暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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完敗の時間

 

 

 

一時間後、そこにはあまりの恥ずかしさから恥ずか死しかけてる殺せんせーがいた。

ちょくちょく俺の姿が映されていたので余計な追加ダメージが有ったが其処は割愛しよう。

 

 

 

『さて、絵秘蔵映像にお付き合い頂いたが、何かお気づきでないだろうか、殺せんせー?』

 

 

動画が終わりに近付いたその時だった。ナレーションが現在の殺せんせーを取り巻く状態に気付かせるアナウンス。

そこで、殺せんせーは気づいた。水上チャペルの中に水が浸入してることに。足下は既に水浸しになっており、殺せんせーの触手はたっぷりと水を吸っていた。

 

これは水上チャペルの支柱をバレないギリギリの所まで低く調整して、満潮で小屋の床が水浸しになるように仕向けたからだ。

 

 

「船に酔って、恥ずかしい思いして、海水吸って」

「だいぶ動きは鈍くなって来ただろ」

「さぁ、本番だ」

「避けるなよ」

 

 

触手破壊の権利を得た磯貝達がは銃を構え、触手を狙う。七丁の銃から同時に弾が飛び出し、殺せんせーの触手を破壊した。

自分から言い出した事とは言えど殺せんせーに焦りの色が濃くなっていく。

ここからが作戦の大詰め箇所だ。俺達は水上チャペルの壁を思いっきり蹴り飛ばして外に出る。

 

そして、外で待機していた部隊が水圧で空を飛ぶフライングボードで、殺せんせーを水圧の檻に閉じ込める。

空から逃げられないように、檻の中心はフライングボートに乗ってるみんなで固める。

更に外側からは残ったメンバーがホースで水を散水し、倉橋がイルカの飼育員の様にイルカに指示を与えて水しぶきを飛ばす。

触手の破壊に加えて、急激な環境の変化で殺せんせーは動揺しまくり。

 

俺の出番は此処からだ!

 

 

「行くぜ殺せんせー!」

「にゅやっ鶴久君!?」

 

 

俺は濡れタオルをヌンチャクの様に振り回す。他のメンバーと同様に外に出たと思われていた分、奇襲は成功と言えるだろう。更に濡れタオルを振り回すのは殺せんせーを仕留める為では無く準備を更に念入りにする為だ。

 

 

「クッ……地味に水が……」

 

 

殺せんせーが苦々しそうに呟く。そう俺の役割は『殺せんせーの揺さぶりと水をドンドンと吸わせる事』なのだ。濡れタオルから出る飛沫と周囲の水の檻で殺せんせーはドンドンと水を体に吸っていく。これで、触手の反応速度は更に落ちる。

とりあえず俺の役割は此処で終わりだがもう一つ殺せんせーを動揺させる仕込みがある。

 

 

「ホワッ……ちゃ!」

「にゅやっ!?」

 

 

濡れタオルヌンチャクを振り回していた俺が突如消えた事で殺せんせーは驚きの表情をしていた。これは俺が事前に水上チャペルの床の一部を切り取っていたからだ。バレない様にカモフラージュをしていたのだが人体消失マジックと同じ要領だ。そして突然、目の前から人が消えれば殺せんせーは確実に動揺する。更にこの穴は俺のサイズに合わせて作成したからから同様に逃げられる心配も無い。

水に潜った俺は後は残ったメンバーに後を任せる事にした。

 

残りのプランは俺が消えたのを合図に律が海底から浮上して、小屋の中に居た射撃チームがライフルを構え、一斉に発砲する。

あえて弾を当てずに、殺せんせーの周囲に対先生BB弾の弾幕を作り、更に逃げ道を塞ぐ。

水の檻に弾幕の雨、目まぐるしく変わる環境と状況に殺せんせーをパニック状態にする。入念な下準備を済ませた後にトドメ。後は速水と千葉の二人が射撃だ。

二人の服と銃を山に置いてあるので殺せんせーの注意は其処に行ってる筈、実は二人は山の中では無く皆と同じ様に近くに居る。殺せんせーの索敵から逃れる為に水中でズッと待機していたのだ。

 

 

暗殺プランは頭に入っていても状況が見えないのでは意味が無い。俺は急いで浮上して水の中から顔を出した。

 

 

「ぷはっ……っと!?」

 

 

浮上した俺は素早く息を吸うと同時に吐くことになった。何故ならば水上チャペルのあった位置から閃光と爆音が鳴り響いたからだ。

 

 

「こ、これは……」

「殺ったか!?」

 

 

