暗殺教室 鶴久紅の事件ファイル   作:残月

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肝試しの時間

 

 

 

 

 

俺が気絶した後、すぐに皆が待つホテルに戻り、倒れた皆にもう大丈夫なことを伝えたらしい。

スモッグから渡された栄養剤を飲ませ、ウイルスに感染した者は安静に、俺達潜入班は疲れが一気に出て、泥の様に眠ったとの事。

俺は傷の手当てで別室に運ばれたらしいが皆と同様に死んだ様に眠っていた。そして、目が覚めたら次の日の夕方の少し前になっていた。部屋を見渡せば他の皆はまだ寝ていたので俺はこっそりと部屋を抜け出した。

 

 

「痛ててっ……やっぱまだ痛いな」

 

 

左腕を伸ばせば切られた箇所が痛む。見た目ほど深くは切れておらず、安静にしていれば問題は無いそうだが痛いは痛いのだ。

なんて思ってフラフラと浜辺を散歩してたら烏間先生が居た。

部下らしき人達に何か指示を出して海に何かを建造している。

 

 

「何してんですか烏間先生?」

「ん、おお。鶴久君、心配したぞ」

 

 

烏間先生は振り向き様に俺を確認すると駆け寄って来た。

 

 

「心配かけてスイマセン。んで、アレは?」

「ああ……奴を殺そうと思ってな。コンクリートの中に特殊弾と鉄板で固めて周りを奴の苦手な水で囲う作戦だ」

 

 

なるほど対殺せんせー弾で回りを固めて海に沈めると。なんとも大掛かりな仕掛けだって……ちょっと待て。

 

 

「もしかして帰ってからずっと指揮を取ってます?もしかして烏間先生寝てないんですか?」

「ああ、奴を殺す機会は逃したくないんでな」

 

 

恐るべし烏間先生。こんな大人になれる気がしないわー。

 

 

「それに寝てないのはアッチも同じだ」

 

 

烏間先生は親指を立てると砂浜に向ける。そこにはアホが二人居た。

 

 

 

「いやぁー、しかし紅も色気付いたな。まさか巨乳ちゃんとツンデレちゃんとは」

「いやいやいや、少し前に実は黒髪の大和撫子さんも……」

 

 

親父と赤岩さんが砂浜にテーブルとベンチを引っ張り出してビールを飲んでた。などとため息を吐きたくなる光景だった。そんな中、烏間先生が俺に話しかける。

 

 

「しかし驚いたぞ、鶴久君。キミの空手の師が赤岩教官だったとは」

「え、やっぱ烏間先生は赤岩さんを知って……教官?」

 

 

ヘリポートの時の口ぶりから烏間先生が赤岩さんを知ってる可能性は高いと思ってたけど教官って……

 

 

「あの人は俺や鷹岡が新兵の頃に一時期指導に来ていた人でな。………恐ろしく強かった」

「あー……」

 

 

俺以外にも赤岩さんの被害者が居たと思わず考えてしまった。加えて、あの時に鷹岡が赤岩にビビったのにも訳も理解できた。

 

 

「それと……今回みたいな無茶はもうするな。キミに何かあったら俺はキミのご両親や妹さんに会わせる顔がなくなる。イリーナもキミの怪我を見たときは取り乱して大変だったんだぞ」

「……スイマセン」

 

 

ウイルスに侵された状態で救出グループに入り、無茶をした。それで怪我をすれば責任は烏間先生の所へ行く。今回は奇跡的にも無事だったから良かったが万が一を考えると、やはり俺の行動は褒められた物ではないだろう。

 

 

「………キミはなんでも自分でやろうとしているな。人に頼る面もあるが本質的には自分で解決したい質だな。だが……もう少し大人を頼ってくれ」

 

 

烏間先生はポンと俺の頭に手を置いた後に作業している人達の指揮に戻っていく。本当にカッコいいなあの先生は。

それに比べて……

 

 

「もう聞いてよ。紅ったら、この間……」

「お、聞かせてイリーナちゃん!」

「興味深いですねぇ……」

 

 

