それは、やがて伝説に繋がる物語   作:豚汁

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11話 幼馴染に感謝を……

「すぅ……くぅ……」

 

 

 現在の時刻は、午前七時。

 

 俺の目の前には、ベットの中で幸せそうな顔をして眠る穂乃果の姿があった。

 起きたら元気ハツラツで、まるで落ち着きのない子供みたいな所がある穂乃果だけど、寝てる時だけはそんな様子は全く感じず、まるで人形のような女の子らしい可愛らしさを感じる。

 

 だから正直、いつまでもそんな穂乃果の姿を見つめていたい欲求がふと俺の中に沸いたが、俺は必死でそれを振り払い、そっと寝ている穂乃果の方に手を伸ばして、掛け布団をガッと掴む。

 

 その瞬間、ふわりと香る女の子の特有の甘い香りを俺は感じ、少しだけドキッとしてしまうが、それは慣れたもので、俺は鼻から脳に伝わる情報を完全シャットアウトして対応する。

 

 

「えへへ……しょうちゃぁ~ん……」

 

 

 すると穂乃果は、口元を緩めてそんな寝言を呟く。どうやら穂乃果の夢には俺が登場してるらしい。

 

 全く……どんな夢見てるんだよ穂乃果は。

 

 そんな幸せそうな穂乃果を見て、少し俺が今からする事に罪悪感を一瞬感じてしまったが、俺はそれに構わずに、穂乃果の布団を思いっきり引っぺがしながら叫ぶ。

 

 

 

「朝だぞぉぉぉぉーーーーー!! 起きろ穂乃果ぁぁぁーーーー!!」

 

「わあぁぁぁぁぁーーーっ!? 何っ!? 何なの正ちゃん!? まだ学校に行く時間には早いよっ!?」

 

 

 

 幸せそうな寝顔から一転、びっくりした様子で俺にそう言う穂乃果。

 その様子を見て、俺は今日も役目を達成したことを感じた。

 

 これが平日の朝、毎日のように俺が行っている日課。

 

 俺は寝坊が多い穂乃果の為に、わざわざこうして家にまで毎日起こしに来ているのだった。

 

 

「さて穂乃果、学校に行くぞ、今日は朝から生徒会の仕事があるって言ってただろ?」

 

「あ……そう言えばそうだった。そ、それにしても起こし方が荒っぽ過ぎるよ正ちゃん!」

 

「こんな強硬手段に出なくても、穂乃果がちゃんと起きてくれる奴だったら、ちゃんと優しく起こしてやるけど、実際が起きないんだから仕方ないだろ? ほら、さっさと用意しろ穂乃果!」

 

「もう……朝うっかりしてた穂乃果も悪いけど、でも正ちゃん最近私に冷たいよ~!」

 

 

 穂乃果はそう文句を言いながら、ベットから降りると急いで学校に行く準備をする。

 

 おいおい、うっかりしてたってなんだよそれ……全く、穂乃果はいつまでたってもこういう肝心なところが抜けてるから、親友としては心配だ。

 ちゃんと穂乃果は、頼りになるときは頼りになるやつなのにな……。

 

 俺がそう思って、学校に行く用意をする穂乃果の事を眺めていると、ふと、穂乃果の動きが止まった。

 

 ……うん? どうしたんだ穂乃果は?

 

 

「正ちゃん、いつまでそこに居るの!? そこに居たら穂乃果いつまでも着替えられないから、早く出て行ってよ!」

 

「そ、それはゴメン穂乃果っ!」

 

 

 俺はパジャマ姿の穂乃果の剣幕に押されて、慌てて穂乃果の部屋を飛び出し、そのまま穂乃果が学校に行く支度が済むまで、部屋の外に待機させられたのだった。

 

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 

「おお、海未とことりは今日も早いな、おっはよー」

 

「海未ちゃん、ことりちゃん、おはよ~」

 

「おはようございます、二人とも」

 

「二人ともおはよ~」

 

 

