暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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プロと勘違いの時間

 

 

 

 

 

◇◆side矢田 桃花◇◆

 

 

 

 

落ちたハシゴを拾い上げ、皆で鶴久君と渚君を迎える。

鶴久君はスゴく辛そうにしていた。ウイルスに感染してしまっているらしいから急いで支えなきゃと思って鶴久君に肩を貸す。私が支えると凜香が腕の包帯を変える為に私と一緒に来てくれた。

 

 

「よくやってくれました渚君、鶴久君。怪我も軽そうで安心しました」

「………でも、皆の薬が……」

 

 

そうだった。鷹岡先生に勝っても、ウイルスの治療薬は全て爆破された。このままだと皆が…………鶴久君が……

 

 

「とにかくここを出よう。ヘリを呼んだから君たちは待機だ。俺は毒使いの男を連れて来る」

「いやいやいや、薬は必要無いんですよ」

「その通り、薬はいらねぇよ」

 

 

烏間先生の指示に皆が従おうとした時、赤岩さんがにこやかに告げた。更に背後からの声に全員が振り向く。

そこには毒使い男、おじさんぬ、銃食い男が立っていた。全員拘束した筈なのに自由になってる。

 

 

「おや、スモッグ君、グリップ君、ガストロ君の三人共、無事のようだね」

「知り合いなんですか!?」

 

 

何故か、殺し屋三人を知っている赤岩さんに思わず声を上げてしまう。

まさか赤岩さんも殺し屋?

 

 

「いやいやいや、仕事柄彼等とはよく会うんですよ。今日もちょっとした仕事で来ていたんですが、このホテルに殺し屋が四人居ると聞いた時は驚きました」

「え……四人?」

 

 

赤岩さんの言葉に渚君が意外そうな声を上げる。確かに私達が倒した殺し屋は目の前の三人の筈。まさかまだ一人隠れてるの!?

皆も同じことを思ったのかピリッと空気が変わった。

 

 

「ああ、そういやニードルが居ないな」

「コイツだろ?」

「ああ、ソイツだぬ」

 

 

ガストロが周囲を見回したが『ニードル』と呼ばれた殺し屋はいないらしい。

と思ったら入り口の扉が開いてスーツ姿の男が投げ込まれた。投げ込まれた人は気絶したままなのかピクリとも動かない。

グリップが男を確認するとその人がニードルだと判明するんだけど……この人、ラウンジに居た人だよね?

確か、鶴久君とお酒を飲んでいたおじさんが倒しちゃった人。

よく見るとニードルをこの場に連れてきた人も先程のお酒を飲んでいた人だった。

 

 

「ソイツが針を持ってそこの巨乳ちゃんやバカ息子を刺そうとしてたから取り敢えず潰しといたわ」

「え、そうだったんですか!?ありがとうございます」

 

 

実はラウンジに殺し屋が居て私と鶴久君も狙われてたなんて……その事に私はおじさんに頭を下げたんだけど……あれ、今、バカ息子って……

皆もそれに気付いたのか、微妙なリアクションになっている。

 

 

「俺の名は『鶴久大河』そこのバカの親父だ」

「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」

 

 

や、やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?よく見ると目の前のおじさんは鶴久君に似ていた。

 

 

 

「その話は後にしてくれ。お前達の雇主は既に倒した。戦う理由は無いはずだ。俺も回復したし、生徒達も十分に強い。これ以上は互いに被害が出る前にやめにしないか?」

「ん、いーよ。契約にボスの敵討ちは含まれてねぇ、そもそも、お前たちに薬は必要無ぇってスモッグが言ったろ」

 

 

ガストロが烏間先生の提案に乗ってスモッグを指差して言う。スモッグは瓶を取り出し、指先でクルクルと回しながら私達に見せる。

 

 

「お前等に使ったのは、この食中毒菌を改良したものだ。あと三時間は猛威を振るうが、その後急速に活性を失って無害になる。こっちがボスが使えと指示した奴。これを使えば、お前等マジでヤバかったな」

 

 

スモッグは笑いながら試験管に入った毒薬を私達に見せて言う。

 

 

「使う直前に、俺とスモッグ、ガストロ、ニードルの四人で話し合ったぬ。ボスの設定した交渉期限は一時間。だったら、態々ウイルスじゃなくても取引は出来るとな」

「鷹岡に逆らったの?」

 

 

私は思わず、聞き返してしまう。殺し屋は依頼人に忠実になるものだと思ってたから。

 

 

「アホか。金で何でも動くのがプロだと思ったら、大間違いだ。この際だ。テメーらにも言っておく。俺達殺し屋は金で雇われ、仕事をする。だから、依頼人の意に沿うように最善を尽くす。だが、ボスは始めから薬を渡す気は無かった。カタギの中学生を大量に殺した実行犯になるか、命令違反がバレて、プロとしての評価を落とすか。どちらか俺等の今後にリスクが高いか、冷静に秤にかけただけだ」

「それに裏の世界に名を轟かせるボディーガードの赤岩秋水。そしてネゴシエター(交渉人)鶴久大河。この二人を同時に敵にするなんざ、今後の影響は計り知れないんでな」

 

 

