病院に行った次の日。今日から通常授業が始まるので俺と千葉はE組校舎までの坂を歩いていた。
「昨日の烏間先生からのメール見たか?」
「ああ、今日から転校生が来るってやつだろ」
昨夜、烏間先生からメールが来ていた。曰く『多少外見で驚くがあまり騒がずに接してくれ』との事。
このメールを見たときには矢田がまだ大和屋に居たので俺と矢田は首を傾げた。
「この文面から……殺し屋かな?」
「ついに来たか。転校生暗殺者」
俺と千葉は転校生の予想を始める。あーでも無いこーでもも無いと話してる内に教室に着いた。
教室に着くと渚、杉野、磯貝、岡島、片岡、倉橋が居た。何故か引き攣った顔で。
「何やってんだ?」
俺の言葉に倉橋が苦笑いで教室に設置されている黒い箱を指差す。何アレ?
なんかよく見りゃ黒い箱の上の部分には液晶パネルのようなものがはめ込まれてる。
するとブゥンと言う音と共に液晶が映る。
『おはようございます。今日から転校してきました『自律思考固定砲台』と申します。よろしくお願いします』
そう言って、パネルは再び暗くなった。
「…………………そう来たか」
渚達の引き攣った表情の謎は解けた。
朝のHRになり、烏間先生が教壇に立つ。あ、既になんか怒ってる。
「知ってると思うが、転校生を紹介する」
烏間先生は体と声を震わせながら、黒板に名前を書き、転校生を紹介し始めた。
「ノルウェーから来た自律思考固定砲台さんだ」
『よろしくお願いします』
烏間先生に続き転校生も挨拶をする。いや、よろしくって言われてもなぁ……
「烏間先生も大変だな」
「俺なら、ツッコミきれずに発狂するぞ」
クラスの中からヒソヒソと声が聞こえる。全くもって同意するわ。
肝心の殺せんせーは自律思考固定砲台を見て『ぷーくすくす』と笑っていた
「笑うな。このイロモノ。言っておくが、彼女は思考能力(AI)と顔を持ちれっきとした生徒として登録されている。あの場所からずっとお前に銃口を向けるが、お前は彼女に反撃できない」
「なるほだ私が生徒に危害を加えられないのを逆手に取りますか。いいでしょう、自律思考固定砲台さん。E組へ歓迎します!」
殺せんせーは転校生を歓迎すると言うけど……どんなコミュニケーション取る気だよ?
◆◇side速水◆◇
奇抜すぎる転校生の自己紹介も終わり、授業が始まる。
今まで、殺せんせーの存在もあったけど今回は更に色物が来た感じだ。
授業は始まったけど固定砲台が気になって集中出来ない。周りの皆も同様みたいだ。
そして固定砲台って言ってるけど何処に銃があるのかなと思った。その瞬間だった固定砲台の箱の両側が開き、そこから銃が現れる。
ガシャガシャと音を立てて、現れた銃から対先生用BB弾が発射される。
私達は頭を庇いながら身を伏せる。教室中から男子の驚く声と女子の悲鳴が響き渡る。
「痛ででででっ!?」
殺せんせーはいつものスピードで濃密な弾丸を躱し続ける中、固定砲台の撃った弾の一部が鶴久に当たっていた。
「ショットガン四門に機関銃二門。濃密な弾幕ですがここでは当たり前にやってますよ。授業中の発砲は禁止ですよ。それと鶴久君に弾が当たりました、気を付けなさい!」
当たりそうな弾はチョークで弾きながら殺せんせーは言う。でもなんで鶴久に弾が当たったんだろう?鶴久の反射神経なら弾が当たる前に身を伏せたはず……間に合わなくても弾が当たったみたいだ。
『気を付けます。続いて攻撃に移ります』
固定砲台から機械の作動音が聞こえ、全員がそれに集中する。
『弾頭再計算、射角修正、自己進化フェイズ5-28-02に移行』
そして再び銃が展開されBB弾が発射される。鶴久も今度は伏せているから大丈夫そうだ。
「こりませんねぇ」
殺せんせーは先程同様、BB弾を避け、当たる弾はチョークで弾いた。だが次の瞬間、殺せんせーのチョークを持っていた手が弾け飛んだ。
その光景に全員が驚く。何が起きたか解らなかったからだ。
『右指先破壊。増設した副砲の効果を確認しました。次の射撃で殺せる確立0.001%未満。次の次の射撃で殺せる確立0.003%未満。卒業までに殺せる確立90%以上。卒業まで、よろしくお願いします、殺せんせー』
プログラムされてる笑顔で固定砲台は微笑みながら、殺せんせーを殺すための進化を再び始めた。
でも私にはそれ以上に気になってる事が出来た。
「大丈夫、鶴久君?」
「な、なんとか……」
矢田が鶴久に駆け寄り安否を気遣っていた。何故か矢田は鶴久の不調を知っている風だった……
私には殺せんせーにダメージを与えた固定砲台よりも鶴久と矢田の事が気になっていた。