暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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黒幕の時間

 

 

 

 

九階に上がると、サングラスの男が見張りに立っていたが背後から烏間先生が忍び寄り首を絞めて落とす。

 

 

「ふぅ~、大分動ける様になってきた。まだ力半分って所か」

「力半分で既に俺等の倍強ぇんだけど」

「あの人一人で侵入した方が良かったんじゃ」

 

 

力半分の烏間先生を見て、木村と片岡が呟く。あの強さを見ると割りと本気でそう思う。

すると、スマホの中の律が俺達に呼び掛ける。

 

 

『皆さん、最上階の部屋のパソコンカメラに侵入しました。上の様子が観察できます』

 

 

全員がスマホを取り出し、様子を見る。正直胸糞悪い物が映っていた。

 

 

『最上階エリアは一室貸し切り。確認する限り、残りは、この男一人です』

 

 

画面の中には男が一人煙草を吸いながら、パソコンに移ったウイルスに感染した皆の様子を見ていた。

恐らく、あのホテルに隠しカメラでも仕掛けたんだろう。

 

 

「コレ、俺等が居たホテルじゃねーか。しかも皆が映ってんな」

「楽しんで見てやがるのが伝わってきやがる……変態野郎が」

 

 

吉田や寺坂が苛立ちを見せながら言う。怒りで気合いは十分ってか。

 

 

「あのボスについて分かってきた事が有ります。まず、敵は殺し屋ではない。殺し屋の使い方を間違えてます。元々は先生を殺す為に雇った殺し屋。ですが先生がこんな形になったので、見張りと防衛に回したのでしょう。でも、それは本来の能力ではない。彼等の能力は、フルに発揮されれば恐ろしいです」

「確かに……さっきの銃撃戦も戦術で勝ったけど……あの殺し屋、狙った的は一度も外さなかった」

 

 

殺せんせーが突如、先程までの殺し屋について語り、千葉もそれに同意する。

 

 

「カルマ君の相手もそうでした日常で忍び寄られたらあの握力に瞬殺されていたでしょう」

「……そりゃね」

 

 

殺せんせーの言葉に流石のカルマも同意する。

見張りや防衛という殺し屋とは違う領域の仕事で、フルに実力が発揮できなかったからこそ勝てた。加えて、こっちが中坊って事で相手もこっちを甘く見てたのもあるだろう。暗殺という本来の任務なら必ず殺されていた。

 

 

「皆、聞いてくれ」

 

 

思考の海に沈み掛けていた俺だが烏間先生が俺達に声を掛けたので、烏間先生の方を向く。

 

 

「指定された時間の一時間まで残り約三十分だ。このまま一気に最上階に行き、今回の事件の黒幕に奇襲を仕掛ける奇襲を仕掛けるのは、俺がやるが、まだ体が思ったように動かない。そこでキミ達は予想外の事態に備えて個々に対応してもらう……そのフォーメーションだが……」

 

皆が烏間先生の指示を聞くが俺はそれどころじゃなかった。正直、体が重くてヤバい。だが話は進んでいく。烏間先生の指示に全員が頷き、最上階へ繋がる階段へ向かった。

 

 

 

そしていよいよ最上階へ着く。意外な事に九階には見張りはいなかった。コレ幸いと俺達は部屋に侵入する。

部屋の中は遮蔽物が多い。気配を消せば近くまで接近できる筈だ。

俺達が部屋に入ると、そこには男が座っていた。奴の近くにはスーツケース。

恐らくアレが治療薬の筈だけど、なんか映画とかで見たことがある物が付いていた。そう爆弾とかあんな感じだった気がする。

手元にリモコンあるけど、まさかアレを押したら爆破されるとか?ヤバい洒落にならん。

皆もそれを感じ取ったのか一際、緊張しながら男に近づく。皆、心臓が脈を打ち緊張は高まる。

 

 

 

「かゆい」

 

 

 

今まさに一斉に飛びかかろうとした瞬間に男が声を出す。ちょっと待て……聞き覚えがある声だぞ。

 

 

 

「思い出すとかゆくなる。そのせいで頬を掻きむしって傷口が出来る。でもそのせいかな。傷口が空気に触れ感覚が鋭敏になるんだ」

 

 

そう言いながらリモコンをバラ撒く男。そうか……このクズだったのか。

 

 

「言っただろう?マッハ20の怪物を相手するつもりだったんだ。予備くらい用意してあるさ。うっかり俺が倒れこんでも押すくらいにな」

 

 

皆も答えに至ったのか顔が青ざめていた。

 

 

「連絡がつかなくなったのは、数人の殺し屋だけじゃない。俺の身内にもいた。暗殺の費用をごっそり盗んで。どういうつもりだ、鷹岡!」

 

