◇◆side速水凜香◇◆
放課後、プールで殺せんせーを暗殺する為に皆が集まった。今回の作戦指揮は今まで、ろくに暗殺に参加してなかった寺坂だった。
当然の事ながら皆の士気は低くやる気が無い。かく言う私もそんな気分だった。
「どうなるのかな、今回は?」
「知らない。でも上手く行くとは思えない」
私の近くに居た矢田が話し掛けてくるが私は成功しないと思ってる。多分、矢田も同じ気持ちだ。
寺坂が殺せんせーに銃を突き付けて何か話してる。まるで駄々を捏ねる子供のように何かを叫んだ後、銃の引き金を引いた。
それと同時にプールの後ろの方で爆音が鳴り響く。
何事かと思えばプールの一部が破壊されて激しい水と瓦礫が流れてきた。
何コレ!?
驚愕し、皆が濁流飲み込まれていく。このままじゃ滝の方まで流されてしまう!
そんな事を思っていたら、身体がフワリと宙に浮き、気が付けば私はプールサイドに下ろされていた。
「殺せんせー!」
「助かったぁ……」
皆の声が聞こえてくる。どうやら殺せんせーが私達を助けてくれたみたいだ。
そんな中、千葉が叫んでいた。
「鶴久!鶴久!何処だ!?」
千葉は慌てた表情(顔は見えないが焦りは感じる)で鶴久を捜していた。まさか……
「千葉、鶴久がどうしたんだ!?」
「さっきのプール爆破の時に破片が飛んできて鶴久の頭に当たったんだ!そのまま水に沈んでいったから殺せんせーでも捜せてないみたいだ!」
焦る千葉に前原が聞くが帰ってきたのは最悪の答えだった。千葉の話が本当なら鶴久は意識が無いまま水の中に居る事になる。行かなきゃ
「待って速水!こんな流れの中じゃ速水まで溺れちゃうよ」
「でも鶴久が!」
プールに飛び込もうとした私を止めたのは岡野だった。岡野の言う事は分かるが何もしないままなんて嫌だ。
そんな事を思っていたらプールの端から二人分の影が差す。現れたのはシロとイトナだった。
◇◆side速水凜香・End◇◆
頭が……痛ぇ……
あれ……俺……なんでこんな所に……?
朦朧とする意識の中、俺の視界には青空が写っていた。
妙に痛む頭に左手を当てるとヌルリと赤い液体が付いてきた。
あ、コレ……血だ。
って血!?
完全に覚醒した頭で起き上がり周囲を確認する。
ズキズキと頭が痛むがその痛みが俺の意識をハッキリとさせた。
意識が戻る前に覚えてたのは……そう。凄い音が後ろから聞こえたから振り返ったら何かの破片が飛んできて俺の頭に直撃したんだった。
その事を思い出したがそんな俺が何故岩場に?
良く周りを見れば先程、俺の頭に当たった破片と同じくらいの瓦礫が俺の周りに落ちていた。多分、水の勢いが強すぎてプールの端に叩きつけられてからここまで飛ばされたんだな。俺も体中節々痛いから同じように吹き飛ばされたんだな。んで受け身も取れないまま、地面に叩きつけられて頭から血を流してた訳か……
我ながら良く死ななかったものだ。
痛む身体を引き摺りながらプールの方を見ればシロとイトナが殺せんせーに迫っていて寺坂がカルマに殴られてる。なるほど大方、寺坂はシロに言葉巧みに操られてたって事か。となるとプール爆破もシロの仕業と考えるべきか。
ってよく見れば千葉が必死に俺の名を叫び、速水がプールに飛び込もうとして岡野に止められている。矢田は力無く座り込んで目には絶望が映ってるかの様だ。他の連中も似たような顔になっている。
その瞬間、俺の頭に血が上った。アイツ等に……あんな顔をさせやがって……と思ったら力んだ性か頭から流れた血が俺の頬に伝ってポタリと地面に落ちる。
「痛てててて……バトル漫画じゃないんだから、そりゃそんな急には治らねぇよな……」
痛みに耐えかねた俺はしゃがみこむ。でも頭から血が出たお陰なのか、頭に上った血は抜けた。
『常に頭を冷やせ』ロヴロさんの言葉が少し分かった気がする。
「痛ぇ……でもカルマは寺坂になんかやらせる気か?」
ひょっこりと頭を出して岩場から覗くと寺坂はシャツを脱いでイトナにタイマンを挑んでいた。いや、勝てる訳ねーだろ。
カルマが寺坂をイトナ(触手装備)に勝てるつもりでタイマンを張らせたのだったらナメック星にヤムチャを送り込んで地球の命運を託す位の暴挙だ。
と思ったら寺坂はイトナの触手を受け止めた。え、マジで?俺が呆気に取られているとイトナはクシャミをしたと思えばボロボロと涙を流し始める。
なんか知らんけどカルマが何かを仕掛けたらしい。動きの遅くなったイトナだがまだ十分な驚異と言えるだろう。
そう思った俺は岩場からイトナ達が居る場所まで移動する事にした。
移動しながら皆の声を聞くとどうやらクラスの皆がイトナに向かって水を掛け始めた様だ。なるほど殺せんせーと同じ弱点なら水を吸って動きが鈍くなる訳ね。
撤退しようとシロがイトナを呼び止めている。逃げるつもりならせめて、この怪我分の仕返しはさせて貰おう。
俺は拳を握ると素早くシロの前に降り立つと拳を振りかぶる。
「さ、帰るよ……イト…なっ!?」
「最低限の落とし前はさせてもらおうか!」
俺は体勢を低くした状態から身体を捻りしたからアッパーの様にシロの心臓目掛けて本気の拳を打ち抜いた。
手応え有り!
「いやはや……まさかこのタイミングで来るとはね」
「ノー……ダメージ?」
シロは俺の本気の拳を受けて平然としていた。
「この対殺せんせー繊維で編み込んだ服は防弾チョッキ並に防御力があってね。もしも私がこの服を着てなかったらアバラを砕かれてただろう。残念だったね」
「今日は……本当に厄日だなチクショー……」
シロの言葉を聞いた俺は今度こそ本当に力尽きた。
倒れてそのまま水にダイブした俺は意識を失った。