暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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残留の時間

 

 

 

一夜明け、今日の体育は不安定な足場でのナイフ訓練。

交代交代で足場の小さい樹の上でナイフを吊した風船で斬る。

そんな中、俺達はどうしても気になることがあった。

 

 

「烏間先生、アレ」

「気にするな」

 

 

倉橋が指さした方向には対先生ナイフを持ってこちらを見ている姉さんとロヴロさん。

それと何故か黒い忍装束を着ている殺せんせーがいた。

 

 

いや、殺せんせー……それは寧ろ目立つから

 

 

とは言っても俺も今日は練習に身が入らない。

下手をすれば今日で姉さんと離れなければならないんだ。

 

ロヴロさんが勝てば姉さんは此処以外での暗殺業務となり、姉さんが勝てば、このままE組に残る。

なんて事を思っていたら烏間先生が事の経緯を説明していた。

 

 

「ということだ。迷惑な話だが、君らの授業に影響は与えない。普段通りに過してくれ」

 

 

烏間先生は溜息交じりに告げる。いや、姉が迷惑掛けてスイマセン。

 

 

「では今日の体育はここまで、解散!」

 

 

烏間先生が解散の指示をすると同時に、姉さんがこちらへ向かって来た。

 

 

「カラスマ先生~。おつかれさまでしたぁ~。喉乾いたでしょ。ハイ、冷たい飲み物!」

 

 

その場に居た全員が驚き固まった。

姉さん、そらアカンわ。

飲み物を地面に置こうと膝を着くが、足を滑らせ地面に倒れる。

 

 

「いったぁい!!おぶってカラスマ、おんぶしてぇ!」

「やってられるか」

 

そう言い残し烏間先生は職員室へと戻る。

 

 

「ビッチ先生……」

「流石にそれじゃ俺らだって騙せねーよ」

 

 

磯貝と三村がそう言いながら、姉さんを立たせる。最早、哀れみすら感じるなぁ。

 

 

「仕方ないでしょ!顔見知りに色仕掛けとかどうやったって不自然になるわよ!キャバ嬢だって、客が偶然父親だったら、ぎこちなくなるでしょ!それと一緒よ!」

「だったら、そんな姉の姿を見なきゃならない弟の気持ちも汲んでくれや」

 

 

そう言った俺をクラスの皆が苦笑いして、姉さんは『あ、それもそうか』とポンと左の掌に右拳を落とす。勘弁して。

 

 

その後も姉さんはどうにかしようとしていたが駄目だったみたいで既に昼休みになっていた。

 

 

「鶴久、大丈夫なのかビッチ先生」

「不安は残るが何とかするだろ、多分」

 

 

昼飯を千葉と食っていた俺は千葉の疑問に答える。いや、一番心配してんの俺だからね。

 

 

「見てみ、渚君、鶴久」

 

 

カルマが何かに気付き、渚や俺を呼ぶ。

カルマが見ていた方向に視線を移せば烏間先生が木の下でハンバーガーを食べていた。

そして烏間先生に歩み寄る姉さん。

 

 

「殺る気だな」

「うん。でも………どう殺るんだろ?」

 

 

窓際に移動して、見届ける事にした俺は姉さんが殺る気になっている事に口を出し、渚が同意する。

そして外の様子に気づき、クラス全員が窓際に集まった。

 

 

姉さんは上着を脱ぎ、烏間先生に話かける。

クラスの皆から「また色仕掛けか」等とコメントが漏れていた。

 

 

「いや、もしかして……」

「……どうしたの?」

 

 

俺は姉さんの企みになんとなく気づいた。そんな俺を見て速水が聞いてくるが俺は少し口端を吊り上げると見てれば判ると姉さん達を指さした。

 

 

 

対先生ナイフを手にした姉さんは木に寄りかかる烏間先生の後ろに回る。何か、会話をしている様だけど多分、それは布石。

そして烏間先生が姉さんの行動に対応しようとした時、姉さんの捨て置いた上着が烏間先生の足を絡め取るかのように動いた。

 

 

「やっぱりそうか」

 

 

俺は思わず呟く。今のはワイヤートラップで多分、姉さんは色仕掛けと会話をカモフラージュに使い、服と木を巧みに使った仕掛けを仕込んでいたのだ。

その光景にクラスの全員が驚く。

 

 

「鶴久、気付いてたの?」

「なんもなく、そうかもってだけな。姉さん、アレで努力家だから」

 

 

イメージとは違うかも知れないが姉さんは結構、色々と努力していた。大方、誰にもそんな姿見られたくないから、こっそり練習してたんだろうなぁ。

 

 

なんて事を思っていたら姉さんは既に次の行動に入っていた。烏間先生は体勢を崩し、倒れた処に姉さんが素早く跨る。そして対先生ナイフを一気に振り下ろす。

 

しかし烏間先生は寸での所で姉さんの手を掴み、刃が当たる寸前で止めた。

 

これはもう……なんて空気が流れたが姉さんと烏間先生は何か話してる。そして溜息を吐いた烏間先生が手を離し、ナイフを受け入れた。

 

 

「当たった!」

「凄ぇ!」

 

 

クラスの皆が姉さんを誉めて認めていた。こうして姉さんは残留決定になって嬉しいのだが………

 

 

 

 

 

 

「俺に何の用?ロヴロさん」

 

 

俺はロヴロさんに呼び出され、皆とは少し離れた位置に移動していた。

 

 

「先日はスマなかったな。しかし、あれでイリーナを別の場所に派遣して、お前には暗殺を止めて欲しかったんだがな」

「ったく……随分と無茶が有ったから何かと思えば……」

 

 

つまり、昨日のはロヴロさんが俺や姉さんの為を思っての行為だった訳ね。

殺し屋なりの配慮かね。

 

 

「まだ暗殺を続けるなら言っておく。常に冷静を心掛けろ。昨日もそうだが、お前は身内や親しい者が傷付くのは我慢できない質だろう?それはいつか、お前を殺す欠点になるぞ」   

 

 

ロヴロさんはそう言い残すとE組から去ってしまう。帰り際に姉さんにも何か言っていったみたいだけど………

 

 

 

俺はロヴロさんの残した言葉が気に掛かっていた。

 

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