せっかく史実っぽく書くのだから色々な艦娘を登場させたいです。主人公は呉にいることが多いので横須賀とか佐世保は中々出せませんからね。
1926(大正15)年6月19日 京都・舞鶴
若狭湾の南に舞鶴という都市がある。狭いが日本海軍にとっては重要な拠点だ。湾には漁船や貨物船だけでなく数人の少女が滑るように進んで行くのが見える。
他の軍港と比べてもどこかのんびりとした港湾部には小さいながらも軍の造船所が設けられている。
その内の一つの船台に次々と鋼が運ばれている。細長く窪んだ船台の中心に長い柱を置き、魚の骨のように垂直に鉄骨をリベットで留めていく。たちまち周辺はリベット打ち機やそのコンプレッサーの音で一杯になった。
幕を張られた隣のドックから気になったのか作業服の妖精が覗くが、すぐに自分の作業に戻っていく。
事務所の窓からそれを眺めていた軍服の男ははそれを見届けると、事務員を呼び寄せて電報を打たせた。
同日 帝都
今年も梅雨に入った。ここ日比谷にある赤レンガの建物からは晴れなら有楽町の京浜電車までは軽く見えるのだが、今日は日比谷公園までしか見えない。室内では職員達がせっせと仕事をこなしている。今は改妙高型の設計を行っている所だ。水雷戦隊の司令部を収容出来る艦橋がかなり大きく、重心の位置に苦労している。
一人の伝令が第四部に入って来た。紫煙をかき分けながらこちらに来る。
「伝令です!読み上げますか?」
「そうしてくれ」
「は!
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発 舞鶴工作部長 岸本信夫機関大佐
宛 艦政本部第四部 各員
当船台ニオイテ大駆ヲ起工ス
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以上です」
「おお、今日だったか。連絡ありがとう」
伝令が電文を渡して下がる。私は部下に指示を出すとそれを持って部屋を出た。向かう先は艦政本部第四部長の部屋である。
ノックをして官姓を名乗ると了承の返事が来る。中に入ると鈴木圭二少将は執務机から顔を上げた。
「藤本君か。どうした?」
「は。舞鶴で新型駆逐艦が起工しました」
「おお、今日だったか」
中将は私と同じ事を言った。
「実に楽しみだ。あれが完成すれば我が国の水雷戦隊は米英のそれと大きく引き離すだろうな」
「アメリカは欧州大戦で作った300隻の駆逐艦で手一杯みたいですからね」
欧州大戦中にアメリカの凄まじい工業力で作られた駆逐艦は300隻とも言われている。それらはUボートから商船を守るのに活躍したが、戦後手持ち無沙汰になってしまい、新しく作る余裕が無いのである。
「君の仕事には満足している。改妙高型も頼むぞ」
「はい。精進致します」
「ところで…」
中将はそれとなく話を変えた。嫌な予感がする。
「君に横須賀へ行ってもらいたいのだが」
「横鎮ですか」
「うむ。長門の改装が終わったようだから観て欲しい。ついでに他の艦娘の様子も見てきてくれないか」
「随分急ですね」
「済まない。本当は私が行くべきなのだが軍令部に呼ばれてしまってね」
てっきり今設計中の改妙高型にさらに口を出して来るのかと思っていたので安堵した。
「分かりました」
「そうか。頼んだぞ」
また出張か。前回のは自分から行ったようなものだが。しかし、艦娘を見るのは好きである。別に婦女子だからという訳じゃない…はずだが。それに今回はただの港町ではなく軍港だ。水雷戦隊というレベルではない。これは出張が楽しみになって来たぞ。
私はそう考えながら第四部に戻った。
艦娘はあくまで軍艦ですので海軍省にはいなさそうです。これは出張させるしかないですな。仕方ありません。
おっさんばかりでもいいですけど、艦これSSですし。
~補足1~
艦政本部
艦政本部は海軍の軍艦関係の技術研究・設計を行う部署で、海軍省内にありました。
時期によって部署の数と番号は変わっています。番号が欠けないようにスライドさせるので同じ部署でも番号が変わります。まさか前の回で造船部を第三部と書いて...ないですよね?1926年(大正15)当時は以下のような感じです。
第一部:砲熕部
第二部:水雷・航海部
第三部:潜水艦部
第四部:造船部
第五部:造機部
~補足2~
平甲板級駆逐艦
アメリカが欧州大戦用に大量に生産した駆逐艦。日本海軍の駆逐艦は艦首楼型という艦首から艦橋部分までが一段高くなっているのが特徴ですが、アメリカはまっ平な艦が多いです。強度がありますし艦首に武装を積みやすいですからね。(重心バランス的に)
いくつか種類がありますが総じて平甲板なのでそう呼ばれています。でも300隻とか頭おかしい...。
しかし平甲板という名前。艦娘ならもちろん胸部装甲がアレなんでしょうね。それが300隻いるとか。まあ駆逐艦ってそういうもんやし。(一部例外あり)
竣工時
50口径 4インチ単装砲×4基
23口径 3インチ単装砲×1基
3連装533mm魚雷発射管×4基 12射線
最終時(平均)
50口径 3インチ単装両用砲×6基
40mm単装機関砲×2基
20mm機銃×5基
3連装533mm魚雷発射管×2基 6射線
(比較 峯風型)
45口径12cm単装砲4門
6.5mm機銃×2挺
2連装533mm魚雷発射管×3基 6射線
1号機雷16個
コードウェル型 6隻(プロトタイプ的な)
ウィックス型 111隻(航続距離がバラバラ)
クレムソン型 156隻(さらに5隻建造する予定だった)