暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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潜入とナメた時間

 

 

 

 

ホテルへ潜入ミッションとなり、岡野が先陣を切って崖をヒョイヒョイと上って行く。あの身のこなしは流石だ。

 

 

「岡野は身軽だな」

「こういう事やらせたらクラス一ね」

「それに比べてうちの先生は」

 

 

磯貝と片岡が岡野の身軽さに関心をおく。そんな中、矢田がチラリと視線を落とす。そこには烏間先生におぶさりながら文句を言う姉さんと袋に詰められたまま身動きの取れない殺せんせー。

 

 

「動けるのが3人中1人とは」

「烏間先生も大変だろうに」

「フン、足手まといにならなきゃいいけどな」

 

 

木村と菅谷に続いて、寺坂は不満げに呟いた。体力的な面では姉さんは役立たずの烙印を押されてるので反論も出来ん。

 

 

「てか、何でビッチ先生付いて来てんだ?」

「留守番が除け者みたいで嫌なんだと。ま、姉さんは姉さんなりに考えがあって付いて来てんだろうけど」

 

 

千葉の質問に俺がそう答えると千葉は呆れたように溜息を吐く。そんなやり取りをしている間に全員が無事に崖を上り切り、ホテルの裏側へ辿り着いた。

 

 

『私達はエレベータを使用できません。フロントが渡す各階ごとの専用ICキーが必要だからです。従って階段を上るしかないのですが、階段はバラバラに配置されており、最上階までは長い距離を歩く事になります』

 

 

律の提示したマップを見てみる確かに複雑な構造のホテルだ。

 

 

「テレビ局みたいな構造だな。テロリストに占拠されにくいよう複雑な設計になってる」

「マフィアとか政治家の隠れ蓑としては最適か……悪ーい人が愛用するホテルってだけの事はあるな……」

 

 

千葉がマップを見て呟く、確かにそんな感じだ。

 

 

「行くぞ、時間が無い状況に応じて指示を出すから見逃すな」

 

 

烏間先生の言葉に全員が頷くと素早く移動を開示する。警戒しながら烏間先生が扉を開け、ハンドサインで俺達に指示を出す。それに従い俺達も裏口から次々と侵入する。がすぐに立ち止まる事となった。

 

 

「……マズいな」

「どうしたんですか?」

 

 

扉の隙間から中の様子を見てる烏間先生が呟く。渚がそれに問い掛けを返した。

 

 

「予想よりロビーの警備が多い。全員発見されずに通過するのは無理だ。非常階段はすぐ近くだって言うのに…………」

 

 

烏間先生の言葉に全員の表情が曇る。烏間先生が頭を悩ませながら作戦を練っている様だが表情からどれも良い案じゃないのだろう。

 

 

「何よ、普通に通ればいいじゃない」

「姉さん、何処に酒隠してたんだよ……」

 

 

何時の間にか姉さんはワイングラスを片手に少し酔った表情だ。察するに酒を隠し持ってきていたのだろうが……

 

 

「状況判断もできねーのかよ、ビッチ先生!」

「あんだけの警備の数どうやって通り抜けるんだよ!」

 

 

その辺りのツッコミを今している余裕は無く、菅谷と木村が小声で姉さんに怒鳴る。状況的に確かに厳しすぎるけどさ。

 

 

「だから………普通によ」

 

 

言うなり、姉さんはワイングラスを片手にロビーに出る。少し酔った様にフラフラと歩き、トンとロビーに居た警備の人とぶつかる。

 

 

「あっ……ゴメンなさい。部屋のお酒で悪酔いしちゃって」

「お、お気になさらずお客様……」

 

 

姉さんの表情や仕草に警備員は顔を赤らめている。それを見逃さず姉さんはスッとピアノに指を差した。

 

 

「来週そこでピアノを弾かせて頂く者よ。早入りして観光してたの」

 

 

姉さんの言葉に警備員達は疑問を抱くことも無く、姉さんの言葉を信じきっていた。表情や仕草に騙されてるのと恐らくピアニストがこのホテルに良く出入りしているのだろうか「いつもの事」みたいな顔になってる。

 

 

「酔い覚ましにね、ピアノの調律をチェックしておきたいの。ちょっとだけ弾かせてもらっていいかしら?」

「で、でしたらフロントに確認を」

「いいじゃない」

 

 

姉さんの言葉に警備員はフロントに確認しようとするが姉さんは警備員の腕を掴み上目遣いをする。

 

 

「アナタ達にも聴いて欲しいの、そして審査して、ダメな所があったらちゃんと私の事を叱れるように、ね?」

 

 

