暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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初来店の時間

 

 

 

律がE組に本格的に入ってからの事。

放課後に殺せんせーはハワイに映画を観に行くと言っていた。

 

渚やカルマは殺せんせーに頼んで一緒に行くとか……

俺も観たかったが用事が有るためにパスだ。

 

 

 

「これ、面白いのか?」

「アクションに定評が有る作品でな。優奈が好きだから良く一緒に観てたんだ」

 

 

殺せんせーから貰ったパンフレットを見ながら俺と千葉は大和屋への道を行く。

最近は千葉も大和屋の常連になっていた。勿論酒は飲ませないが飯だけでも来てくれる。

 

 

「な、なあ鶴久……」

 

 

言いたいことは分かるぞ千葉。

 

 

「う、後ろの空気が……」

「分かっててもどうしようもないんだよ」

 

 

そう俺達の後ろを歩くのは速水と矢田。

妙にピリピリとした空気を出している。

 

 

「ふーん、じゃあ矢田はもう大和屋に行ったんだ」

「うん、料理も美味しかったし周りのお客さんも愉快な人が多くてさー」

 

 

会話は普通。

いや、だからこそ怖いんだけどね。

 

 

少し寄り道をしてから帰った俺達は大和屋の開店時間を少し過ぎた時間に帰った。

となれば当然……。

 

 

 

「紅が前回とは 違う娘連れ込んだぞォォォォォっ!」

「また可愛い子だ!」

「いや待て!前回来た子も一緒だ!」

「何、二股か!?」

 

 

よし、殺そう。

 

 

「紅!帰ったんなら店の手伝いな!ソイツ等殴るなら後にしな!」

 

 

とりあえず常連客を殴りに行こうと思ったがバーさんの怒鳴り声が聞こえたんで後にするか。

 

 

「とりあえず後回しにするか。千葉、いつも通りに頼むわ」

「オーケー」

 

 

店の奥に行く前に千葉に頼み事をする。流石に常連客になってるから分かってるね。

 

 

 

 

◆◇side速水◆◇

 

 

 

初めて来た大和屋に入ったと同時に店に居たおじさん達が私や矢田を見て騒ぎ始めていた。

矢田も驚いた様子だが千葉はそれを見て笑っていた。

 

おじさん達の言葉がエスカレートしていく中、鶴久が拳をバキボキと鳴らしながら、おじさん達に向かっていくが店の奥からお婆さんの声が響き渡る。

 

 

鶴久は舌打ちをした後に千葉に何かを話した後、鶴久は店の奥に行ってしまった。

 

 

「速水、矢田。こっちの席に座ろう」

 

 

千葉が指定したのはカウンター席だ。

私達は並んでカウンターに座る。

 

 

「あの騒ぎは気にするなよ。いつもの事だから」

「そうなんだ」

 

 

千葉の言葉に私は驚いていた。あれが『いつもの事』とは……。

 

 

「私も前に来たときは騒がれたっけ……」

 

 

アハハと苦笑いの矢田。でも楽しそうに笑っていた。

 

 

「なんだい、今回は別の子も来たのかい?」

「海女さん、お邪魔してます」

 

 

鶴久と入れ替わりに店の奥から出て来たのは黒い着物が似合うお婆さん。

この人が鶴久の祖母?

 

 

「アンタもすっかり常連になったね千葉。この子はE組?」

「あ、はい。速水凜香です」

 

 

千葉に話し掛けた後に直ぐに私に視線を向けた海女さん。

私は席から立ち上がり頭を下げる。

 

 

「速水……ああ、アンタが。紅から良く話は聞いてるよ、まあゆっくりしていきな」

 

 

そう言って海女さんは他のお客さんの相手を始める。

え、って言うか「紅から良く話は聞いてるよ」って鶴久は私の話を家族にしてるの?