酔っぱらった『まるでダメなお姉さん』『まるでダメな親父』『まるでダメなおじさん』が揃い踏みだった。

とりあえず俺はマダオ達を殴ろうかと思ったが俺が起きた事に気付いた姉さんが俺に抱きついてきた。心配させちまったな。

親父や赤岩さんに冷やかされたけど、それは仕方ない。

あれ、そう言えば親父も赤岩さんも殺せんせーを見てもリアクションが薄かった様な……

なんて思っていたら皆が起き始めてきたのか浜辺に集まってくる。俺は起きてきた奴等に順番に揉みくちゃにされた。

渚達が戻った後に俺の事も話したらしく、皆が口々に奇襲作戦の事を聞いてくる。

特に千葉、速水、矢田が起きてきた時は大変だった。

千葉は無口なスナイパーから饒舌へとジョブチェンジ。散々、心配したと言われた。

速水は氷の女王再臨。冷たい視線と共に心配させないでと小さな声で呟かれた。ツンデレごっつぁんです。

矢田は涙目だった。今度は同じことがあったら絶対に止めると泣かれた。次は無い!……と思う。

 

千葉達を宥めていると、意味に設置してあったコンクリートの固まりが爆発した。恐らく殺せんせーだろう。

 

 

「爆発したぞ!」

「殺れたか!?」

「いんや、無理だな」

 

そんな声があちこちから飛び交う。そんな中、何故か親父がビール片手に呟いた。

 

 

「先生のふがいなさで苦労させてしまいましたね。ですが、敵と戦い、ウイルスと戦い本当によく頑張りました」

 

 

背後から聞こえてきた声に俺達はやはり駄目だったかと小さなため息を溢したがすぐに笑った。

 

 

「おはようございます、殺せんせー」

「やっぱ先生には触手がなくちゃね」

 

 

そこにはいつもの姿にアロハシャツを着た殺せんせーが居た。ピンピンしてるな、あの状態でもノーダメージと。

 

 

「はい、おはようございます。では、修学旅行の続きを楽しみましょう」

「続きって、もう夜だぜ。明日には帰るし」

「一日損した気分だよね~」

 

 

殺せんせーはまだバカンスを楽しむ気らしいがもう暗くなってきている。明日の昼頃には帰りの船が来るからバカンス所じゃないだろうな。

 

 

「いえいえ、夜だからこそいいんです。昨日の暗殺のお返しに、ビッグでスペシャルなイベントを用意してます」

 

 

 

そう言って、殺せんせーは得意の早着替えで、服を着替える。如何にもオバケみたいなボロボロの白装束。手にした看板には『夏休み旅行特別企画!納涼!ヌルヌル暗殺肝試し!』と書かれていた。

 

 

「「あ、暗殺肝試し?」」

 

 

全員が声をそろえて言う。暗殺+肝試しって……しかし殺せんせーの場合、白装束よりもオバQの方が似合いそうだと思った。

 

 

「先生がオバケ役を務めます。もちろん暗殺OKですよ、ちなみに男女ペアです」

 

 

いそいそと準備を進める殺せんせー。あ、なんかニヤリと笑った。

 

 

「では、皆さん。クジを引いてください。同じ番号が書かれた人とペアですよ。こちらが男子用、こちらが女子用」

 

 

全員がクジを次々と引く。その最中、俺は見た。殺せんせーの頭の後ろには『カップル成立』の文字が。

 

 

「中々、面白い先生みたいだな」

「いやぁー楽しみですねぇ」

 

 

明らかに俺等の恋話を酒の肴にしようとしている親父と赤岩さん。ゲスい。

 

 

「あれ、鶴久は参加しないの?」

「ん、ああ……俺は怪我の事もあるし今回は不参加だ」

 

 

速水が引いたクジを持ちながら聞いてくる。シュンとなる速水。ちきしょう俺も参加したかったよ。

 

 

「じゃー行ってくるねー!」

「おう、俺は洞窟の出口辺りで待ってるよ」

 

 

元気に洞窟の方に向かう面々に俺は手を振りながら別れた。洞窟の出口辺りに行こうと思ったら殺せんせーが親父や赤岩さんと対面していた。

 

