短編集   作:白騎士

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ゴッドイーターに愛と勇気と気合いと勢いとノリで定評のある魔王系勇者(馬鹿)な質を持った奴がいたら…




絶望の中に希望を

その場所は所々に斬撃、砲撃、或いは獣が食らい付いて抉れた様な、そんな傷が残る広くドーム状の施設だった。

 

中央には人一人分が寝られる装置。そのすぐ脇には異質で異様な長剣が置かれていた。

 

その剣は只の剣ではなく、銃器と別の"なにか"と融合した兵器。

 

人類の敵。アラガミを喰らう"対アラガミ武器"

 

通称"神器"と呼ばれる兵器の前である男が佇んでいる。

 

軍装に身を包み、目深にかぶった軍帽から覗く双眸は長い髪と同様に黒。凶相じみた顔付きは泣いた赤子も更には泣き喚くだろう。

 

そんな男は心底落胆したように口を開く。

 

 

 

「いくら軍法会議で決まった処罰とは言え、成功すれば厄介払いが出来て、失敗すれば"アラガミ"として処分出来る…と。正に一石二鳥と言うわけか…、つまらんな。直接銃殺の一つでもなりしてくれば少しは見直したものを、やはり上官殿は臆病者か、ああ、本当につまらん男だよ」

 

 

これから始まる試験の事など全く眼中に無いのか、軍装の男は自分をここに送った上官に対して悪態をつく。

 

 

「まあ臆病者の、あの上官殿の御守りにも馬鹿馬鹿しくて怒りを覚えていた所だ。元より軍人は戦場に立ってこそだ…、が一概にそうとは言えんだろう。適材適所、それで言うなら俺は戦場、前線で戦うべき役所なんだろうな」

 

 

「神を喰らうもの"ゴッドイーター"…か。人であり人ではない存在になるのは気が引けるが、"前回"のでよく理解できた。所詮は戦う為の手段として受け入れよう。元より俺の目的は人の輝きを守ることにある」

 

 

ああそうだとも、と自己完結し男は中央にある装置へと近づいた。

 

 

『初めまして大尉。そしてようこそ"フライヤ"へ』

 

 

装置の直ぐそばまで来ると同時に、天井に備え付けられたスピーカーから女、それもまだ幼げな声が響く。

 

天井のやや下にある窓、操作室がある窓にはその様な人物は見当たらない。恐らく別室でモニタリングしているのだろうと当たりをつけた男は、同じく天井に備え付けられたカメラへと視線を合わせ挨拶を返す。

 

 

「ああ、こちらこそ初めまして。本部勤務なもので至らぬ点があるだろうがよろしく頼む。なにせ前線とは無縁の任務に付いていたものでな」

 

『あら、噂に聞いていた方とは印象が随分と違いますね』

 

「どのような噂かは知らんが、そんなもので俺を判断してくれるな。お前自身の目で見て感じ会話を経て、その上で判断してくれ」

 

『そうですか。では、早速見せてくださいますか?』

 

「無論構わん。その為に来たんだからな」

 

 

男はそう言って目の前の装置に横たわる。腕を神器へと伸ばし柄を握る。

 

ガシンッ と上下から黒と白を基調とした硬質の腕輪が固定される。

 

そしてーーーー高速回転する細長い円錐が腕輪めがけて、ギロチン如く落ちる。

 

 

「グッーーーオオォォッ」

 

 

抉られる。腕が焼ける様や激痛が男を襲う。想像以上の痛みに男は苦しみの声をあげる。

 

だが、

 

 

「く、くはははッ、これが代償か。成る程、これは流石に予想を遥かに越える。やはり見聞きするのと体験するのではこうも違いが出るか!」

 

 

笑っていた。その凶相は恐怖すら彷彿させる、そんな笑みだった。

 

回転が止まり固定されていた腕が解放され、男は装置から転がり落ちる。

 

 

「は、ははは…、だがな。この程度で俺が屈するものかよ。これが試練だというのなら乗り越えてこそだ。諦めなければ人はどんな試練だろうとも乗り越えられる。多くの人が乗り越えたんだ。それを俺が乗り越えられない道理など無いッ!」

 

 

柄を握る力が増す。神器を振り上げ頭上へと掲げた時、神器から黒い顎が現れる。

 

その獣にも似た顎は身近にあった男の腕へとその牙で食らい付いた。

 

 

「ーーーッ!」

 

 

グチャリグチャリと生々しい音をたてながら、咀嚼する様は本物の獣であり、その光景は直視できるものではない。

 

暴走。

 

男は適合試験に失敗したのだ。故に神器が暴走し、使用者になるはずだった男を、その本能に従い捕食している。

 

声になら無い声が響く。だが、もう手遅れだ。こうなってしまっては助かる術は一つ。

 

 

『ジュリウス』

 

「はい」

 

 

スピーカーから感情の無い声が誰かの名を呼ぶ。と同時に男の後ろの扉が開き金髪の青年が現れる。

 

ジュリウスと呼ばれた青年の手には神器があり彼はは何処か悲しげな表情のまま男へと近づく。

 

神器を構え攻勢を整えた。今にも斬り掛かると言わんばかりに。

 

そう、試験に失敗すれば待つのは"アラガミ化"

故にそうなってしまった者に待つのは死。

 

毒を以て毒を制す。

 

だが、その毒に侵されてしまえばその者は既に毒だ。人類にとって脅威でしかない毒。

 

男はそうだと判断された。失敗だと。

 

