客のフリをしながら4階を目指して歩く俺達。途中で893さん風な人達とすれ違うが何事も無く素通りした。
「本当にただの客同士って感じだな」
「互いにトラブルを避けたいんだろ」
千葉と俺がそんな会話をしていると寺坂と吉田が先に歩き出した。
「楽勝じぇねーか。時間がねーんだからサッサと進もうぜ」
そう言って寺坂と吉田が前衛の烏間先生を追い越して走り出す。おいおい、不用心だぞ。
その時、向かい側から男が口笛を吹いて近づいて来る。
「寺坂君、吉田君!ソイツ、危ない!」
不破がそう叫ぶと同時に、男は口元をマスクで覆い、何かを構えた。
いち早く動いた烏間先生が、寺坂と吉田の襟首を掴み、俺達の方角に引き投げる。
それと同時に男が持っている何かから、ガスが噴出される。
寺坂達を助ける為に前に出ていた烏間先生は、モロにガスを浴びてしまった。だが、ガスを浴びながらも蹴りを放ち、男の持ってる何かを蹴り飛ばし、距離を取る。ガスは揮発性なのか直ぐに消えてしまった。
「……何故分かった?殺気を見せずにすれ違い様に殺るのが俺の十八番だったんだがな、オカッパちゃん」
「だって……おじさん、最初にホテルでドリング配ってた人でしょ。後、この髪型はボブだし」
男は不破に尋ね、不破は答える。不破の言葉に全員の視線が集中する。確かにドリンク配ってたウェイターだ。
しかし、よく気づいたな不破。
「断定するにはまだ弱いぜ。ドリンクじゃなくてもウイルスを盛る機会はいくらでもあっただろ」
「竹林君がウイルスは飲食物から感染したって言ってた。クラス全員が同じものを口にしたのはドリンクと船上でのディナーだけ。けど、ディナーを食べてない三村君と岡島君も感染したことから、感染源は昼間のドリンクに絞られる。従って、犯人はアナタよおじさん!」
「ぬぐっ!?」
ビシッと男を指差す不破。不破の名推理に皆が納得し、男はたじろいだ。
「凄いよ不破さん!」
「普段から色んな漫画とか読んでると様々な状況に素早く対応できる知識を得られるのよ」
感心する茅野に不破はフフンと自慢気に笑う。
「特に探偵物はマガジン・サンデー共にメガヒット揃いよね!」
「「ジャンプは!?」」
不破がキラキラと目を輝かせるが茅野と渚のツッコミが入る。
「ジャンプの探偵物?知らないけど、文庫本出てるし買えばいいと思うよ?」
「ステマが露骨だよ!?」
「もっと上手に宣伝して!」
不破に渚と茅野のツッコミが入る。
「俺、探偵物なら『ああ探偵事務所』とか『不死身探偵オルロック』が好きだわ」
「なんであえてジャンプから遠ざかろうとしてるんだ!?」
俺の発言に吉田がツッコミを入れる。うん、ごもっとも。そんな会話の最中、烏間先生が膝を着いた。
「烏間先生!?」
「毒物使いですね。しかも実用性に優れてる」
膝を着いた烏間先生を見て、殺せんせーが感心したように言う。
「俺特製の室内用麻酔ガスだ。一瞬でも吸えば象ですら気絶する。外気に触れればすぐに分解して証拠も残らん」
「ウイルスの開発者もアナタですね。無駄に感染を広げない。取引向きで実用的だ」
コイツが皆にウイルスをバラまいた奴か……。俺は思わずコイツを睨むように見据える。
「まぁね、そっちの坊主も睨むなよ。取りあえず、お前たちに取引の意志は無いことはよく分かった。交渉決裂、ボスに報告するとするか」
男改め『毒使い』が来た道を戻ろうと振り返るが、数人が設置されてる家具や置物を手に退路を塞ぐ。
「な!いつの間に………!」
「敵と遭遇した場合、即座に退路を塞ぎ連絡を断つ。俺達を見た瞬間に、攻撃ではなく報告をするべきだったな」
「ついでを言えば俺が睨んだのもアンタの注意を引くためってね」
驚く毒使いを後目に烏間先生がフラフラとしながら立ち上がる。俺は烏間先生の後ろで目を光らせながら構えた。
「まだ喋れるとはな。だが、所詮はガキの集まり。アンタが死ねば、統制が取れずに逃げ出すさ」
毒使いは口をスカーフで覆い、烏間先生と対峙する。烏間先生も覚束ない足取りで構える。
俺が烏間先生の後ろで構えたのは烏間先生のフォローの為だったが……必要なさそうだな。
毒使いが、携行式のガス噴出器を取り出した瞬間、烏間先生の膝蹴りが横から顔を蹴り飛ばした。アッサリと着いた決着。だが毒使いが気絶して倒れると同時に烏間先生もその場で倒れそうになったので慌てて支える。
俺も先程から体の怠さが増してきてる。さっきの不破の推理が正解なら……結構ヤバいかも。