 俺と穂乃果がいつもの集合場所に着いた時には、もう既にそこには、ことりと海未の姿があった。そして、そんな朝の挨拶もそこそこにして、そのまま俺達四人は学校に向けて歩きはじめる。

 

 

「それにしても、今日も二人一緒にここに来たという事は、正也は穂乃果をまた起こしに行ってたんですね……全く、穂乃果は何時まで正也に頼りきりなんですか?」

 

「わ、私だって本当は正ちゃんに頼らないで、1人で起きれるようになりたいよ! だって正ちゃんね、今日は穂乃果の事を無理やり起こしたんだよ!? 布団を……こう、ガバッって感じて取っちゃってさ~」

 

「でも、今日の穂乃果はそうでもしないと起きなかっただろ?」

 

「ううっ……で、でも、もっと起こし方ってものがあると思うんだよね!」

 

 

 穂乃果は不満げな顔で俺の事をじっと見つめた。

 ……なんだよ穂乃果、俺だってやりたくてやってる訳じゃないんだ。ただ、ああするのが一番穂乃果を起こすのに手っ取り早いってことは、約五年間もほぼ毎朝、穂乃果の事を起こし続けたその道のプロとしての俺の結論だから仕方ない。

 

 

「でも、いつもいいなぁ……穂乃果ちゃん。正ちゃんに起こしに来てもらえて……」

 

 

 するとことりがそう言って、羨ましそうな目で穂乃果を見つめた。

 ええ……? 穂乃果の起され方を聞いて、なんでことりはそんな事を言えるんだ……正直どこにも羨ましい要素なかっただろ? 

 

 

「ことりちゃん……そんなに良いものじゃないんだよ? 寝ててだらしない顔を見られちゃうし、それに正ちゃんの起こし方だって、優しくなくて荒っぽいんだから……」

 

「いや穂乃果、俺ことり相手だったらあんな起こし方しないって……普通に、肩をゆすって名前呼びかけるぐらいかな」

 

「…………ふわぁ……! いいなぁ……いいなぁ……」

 

 

 ことりはそう言うと、羨ましそうな声のトーンをさらに強めた。

 その目はどこかここではない遠くを見つめ、そして、その瞳は強くキラキラと輝いていた。

 おい……その目はもしかしてことり、空想の世界に行っちゃった? 

 そ、そんなに目をキラキラさせるぐらいに俺に起こされるのって良いことなのか?   

やっぱり時々、ことりの考える事は、よくわからない時ってあるよな……。 

 

 こんな風に、ことりは想像力にたくましい所があり、たまにこんな風に自分の世界に浸ってしまう事がある。

 

 だから話している時、ほんの時々にだが、話があらぬ方向にぶっ飛んでしまい、気が付いたら全く他の話題になっていたなんてこともあったり――ことりは、基本的にはすごく優しくていい奴なんだけど、こういう所が玉に(きず)だと、親友である俺としてはそう思うのだった。

 

 

「ええー! ことりちゃんだけずるいよ~差別だよ、差別!」

 

「差別じゃなくて、ことりは穂乃果みたいに起こそうとしなくても普通に起きれそうだからだよ。優しく起こして欲しいんだったら、穂乃果はもっと寝起き良くなる事だな」

 

「む~……じゃあ、私が寝起き良くなったら、優しく起こしてくれる?」

 

「ああ当然、俺だって朝からあんな大声出したくないしな」

 

「よし言ったよ正ちゃん! 穂乃果、正ちゃんに優しく起こして貰うために、絶対朝はスッキリ起きれるようになるよ!」

 

「というか、その前に自分一人で起きれるようになるっていう考えはないんですか穂乃果は……」

 

 

 そんな穂乃果の決意の宣言に、海未は冷静にツッコんだ。

 確かに穂乃果はさっき、一人で起きれるようになりたいって言ってたばかりなのに、いつの間にか、俺に優しく起こして貰いたいって話になってるような気がするな……ああ、これからも俺の朝の時間は、穂乃果の為に費やされそうだな……。

 

 

 

「――正ちゃんっ……!」

 

 

 

 俺がそう思っていた時に突然、いつの間にか自分の世界から帰って来ていたことりが、ハッキリした声でそう言い、両手をお祈りするように組んで、俺の事を涙で潤んだ瞳で見つめた。

 

 そんなことりの仕草から、俺は今から自分の身に何が降りかかるのかを悟る。

 

 ……おいおいまさかことり……“アレ”をやるつもりなのか!?

