暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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溺れる時間

 

 

 

 

 

裏山の木々の中で、俺達は先程の情報を整理しつつ進めた。

 

 

「問題は殺せんせーが、ホントに泳げないかだな」

「湿気が多いとふやけるのは前にも見たよね」

「さっき私が水かけたところもふやけてたね」

 

 

それぞれ各人が情報を出しつつ状況を確認していく。

 

 

「仮に殺せんせーが水にまみれて動きが悪くなれば絶好のチャンスだと思う。だから、この夏の間にせんせーをなんとか水に落とすの。落とす行為自身は殺す行為じゃないからきっと反応が遅れる……落としたら、その後は水中に居た生徒が殺る。その時、水の中にいるのが私だったらこの髪飾りに仕込んだ対先生用ナイフで私が殺るわ」

「おお、さすが昨年度水泳部のクロール代表の片岡………説得力あるぜ」

 

 

片岡の言葉に前原が頼もしそうに言う。

そして片岡は立ち上がり、皆の注目を集めた。

 

 

「肝心なのは殺せんせーを警戒させない事、夏は長いわ!じっくりチャンスを狙っていきましょう!」

 

 

片岡の演説に皆の士気が上がる。

 

 

「うーむ、流石はイケメグ……」

「こういう時の頼れる度はハンパないな」

 

 

三村と菅谷の会話に俺は首を傾げる。

 

 

「イケメグって?」

「片岡のあだ名だよ。文武両道で、面倒見も良く、凛々しい姿からそう呼ばれてる。イケメンの片岡メグ。略してイケメグ」

 

 

磯貝からの説明に納得。普段、説明してくれる速水や矢田からは少し、距離を置かれてる。

前回の一件から羞恥と罪悪感で二人は離れてしまったのだ。少し寂しい……

 

放課後、プールで片岡は特訓をしていた。

律のサポートを受けながら準備を万端にしていた。

 

 

「うーむ、格好いい……」

「責任感の塊だね」

「真面目だな。つーか、やっば早ぇ」

 

 

来ていた茅野と渚が言う。俺も今日は放課後、学校に残って片岡の訓練を眺めていた。

 

 

「確かにかっこいいですね、何を任せられたか知りませんけどねぇ……」

 

 

いつの間にか現れた殺せんせー。ニヤニヤとしてる辺り、何か察知したのかも。

ヤバいと思ったら渚が一歩前に出る。

 

 

「殺せんせーさぁ、巨乳女優の田出はるこにファンレター送ったでしょ?」

「にゅやっ!?なぜそれを!」

 

 

何故か、殺せんせーのファンレターを出した事を知ってる渚が先生にジワリと詰め寄る。

 

 

「机の中、見ちゃったんです『あなたを見ると私の触手が大変元気です』って普通にセクハラだよね。教師がそんなの送っていいんですか?」

「渚、もうやめたげて。殺せんせー、既に瀕死だから」

 

 

渚は目を怪しく輝かせながら殺せんせーを追い詰める渚。巨乳を憎む茅野が止める程だ。あれ、今なら隙だらけだから殺れるんじゃ……

 

その時、片岡の携帯にメールが届いた。片岡に頼まれて律がメールを読む。

メールは片岡の友達からだったらしいのだが、律がメールの内容に合わせて軽い口調になる。律は知能指数低めな人からのメールと言うがハッキリ言って同感だ。

そして片岡は溜息を吐くとプールから上がり、さっさと帰って行った。

 

 

そんな様子が気になった俺達は片岡の後をこっそり追った。

片岡は例の友達とファミレスで合流したのだが妙に片岡を責める割りに甘えている。

何やら一悶着あった様だがファミレスから出て来た片岡の話を聞くと去年の夏に好きな男子を含むグループで海に行くことになり、恥をかきたくないから同じクラスの片岡に泳ぎを教えてもらった。

 

片岡が親身に教えてたことでなんとかプールで泳げる位まではなったが、あの女はそれで満足し、それ以降の練習をサボって、そのまま海へと行き溺れた。

それ以来、片岡の所為で恥をかいた、死にかけた、役に立たない泳ぎ方を教えた償いをしろと言って片岡を良い様に使ってる。

テスト勉強につきっきりで付き合い、逆に片岡の方が苦手科目をこじらせE組行きになったらしい。

 

 

「でも片岡、アレは度が過ぎてると思うんだが……」

「甘えすぎだよ……」

 

 

俺の言葉に茅野も同意している。渚も言葉は発さないが恐らく、同じ気持ちなのだろう。

 

 

「いいんだ……なれてるから……」

 

 

そう言って片岡は力の無い笑みを浮かべる。これは諦めの入った笑みだな。

 

 

「いけませんねー。実にいけません」

「うわっ!?殺せんせー、いつの間に!?」

 

 

いつの間にか殺せんせーが現れていた。しかも会話の内容全部把握してるし。

殺せんせーは片岡の身の上を聞いた上で紙芝居を始めた。タイトルは『主婦の憂鬱』

 

奥さんと結婚した旦那はパチスロ好きな無職。旦那は月の生活費をパチスロにつぎ込んで、生活費はチョコ1枚となってしまう。

そんな駄目な夫に頼れて、奥さんは頼られている事が嫌いではなくなってしまい。甲斐甲斐しく世話を焼き続ける事となってしまう。

 

 

「生々しいね……この話……」

「そういや、常連のトクさんの家も昔こんな感じだったって聞いた事が……」

 

 

渚が紙芝居の内容に引き気味だ。ちなみにトクさんとは大和屋の常連で昔、奥さんと離婚一歩手前まで行った人だ。前に話を聞いた時に似たような話を聞いた覚えがある。

 

あまりのリアルな内容と俺の発言に片岡はゾクッと身震いした。

割と身近にある話なだけに笑えない。

 

 

「依存されることに依存してしまう。いわゆる共依存という奴です。片岡さんの面倒見や責任感は本当に素晴らしい。ですが、時には相手の自立心を育てることも必要です」

「……どうすればいいかな。殺せんせー」

 

 

殺せんせーの言葉にどうすればいいのか解らない片岡は殺せんせーに聞き返す。

確かにこれは難しい話なんだよな。

 

 

「決まっています。彼女を一人で泳げるようにすればいいのです。一人で背負わず先生に任せなさい。この先生が魚も真っ青なマッハスイミングをお教えてあげます」

 

 

そう言った殺せんせーはマッハで水着に着がえていた。

この手の悪巧みをしている殺せんせーは面白い事をしでかすのだ、俺も一口乗ってみるか。

 

 

 

 

 

 

思わずスルーしちまったけど……え、って言うか……泳げるの殺せんせー?

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