暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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もしかしたらの時間

 

 

 

 

 

 

 

鷹岡の解雇の次の日。

大和屋に新たな客が来ていた。

 

 

「美味しい……鶴久君って、お料理上手なんですね」

「馬鹿孫の料理を褒めてくれてありがとうね。外の騒ぎが終われば戻ってくるだろうよ」

 

 

大和屋に神崎が来たのだ。と言うか学校が終わってから一緒に帰ったんだけど。

今日の学校の授業を終えてから神崎が大和屋に来たいと言い始めたのだ。

 

 

その時の速水と矢田と杉野の殺気ったらなかったね。

「なんと言うプレッシャー!」と不破が叫んでいたがそれを向けられた俺はヤバいくらいに胃が痛くなった。

そして授業を終えた後に一緒に帰る事になったのだが速水と矢田は態度が冷たく、杉野に至っては『オマエヲコロス』って目が血走ってた。殺せんせーはピンクの皮膚になっていたので後日、殺すと心に強く誓った。

 

そんなこんなで、神崎と共に大和屋に帰ったのだが案の定、常連客が騒ぎ始める。

 

 

「紅がまた女連れ込んだぞォォォォォッ!」

「今回はお嬢様系だっ!」

「おい!速水ちゃんと矢田ちゃんに連絡だ!」

 

 

酒の肴が来たぞと騒ぎ始める

 

 

「毎度の如くうるせーっ!騒ぐんじゃね-っ!」

「ぐほっ!?」

「レッグラリアート!?いつの間に覚えた紅!」

 

 

俺は一番手前に居た常連客の首筋にレッグラリアートを放ち騒ぎを静めた。

 

 

「五月蠅いよ!紅!さっさと着がえて手伝いな!」

 

 

他のも叩きのめそうと思ったがバーさんが出てきたので中止。

 

 

「はいよー、神崎。悪いんだけどカウンターで待っててくれ」

「あ、うん。でも、あの人は大丈夫なの?」

 

 

神崎は先程、俺がレッグラリアートでダウンさせた常連客を気にしている様だ。

 

 

「ああ、構わんよお嬢ちゃん」

「おおよ、大和屋じゃいつもの事さ」

 

 

そう、大和屋では喧嘩は日常茶飯事。気にする必要は無い。

 

 

「そー言うこったから少し待っててくれ」

「うん、わかった」  

 

 

俺の言葉に神崎は柔やかな笑顔で返す。可愛いなぁ、おい。

そんな訳で俺は一時的に離れたのだが嫌な予感しかしない。

戻ってきた俺は『やっぱりか』と溜息を吐いた。

 

神崎は常連客にお酌をして世話を焼いていた。つーかアンタ等、中学生に何をさせてるんだ。

 

 

「可愛いなぁ神崎ちゃん」

「そうそう、ウチの娘もこんくらい可愛いなぁ」

「あ、いえ、そんな……」

 

 

酔っぱらいのオッサン共に絡まれて神崎が戸惑ってる。ま、今の内に神崎の料理を作っとくか。

神崎には悪いとは思ったが少し時間欲しかったしな。

 

 

そして料理を作り終える頃に不穏な声が聞こえ始めた。

 

 

「可愛いねぇ……神崎ちゃぁん。おじさんとお酒飲まない?」

「あ、あの……」

 

 

悪酔いした常連客の一人が神崎に絡んでる。まったく……

 

 

「キャバクラか」

「熱っ!?」

 

 

俺はフライパンを悪酔いしていた常連客に押し付ける。先程まで料理に使っていた奴なので余熱でかなり熱いから効いた筈。

 

 

「表出ろやコラァ!」

「やったらぁ!」

 

 

多少酔いが覚めた客と俺は外に出て喧嘩スタート。

後はバーさんが神崎をカウンターまで連れてってくれる筈だから俺は心置きなくバトルだ。

そして冒頭に戻る。俺が客をK.O.して戻ってくると神崎は俺の作った料理に舌鼓を打っていた。

 

 

「あ、おかえりなさい」

「料理を堪能してくれてるみたいで何よりだ」

 

 

やれやれとタオルで汗を拭う俺を神崎は出迎えてくれた。

 

 

「さっきのおじさんは?」

「ノックアウトしてから水を無理矢理飲ませたから酔いも覚めてるだろうよ」

 

 

因みに先程まで飲んでたテーブルに放置してきた。目を覚ませば良いも覚めてるだろう。

 

 

「ご馳走でした。美味しかったよ鶴久君」

「おう、お粗末さまでした」

 

 

行儀良くする辺り、やはり神崎は育ちが良いのだと思う。俺も笑みを浮かべ水を飲んだ。

 

 

「ねえ……鶴久君。聞きたい事があるんだけど……速水さんと矢田さんのどっちが好きなの?」

「ブホッ!?」

 

 

神崎の発言に俺は飲んでいた水を噴き出す。

 

 

「ゴッゴホッ!?何を言うんだ神崎!?」

「あ、うん……気になって」

 

 

神崎は布巾で俺の噴き出した水を拭う。可愛い顔して何を言い出すかと思えば……

 

 

「ったく……なんで急にそんな事を?」

「最近、鶴久君って速水さんと矢田さんと仲が良いから……その……付き合ってるのかなぁ……って」

 

 

神崎は頬を染めながらツンツンと自身の指を突き合う。その仕草は凄い可愛いです。

 

 

「あー……その……なんて言えば良いのかな……」

 

 

俺は頭をポリポリと掻きながら悩む。なんて言えば良いのか。

 

なんて悩んでたら神崎は誰かと何かを話した後に俺の方に歩み寄る。

神崎は俺の背後に回り込み、背中にピトッと貼りつく。

 