 

 俺は無駄とは分かっているが、腹にグッと力を込め、次のことりの言葉の“衝撃”に備える。

 

 そう、ことりの……まるで何かをお願いするようなこの仕草から放たれるのは、彼女のみが持ち得る必殺技――

 

 

 

「正ちゃん……明日だけ、ことりはお寝坊さんになるからぁ……ことりのことを起こしに来てぇ……おねがぁいっ!」

 

 

 

 ――これだ。

 これこそが、ことりの持ち得る最強の必殺技。

 

 彼女の可愛らしい容姿とそして庇護欲をそそられるような仕草の、この二つのコンボから放たれるその“お願い”は、俺みたいな男子は勿論のことだが、一部の女子にすら拒否権なくいう事を聞かせることが出来るという、とんでもない代物だ。

 

 当然、そんなことりの全力に、男の俺が立ち向かえる訳も無く……。

 

 

「了解っ! 俺、明日ことりの事を起こしに行きます……いや、行かせてください!」

 

 

 あっけなく俺はそう言って、ことりのお願いを了承してしまった。

 ――アレ? わざと寝坊されるの起こしに行くって、それ実際起こしに行く意味あるの……? って自分の中で色々ツッコミたい所はあるけど、ことりのお願いだから仕方ないな、うん!

 

 

「わ~い! ありがと正ちゃん……ことり、明日は正ちゃんが来るのを、布団の中で寝て待ってますっ」

 

「ええーー! じゃあ、明日は穂乃果どうしたらいいの!?」

 

「穂乃果……ごめん、明日は一人で起きてくれ、これも1人で朝早く起きる練習だと思ってさ」

 

「そんなぁ! 急には無理だよぉ~~!」

 

 穂乃果はショックを受けたような顔でそう叫んだ。

少しかわいそうだが、流石にいつまでも俺が穂乃果の事を起こし続けるって訳にはいかないもんな……このままだと、大人になっても穂乃果は一人で起きれない――って事になってしまうかもしれないしな。

穂乃果……悪いが、これも練習だと思ってくれ。

 

 

「ことりのように、一日だけがアリなら私も……くっ……! 朝の稽古があるから寝坊は出来ませんね……少し残念です……」

 

 

 そんな中、海未がふと何かを呟いたような気がしたが、俺はその言葉を聞き逃してしまったのだった。

 まぁどうせ、正也は二人を甘やかしすぎです――みたいな言葉に決まってるだろうし、気にしなくてもいいか。

 

 俺はそう思って、学校に向かう足を少し早めたのだった。

 

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 

 そして学校に着いた俺達四人は、まっすぐに生徒会室に向かう事に。

 

 しかしその途中、今日が『音中新聞』の発行日である事に気が付いた俺は、ふとその内容が気になったので、三人に先に生徒会室に行ってもらい、自分は新聞部の前に寄ってみる事に。

 

 こうして毎週のように確認してないと、俺に関する記事が張り出されてた時の対応が遅れるからな……全く、俺がこんな面倒くさい確認しないといけなくなったのも、これも全部、(あや)の所為だ。あの野郎……覚えてろ……!

 

 俺は、そんな思いを抱えながら新聞部の前に着く。するとそこに、今日の早朝に(あや)が貼りだしたであろう、大きな壁新聞が張り出されているのを俺は発見したのだった。

 

 

「はぁ……今日も頑張ってるな彩のやつ……さって、これが俺の記事じゃない事を祈るぜ……」

 

 

 俺はそう呟いて、その新聞のタイトルに目を向ける。

 すると、その新聞のタイトルは――

 

 

 

 《 音中新聞 》

 

『爆走!? 疾走!? 走る彼女は疾風(はやて)の如く!

