暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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弱音と本音の時間

 

 

 

 

 

 

 

夏休みに入ってからも殺せんせー暗殺の日々は続くのだが今回は暗殺はお休み。

俺は朝から店のカウンター席で夏休みの宿題を片付けていた。

夏休みの宿題を後回しにせず早めに終わらせる派の俺は頑張って宿題をやっていたのには理由がある。

 

まず夏休みの間は俺も店の手伝いが増えるのと夏休みの等の長期の休みになると両親が帰ってくるのだ。

これに対応する為にも宿題を早めに終わらせて自分のやりたいことをやらねばならない。

 

特に……前回俺は何の役にもたたなかった。シロは特殊な防弾チョッキを着ていたから俺の拳に堪えたって言ってたけど裏を返せば、それ越しにダメージを与えられる様になれば、殺せんせーにも有効な手段とも言えるようになる。

 

 

「ま、どうするかが問題なんだけどなー」

 

 

マジになってみたもののどうすれば良いかなんてサッパリだ。何故か頭の上で鼻が高く扇子を持った妖精が踊ってる様な気がしたが気のせいだろう。

 

 

「おーい、紅。店、開けてるか?」

「鬼山さん、まだ早いよ」

 

 

大和屋の入り口から入ってきたのは常連の鬼山さんだった。元暴走族のヤンキー系な人で俺の喧嘩相手の一人でもある。店の開店時間にはまだ早い。まだ料理の下拵えすらしてない。

 

 

「そうかい。ンじゃ待たせてもらうわ」

「いや、準備中だから出て行けよ」

 

 

我が物顔でカウンターに座る鬼山さんに俺はツッコミを入れる。そろそろ速水が来る頃だから正直、鬼山さんが居ると邪魔になる。

 

 

「んだよ、イライラしてんのか?だから、お前はモテないんだ」

「日頃モテない奴に言われたくないんだけど」

 

 

互いに言葉を出してから睨み合う。俺は手を止めて、料理の下拵えの為に着ていたエプロンを脱ぎ、鬼山さんはカウンター席から立ち上がった。

 

 

「表出ろや」

「上等」

 

 

鬼山さんが顎で外を指す。少し喧嘩したい気分だから俺は挑発に乗る事にした。

 

 

 

 

◆◇side速水凜香◆◇

 

 

私は大和屋への道を歩いていた。今日は鶴久と夏休みの宿題をやる約束をしていたからだ。

矢田は病院に用事があり、千葉は親戚の家に行くと言っていたから今日は大和屋へ来ないはず。E組の友達も今日は鶴久と約束はしてない筈だから今日は鶴久と二人きりになれる筈だ。

 

二人きり……そう思うと頬が熱くなる感覚が来た。そんなに意識しなくても大丈夫なのだが最近、鶴久の事を思うと熱くなりやすい。

日射しのキツさもあるのだろうが早く大和屋に行こう。

 

そう思った私の視界にヤンキー風な人にボコられて地に伏せている鶴久が映った。

 

 

 

 

◆◇side速水凜香out◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強くなったんだ

 

あの頃より

 

特訓したんだ

 

頑張ったんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから昔から勝てなかった人に喧嘩で勝てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな風に思ってる時期が俺にもありました」

「刃牙の真似してる辺りまだ余裕みてーだな」

 

 

俺と鬼山さんは大和屋を出た後に空き地で喧嘩した。

ええ、物の見事に負けたよチクショー。鬼山さんは余裕でタバコ吸ってるし。

 

 

「あ~……負けた……」

「ったく……イライラしてたり、妙に達観してたり何なんだオメーは」

 

 

鬼山さんは仰向けに倒れてる俺の近くに座り込む。

 

 

「………なんかあったんか?」

「今、俺……ちょっとマジになってる事があるんですよ」

 

 

鬼山さんが俺に尋ねる。流石に暗殺教室の話をする訳にはいかないから少しボカして話すか。

 

 

「クラスの皆でやり遂げよう的な感じの目標なんですよ。俺もそれに乗っかって頑張ってんですけど……俺、いつも失敗つーか……肝心な時に駄目って言うか……」

 

 

なんか言ってて泣きそうになる。俺、E組で役に立って無い気がする。

 

 

「なーに、言ってんだよボケが」

「って!?」

 

 

なんて思ってたら鬼山さんが俺の額にチョップをしてきた。

 

 

「オメーは料理も出来りゃ喧嘩も俺とタイマン張れる位に強ぇーだろうが、何が不満だ?」

「俺は……」

 

 

鬼山さんの行動に俺は身を起こすと俯いてしまう。なんて言って良いのかわからない。

 

 

「そのクラスでオメーが役に立ってようが役に立ってなかろうが、そのクラスの一員なんだろ?だったらそれでいいじゃねーか。他の誰かと比べて自分は駄目だなんて思うんじゃねーよ」

「鬼山さん……」

 

 

言ってる事はムチャクチャだ。でも、この人の言葉は何処か心に染みる気がする。

 

 

「差し当たってオメーがするべきなのは俺の為に大和屋を早く開ける事だ」

「少しでも感動した俺が馬鹿だったよ」

 

 

軽口を叩きながらも俺と鬼山さんは笑った。

少し心が軽くなった気がする。あと、喧嘩してスッキリしたかな?

