暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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叱咤の時間

 

 

 

 

◆◇side千葉 龍之介◇◆

 

 

 

 

「謝罪しろ。土下座だ。実力が無いから卑怯な手で奇襲した。それについて誠心誠意な。鶴久お前もだ。俺が奇襲でやられた後にお前にも奇襲されてるからな」

 

 

鷹岡の指示にしたがって鶴久と渚がヘリポートに上がる。鷹岡は鶴久と渚に土下座を強要していた。

 

 

「僕は...」

「それが土下座かぁ!?バカガキが!!頭こすり付けて謝んだよぉ!!」

 

 

鷹岡の指示に渚は頭を下げた。鶴久もそれに習って土下座しようとしたが、そのまま倒れてしまった。

 

 

「僕は実力が無いから卑怯な手で奇襲しました。...ごめんなさい」

「おう。その後で偉そうな口も叩いたよな。『出ていけ』とか。ガキの分際で大人に向かって、生徒が教師に向かってだぞ!!」

「ガキの癖に、生徒の癖に、先生に生意気な口を叩いてしまいすいませんでした。本当に...ごめんなさい」

 

 

渚の謝罪を受けた鷹岡は笑った。クラスの皆も悔しそうな顔でそれを見るしかできなかった。

そして鷹岡は動かなくなった鶴久の方を向いた。

 

 

「よーし、やっと本心を言ってくれたな。父ちゃんは嬉しいぞ。それに鶴久。土下座と言ったのに何を寝てるのかな?」

「ぐ……あ……」

 

 

 

うつ伏せで動かない鶴久を鷹岡は片腕で持ち上げる。ダラリとされるがままになってる。何をしてるんだ鶴久!?

 

 

「やっぱりなぁ。最初にお前に違和感を感じた。そして今、見て確信したよ………お前、ウイルスに感染してるな」

 

 

鷹岡はニヤニヤと呟いた。鶴久がウイルスに感染してた!?アイツ、無理してここに来ていたのか!

 

 

「父ちゃんは優しいんだ。わかるだろ?体調が悪いなら……寝てなきゃな!」

「がはっ!!」

「鶴久!」

 

 

鷹岡が鶴久を一本背負いでヘリポートに叩き付けた。既に体が動かなくなった鶴久になんて事を。俺は思わず、鶴久の名を叫んだ。

 

 

「ほぅら……怪我もして動くと……こうなるぜ!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

鷹岡は更に鶴久の腕を強く踏みつける。さっき速水を庇って傷付いた腕を踏みつけられて鶴久の悲鳴が周囲に響いた。

矢田は鶴久の悲鳴を聞きたくないのか耳を塞いで目を閉じている。

 

 

「ほぅら……あの時みたいに俺に一発食らわせないのか?」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

鷹岡は調子にのって鶴久をいたぶっている。あの野郎……

俺は銃を強く握りしめながら鷹岡を睨んだ。

 

 

「千葉、そこどいて」

「何をする気だ速水」

 

 

速水が俺をどかして銃を構えた。速水の目はかなりキツく、つり上がっていた。相当、怒っているのだろう。俺も同じ気持ちなんだ狙撃場所は譲らない。

 

 

「鷹岡を撃つ……それとも千葉、邪魔する気?」

「邪魔はしない。撃つなら……俺が撃つ」

 

 

俺と速水が話している間に鷹岡が笑い始めた。

 

 

「ひゃははははっ!いい気分だ。そうだ褒美に良い事を教えてやろう。あのウィルスで死んだらどうなるかスモッグの奴に画像を見せてもらったんだが、笑えるぜ、全身デキモノだらけ。顔面がブドウみたいに腫れ上がってな。見たいだろう?渚君、鶴久」

 

 

そう言うと鷹岡は鶴久から離れて治療薬が入ったケースを持ち上げる。コイツまさかっ!?

 

 

「やっ、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

烏間先生が叫ぶが、鷹岡はそのままスーツケースを空に投げるとリモコンのスイッチを押した。それと同時に治療薬はスーツケースもろともに爆破されてしまった。

 

 

「あははははははははっ!そう、その顔が見たかった!夏休みの観察日記にしたらどうだ?お友達の顔面がブドウみたいに化けていく様をよぉ!ははははっ!」

 

 

渚は絶望した顔でこっちを見ていた。鶴久もこっちを見ている。呆然とした顔をしていると思ったら急に鶴久の雰囲気が変わった。

 

 

「安心しな。お前にだけはウイルスは盛ってない。鶴久は別としても、なにせお前は今から..…ん?」

 

 

鷹岡の話の途中で渚は息を荒くしてナイフを持った。鶴久は目のハイライトが消えて、鷹岡を睨んでる。

 

 

「殺...してやる...!」

「………殺す」

 

 

渚と鶴久が鷹岡に向けて『殺す』とハッキリ言う。ハタから見てもわかる。二人は本気だ。

 

