暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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新しい道具と技の時間

 

 

 

全員で階段を駆け上り、八階へと繋がる階段の付近までに近づく。

階段の前では屈強そうな男が二人警備をしていた。

 

 

「どうみてもホテルの警備じゃない。客が個人で雇った見張りか」

「私達を脅してる人の奴の一味?それとも無関係の人が雇った警備?」

 

 

烏間先生の言う通り、明らかにカタギじゃない方々が警備をして居る。ただそれだけで矢田の言う通り犯人側か無関係かわからないな。

どちらにせよ、あの警備を倒さない事には上の階に進めない。

 

 

「どっちでもいーわ。どのみち倒さなきゃ通れねーのは変わらないだろうが」

「寺坂君の言う通りです。その為には寺坂君の持ってる武器が効果的ですねぇ」

 

 

寺坂が前に出て警備を睨みながらそう言うと殺せんせーはニヤリと笑いながら寺坂の鞄を見た。

 

 

「ちっ、透視能力でも持ってるのかよ、テメェは。おい、木村。お前一人なら怪しまれないだろ。アイツ等をここまで誘い出してこい」

「え?どうやって?」

 

 

寺坂が物陰から警備を指差しながら指示を出すがそりゃ無茶ぶりだ。

 

 

「知るか。なんか怒らせること言えばいいだろ」

「じゃあさ、木村。こう言いなよ」

 

 

 

寺坂の言葉にカルマがイタズラな笑みを浮かべながらに木村へと耳打ちをし、木村は頷くと共に通路を歩いて警備2人の前に出る。

 

 

「なんだ坊主?」

「あれ~、おかしいな?脳みそ君がいないぞ~。コイツら頭の中まで筋肉だし~。人の形してんじゃねーよ、豚肉どもが」

 

 

そう言って木村は背を向けて去る。スゴい挑発仕方だ。カルマは人を怒らせる天才か?

 

 

「おい」

「まてコラ」

 

 

警備の二人は怒り心頭で木村を全速力で追いかける。スゲー怒ってるよ。怒りが声に表れてるみたいだ。

 

「今だ、吉田!」

「おう!」

 

 

警備の二人が俺達の所にまで来た瞬間、待ち構えていた寺坂と吉田がタックルし、男を押し倒すと寺坂が持っていたスタンガンを首元に当て、気絶させる。

 

 

「タコに電気が効くか試そうともって買っといたのが、こんな形でお披露目とはな」

「いい武器です寺坂君。ですが、その二人の胸元を探ってください。もっといい武器が手に入るはずですよ」

 

 

言われた通りに寺坂が胸元を探ると、そこから本物の銃が二丁出てきた。

 

 

「げ……これマジ物?」

「これを使うのは千葉君、速水さん。君達にお任せします」

 

 

俺の呟きに殺せんせーは千葉と速水に銃を任せた。名前を呼ばれ、二人は驚きつつも銃を手に取る。

 

 

「烏間先生はまだ精密射撃が出来る程回復していません。今、この場でそれを一番に使えるのは君たち二人です。ただし、殺すことは許しません。君達の腕前なら傷つけずに倒すことは出来る筈です」

 

 

 

殺せんせーは大丈夫ですよと言うが二人の表情は曇ったままだ。先程の殺せんせーへの狙撃を外してしまった事から絶対に外せないと言うプレッシャーに押し潰されそうになっている。

 

 

「さあ行きましょう。ホテルの様子を見る限り、残りの雇った殺し屋は精々一人二人まででしょう」

「おう、さっさと行ってぶち殺してやろうぜ!!」

 

 

殺せんせーの言葉に寺坂が気合いを入れていた。って志村後ろ!

 

 

「死ぬのはテメー等だクソガキ共がっ!」

「まだ警備がいたのか!?」

 

 

寺坂の背後に先程倒した警備と同じ服装の男が立っていたのだ。先程の警備は二人だと思っていたが実は三人だった様だ。

男はナイフを振りかざして今まさに速水に向けて振り下ろそうとしている。

烏間先生が叫び、皆が振り返るが間に合わない!

 

 

「させるかよっ!」

「鶴久っ!?」

 

 

俺は速水を庇う様に男の前に出ると左腕を盾にナイフを捌く。俺の腕が少し深めに斬れたが速水は無事だ。後はコイツをぶっ飛ばす!

 

 

「なっ、テメェ!?」

「貰ったぁっ!!」

 

 

俺の行動に驚いて動きを止めた男に俺は渾身の拳を放つ。ナイフを右手に持っていたし驚いた事で左手のガードが下がっていたから遠慮なく俺は男の左胸を打ち抜いた。

 

 

「が……か……」

 

 

男は膝からドシャリと崩れ落ちるとそのまま意識を失った。やべ、本気でやっちまった。

 

 

「鶴久っ!?大丈夫!?」

「ん、ああ……大丈夫、大丈夫」

 

 

速水が泣きそうな顔で俺の安否を気遣ってくれてる。俺は大丈夫と言うが斬られた腕は痛い。

 

 

「大丈夫か鶴久君!?無茶をし過ぎだ!」

「痛てっ!?」

 

 