 音中陸上部の未来のエース! 星空(ほしぞら)(りん)に密着取材!』

 

 

 

 そうか、次の被害者は凛か……ご愁傷さま。

 そんな気持ちで、俺はその記事の内容に目を通す。

 

 しかし、その内容は俺の予想とは大きく違い、全くネタを挟まず、そして不必要な事実の誇張などは一切されず、ありのままの凛の凄さについて語られているという、ものすごく真面目な内容で――読み終わって俺は、(あや)に対して元々持っていた怒りが、さらに倍増した。

 

 

「アイツ……! 書こうと思ったらこんな真面目な内容な記事も書けるんじゃないか!

なんで俺のことを取り上げた記事だけ、無駄に大量のネタと誇張表現にまみれてるんだよ!? これは彩に、俺に対する扱いをもっと心がけるように言って聞かせる必要がありそうだな……」

 

 

 俺はそう呟いて新聞部前を後にし、穂乃果達の居る生徒会室に向かう。

 

 そういえば記事の最後に、凛が足を捻挫したって書いてあったけど……凛のやつ大丈夫なんだろうか? 生徒会の仕事が終わったら、ちょっと様子を見に行ってみよう。

 

 俺はそう思って、今日の放課後すぐに、凛の元に行くことを決意したのだった。

 

 

 そう、それに……凛に大事な話もある事だしな。

 

 

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 

「――よっし、生徒会の仕事まとめ終わり。これで例え俺達が居なくても、次に生徒会やる奴らに仕事内容はバッチリ伝わるだろ!」

 

 

 俺は生徒会室で、生徒会の仕事の内容を説明した用紙を、一枚一枚丁寧にファイリングしていく。

 

 次期生徒会の選挙の立候補者の締め切りを前にし、俺達四人は自主的に生徒会の最後の仕事として、生徒会の仕事をまとめた資料を作って次に生徒会をやる人の為に残しておこうと決めたのだった。

 

 そして、その資料が今ようやく完成したのだった。

 

 

「そうそう! これで次に生徒会に引き継いでくれる人も、生徒会の仕事しっかりわかってくれるよね!」

 

「今の時間は……8時10分。なんとか朝のホームルームまでには終わる事が出来ましたね、お疲れさまです」

 

「うんっ。海未ちゃんもお疲れさま」

 

 

 穂乃果達は、俺に同調するようにそう言うと、教室に行く準備をするために机の上の筆記用具などの私物を片付け始めた。

 

 

「それにしても……今日で、本当に終わっちゃったんだね生徒会」

 

 

 すると、片付けをしながらポツリと穂乃果がそう呟いた。

 

 穂乃果……まさかそんな事を言うぐらいに、この生徒会に思い入れがあったなんて……

 

 ――よし、だったら、ここはひとつ生徒会長として、俺が穂乃果を励ましてやるか!

 

 

「穂乃果……大丈夫か? まぁ、終わって悲しいのは分かるけど、元気出せって! 元気がお前の取り柄なんだからさ!」

 

「え? いやいやいや、大丈夫だよ正ちゃん! 別に悲しいんじゃなくて、ただ私はやっと終わったぁ~! って感じで、これから学校終わったらすぐに家に帰ってゆっくり出来るって思ったら、なんかスッキリしちゃって……」

 

 

 穂乃果のその発言に、俺はおもわずガクッと脱力してしまった。

 なんだ……悲しい訳じゃなかったんだな穂乃果は。

 

 

「おいおい、なんだよ穂乃果……心配して損したー」

 

「でも正ちゃん、確かに悲しいって訳じゃないんだけど、でも……う~ん……なんて言えばいいんだろうこの気持ち……?」

 