 

「その意気だ!殺しに来なさい渚君、鶴久!」

 

 

自分の計画通りとなって鷹岡は喜んでいる。アイツは目の前の二人のヤバさに気付いていない様だ。

 

 

「渚……キレてる」

「鶴久の奴、マジで殺やる気か!?」

「今の二人を見ると本当に殺りかねないよ!」

 

 

このままだと、渚と鶴久が本当に鷹岡を殺しかねない。

なんとかして止めないと。

 

 

「いやいやいや、愉快な殺気だ。でも紅君には似合わないですね」

「………えっ!?」

 

 

なんか聞き覚えのある声に俺は振り返る。そこには最近、知り合った人が居た。なんでこんな所に居るんですか!?

 

 

「少しお借りしますね」

「え、ちょっ!?」

 

 

その人は然り気無く。本当に然り気無さすぎて誰も気付かないまま吉田からスタンガンを取り上げる。その流れる動きに誰も気付かないまま、その人は振りかぶった。

そう思った時、渚の後頭部と鶴久の体に何かがすごい勢いで当たる。

 

 

「痛っ!?」

「つあああああああああっ!?」

 

 

投げたのは寺坂だった。投げたのはスイッチを切って袋に詰めたままのスタンガンだった。

だがそれと同時に鶴久の悲鳴も上がる。そのままパタリと倒れてしまう。

 

 

「チョーシ、こいてんじゃねーぞ渚、鶴久!薬が爆破された時、俺を哀れむような目で見ただろ。他人の気遣いしてんじゃねーぞ!ウイルスなんざ、寝てりゃ治んだよ!」

 

 

寺坂の言葉に、全員が寺坂もウイルスに感染していたことに気付く。いや、それよりも……鶴久が……

 

 

「あれ、鶴久は?」

「鶴久君の体にもなんか当たったよね?」

 

 

その事態にワンテンポ遅れて皆も気づいた。すると鶴久が

 

 

「お前等、何考えてんだボケッ!ドリフだったらアフロになる程の電気、流しやがって!」

 

 

渚と違ってスイッチが入った状態のスタンガンを食らった鶴久が立ち上がってこっちに抗議を始める。よかった無事だったか。

 

 

「いやいやいや、楽しげな殺気を感じたんですけどね。お友達が心配そうにキミを見ていたから止めてみました」

「………っ!?なんで……赤岩さんが?」

 

 

そう。吉田からスタンガンを然り気無く取り上げてスイッチを入れて投げたのは以前、大和屋で会った赤岩さんだったのだ。

 

 

 

 

◇◆side end千葉 龍之介◇◆

 

 

 

 

鷹岡を殺そうと渚と共に間合いを詰めようとした俺だが突如、体が痺れた。洒落にならない位にキツかった。マジで目の前に星が見えた。

なんとか立ち上がろうとしたら下から声が聞こえてくる。

 

 

「チョーシ、こいてんじゃねーぞ渚、鶴久!薬が爆破された時、俺を哀れむような目で見ただろ。他人の気遣いしてんじゃねーぞ!ウイルスなんざ、寝てりゃ治んだよ!」

 

 

寺坂の発言に俺と渚に何かを投げたのが寺坂であると判明した。奴もウイルスに感染していたのか。

 

 

「あれ、鶴久は?」

「鶴久君の体にもなんか当たったよね?」

 

 

寺坂が渚を正気に戻したのか。俺も同じ様にキレていたからなのだろうが……正気に戻すのは兎も角、スタンガンのスイッチを入れた状態で投げるな!

 

 

「お前等、何考えてんだボケッ!ドリフだったらアフロになる程の電気、流しやがって!」

「いやいやいや、楽しげな殺気を感じたんですけどね。お友達が心配そうにキミを見ていたから止めてみました。それに威力を最小にしたから大丈夫でしょう?」

「………っ!?なんで……赤岩さんが?」

 

 

立ち上がって抗議すると吉田は激しく首を横に降っていた。その近くには何故か、赤岩さんがニコニコといつもの笑みで俺を見ていた。

 

 

「や、どうも始めまして。紅君のクラスメイトと担任さんですね。私は赤岩秋水です」

「おや、これはどうもご丁寧に」

「あ、赤岩さん……」

 

 

場の空気を読まないにこやかな自己紹介。殺せんせーはニコりと笑みを返したが烏間先生はなんか動揺してる?