そう言って姉さんはピアノの弾き始める。その見事な

音色を奏でる腕前と姉さんの艶やかな色気の見せ方に、その場にいる誰もが眼を奪われていき、遠くにいた警備員達も徐々に姉さんの周りに集まって行く。

 

 

『20分稼いであげる、行きなさい』

 

 

俺達は姉さんに見とれながらも、ハンドサインに気付き、その場を切り抜けた

 

 

『ありがと、姉さん』

 

 

ロビーから離れる前に俺は唇だけを動かして姉さんにお礼を言った。

 

 

 

そしてロビーから非常階段に登る際に先程の話題になる。

 

 

「しっかし、すげーな、ビッチ先生」

「ピアノが弾けるなんて一言も聞いてないぞ」

「ああ、言ってなかったしな」

 

 

菅谷と磯貝が感心したように言う。俺は知ってたから何とも言えんが。

 

 

「普段の彼女から甘く見ない事だな。優れた殺し屋ほど万に通じる。彼女クラスになれば、潜入暗殺に役立つ技能は何でも身に付ける。キミ達に会話術を教えているのは世界でも一・二を争うハニートラップの達人なんだぞ」

「ヌルフフフ、私が動けなくても全く心配ないですねぇ」

 

 

先生二人の話を聞きながら俺達は二階へと足を踏み入れた。

 

 

「さて、この階からは客のフリをして行く」

 

 

二階へ上がるやいなや烏間先生から驚きの提案が出た。

 

 

「悪い奴等が止まるようなホテルに俺等みたいな中学生の団体客なんているんスか?」

 

 

烏間先生の言葉に菅谷が問い返した。

 

 

「聞いた限りでは結構いる。芸能人や金持連中のボンボン達だ。王様の様に甘やかされて育った彼等はあどけない顔の内に悪い遊びに手を染める。普段着で来させたのもそれが理由だ」

 

 

なるほどね……金持ちってのはそうなるもんなんかな。

 

 

「そう言うことです。では、皆さんも世の中をナメてる感じで歩きましょう」

 

 

殺せんせーの提案に皆が『世の中、ナメてます』って顔になった。寺坂や吉田は妙に似合ってる。

 

 

「そうそう、その調子」

「その調子……なのか?あとお前までナメるな」

 

 

殺せんせーは全員の顔に満足気味で翠の縞々になっていた。

よし、俺もナメた感じになるか。矢田と速水を連れて備え付けのベンチに移動して……っと。

ベンチに座ると速水と矢田を左右に座らせる。俺は足を組んで伸ばし気味に座りならタバコを吹かすマネをした。

 

 

「勘弁して下さいよ殺せんせー。俺、世の中ナメてるなんて……有り得ねーッスから」

「「いや、ほぼ完璧だよ!」」

 

 

残った面子の全員から総ツッコミを貰った。ボケた甲斐もある。

 

 

「と言うか鶴久君、タバコは駄目だよ!」

「ああ、コレは電子タバコだよ」

 

 

なまじ煙が出るタイプの電子タバコを吸ったから茅野からは勘違いされた。

 

 

「と言うか勝手にしないで」

「痛っ!」

 

 

速水に太股抓られた。地味に痛い。

 

 

 

「さて、ナメた感じで行くのも良いですが、我々も敵の顔を知りません。客のフリで襲ってくるかもしれないので、十分に警戒して進みましょう」

「「はーい」」「「ウーっす」」

 

 

俺達はナメてる感じを出しながら、先に進んで行った。

ちなみに速水はさっきのを怒っているのか俺の前に出て顔を見せようとしない。やりすぎたかな?

 

 

 

 

 

 

◆◇side速水凜香◆◇

 

 

ビ、ビックリした……

 

 

鶴久に手を引かれてベンチに座らされたと思ったら近い距離感で鶴久がナメた感じになる。

この近すぎる距離感はまるで恋人同士の座り方みたいな……

 

でも矢田とセットなのが腹立たしい。

思わず私は鶴久の太股を強めに抓った。

 

 

その後、先へ進む事になったのだが私は顔が熱い。確認するまでもなく私の顔は真っ赤だろう。

 

久々に鶴久と触れ合えた。久々に近い距離で座れた。

 

その事に体は素直に反応して顔が赤くなったと自分でも感じ取れる。私の足は自然と足早に鶴久と距離を空けようとしてしまう。

 

なんて思ってたら岡野と不破がニヤニヤとした表情で私に近づく。

 

 

「速水、可愛い~」

「その顔、鶴久君に見せればイチコロだと思うよ?」

 

 

うっさい!

岡野と不破が弄ってきたけど、私は上手く反論できなかった。

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