女子バスケの特訓を終えた俺は野球組に合流した。
殺監督のトレーニングを見た俺は、もう少し女子バスケの方に居た方が良かったかもと思ってしまう。
そして数日が経過し、球技大会当日。
E組は大半が見学な為、かなり暇だった。俺はぼんやりと進行している球技大会を見て欠伸をしていたが、それもここまで。
球技大会は終わりに近づき、最後のエキシビジョンマッチとなった。
応援席には多くの生徒が集まり、E組が負けるのを見に来ている。
女子は体育館に向かい女子バスケ部と試合で、男子はグラウンドで野球部と試合。E組以外の人間がニヤニヤと此方を見ていた。中には前に速水達に絡んだ連中も居る。つーか、奴等睨んでね?
「おい、鶴久」
「ん、おお……進藤か」
突然呼ばれたので振り返ると進藤が居た。やる気満々で野球のユニフォームまで着ている。
「先程、杉野にも言ったが我々エリートとE組の差を思い知らせてやる」
「そんなに昔、俺に打たれたの根に持ってんのか?」
進藤の言葉に思わず聞いてしまう。
「ふ……あの頃、A組に居た鶴久には打たれたがE組に落ちた今のお前に、今の俺の球が打てると思わない事だな」
そう言って進藤は鼻を鳴らして自陣のベンチへ行ってしまう。
「鶴久、大丈夫なのか?」
「んー、まぁ大丈夫だろ。俺達も行こうか」
話に参加はしてなかったが会話を聞いていた杉野が聞いてくる。とりあえず整列だな。
「それでは、E組対野球部選抜のエキシビジョンマッチを行います」
俺達にとっての真剣勝負。周りの奴等にとっての見せしめ試合が始まる。
「警戒するのは杉野と鶴久くらい……後は雑魚だな」
マウントに向かう最中の進藤がボソッと呟く。聞こえてんぞ。さぁて……どうしてやっかな。
E組の先攻で始まり、木村がバッターボックスに立つ。
因みに打順は
1.木村
2.潮田
3.磯貝
4.杉野
5.前原
6.三村
7.千葉
8.赤羽
9.鶴久
となっている。
1球目、木村は剛球に手も出せずに見送ってしまうが、
2球目を木村はバントで転がした。殺監督の指示である。
この場に姿の無い殺監督がどうやって指示を出したか。
殺監督は烏間先生に目立つなと言われて、遠近法を使い転がってるボールまぎれている。知らなければただのボールだが知っている者が見れば100億の賞金首。中々凄い光景だと改めて実感するなぁ。
続く2番の渚も三塁線に強めのバントを放ち、ノーアウト一、二塁となっていた。
進藤の速球を狙った場所に転がすのは至難の技。だがE組は殺監督の特訓を受けていたのだ。それに比べれば………
◇◆◇◆
「殺ピッチャーの球は時速300kmの球を投げ!」
「殺内野手は分身で鉄壁の防御し!」
「殺キャッチャーは精神攻撃でバッターの集中を乱す!………鶴久君、最近イリーナ先生にドキッとする場面が多い様ですね。学校では高飛車な先生でも弟の前では気を許して無防備な所がある様ですし」
「なんで知ってんだよ!」
バッターボックスに立つ俺にしか聞こえない様に話してるけどなんで知ってんだよ!
「それだけではありません。速水さんや矢田さんにドキドキしているのでは?なんせ、ここ最近……」
「殺せんせー、マジで一回、殴らせてくんない?痛くしないから」
俺は殺せんせーにバットを振りかぶる。マジで殺してやろーか。
「にゅや!?鶴久君、これは特訓ですから!?」
「度が過ぎてるんだっての……」
俺は怒りが収まらなかったが、一旦保留にしておこう。今は皆で特訓してるんだし。唯一の幸いは殺せんせーは俺にしか聞こえない様に言った事だ。
「三村君……放課後の校舎裏でのエアギターお見事でした」
秘密をクラスの全員にバラまかれるよりマシか……三村、南無。
「次は対戦相手の研究。殺監督が新同君と同じフォームで同じように遅くボールを投げます。さっきのボールを見た後じゃ、進藤君のボールなんか止まって見えるでしょう」
◇◆◇◆
そんな特訓を乗り越えた後だ。進藤には悪いが球は見切った様なもんたま。
3番バッターの磯貝もバントにより出塁し、満塁になり、4番の杉野。
打席に立ち殺監督のサインを確認した杉野はバントの構えになる。その姿に進藤は目に見えて脅えていた。
進藤は崩れたコンディションのまま球を投げるが球速に勢いは無い。杉野はバントの構えからフォームを変えて球を撃ち抜く。
「走者一掃のスリーベース!?な……なんだよコレ予定外だ…E組3点先制!」
誰もが予想していなかった出来事に野球部顧問の寺井も唖然としていた。アナウンスもマイク入れたまま話すなよ。本音、ダダ漏れじゃねーか。
男子は好調だけど女子はどーなったかな?俺は打順が回ってくるのを待ってる間、そんな事を考えていた。