烏間先生が持ってきていた緊急キットのガーゼと包帯で俺の腕を速攻で固める。まだ回復しきってないのになんと素早い事か。

 

 

「暫く左腕は動かすな。この潜入が終わったら直ぐに医者に見せるぞ」

「大袈裟な……痛っ!?」

 

 

烏間先生の言葉に俺は苦笑いをしようとしたが……ヤバい左腕を動かすだけでも超痛い。

 

 

「見た感じでは動脈や筋肉までは切れてない様ですね。でも少々深めに切れたみたいですから鶴久君は今後安静にしている様にお願いしますね」

「殺せんせー……わかったよ」

 

 

いつものふざけた調子ではなく真面目な殺せんせーの声に俺は頷く事しか出来なかった。

 

 

 

「鶴久!」

「え、速水っ!?」

 

 

突如、速水は俺の襟首を掴み上げると周囲には聞こえない位の小声で喋り出す。

 

 

「無茶しすぎ。私を庇って鶴久が怪我をしたんじゃ本末転倒でしょ」

「咄嗟だったから……何も考えてなかったわ」

 

 

速水の睨み付けに俺は視線を反らしながら答える。

 

 

「心配……させないでよ。それに潜入してから具合悪いんじゃないの?いつもと違う感じがするし」

「おま……気付いて?」

 

 

速水の言葉にマジで驚いた。確かに潜入してから俺の体調は段々悪くなっていた。でもそれを誰にも悟らせない様にしてたし、さっき矢田に引っ付かれてもバレなかったのが速水には見抜かれていた様だ。

 

 

「おやおや~速水さんはさっきの鶴久の行動から大胆になっちゃったのかな?」

「「っ!?」」

 

 

カルマの声に俺と速水はハッとなる。見れば皆が俺達を見てニヤニヤとしていた。あ、矢田は頬をプクッと膨らませて不満気にしている。

速水は俺に内緒話をするために顔を近づけていた。端から見ればキスを迫っている様にも見える構図で。

 

 

「あ……ま、まあ怪我も大丈夫そうだし無茶しないでね」

「お、おう。気を付けるよ」

 

 

俺と速水はぎこちなく離れる。周囲にニヤニヤが痛いし話を変えなければ。

 

 

「あ、そういや俺か倒した警備は?」

「もうとっくにスマキにしたっつーの」

「二人がラブコメしてる間にねー」

 

 

俺の質問に寺坂はつまらなそうに答え、不破はニヤニヤと答えた。

 

 

「つーか、さっきの鶴久のパンチをスゲーな。一撃で沈めるなんて」

「手加減なしでやったからな」

 

 

菅谷が先程の俺の拳を思い出したのか呟く。そういや手加減無しだったし多分さっきの奴、アバラ折れてんだろーな。

 

 

 

「ヌルフフフ。先程の鶴久君のパンチはハートブレイク・ショットですね。少々、型は違いましたが」

「ハートブレイク・ショット?」

 

 

殺せんせーの言葉に格闘技に疎い茅野が小首を傾げた。

 

 

「ハートブレイク・ショットとは心臓に打ち込むパンチです。これによりパンチを食らった相手は一時的に動きを止めてしまうのです。しかし先程の鶴久君の一撃は動きを止める処か倒してしまった。つまり彼の拳はハートブレイク・ショットではなく鎧崩しや崩拳に近いのでしょう」

「どんだけ詳しいんだよ殺せんせー」

 

 

身動きがとれないからなのか殺せんせーの解説は力強かった。確かに俺の拳はハートブレイク・ショットよりも金剛だけどさ。

 

 

「鎧崩しって?」

「戦国時代では甲冑を纏った武者を倒す技の一貫として生まれた技が幾つもあります。間接技や無刀取り等ですね。鎧崩しとは甲冑を纏った武者に打撃を与えて気絶させる技なのです。中国拳法の崩拳も同様ですね」

 

 

質問を重ねたのは岡野。殺せんせーは解りやすく解説を始めた。つーか、詳しすぎだろ。対殺せんせー用に考えてた技だけど見切られそうだ。

 

 

「話は後にしろ。先に進むぞ、鶴久君は少し下がってサポートに回ってくれ。その腕で無理はするな」

「「はい!」」

 

 

 

烏間先生が話を打ち切ると俺達は再度、潜入を再開する。

この先はコンサートホールか。




「志村後ろ!」
『8時だョ!全員集合』における観客の野次。
後ろから危険が迫っているキャラに対して使われる用語。

「ハートブレイク・ショット」
『はじめの一歩』の登場キャラ伊達英二の代名詞と言える技。相手の心臓にコークスクリューブローを打つ事で、相手の心臓の動きを数秒間止め、更には相手の動き自体を数秒止める事が可能。

「金剛」
『喧嘩商売』『喧嘩家業』の主人公『佐藤十兵衛』が武術の師『入江文学』から授けられた技。富田流の奥義で、相手の心臓をめがけて強烈な打撃を叩き込むことによって瞬時に意識を奪い戦闘不能にさせる。 基本は拳だが熟練者になると蹴り、肘、膝などでも金剛を決める事が出来る。
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