 

「はじめまして鶴久大河さん、赤岩秋水さん。鶴久君の担任の殺せんせーです」

「鶴久大河だ。息子が世話になってるな殺せんせー」

「赤岩秋水です」

 

 

殺せんせーの触手で握手を交わす親父と赤岩さん。スゴい奇っ怪な光景なんだけど。

 

 

「日本政府から話は聞いてはいたが……いざ目の前にすると何も言えんな。ま、バカ息子を頼んます」

「自分も日本政府から話は聞いていますし、自分もいずれ、E組に足を運ばせてもらいます。ああ、自分も大河さんも他言はしないのでご安心を」

「はい、任されました」

 

 

簡単な挨拶を済ませると親父と赤岩さんは殺せんせーから離れていく。さっきの烏間先生の発言もそうだけど、やっぱり親父も赤岩さんも殺せんせーを知ってるのか?

なんて思いながら俺は洞窟の出口辺りで皆を待つことにした。待つことにしたのだが……

 

 

 

 

「ぎゃあああああああ!オバケ!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!目が無い!」

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!日本人形!」

「いやぁぁぁぁぁぁっ!水木しげる大先生!」

 

 

 

 

皆の肝試しをしてるのに何故か殺せんせーの悲鳴ばかりが聞こえてくる。なんでやねん。

しかも悲鳴が妙に乙女だし。

 

 

 

 

 

その後、洞窟から出てきた皆の話を統合すると洞窟内にはラブラブベンチやツイスターゲームが設置してあったらしい。しかもホラー要素ほぼゼロ。

 

 

「要するに、怖がらせて吊り橋効果でカップル成立を狙ってたと」

 

 

俺の言葉に殺せんせーはコクりと頷いた。クジ引きの時に頭に見えた文字は見間違いじゃなかったか。しかし露骨なやり口だ。

 

 

「結果を急ぎ過ぎたんだよ」

「怖がらせるよりくっつける方に入ってるから狙いがバレバレだし!」

「だって!手繫いで照れてる二人とか見てニヤニヤしたいじゃないですか!」

 

 

女子達の意見に殺せんせーがキレ気味に反論した。いや、それは見たいけど強要するもんじゃないだろ。雰囲気ゼロだし。

 

 

「泣きギレだ」

「ゲスい大人だ」

「このタコ、本当に教師なのか疑いたくなるな」

 

 

クラス全員の哀れみの視線に殺せんせーは涙目になってる。

 

 

「そーいうのはそっとしときなよ。うちら位だと色恋沙汰とかつっつかれるの嫌がる子多いよ」

 

 

中村の言う通りだと言わんばかりに全員が頷く。

いや、そう思うなら速水とか矢田絡みで俺を弄るなよ。と思ったけど口にするのは止めとこう。明らかにやぶ蛇だ

 

 

「う、うぅ………わかりました」

 

 

殺せんせーが納得すると誰かが洞窟から出て来る。アレ……この声は……

 

 

 

「何よ、結局なにも出なかったじゃない!怖がって歩いて損したわ!!」

「だから言ったろうが。徹夜明けにはいいお荷物だ」

 

 

思った通り、姉さんと烏間先生だった。姉さんは烏間先生の腕に抱き付いており二人寄り添って洞窟から出てきた。

 

 

「ちょっと!こんな美女といるのよ。しっかりエスコートしなさい……よ」

 

 

烏間先生に喚いていた姉さんは俺達に気付くとソッと烏間先生から離れる。

 

 

「なぁ、うすうす思ってたけど、ビッチ先生って………」

「うん……」

「………どうする?」

「そりゃあ……」

「明日の朝まで時間あるし……」

 

 

皆が思った事を次々に口にする。まあ、あの状態を見れば気付くか。

実を言えば俺は姉さんの烏間先生に対する気持ちは少し前から気付いてはいたのだが……

 

 

 

「「あの二人、くっつけちゃいますか?」」

 

 

 

結局、全員ゲスかった。

あ、俺もか。

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