 

「か、神崎っ!?」

「どうしたの……鶴久君、言えないの?」

 

 

神崎は背後から抱きしめるように腕を廻し、頬を撫でるように手を添えた。

 

 

「隠してもダ・メ。私にはちゃーんとわかるんだから?」

 

 

俺は言葉を発せなくなっていた。何故か俺は抗えない。って言うか身体が拒みたがらない。

 

 

「ほーら、鶴久君の口から聞・か・せ・て?」

「あああっ!?そんなこと言っても、美少女の温もりがぁぁぁぁっ!背中がぁぁぁぁっ!」

 

 

更に神崎は攻め込み、甘える様な声で囁いてくる。俺の全神経は背中に集中されている。

 

 

「い、いかん、このままでは顔に出てしまう!」

「思いっ切り顔に出てるわよ紅」

 

 

錯乱気味だった俺に対し、いつの間にか大和屋に来ていた姉さんがツッコミを入れた。

 

 

「姉さん、いつの間に!?って………ん?」

 

 

姉さんが居るって気付かなかったけど神崎の行動にも違和感を感じる。

振り返ってみれば神崎の顔は見えなかったが神崎は俺の背中に顔を埋めたまま耳まで真っ赤になっている。

 

 

「もう有希子ったら恥ずかしがってたら威力は半減よ?」

「アンタの指示か!どうりで神崎らしからぬ行動だと思った!」

 

 

どうやら神崎の一連の行動は姉さんの指示だったらしい。

その後、俺は姉さんに説教をした後に神崎を送って行く事にした。あのまま大和屋に残ってると碌な事になりそうになかったからだ。

 

 

「ったく……姉さんの話に乗るなよ」

「ご、ゴメンね」

 

 

帰り道に話すのは先程の事態。神崎らしからぬ行動だとは思ったけどさ。

 

 

「でも聞きたかったのは本当だよ?」

「え?」

 

 

神崎は俺と向き合うと真っ直ぐに俺を見た。

 

 

「俺が……速水と矢田のどちらが好きかって質問?」

「………うん」

 

 

俺の疑問に神崎はコクリと頷く。

 

 

「んー……あー……」

 

 

俺は迷う。なんて言えば良いのか。

 

 

「その……な……俺は解らないんだ。あの二人が俺を気にしてくれてるのは分かってるが……まだ答えが出せないって言うか俺で良いのかって気持ちの方が強い。それにちゃんと告白された訳じゃないしな」

 

 

俺は頬を掻きながら思った事を口にする。神崎は少し俯いていたが顔を上げると、いつもの笑顔だった。

 

 

「神崎?」

「ううん、そこまで聞ければ良かったから。ここまでで良いよ鶴久君。私の家此処から遠いから」

 

 

神崎は首を横に振るとここまで良いと言う。まあ、遠くなら仕方ないか。

 

 

「ありがとうね。………また明日」

「おう、また明日な」

 

 

小さく手を振る神崎に俺は手を振り返すと大和屋へと帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆side神崎有希子◇◆

 

 

「ふぅ……」

 

 

鶴久君と別れた私は小さな溜息を吐いた。

聞きたかった鶴久君の心根。

 

速水さんと矢田さんのどちらかと付き合ってるのかと思ったけど違ったみたい。

 

鷹岡先生から庇ってくれた時は嬉しかったしドキッとした。だからお礼も言いたかったし気になった事も聞いた。

結果は私の予想通りだったかも。イリーナ先生に指示を受けた時は私は心臓が物凄くドキドキとしていたけどやっちゃった。

 

 

 

「ほら、行こうよ凜香!鶴久君と神崎さんの事、気になるんでしょ!?」

「で、でも……」

 

 

 

そして家への帰り道、大和屋に向かう途中の矢田さんと速水さんに会った。二人は大和屋に行くのを躊躇っているのか、その先へ行こうとしていない。

 

 

「こんばんは、速水さん、矢田さん」

「あれ、神崎さん!?大和屋に行ったんじゃ!?」

 

 

私が挨拶すると二人は凄い驚いていた。

 

 

「うん、昨日の事をお礼言いたくて。お礼を済ましたら御飯も頂いちゃったけど帰る時間になっちゃったから」

 

 

私の発言に二人は驚いたままの表情だった。

 

 

「速水さん、矢田さん。私と鶴久君は何も無いですよ」

 

 

ニコッと笑うと二人は心を見透かされたのが恥ずかしかったのか顔を赤くしていた。それはとても可愛くて……少し、羨ましい。

 

 

「鶴久君、さっきまで私を送ってくれてたからまだ大和屋に戻ってる最中だと思うよ」

「え、あ……ありがとう神崎さん!その……疑ってごめんなさい!」

「……ごめんなさい」

 

 

私の言葉を聞いて矢田さんと速水さんは感謝と謝罪をする。二人とも本当に鶴久君が好きなんだと伝わってくる。

二人は隠してるつもりらしいけど、周囲にはバレバレだよ?

 

 

「ううん、じゃあまた明日」

「うん、じゃーねー」

「また、明日」

 

 

 

二人に別れを告げると、そのまま大和屋へと向かっていく。その背を見送ると私はポツリと呟いた。

 

 

「もっと早くに鶴久君と会ってたら……私も一緒になってたのかな?」

 

 

もしも……もしも、もう少し早く鶴久君とお話をしていたら速水さんや矢田さんと鶴久君を巡るライバルになってたのかな?

私はそんなあったかも知れないIFを考えると家へ帰る道を一人で歩いた。

少しの寂しさと共に。

 




神崎さんフラグは立ちそうになりましたが成立しませんでした。
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