 

 

「たっだいまー!」

 

 

なんて思ってたら大和屋の戸が開かれて元気な声が聞こえた。ランドセルを背負った女の子は私達の方を見るとニパッと笑う。

 

 

「千葉さん、桃花ちゃん!来てたんだ!」

 

 

千葉はともかく矢田は『桃花ちゃん』って呼ばれてるんだ……。もしかしてこの子は……

 

 

「おう、優奈お帰り」

「あ、お兄ちゃんただいま」

 

 

着替えを終えた鶴久が出てきて、この子の名を呼ぶ。やっぱり鶴久の妹さんか。

 

 

「ねえねえ、お姉ちゃん『速水』さんでしょ?」

 

 

気が付けば優奈が私の前に立っていた。

 

 

「え、うん。私は速水凜香」 

「鶴久優奈です。お兄ちゃんの妹です!」

 

 

私が自己紹介すると優奈はビシッとVサインで答える。元気な子だ。

 

 

「お兄ちゃんから凜香ちゃんの話は良く聞いて……」

「余計な事は言うなよー」

 

 

優奈の発言を遮ったのは鶴久だった。

 

 

「えー、だって……」

「ゆーうな!」

 

 

鶴久に何かを口止めされている優奈に鶴久は更に釘を刺す。何を話したんだろうか……。

 

 

「お、なんだ!兄妹喧嘩か?」

「最近は紅ちゃんと優奈ちゃんの喧嘩見てないな」

「酒の肴になるなぁ!」

 

 

何故か周りのお客さんの方が盛り上がっていた。

兄妹喧嘩をめちゃくちゃ煽ってる。

 

 

「止めて下さる?紅と優奈の喧嘩なんか見たくないので」

 

 

突如聞こえた声に振り返ればビッチ先生が来ていた。

 

 

「お、金髪の姉ちゃんが着たぞ!」

「はぁい、お待たせ」

「まあまあ、駆けつけ一杯」

 

 

お客さんがビッチ先生に反応する中、ビッチ先生はノリノリだ。

なんかサラリと奢って貰ってるし。

 

 

「お姉ちゃん、最近来る率上がってるね」

「教師ってのは大変なんだよ。優奈、姉さんにお通し出してきてくれ」

 

 

優奈がビッチ先生の事を心配していると鶴久か簡単な料理を優奈に渡す。受け取った優奈はビッチ先生にソレを渡しに行くがそのまま絡まれていた。

 

 

「ビッチ先生も良く来るの?」

「俺が来てる時は大抵居るな。常連みたいだぜ」

 

 

矢田がビッチ先生が良く来るのかを千葉に尋ねる。鶴久は料理に没頭してるから当然か。

 

 

私は大和屋で働く鶴久を見たくて今日、大和屋に来ていた。

矢田やビッチ先生が来ていることを聞いてから私も行きたいと思っていたから……

 

 

「凜香、素直になりなさいって言ったでしょ」

「ひゃっ!?ビッチ先生?」

 

 

背後からスッと耳元で囁かれて驚いた。ビッチ先生、いつの間に。

 

 

「桃花と優奈に任せてきたわ」

 

 

見てみれば優奈がお客さんに酌をして、矢田が他のお客さんから質問攻めになっていた。

鶴久と千葉は話をしていて此方は見ていない。

 

 

 

「凜香、これは忠告って言うより警告よ。桃花は本格的に紅に迫るわよ。優奈は既に桃花と仲が良いから手遅れになるわよ」

「………え」

 

 

少し真面目なビッチ先生の声に言葉を失う私。

それにビッチ先生はいつもとは違う感じがした。

まるで何かに焦っているかの様に。

 

 

 

◆◇side紅◆◇

 

 

「なんの話してんだ?」

「さーな、多分姉さんが速水になんか仕込んでるんだろ」

 

 

千葉が俺に話を振るが、おおよそ姉さんの行動は予想できる。

大方、速水に恋愛指導してるんだろ。優奈に聞かせられない内容の。

 

 

 

 

「でもまあ……気にはなるな」

 

 

気になるのは姉さんの表情だ。

あの顔をしてる時の姉さんは悩みが有ったり、焦ってるとあんな顔をする。

 

 

今度、話くらい聞いてやるか弟としてね。




次回、ロヴロ先生の回です。
そこでイリーナの悩みが判明します
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