 

 

「さて、その人を殺す気なら、やめときなさい紅君。優奈ちゃんや海女さんを悲しませる気ですか?」

「そんなクズでも殺したら殺人罪だ。テメー等は一時の感情に任せて百億のチャンスを捨てる気か?」

「寺坂君や赤岩さんの言う通りです。その男を殺しても何の価値もない。それに治療薬についても、下に居た毒使いが開発者なら彼に聞けばいい。こんな男、気絶で充分です」

 

 

赤岩さんと寺坂と殺せんせーの台詞で渚の殺気が僅かに弱まる。

 

 

「おい、水を差すんじゃねぇ。本気で殺しに来させなきゃ意味がないんだ。このチビの本気の殺意を屈辱的に返り討ちにして……初めて俺の恥は消し去る事ができる」

「黙りなさい」

 

 

鷹岡の言葉を遮り、赤岩さんが口を開いた。

何故か鷹岡は焦り顔になり、一歩下がる。もしかして赤岩さんと知り合いなのか?妙に怯えてる様に見えるが。

 

 

「渚君だったね。ナイフを振る前によく考えてみなさい。鷹岡君の命と殺せんせーの命。鷹岡君の言葉とお友達の言葉…………キミにはどっちが価値あって、どっちが大事ですか?」

 

 

赤岩さんの言葉がヘリポートに響く。皆が黙って話に耳を傾けていた。

 

 

「寺坂!?お前熱やべぇぞ!?」

「こんな状態で来てたんかよ!」

 

そんな中、吉田と木村が寺坂に駆け寄る。流石に限界か寺坂。いやま、俺もなんだけどさ。

 

 

「うるせぇ……見るのは俺じゃねぇ、あっちだ……やれ、渚。死なねぇ範囲でぶっ殺せ」

「フー……渚、俺はウイルスとさっきの電撃で戦えそうにないから任せた」

「………うん!」

 

 

フラついた寺坂と俺の言葉に渚は力強く頷いてくれた。俺は渚の肩をポンと叩くと渚と鷹岡から離れた。渚は寺坂から投げられたスタンガンを拾い、腰に装備した。

俺がチラリと下を見ると殺せんせーや烏間先生が心配そうに渚を見ていた。クラスの皆も不安げに見ている。赤岩さんだけ楽しそうに見ていた。

 

渚は、前回と同じように暗殺に持ち込もうと動く。だが、その前に鷹岡によって、腹に蹴りを喰らった。

 

 

「あぐっ!」

「おら、どうした?殺すんじゃなかったのか?」

 

 

渚がナイフを振っても躱し、弾かれ、逆にカウンターを喰らう。渚に反撃の暇も与えず、鷹岡は渚に攻撃をしまくる。

 

 

「へばるなよ、今までのは序の口だ。そろそろ、俺もコイツを使うとするか。手足斬り落として、標本にしてやる。ずっと手元に置いて愛でてやるよ。鶴久、お前は来ないのか。お前から切り刻んでもいいんだぜ?」

「渚がアンタに負ける様なら俺がやってやるよ。俺がウイルスに侵されて漸く、互角だしな」

 

 

鷹岡は狂喜の笑みを浮かべ、ナイフを手に渚に近づく。ニヤニヤと俺に話しかけるが俺も先程の電撃で頭も冷えた。もうコイツなんかどうでもいいわ。俺の言葉に鷹岡のコメカミに青筋が走る。それを見て俺は少し、溜飲が下がった。

そんな中、鷹岡がナイフを手にした瞬間、渚の気配が変わった。渚の気配がさっきと変わったことに気付いたのか、鷹岡から笑みが消えて動きを止める。

そして、渚は笑った。

 

 

「笑ってる!?」

「これって前のと同じ……」

「いや……何処か違う」

 

 

渚は前と同じように笑顔で歩いていく。鷹岡は前回の事もあり、緊張した面持ちで渚を待ち構えている。皆も以前、渚が鷹岡を倒した時の事を思い出してる様だ。

そして、ナイフが間合いに入った瞬間にナイフを空中に置く様に捨て、鷹岡の目の前で両手を叩いた。パァンと綺麗に音が鳴る。

それはただの猫だまし。だが鷹岡は後ろに仰け反り、動きを止める。

渚は、その隙を見逃さず、腰のスタンガンに手を伸ばし、滑らかに抜く。そして、脇にスタンガンを当て、電流を流す。

鷹岡は膝を着き、動かなくなるが意識はギリギリ残っている様だ。先程、威力が最小だったとは言えど、食らった身としては嫌な奴だけど凄いと思う。

 

 

「渚、トドメだ………首辺りに強でたっぷり流せば気絶する」

「俺の分も含めて強めに頼むわ」

 

 

寺坂と俺の言葉に従い、渚はスタンガンで鷹岡の顎を持ち上げる。

鷹岡は怯えた様子で渚と俺を交互に見る。最早、憐れにすら思えてきた。

 

 

「鷹岡先生……ありがとうございました」

 

 

渚は笑顔で鷹岡にお礼を言い電流を首に流した。鷹岡は気絶し、その場に倒れ込む。

 

 

「や、やった……!」

「よっしゃあああ!ボス撃破!」

 

 

全員で歓声を上げる。

 

 

あー……やっと終わった……

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