「鶴久、知り合いなのか?」
千葉が俺に訪ねてくる。
店のカウンターに座り、酒を飲むオッサンは赤岩秋水。
「俺に空手と喧嘩を仕込んだオッサンだ。下手すりゃ烏間先生よりも強いぞ」
「んなっ!?」
俺の言葉に千葉は驚く。烏間先生はE組の体育担当。
そもそも烏間先生は防衛省の人間でかなり強い。
それを更に上回る強さを持つというなら驚いて当然だ。
「いやいやいやいや、紅君も立派になっちゃて」
俺のそんな発言を聞きながら赤岩のオッサンは愉快そうに酒を飲む。
「なんか普通の人みたいだが?」
「騙されるな俺は昔から何度も殺され掛けたんだからな」
千葉が俺に耳打ちしてくるが、このオッサンはそんな奴じゃない。
幼い頃から店の常連は俺に色々仕込んでくるが、このオッサンの場合それが『空手』『喧嘩』だった。
しかも手加減が絶妙で俺よりも少し強い力量で喧嘩をするのだ。
お陰で俺は異常に喧嘩が強くなった。だが強くなった俺でも未だに、このオッサンに勝てる気はしない
「いやいやいやいや、そんなに睨まないで下さいよ」
「鶴久、優しそうな近所のオジサンにしか見えないぞ」
「喋りと物腰が柔らかいけど、やることはえげつないからな」
このオッサンの見た目に騙されると酷い目に合う。過去の経験則で有る。
「お、なんだい赤岩さん久しぶりだね」
「赤岩、帰ってきたのか!?」
そうこうしている間に店の常連が来た。
「紅!とっとと支度しなぁ!!」
「はいよー。千葉、お前はゆっくりしてけよ」
店の奥からバーさんが叫ぶ。俺は仕方なく、支度をしに店の奥へ引っ込んだ。
◇◆side 千葉◆◇
「キミは紅君のお友達かな?」
鶴久が店の奥に引っ込んだら赤岩さんに話し掛けられた。
ニコニコと笑いながら話し掛けられ、先程の鶴久の発現が少し大げさに感じだ。
「あ、はい。千葉龍之介です」
「千葉君ね、自分は赤岩秋水。よろしく」
軽い自己紹介の後に握手をする。そして握手をしたと同時に赤岩さんの表情が少し変わる。
「変わった手ですねぇ。中学生なのに手にあるタコは引き金を引く者の手だ。でも始めたのは最近かな?まだタコが柔らかい」
「っ!?」
赤岩さんは握手をしただけで俺が銃(エアガン)を引く手だと気付いた。
「いやいやいやいや、そんなに脅えなくていいですよ。自分はキミに危害を加える気は無いですから」
握手をほどくと赤岩さんはニコニコとしたままだった。
「赤岩さーん」
「おや、優奈ちゃんもお久しぶりです」
丁度、その時に優奈が来て赤岩さんと話し始めた。
赤岩さんと楽しそうに話をする優奈。
鶴久は店のカウンターで料理をしながら接客をしていた。
しかし赤岩さんの視線はたまに鶴久に向けられている。
それは獲物を狙う獣の目だった。