ガストロの発言もスモッグも発言も私達には衝撃的だった。特に鶴久君のお父さんは交渉人で知り合いのおじさんはボディーガードって……

 

 

「ま、そう言う訳だ。そんでほら」

 

 

 

スモッグは、ポケットからから錠剤の入った瓶を取り出し、烏間先生に投げる。

 

 

「その栄養剤を患者に呑ませて寝かしてやんな。そうすれば次の日には元気百倍だ。それどころか前より健康になったと、お礼の手紙か届く程だ」

「無駄にアフターケアが行き届いてんなアンタ……」

 

 

フラフラになりながらも鶴久君はスモッグにツッコミを入れていた。

烏間先生はその薬の瓶を受け取り、ガストロ達に言う。

 

 

「信用するかは生徒達が回復したのを見てからだ。事情も聞かねばならないし、暫く拘束させてもらう」

「しゃーねーな、来週には次の仕事あるからそれまでには終わらせてくれよ」

 

 

ガストロ達がそう言い、降りてきたヘリに乗ろうとするがカルマ君がグリップに歩み寄っていく。

 

 

「おじさんぬー。リベンジマッチとかしないのー?」

「私怨では殺しはしないぬ。俺が狙うのは大物だけぬ。再戦したければ大物になる事を待つぬ」

 

 

カルマ君はワサビやカラシを手にしながらニヤニヤと笑っていたがグリップはカルマ君の頭にポンと手を置いて去っていった。

 

 

「そう言うこった!今度会ったら殺しのフルコース見せてやるよ!」

 

 

ガストロもヘリコプターに乗り込み、私達に薬莢を振り撒いていく。まるで私達にもっと強くなれとエールを送るみたいに。

 

 

「赤岩さん、大河さん。すまないがアナタ達も少し事情聴取させてもらいます」

「ええ、構いませんよ」

「ま、仕方ねーな。下にイリーナも居たし少し留まるか」

 

 

烏間先生はその場に残っていた赤岩さんや大河さんにも事情聴取をする様だ。

大河さんはやれやれと肩をすくめていたけど

 

 

「大河さん、ビッチ先生の事を知ってるんですか?」

「ああ、仕事で海外で何度も会ってるし、ロヴロさんの事でも話をしたからな。つーか、巨乳ちゃんももっと砕けた話し方でいーよ。バカ息子と付き合ってんだろ?」

「え、ええええぇぇぇぇ!?」

 

 

大河さんのまさかの発言に私の顔は一気に熱くなった。

 

 

「さっきから紅とピッタリくっついてたしラウンジでもラブラブカップルみたいだったろ?こりゃーコイツにも春が来たと思うさ」

「はわわ……」

 

 

ヤバい顔から湯気が出そうなくらいになってる。

 

 

「なんだったら今から『お義父さん』と呼んで……ぶがっ!?」

「余計な事を口走るなアホ!」

 

 

大河さんの発言の途中で鶴久君が大河さんの顔面に飛び蹴りを放ち、察知できなかった大河さんは真正面から鶴久君の蹴りを食らっていた。

 

 

「うーん、かなり見事な不意討ちですね」

「「そんな問題なんですか!?」」

 

 

赤岩さんが鶴久君の蹴りにそんな感想をすると皆でツッコミを入れた。

 

 

「ったく……よ……」 

「鶴久!」

 

 

蹴りを放った後に倒れそうになった鶴久君を凜香が受け止めた。鶴久君はそのまま倒れてしまい、凜香もしゃがみながら鶴久を離そうとしなかった。すると自然に凜香が鶴久君を膝枕する形になった。

 

 

「鶴久、鶴久!?」

「はぁ……はぁ……ふぅ……」

 

 

凜香に膝枕されている鶴久君は荒く息をしながら目を開けなかった。

慌てて磯貝君や千葉君が鶴久君の容態を診る。

 

 

「気絶……したみたいだな」

「最後の力を振り絞ってツッコミ入れたのか」

 

 

二人の言葉に安堵した様な……なにもそこまでツッコミを頑張らなくてもと思うような……

 

 

「なんだ巨乳ちゃんじゃなくてツンデレちゃんの方だったのか?」

「いやいやいや、大和屋ではどちらが紅君と付き合うか賭けが勃発していましてね」

 

 

自身の鼻をさすりながら大河さんが立ち上がってくる。そして凜香の膝枕を見るなり今度は凜香と鶴久君が付き合っているのかと聞いてきた。

ちょっと待って赤岩さん。賭けの話は私、初耳なんだけど!?

 

 

「その話は後だ。次のヘリが来たから皆、乗ってくれ」

 

 

烏間先生の言葉に空を見上げると私達が乗る為のヘリが到着した。

私も後で凜香と話をしなゃきゃと凜香に膝枕をされている鶴久君を見て思った。

 




新キャラ図鑑


『鶴久大河』

紅の実父。普段は交渉人として世界を渡り歩いているので家には殆ど居ない。
裏の世界では有名な人物だが紅からは『滅多に家に帰らないダメ親父』として認識されている。


『ニードル』

針を使う殺し屋。気配を消して背後から急所に針を打ち込んで暗殺するのを得意として居たが大河と紅の拳によりKO。見せ場無しの退場となった。
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