速水との騒ぎを起こした次の日。やはり殺せんせーは妙に気合いが入っていた。分身の数を増やし、妙に熱心に教えてくる。
「ヌルフフフ、鶴久君は数学と理科が苦手ですから重点的にしましょう」
分身の殺せんせーの鉢巻きには『数』『理』。勉強しながら感じていたが殺せんせーはやる気を出し、渚はなんか落ち込んでいた。
暫く、勉強漬けになっていたが殺せんせーがバテた為に一時休憩。
「流石に相当疲れたみたいだな」
「今なら殺れるかな?」
「なんでここまで一生懸命なのかね~」
皆が殺せんせーのやる気に疑問を感じる。しかし、この状態でナイフを振っても当たらないから腹が立つ。
「全ては君たちのテストの点を上げる為です。そうすれば……」
『殺せんせーのお陰でいい点が取れたよ!』
『もう殺せんせーの授業無しじゃいられない!』
『殺すなんて出来ないよ!』
──生徒たちの尊敬の眼差し──
『先生!私達にも勉強を教えて』
── 評判を聞いた近所の巨乳女子大生──
「と、言う具合に先生にとっていい事ずくめになるわけです」
それは明らかに浅い妄想だよ、殺せんせー。
そもそも存在自体が国家機密の殺せんせーの情報が外部に漏れることは無いだろうし。
「いや、勉強はほどほどでいいいよな」
「なんたって暗殺すれば百億円だし」
「百億あれば成績悪くてもその後の人生バラ色だしさ」
「そういう考えをしますか!」
クラス中からの意見に殺せんせーの眉が上がる。いや、眉毛無いんだけどさ。
「俺達エンドのE組だしな」
「勉強より暗殺の方が余程身近なチャンスなんだよ」
その言葉に殺せんせーは黙り込み、立ち上がる。
「分かりました。今の君たちに暗殺者の資格はありません」
その言葉に皆が唖然とする。まあ、なんとなく解る。なんか皆が投げやりな雰囲気だし。
「全員校庭に出なさい。烏間先生とイリーナ先生も呼んできてください」
困惑して直ぐに動けない皆に仕方なく俺は烏間先生と姉さんを呼びに行くのだった。
「なんなのよ、もう」
「奴が何かしでかしたのか?」
姉さんと烏間先生は不満を口にしながらもグラウンドへ足を運ぶ。
グラウンドへ到着すると既にクラスの皆は居て、殺せんせーは何故かグラウンドに置いてあった備品を端に全て移動させていた。
殺せんせーは俺達に向かい合うといつになく真面目な雰囲気だ。
「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺います。アナタは仕事をするとき、用意するプランは1つですか?」
「いいえ、本命のプランなんて思った通り行くことの方が少ないわ、不測の事態に備えて、予備のプランを作っておくのが暗殺の基本よ」
殺せんせーの質問に姉さんは殺し屋としての顔で答えた
「では次に烏間先生、ナイフ術で重要なのは第一撃だけです?」
「第一撃はもちろん重要だが、次の動きも大切だ。戦闘でもその後の練撃をいかに繰り出すかが勝敗を分ける」
真面目な殺せんせーの雰囲気に烏間先生もプロとしての顔で告げる。
俺はこの時点で殺せんせーが何を言いたいのか、なんとなく察していた。
バーさんや店の常連客が良く俺に言ってくる事に近い話の内容に違いない。
しかし、殺せんせーの意図を理解できない生徒をおかまいなしに、殺せんせーは校庭の中心に向かいくるくると回り出した。
って凄い風だな、おい。視界がどんどん悪くなっていく中、殺せんせーはE組全体に助言を送る。
「暗殺があることで勉強の目標を低くしている君達にアドバイスです。第二の刃を持たざる者は…暗殺者名乗る資格なし!」
殺せんせーが回ったことによって発生した竜巻が収まると、校庭は綺麗に手入れされていた。どんだけ早いんだよ、アンタ。
「校庭に雑草や石が多かったので少し手入れしました。先生は地球をも消せる超生物。この一帯を平らにすることも容易いこと。もしも君たちが自信の持てる第二の刃を示せなければ相手に値する暗殺者ではないと見做して校舎ごと平らにして先生は去ります」
そして殺せんせーは困惑するクラスの皆に課題を出す。
「明日の中間テストでクラス全員50位以内を取りなさい」
殺せんせーから出された課題は予想以上にハードルが高い。
殺せんせーの与えたミッションに誰もが驚き、自信がなかったが殺せんせーは言葉を続けた。
「先生は君達の刃をしっかり育てています。自信を持って笑顔で胸を張るのです。自分達が暗殺者でありE組である事に!」
殺せんせーの発言に生徒1人1人の目が変わった。
皆がこんだけやる気出して、殺せんせーも親身に教えてくれる。目標は高いけど頑張りますか。
速水との1件はテスト終わってからにしよ。
なんてちょっと落ち込み気味だったけど千葉が肩を叩いて励ましてくれた
。本当に良い奴だよな。