このまま放置すればアラガミとなってしまう。多くの人間がいるこのフライヤ、その中で暴れられたら被害は甚大だ。

 

だから処分せねばならない。完全なアラガミになってしまう前に。目の前の男もせめて、人である間に死を望んでいるはずだと。

 

そう信じジュリウスはーーーーー金色に輝く刃を降り下ろした。

 

 

 

 

モニターの前で女、ラケル・クラウディウスは期待外れと言うように溜め息を吐いた。

 

所詮は、か弱い"人間"

 

神器に捕食される彼もまた、今までの被験者と一緒で失敗だと判断し、ジュリウスに処分を言い渡した。

 

 

「結局、貴方もその程度だったんですね。大尉、私が見た貴方は何処にでもいる人間と変わりはありませんでしたよ」

 

 

お前の目で見て判断しろ

 

そう言われ多少期待してみたが、蓋を開ければこの始末。

 

期待外れもいい所だ。この男より"彼女"の方が興味を持てた。それが自分にとって脅威になるかは、まだ分からないが、とラケルは溢す。

 

そして、モニターには神器を振り上げたジュリウスが男に斬り掛かっている様が映し出されていた。

 

すでに男の興味を失っているラケルは視線をモニターから外したその瞬間、金属同士が打ち合ってでる音と共にジュリウスの驚愕の声が響く。

 

その音にラケルは振り向きモニターを見る。

 

そこに映っていた光景にラケルは思わず眼を見開き、驚いた。

 

 

何故ならーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既に理性すらアラガミに呑み込まれていたと思われていた男が、最初の時とまったく同じく凶相の笑みを浮かべ、ジュリウスの斬撃を受け止めていた。

 

その瞳に、人としての輝きを灯したまま。

 

 

 

 

「ああ、手出しは不要だ。これは俺とコイツの戦いだ。互いの生存をかけた」

 

 

ジュリウスの一撃を男は自分の腕を食らい付く神器で防いでいた。理性を失いアラガミと変貌すると思われた男が、笑いながら。

 

ジュリウスは声が出なかった。その瞳に圧倒された。男が口にした言葉以上に意志が籠っていたから。

 

 

手を出すな。

 

邪魔をするなと。

 

 

一歩、また一歩とジュリウスが後退する様を男は見向きもせず、その視線を神器へと向ける。

 

 

「俺を喰らうか、成る程。だがな、そう易々と喰われてやる訳にはいかない。俺を喰らうのなら己も喰われる覚悟があるんだろう?俺には目的がある、夢があるッ!その為に俺の糧となれ! 」

 

 

男は叫ぶ。雄叫びにも似た、獣の様な咆哮。施設内に響く時、変化があった。

 

男に食らい付いていた神器がその牙を腕から離し、悲鳴をあげた。

 

神器が悲鳴をあげるなど過去に前例がない事態に、試験に立ち会っている関係者全員が驚愕するーーーが、それだけではなかった。

 

関係者の中の一人。適合率を観測していた職員が見たものは信じられないものだった。

 

通常、神器との適合とは神器が人に侵食し、人がそれに適応するといった形で行われる。しかし今、ディスプレイに表示されているものはそれとは真逆。

 

 

"人が神器へ"侵食しているのだ。

 

 

訳が解らない。理解が追い付かない。ただの普通の人間である筈、なのにどうして。

 

あり得ない。だが目の前で起こっている現象は現実であり、夢ではない。

 

職員全員が困惑するなか、男は彼らの動揺など知る訳も無いまま更に吠えた。そして状況は更に変化を迎える。

 

神器の形状に異変が起きた。

 

神器の刀身とシールドが剥がれ落ち、銃身が分離しし、捕食形態の要である黒い獣の様な顎、それが徐々に形を変え細身の刀剣へと成っていく。

 

分離した銃身も初期装備であったクロガネから何故か木製の、それも旧時代にあった火縄銃に似たものへと変わっており、銃底と柄頭が細い管の様な紐状のもので繋がっていた。

 

最後の抵抗とばかりに暴れまくる顎は再び男の腕に食らい付こうとするが、男の振るった拳によってそれは叶わない。

 

悲鳴が弱くなり、ついに顎は抵抗の色を見せなくなった。歪な形のままの刀身を男は一閃する。

 

それによって真っ直ぐ流麗な刀剣が形付けられる。あの禍々しい顎が嘘のように。

 

だがその刀身は名残によって黒く、まるで総てを呑み込んしまいそうな、そんな不気味な色をしていた。

 

 

「俺の勝ちだな。俺とお前、人とアラガミ。個の戦いであったがこれでハッキリした。人はアラガミなどに敗けはしない。諦めなければ夢は必ず叶う」

 

 

そう、それこそ人類皆が望む夢。決して過去の栄華に戻りたい訳ではない。ただ純粋に、アラガミの居なかったあの頃の平穏を取り戻したい。

 

その未来を手にする術を得た。

 

アラガミから人を守る術を得た。

 

 

さあ、始めよう人類の仇敵よ。

俺達は決してお前達に屈しはしない。

 

覚悟しろ、思い知れ。お前達ごときでは人の輝きを消し去る事など出来ないとな。

 

 

 

人の輝きを、無限の可能性を信じる男。

 

カルディナル・ユースウェルト。

 

今、彼の物語がまくを上げる。

 

 

 

 

 

 

 





ラケルンは原作GE2主人公よりコイツを先に殺っちゃった方がいいと思う。


?「逃げて!アラガミもフェンリル皆さんも超逃げて!」
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