吹雪がんばります!(史実版)   作:INtention

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お久しぶりです。
大正、昭和戦前時期の資料が無くて諦めてたのですが、福井氏の駆逐艦に関する書籍を購入したので続ける事が出来そうです。(まあ見てくれてる人がいないと思うのですが)


第一話 理想の駆逐艦

大正13年(1924) 帝都東京

 

日比谷にある海軍省の建物で一人の男が悩んでいた。

それは欧州大戦後の不況や追い打ちをかけた関東大震災の事ではない。目の前にある「理想的駆逐艦」という要望書についてである。

 

国民は不況に喘ぐ中、海軍はむしろ血気盛んだった。徐々に緊張が高まるアメリカに対抗出来る艦隊の整備に躍起になっている。

だが折角計画した八八艦隊もワシントン軍縮条約で水泡に帰してしまった。旗艦の長門型だけ残され、赤城加賀は航空母艦に改装されたが、天城と土佐は解体された。艦娘の気持ちは分からないが、命拾いした加賀はどのような気持ちなのだろうか。

 

軍縮条約により、日米の戦艦保有数は6:10にされた訳だが、これではアメリカには勝てない。いくら艦娘の練度が高く見積もっても戦力比72:100では対抗出来るはずがない。そこで日露戦争で夜襲をかけて戦果を上げた水雷戦隊に白羽の矢が立ったのである。新型駆逐艦には敵水雷戦隊に勝る火力と雷装が求められたのだ。

 

艦娘ならオーバースペックな装備を積み上げてもどうにでもなると思う人もいるだろうが、そうはいかない。艦娘は造船所で武装以外を建造して進水させた後、もう一度ドック入りさせ、神官の祈祷により艦娘は完成する。初の艦娘として完成した英戦艦ドレッドノートからそれは変わらない。

日本の場合、戦艦金剛のみ英国教会の恩恵を受けているもののそれ以外は日本神道と決まっている。妖精(日本式に言うならば天女)達によって軍艦は艦娘へと進化するのだ。

そのため、無理な設計をすれば妖精が困惑し、不完全な艦娘になってしまう。その点では前任が設計した扶桑型はいささか不安定である。その上、射撃技術の向上で射程が伸びたため、それを観測するために艦橋を伸ばす工事を行うそうだが、これ以上ネガティブにならないか心配だ。

 

閑話休題。私は海軍の艦政本部第三部の主任として働いている。新型駆逐艦の設計案に頭を悩ませているが、決して初めての仕事ではない。華の二水戦として第一線にいる一等駆逐艦峯風シリーズの開発者、平賀譲チームの一員として参加した。

外遊の名目で先任が飛ばされた後は私が主任となった訳だが、私はてっきり八八計画の一環として計画され、新型の61サンチ魚雷を積んだ最新型の第19号型を大量生産する物だと思っていた。なのでこんなにも早く新型を作る事になるとは思っておらず不意をつかれたような気分である。関東大震災で建造計画が乱れた結果、設計にも手が加わる事となり第19号型も12隻で打ち切ってしまったのだ。残りの予算で新型の駆逐艦を5隻作れと命じられて今に至るが、仕様書を読む限りは改第19号型ではどうやら無理そうである。

 

一体どのような駆逐艦にしようか。

良い案が浮かばない事へ不満がついつい愚痴っぽい話になってしまった。

数日後には新型軽巡の就役が控えている。この型が艦娘となれるか心配だし、今から開発する駆逐艦娘達のボスとなるであろう艦娘だから見ておきたい。

 




因みに第19号駆逐艦とは睦月の事です。
八八艦隊計画で大量に建造されるため、○風や○月などの名前を揃えるのが難しく番号になりました。奇数は一等駆逐艦、偶数は二等駆逐艦とされるなど調べてみると面白そうですね。
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