 

烏間先生は嫌な予感が当たってしまったと言う顔で叫ぶ。そこにいたのは鷹岡だった。恐ろしいほどの狂気に包まれて、邪悪そのものにも見えた。

 

 

「悪い子だ。恩師に会うのに裏口から来る、父ちゃんそんな子に育てた覚えは無いぞ?仕方ない。夏休みの補習をしてやろう」

 

 

狂った笑みを浮かべてそう言った鷹岡。最悪だ。

 

 

「さ、皆。屋上へ行こうか。愛する生徒を歓迎したいんだ。ついてくるよな?お前らは俺の慈悲で生かされているんだから」

 

 

鷹岡はグシャリと笑った。狂気と憎悪が刻み込まれた顔面で。黙って従うしかなかった。

屋上に到達すると鷹岡は高い所に立っていた。

 

 

 

「生徒達をウイルスで苦しませる凶行!気でも違ったか……鷹岡!?」

 

 

烏間先生が問う。明らかに正気じゃない鷹岡に問いかけても無駄な気はするが聞かずにはいられないのだろう。

 

 

「おいおい、俺は至極マトモだぜ?これは地球を救う計画なんだ。お前等二人が大人しく賞金首を持ってきてくれれば、計画はスムーズに進んだのによ。計画じゃ茅野とかいったっけ女の方。ソイツを使うつもりだった。捕まえて拘束してから、バスタブの中に賞金首を抱いて入れさせる。そしてセメントを入れて生き埋めにする。バスタブの中には大量の対先生弾があるから、逃げ出すには生徒ごと爆発しなきゃいけない。生徒思いの殺せんせーはそんな酷いことしないよな?」

 

 

鷹岡の作戦は非人道的だった。振り替えれば皆が青ざめてドン引きして同じ事を思っていた『悪魔』と。 

 

 

「全員が乗り込んできたと知った時は肝を冷やしたが、やる事は同じだ。お前等を生かすも殺すも俺次第ってな」

 

 

鷹岡はリモコンをちらつかせる。

 

 

「許されると思いますか。そんなマネが」

「おいおい、これでも人道的な方だぜ。お前らが俺にした仕打ちに比べればな。周囲からの屈辱の目線と、突き付けられたナイフが頭の中でチラついて、夜も眠れないほどにな……それによぉ、かゆいんだよ!何もかもがな!落とした評価は結果で返す。受けた屈辱はそれ以上の屈辱で返す!特に潮田渚、鶴久紅!俺の未来を汚したお前等二人は絶対に許さん!」

 

 

殺せんせーは怒りを含んだ声で静かに言うが鷹岡には効果がない。あまりにも身勝手な逆恨みで自分が正しいと思ってやがるからだ。

 

 

 

「背の低い生徒を要求したのは、渚を狙ったからか」

「完璧な逆恨みじゃねーか」

「ふーん、渚君はアンタのリベンジの為に呼ばれた訳?そんなチビに勝って何が嬉しいの?俺ならもうちょっと楽しませてやれるけど?」

「イカれやがって、テメーの決めたルールでテメーが負けただけだろうが。言っとくが、勝負に勝とうが負けようが、俺らテメーの事大っ嫌いだったからよ」

 

 

千葉、吉田、カルマ、寺坂が口々に思った事を口にする。ぶっちゃけ正論だよな。すると反論できない鷹岡が逆ギレして叫ぶ。

 

 

「うるせえ!ジャリ共の意見など聞いてねえ。俺の指先でジャリ共が半分減るって事を忘れんな。潮田渚、鶴久紅の二人でこのヘリポートまで登ってこい!」

 

 

俺と渚を来させようとする鷹岡。明らかになんか企んでやがるな。でも行かないと治療薬は手に入らないし仕方ないか。

 

 

「渚、行っちゃダメ。行ったら……」

「行くよ」

 

 

茅野に止められるが渚は殺せんせーを茅野に預けた。

 

 

「行くしかないよ。あれだけ興奮してたら、行かないと何されるか分かんないしね。上手いこと話合わせて冷静になってもらって治療薬を渡してもらうよ」

「嫌な予感がするけど行くしかないよな」

 

 

俺は渚に同意しながらヘリポートに上がる事にした。

 

 

「鶴久……!」

「鶴久君!」

「だーいじょうぶ、俺もさっさと終わらせたいからさ。サクッと終わらせてくるよ」

 

 

心配そうな顔の速水や矢田に俺は笑顔を見せてからヘリポートに向かう。

俺はちゃんと笑えていただろうか?正直、立っているだけでもツラい。

嫌な予感がしつつも俺と渚は鷹岡に従うしかなかった。

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