 

 

「大和屋はまだ開けないけど早く帰らなきゃ速水が来ちまうな」

「ん、ダチか?」

 

 

喧嘩の時間を含めても結構な時間が経過している。速水が大和屋に来る前に戻らないと。

 

 

「友達ですよ、夏休みの宿題を一緒にやろうと思いまして」

「は、男二人で宿題とは悲しいな」

 

 

鬼山さんは鼻で笑う。あ、そうか鬼山さんはまだ速水に会った事が無いから勘違いしてんのか。

 

 

「いやいや、女の子ですよ?」

「なぁにぃ?」

 

 

俺はドヤ顔で速水が女の子と告げると鬼山さんは表情を崩した。

 

 

「同級生か?」

「同じクラスです」

 

「一緒に勉強するのか?」

「鬼山さんが居なければ二人きりで勉強ですね」

 

「可愛いのか?」

「俺は可愛いと思ってます」

 

 

 

鬼山さんの質問に次々と答える俺。次第に鬼山さんは表情が変わっていく。それこそ鬼の形相になったと思えばバンダナを取り出して口元を隠す。バンダナに『幸せクラッシャー』と書かれていた。

 

 

「モテる男は敵だ!5~60発は殴らせろ!」

「本性出しやがった!しかも5~6発じゃ無くて5~60発かよ!?」

 

 

襲い掛かってくる鬼山さん。『幸せクラッシャー』とは暴走族時代の鬼山さんのもう一つのあだ名でイチャついてるカップルやモテる奴を叩きのめす嫉妬の戦士だ。

 

 

「つーか、俺と速水はそんな関係じゃねーから!」

「でも気になる女の子なんだろ?」

 

「え、あ……そりゃあ……まあ……気になってるけど……」

 

 

俺は鬼山さんの誤解を解こうとしたが鬼山さんの発言に俺は思わず素直に答えてしまった。それがアウトだった。

 

 

「その時点で有罪だ!金髪の姉に活発な妹!ポニーテールの巨乳に更にお前自身が気になってる娘って……ギルティ!」

「完全に私怨だろうが!」

 

 

怒りに身を任せた鬼山さんと第2ラウンドが始まった。因みに鬼山さんは矢田とは会ってるから先程のラインナップに上がったが覚え方かポニーテールの巨乳って……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇side速水凜香◆◇

 

 

 

倒れてる鶴久を見付けてから私は何故か物影に隠れて二人を見ていた。どうやらあのヤンキー風な人は鶴久の知り合いだったらしく、今は普通に会話していた。

 

でも鶴久の口から語られたのは鶴久が弱気になってるって事だった。でもそれは鶴久の思い過ごしだと思う。

鶴久が来てからE組はもっと明るくなった気がするし、クラスの皆も鶴久を心配するが役に立ってないなんて思ってる奴は一人も居ない。

 

そんな私の気持ちを代弁するかの様にヤンキー風な人は鶴久に軽い説教をしていた。これなら鶴久大丈夫だろうと思って身を出そうかと思った時、会話がおかしな方向に向かった。

 

鶴久が私との勉強の話をヤンキー風な人に話し始めた途端にヤンキー風な人は怒り始めた。

 

その問答の中で鶴久は『俺は可愛いと思ってます』って……真顔で言わないでよ!熱い、顔が熱くなっていくのがわかる。

 

 

しかも、その後の会話が……

 

 

『つーか、俺と速水はそんな関係じゃねーから!』

『でも気になる女の子なんだろ?』

 

『え、あ……そりゃあ……まあ……気になってるけど……』

 

 

 

ヤバい。さっきの『可愛いと思ってます』も相当ドキドキさせられたけど『気になってる』と言われたら、もっとドキドキしてる。今、心臓が凄い事になってる。

 

 

私の後ろで鶴久とヤンキー風な人の殴り合う音と罵詈雑言が聞こえるけど私はそれどころじゃなかった。

 

 

この後、私は鶴久とどんな顔をして会えば良いんだろう。頬に手を当てると物凄く熱くなってる。

これが夏の暑さなのか、私自身の頬の熱さなのか私自身分からなくなっていた。

 

 

 

とりあえず喧嘩が終わるまでに、いつもの表情に戻せるかが不安だった。

 

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