修学旅行も終わり、休みの日を挟んでから通常授業が始まるのだが休みの日に俺は病院に来ていた。
何故、病院に来てるか。その理由は単純。怪我をしたからだ。
「お兄ちゃん、オジサンと喧嘩するからだよ」
「それはあのオッサンに言ってくれ」
付き添いで病院に来ている優奈が言った通り、俺は修学旅行を終えた次の日に赤岩のオッサンに襲われたのだ。いや、いつもの空手指導だった筈なのだが今回、オッサンは妙に気合いが入っていて俺は全身打撲に加えて脇腹に重い一撃を食らった。
その結果、肋骨に僅かにヒビが入ってしまっていた。
「二週間くらいで治るらしいけど無茶しないでよね」
「はいはいっと」
優奈の言葉に俺は適当に返事をする。そんな時だった。
「あれ、鶴久君?」
「ん……矢田?」
名を呼ばれたので振り返れば何故か矢田が居た。
「どうしたの、病院に居るなんて?」
「ちと怪我してな。そう言う矢田は?」
驚いた表情で聞いてくる矢田だが同じ質問を返した。
「私……弟が居るんだけど……身体が弱くて入院してるの」
「そっか……あ、コレ俺の妹」
「コレ言うな!」
矢田は表情を曇らせながら病院に居る理由を告げる。矢田が優奈を見ていたので俺は優奈の頭に手を乗せながら紹介したのだが優奈は怒ってビシッと俺の手を払う。
「初めまして鶴久優奈です!」
「うん、よろしくね優奈ちゃん。私は矢田桃花、鶴久君の友達」
柔やかに挨拶を交わす矢田と優奈。なんか気が合いそうだなコイツ等。
「弟が入院って事は見舞いだったか?」
「うん、さっきまで病室で話してたんだけど丁度帰る所だったの」
病院の出口に向かって並んで歩く俺達。
「あ、帰る所だったんなら大和屋に来ませんか?」
「大和屋って鶴久君の家だったよね?」
「ああ、居酒屋でな。今から来れば丁度開店時間くらいか」
並んで帰る最中、優奈が矢田を誘う。矢田は少し悩んだ仕草を見せるがパッと顔を上げた。
「じゃあお呼ばれされちゃおうかな?弟にも聞かせてあげたいし」
「ん、それじゃ腕を振るうとする……っ痛!?」
矢田が大和屋に来るとなってグッと腕を上げたら脇腹に痛みが走る。
「鶴久君!?」
「お兄ちゃん!?」
片膝を付いた俺に矢田と優奈が駆け寄る。
「だ、大丈夫……つぅ……」
俺は痛む脇腹に手を当てながら立ち上がる。それを矢田と優奈は支える様に寄り添ってくれた。
「もう無理しないでって言ったのに……」
「鶴久君、心配だから大和屋まで付き添うからね」
優奈と矢田に心配され、何故か過保護に連行される俺。ま、所為がないか。
因みにこの後、矢田を連れて大和屋に帰った俺だがタイミング悪く姉さんや常連客が既に来ていた。
「紅が女連れで帰ってきたぞぉぉぉぉっ!」
「他の奴等にも知らせろ!」
「騒ぎを大きくするんじゃねぇぇぇぇぇぇぇっ!」
騒ぎ出した常連客にキレた俺だがあまり効果は無く、騒ぎは収まる所か常連客は更に調子に乗り始めていた。
「何よー桃花?紅狙い?いいわよー狙ってみなさい。教えたい技術が早速役立つわよ」
「ビ、ビッチ先生!お酒臭いよ!?」
矢田は既に酔っている姉さんに絡まれていた。矢田に触れている姉さんの手つき、妙にやらしいな。
矢田に絡む姉さん……岡島が見たら興奮するだろうな。
明日から通常授業なのに大丈夫か?等と思う俺の思いとは裏腹に大和屋は今日も騒がしくなるのだった。