「そうですね、穂乃果の気持ちが分かるような気がします。

私も今、なんて言い表したら良いか分からない気持ちです。……だって、正也と穂乃果に引っ張られて生徒会をすることになって今日まで……色々な事があり過ぎましたから」

 

「うん、本当にそうだったね……普通の生徒会のお仕事だけじゃなくて、正ちゃんの噂を聞いた他の皆が、生徒会にお願いをしに来たりしたから、ことりも、とっても大変だったなぁ…」

 

「……うぐっ! ご、ごめん……まさか俺の勝手の所為で、生徒会が他の皆の間で『お悩み相談室』みたいな認識されてたなんて、つい最近まで知らなかったからさ……その節は本当にご迷惑をおかけしました……」

 

 

 そんな風に呟く穂乃果達に、俺は胸に刺さる物を感じながら頭を下げる。

 

 先代の会長で、俺の憧れの先輩である――絢瀬(あやせ)先輩に、生徒会長という大役を託された俺はつい張り切り過ぎてしまって、学校内で困った人を探しては、その都度生徒会長としてカッコよく助けていた時期があったのだった。

 

 その所為で生徒会は少し誤解されてしまって、この前の花陽(はなよ)ちゃんの件だけでなく、その前にも沢山の生徒からこの一年間で“依頼”という形でお願いが沢山来てしまったのだった。

 

 その内容は、サッカー部の試合の助っ人に来てくれとか、演劇部の衣装を作るのに人手が足りないから手伝ってくれとか――そう言った風に、様々なものがあった。

 

 でも、俺自身はそれが大変だったっていう訳ではなくて、むしろ頼られるのが嬉しかったから、何も問題は無かった。

でも、やっぱり振り返ってみたら、みんなに負担をかけてしまったと俺としては思うところもあって……俺としては、少し反省していたりはしたのだった。

 

 すると俺の言葉に、穂乃果は横に振って言う。

 

 

「ううん、正ちゃんは謝らなくてもいいよ。だって、皆にありがとうって言われるの、とっても嬉しかったから――そうだ! 今の気持ちをなんて言ったらいいか、穂乃果わかった! 悲しいって言うのとはちょっと違って……大変だったけど、寂しいって感じなんだよ!」

 

「寂しい……?」

 

「ああ……それですね。穂乃果の言う通り、私も……大変でしたが、寂しいって思います」

 

「ことりも確かに大変だったけど……でも、やって良かったって思うなっ」

 

 

 俺は三人のその言葉を聞いて、思わず安心してしまった。

 

 そうか……よかった。俺が一方的に三人を振り回して迷惑かけてたんじゃなくて……。

 俺はそんな安堵の想いと共に立ち上がり、そして三人に今一度伝えたい想いを語るために口を開いた。

 

 

「――みんな、俺から三人に改めて伝えたい事があるんだけど……聞いてくれるか?」

 

 

 俺のその突然の言葉を聞いてキョトンとした顔になった三人は、そのまま俺の言葉を待つように俺を見つめた。

 俺はそんな六つの瞳をまっすぐ見つめ返し、こう続ける。

 

 

 

「多分もう何回も言ってると思うけど――俺が突然、生徒会長やるって言い出した一年前に……いくら探しても、生徒会の役員やってくれる人が誰も居なくて困ってた俺に、生徒会一緒にやるって言ってくれて……そして今まで付き合ってくれて、本当に感謝してる。

 ありがとう! 穂乃果っ! ことりっ! 海未っ!」

 

 

 

 そう言って俺は、今までのありったけの感謝の想いを込めて三人に、明るく笑顔で笑いかけた。

 

 そう、この三人が居なかったら、きっと俺はここまで頑張ってこれなかっただろう。

だからこそ俺は今、改めて三人に感謝の想いを、心からの笑顔と共に伝えたかったのだった。

 

 ……どうだ、今まで一緒に頑張って来た親友からの、この真面目な感謝の言葉。

 

 これは多分友情モノの少年漫画だったら、きっと感動的なシーンのはず!