俺の呟きに合わせる様に誰かが叫んだ。

今までとは違う感覚。確かに殺ったと沸く実感。

速水と千葉が射撃を見れた訳では無いが当たったからこそこの光と音が出ている筈。

 

 

「油断するな!やつは再生能力も持ってる!水面を警戒しろ!」

 

 

まだ仕留めたと決まった訳じゃ無い。烏間先生の指示に従い、全員で水面に注意する。するとブクブクと気泡が浮いてきた。

 

 

「浮いてきた?」

「い、いったい何が……」

 

 

何が出て来るのか全員が固唾を飲んで気泡を見詰める。

そして水面からポコッと顔を出したのは殺せんせーの顔が入った透明とオレンジの変な球体。

 

 

「………………………何コレ?」

 

 

誰が出したか分からない声だったがその場に居た者全ての心を代弁した言葉だった。

 

 

「ヌルフフフ、これぞ先生の奥の手中の奥の手『完全防御形態』!」

 

 

戸惑う俺達を後目に殺せんせーは完全防御形態の説明を始めた。

 

 

「外側の透明な部分は高密度に圧縮されたエネルギーの結晶体です。この形態になった先生はまさに無敵!水も対先生物質も結晶の壁が跳ね返します」

「それじゃ、ずっとその形態でいたら殺せないじゃん!」

 

 

殺せんせーの説明に矢田が口を挟む。確かにその通りだ。

 

 

「ところがそううまくいきません。この結晶は二十四時間で自然崩壊します。その瞬間、先生は肉体を膨らませてエネルギーを吸収し、元の体に戻ります。裏を返せば二十四時間は何も出来ません。これにはさまざまなリスクを伴います。一番まずいのは高速ロケットに詰まれ宇宙の彼方に捨てられることですが、二十四時間以内にそれが可能なロケットが無い事は調べ済みです」

 

 

超ドヤ顔で説明する殺せんせー。いつもなら悪態を突きたいが今回はそんな気すら起きなくなっている。

欠点まで計算された殺せんせーの隠し技。まだ隠してる物が有るとは思ってたけど此処まで完全に全てを防ぐ状態になるなんて想定外もいいとこだ。

 

 

「けっ!何が無敵だこんなもん!」

「無駄ですよ。核ミサイルでも傷一つ付きません」

 

 

寺坂は舌打ちをするとスパナを殺せんせーに叩きつけるが、殺せんせーは余裕の表情を見せ、さらに口笛まで吹いていた。

んじゃ試してみるか……

 

 

「寺坂、ソレ其処に置いて」

「おう……ってオイ!?」

 

 

寺坂に殺せんせーを橋に置くように指示すると俺は水上チャペルに細工をする際に使った斧を振りかぶる。両腕に渾身の力を込めて……

 

 

「フンッ!」

「にゅやっ!?フーッ……無駄ですよ鶴久君……」

 

 

勢い良く斧を振り下ろしたが殺せんせーには傷も付かなかった。しかし斧が目の前に迫るのはビビったらしく殺せんせーは悲鳴を上げたが。

 

 

「なるほどねー。鶴久、ちょっと貸して」

「はいよ」

 

 

カルマは今のを見て何か閃いたのか、俺から殺せんせーを受け取った。

殺せんせーを橋の上に乗せると目の前に携帯を固定し、エロ本を読みふけっている殺せんせーの写真を見せつけた。

 

 

「にゃーっ!?やめてー!手が無いから顔も覆えないんです!」

「ゴメンゴメン。さてとコレを固定してと……」

 

 

口では謝るが話は聞かずにカルマは殺せんせー弄りを始めた。

 

 

「じゃあ、とりあえずウミウシもはっ付けてと」

「ふんにゅやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

動けない殺せんせーに精神攻撃で追い打ちを掛けるカルマ。先程のドヤ顔から一転して殺せんせーはパニックだ。

 

 

「誰か、不潔なおっさんのパンツ持ってきて。これパンツの中にねじ込むから」

「こう言うときはカルマ君が頼もしいね」

「活き活きしてんな」

 

 

 

楽しそうに殺せんせーを弄るカルマに渚と杉野は引き気味だ。

 

 

「ねぇ、でも本当に壊せないの?殺せんせーが私達を騙してるとか……」

「いや、防御力は本当だろうな」

 

 

岡野が殺せんせーの完全防御形態を疑うが俺は否定した。

 

 

「さっき殺せんせーに振り下ろした斧が欠けちまったよ……」

「殺せんせーの堅さに負けて刃こぼれしたのか……」

 

 

俺は皆に見える様に先程の斧を見せる。其処には明らかに一部が欠けた斧の刃が見えていた。

 

 

 

『完敗』その言葉が俺達に重くのしかかっていた。

 

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