暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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エキシビションマッチの時間③

 

 

 

 

怒りと嫉妬に駆られる進藤、キャッチャー、審判の先生を相手に俺の反撃は開始される。

俺がバントではなく、普通にバットを構えたのを見て進藤は鼻を鳴らすと球を投げる。

剛速球だが俺には見える!

 

俺がバットを振るうと球の上半分を擦った。ソレ即ち。

 

 

「はぐぉっ!?」

 

 

直後にキャッチャーの悲鳴が聞こえる。そう俺は進藤の球をわざと下に誘導する様に打った。球は勢いを殺しきれず、下方向に走る、つまりキャッチャーの股間にクリティカルヒットするのだ。

キャッチャーが股間を抑えて蹲っている。そりゃ痛いわな。

 

 

「大丈夫かー?」

「ぐ……お、も、もうちょい下……」

 

 

俺はキャッチャーを気遣い、めり込んだキャッチャーの球を落とすべく腰を叩いてやる。流石にこんな時はエリート君達でも素直だわ。暫く叩いて時間経過と共にキャッチャーも立ち直ってきた。

そしてキャッチャーの痛みが引いた段階でプレイ再開。

 

 

「おのれ……次は打たせん!」

「それは……どうかなっ!」

 

 

再び進藤は剛速球を放るが俺は既に見切った!

今度は球の下半分を擦る。そうなれば……

 

 

「うおわっ!?」

 

 

審判の先生は仰向けにひっくり返る。今度は下半分を叩いたので球は上に向かう。キャッチャーと違って顔にマスクしてるから顔面には当たらないだろうがそれでも進藤の剛速球だ。人をひっくり返す程の威力はあった。

 

 

「大丈夫ッスか先生?」

「え……あ……」

 

 

先生はひっくり返ったまま返事も曖昧。ま、いきなりあんな事になれば当然か。

この後、咳払いをして立ち上がった審判の先生。周りの生徒からもクスクスと笑い声が聞こえる。俺の事を睨むが試合中の事故だ。そう強くも言えずに試合再開。

 

進藤はファールとは言えど俺に二度も打たれて気が動転してるのか集中力が途切れてきてる。

 

と思ってたんだけど俺が審判の先生と話してる間に理事長の再洗脳を受けてまたもやパワーアップしていた。

こりゃマトモにやっても無駄か。

 

仕方ないと判断した俺は進藤の球をピッチャー返しで打ち返した。進藤はそれをキャッチするとドヤ顔をしていた。

 

ピッチャー返しでも顔面狙ってやるべきだったかと少し後悔。

俺はアウトになり、続く木村も三振で交代。

 

 

その後も一進一退は続き互いに点を取らないまま三回裏。野球部は俺たちが一回表でやったバントでやり返してきた。

恐らく、理事長の指示だろうが野球部が素人相手にバントなんて大人気ねーだろ。と言いたいが先に俺達がやった戦法だ。今更駄目だとは言えないし、言うつもりも無い。

流石野球部だけあってバントも上手く、あっと言う間にノーアウト満塁。

 

そして、最後に進藤がバッターボックスに立つ。だが、明らかに様子がおかしい。悪魔にでも取り憑かれたかと言いたくなる状態だ。

ああ、悪魔は取り憑いちゃいないが悪魔(理事長)の囁きはあったみたい。

 

そんな変貌を遂げた進藤に杉野は敬遠するしかないと判断するが、殺監督の指示を受けたカルマが来て磯貝に耳打ちしてる。

何かを話した後にカルマと磯貝は前進して進藤の前に立つ。バッターボックスの前、つまりさっきの野球部と同じ前進守備か。

 

 

「さっき、そっちがやった時、審判は文句言わなかったよね。なら、俺達がやっても問題ないよね、理事長せんせー」

「………構わない。真の強者はそんなことでは取り乱さない」

 

 

 

カルマの言葉に顔には出さないが悔しそうな理事長。なる程さっきの殺監督のニヤニヤはコレが理由か。

 

 

「それじゃ、遠慮なく」

「………………え?」

 

 

 

カルマと磯貝はさらに前進し、進藤がバットを振れば当たる場所を守備位置とした。

この有り得ない立ち位置に理事長によって集中力を高めた進藤も目を丸くして呆けていた。

 

 

「構わず降りなさい進藤君。例え骨を砕かれても彼らは文句は言えない。むしろ打撃妨害を取れるさ」

 

 

理事長は構うこと無くやれと言うが無理だろうな。

進藤は大きく振ってビビらせればいいと思い、バットを振るが、カルマと磯貝は上半身を僅かに反らし避ける。

 

 

「……ダメだよそんな遅いスイングじゃ。次は殺すつもりで振ってごらん?」

 

 

あーあ、完全に集中が切れてら。アレじゃ駄目だな。

そして完全に腰が引けた進藤は次の杉野が投げた球をなんとか打つが勢いが無い。

 

打球をカルマが取り、キャッチャーである渚の元へ投げ、そのまま三塁の木村、一塁の菅谷へと流れる様にトリプルプレー。

呆然としたままの野球部を後目にE組がの勝利は確定した。

 

 

『か、勝ちました!E組が野球部に!勝ってしまいました!予定と違うぞチクショー!』

 

 

アナウンスの声がマイク越しに響く。だから本音が漏れてるっての。

ふと視線をズラせば杉野と進藤が何か話してる。進藤も今回の事で無駄なエリート意識も消えたのか妙にスッキリした顔になってるな。

まあ、取り憑いつた悪魔(理事長)も居なくなったしな。

つうか試合が負けたと同時に静かに消えたよ理事長。

 

なんて事を思ってたら矢田がこっちに来た。

 

 

「はい、お疲れ様鶴久君!」

「おお、ってコレは?」

 

 

矢田が俺に差し出したのはスポーツドリンク。

 

 

「疲れてるだろうと思ってさ」

「おお、サンキューな」

 

 

俺は貰ったスポーツドリンクを飲む。疲れてたし、喉渇いてたから身体に染み渡る感じがした。

 

 

「ありがとな矢田」

「うん、喜んでくれて嬉しかった」

 

 

そう言って矢田は笑う。可愛い笑い方だなって思ったら背後から殺気が……この殺気は速水か!?

 

 

「……っと?」

「……お疲れ」

 

 

振り返ろうとした俺だが首の辺りにフワリとタオルが掛けられた。

そのまま振り返れば速水が居た。速水が俺の首にタオルを巻いたらしい。

 

 

「これ、速水の?」

「多目に持ってきたから使っていいよ」

 

 

速水はクールにそう告げる。殺気を感じた分、この差に安堵を感じたよ。

しかもよく見ればこのタオル、速水が首に掛けてるのと同じデザインだ。

 

 

「ありがとな……ん?」

「どうかした?」

 

 

ふと、ある事に気付いた俺だが、そんな俺の態度に速水が小首を傾げた。

 

 

「あ、いや……なんでもない」

 

 

俺は怪訝な表情になった速水と矢田から、そそくさと離れた。

速水から借りたタオルから良い香りがしたとは言えないし……な

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