 恐らくもう穂乃果辺りは、感動の涙を流してそろそろ俺に抱き着いてくるだろうな……よし、覚悟は出来たぞ、来い穂乃果!

 

 俺はそう思い、来るであろう穂乃果の体当たりに対して身構える。

 

 しかしそんな俺の予想に反して、三人の反応はこうだった。

 

 

 

「「「……………………」」」

 

 

 

 ……あれおかしいな、ノーリアクション? 

 三人とも俯いたまま何も言ってくれないんだけど……? ここって普通、親友の感謝の言葉に感動で涙するシーンじゃないのかな? 違うの?

 

 俺がそんな三人の反応を不審に思った時、顔をまるで(ゆで)だこのように真っ赤に染めた穂乃果が、机から身を乗り出すように両手をついて勢いよく立ち上がった。

 

 

「正ちゃんっ……! その笑顔は穂乃果達だったらまだ良いけど、他の女の子の前だったら絶対に禁止だからっ!!」

 

「は、はいっ!? 急に何だよ穂乃果っ!?」

 

「いいから……禁止ったら禁止っ! わかった!?」

 

「あ……ああ、わかったわかったから! もうやらないって!」

 

 

 俺は穂乃果の勢いに根負けし、そう言ってその場から後ずさる。

 嘘……だろ……? 笑顔がダメだったの? 俺は完璧に今の笑顔決まったって思ったのに、もしかして、そこまで気持ち悪かったのか!? 

 

 

「あわわわわ……どうしよう、どうしよう……顔があついよぉ……」

 

「これはっ……! 私達ですからまだ良いですが、他の面識が少ない女性が見たら、一目(ひとめ)でっ……!」

 

 

 ことりと海未はそんな事を呟いたっきり、俺の方をまるで見ようとしない。

 

 

 ……そんなに、酷かったんだ……俺の気持ちが籠った全力のスマイルは……分かった、もう二度としないぞ俺……!

 

 

 俺はそんな三人の反応を見て、今後はこの手の笑顔は封印すると誓ったのだった。

 

 

 こうして、俺の生徒会活動は、最後に騒動が起こると言う訳でもなく、普通に幕を閉じた。

 

 最後は俺がカッコつけようとして、穂乃果に注意を受けるという、なんともカッコ悪い締めとなってしまったが……これはこれで、まだまだカッコいい男とは言えない俺にとって、逆にいい締めだったのでは無いだろうか……。

 

 

「全く……正ちゃんは……! 慣れてる私達だけならまだいいけど、気が付いたらそんな風に、他の子にもそんなカッコつけた事してるんだから……! 

 いい? 女の子って意外と単純なんだよ? 正ちゃんみたいにカッコいい男の子にニコッてされちゃうだけで、すぐ本気になっちゃうんだから! 

 それに(あや)ちゃんにコッソリ教えて貰ったんだけど、後輩の子にも正ちゃんに本気っていう子がいるらしいんだから……! 正ちゃんはもっと気をつけるべきだよ!」

 

「あの……穂乃果? 熱く語ってる所悪いんだけど、その“本気”ってどういう意味だよ?

 俺が笑いかけるだけで、何に対して本気になるっていうんだ?」

 

「これだから、正ちゃんは……! こういう時、正ちゃんって穂乃果よりおバカさんだよね! もっと、そういうことも勉強しようよ!」

 

 

 俺は、そんな風に思いながら、俺に注意をする穂乃果の熱が収まるまで、正座で座ってジッと堪えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




 ここまで読んで頂けて、ありがとうございました。

 今回の話で、正也君達の生徒会の物語は、一応区切りになります。
 でも、物語のテンポの都合上、描写はにしていないだけで、四人の生徒会活動事件簿は、まだまだあったりします。
 また、そのお話も、何かの機会に出来たらな……と思っています。

 では前回に引き続き、感想を下さった方や、お気に入り登録して下さった方に心からの感謝を……

 また、誤字脱字や感想などがございましたら、是非感想欄までお気軽にどうぞです!

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