まあこのまま第三戦隊にいさせるより水雷戦隊の経験を積ませた方がいいかもしれないな。今なら鬼怒も二水戦旗艦になれるかもしれない」
「あら小野大佐じゃない」
偶然通りかかった伊勢が声をかける。そこにいるとは思わなかった小野は驚きながらも言葉を返す。
「おう、伊勢か。どうした」
「いや、特に用はないけど…ここで煙草はまずくない?」
「え?」
慌てて周りを見るといつの間にか弾薬庫の近くまで来ていた。壁には「禁厳氣火」と書かれている。慌てて煙草をもみ消すと周囲に伊勢と自分しかいない事を確認し、口を開いた。
「なあ伊勢さん…」
「何よ急に改まって」
「いや…」
「間宮」
「え?」
「今度間宮奢ってよ」
「……」
「……」
「…ハイ、ワカリマシタ」
「大丈夫。扶桑には言わないから」
「そうしてくれ」
伊勢はそう言うと行ってしまった。小野はバツの悪そうな顔のままひとりごちる。
「有地の奢りの分を回してもらうか。仕方ないね」
この時代、舞鶴は鎮守府から格下げされてるので正確には3箇所。そして実戦では完全ではないものの6個水雷戦隊が作られています。この時に軍令でもGFでもない士官には分からないでしょうし、その辺は少しごまかしました。
第14駆逐隊は海風型と樅型の混成です。
海風型は一等駆逐艦ですが、結構古いです。戦艦金剛と同世代どころか日露戦争の時に予算が出ているくらい古いです。なので初の艦娘枠にする訳にもいかず(最初は大型、だんだん小型化技術が発達というのを考えてるので)、お金がない日本海軍が旧式艦の補助艦まで手をかけたとも思えなかったので軍艦のままとなりました。
同僚(江風I)をイタリアに売られてボッチになった浦風(I)はともかく磯風型はと調べたら第一遣外艦隊で中国に行っていました。その後が江風型(II。白露型はIII)なので、この編成は結果的にそこまで不思議ではなかったです。置き換える新型艦がない日本海軍。貧乏って辛いな。